第17章 評議会⑥
評議会⑥
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1週間程、新ギルド“産業ギルド”の状況を確認しつつ、問題点の修正やギルドの業務の確立、スパイの洗い出しに“教育”等を行っていった。
各支部のギルドマスターや副ギルドマスターもセバス達がしっかりと人選をしてくれていた為、スムーズなモノだった。
そして、今日は明日からのダンジョンアタックの再開の為、ルナルーレ、リム、セレン、レンの4人の装備の拡充と準備を行なっていた。
拡充は4人共レベル10万を突破しているのでバージョンアップと、準備はレベル100万を超えれた場合に上げる用だ。
4人共、今回のダンジョンアタック中に貰う気マンマンだ。
因みに、今回も10日で一旦戻って来る予定だ。
先月は評議会の所為で喧嘩祭り元い合同訓練が開催出来なかったので、今回は2倍開催で8日間の開催予定で、その後はクルス商会の周年祭の準備に入る。
4人分の装備が完成したところで、シェーラからロンドベレクロ王国の20カ所の街で土地の準備が出来たとの報告を受ける。
装備のテストは本人達に任せて、明日からちゃんと遊べる様に店舗の建設をして周り我が家に戻ると、なんだか、いそいそと夕食になった。
妻達やペット達が全員揃っていたので、何かあるなと、思いつつも食事を取る。
食べ終えてお茶が運ばれると、シエラールルが、
「お館様、宜しいでしょうか」
と、言って、第1メイド部隊の、コレッティとケイシェットを連れて来た。
「ああ」
と、言いながらも。この2人の組み合わせで予想は付く。
一昨日の夜の乱交パー…………メイド達との楽しい一時を思い出したのだ。
「お館様の御子を授かりました」
と、シエラールルが言った。
「私も、お館様の御子を授かりました」
と、コレッティ、
「私も、お館様の御子を授かりました」
と、ケイシェット
『…………と、言う事は…………。1晩で3人?
あれ?子供って、この世界では滅多に出来ないんじゃなかったっけ?』
と、いう疑問も一切表情に出さず、ちゃんと嬉しさだけを表に出し「ありがとう」と、言いながら3人を1人づつ抱きしめた。
と、言うわけで、ダンジョンアタックを1日延期して、明日はパーティーだ!!
シエラールル達はオレの予定がずれ込む事を遠慮していたが、そこは、妻達の大賛成を受けて、3人共涙を流して妻達に感謝していた。
さて、何パーティーにしようか?と、思っていると、クリシュナとレンから「レンジさん、“アレ”を」と、言われたので、通常の料理は妻達とメイド達に任せて、オレは、“アレ”と“アレ”の準備をする事にした。
第1クルス島村の大ホールに大勢の配下や家族達が集まっている。
今回は、オレの個人パーティーなので、配下だけで無くミミッサス村の子供達や第1クルス島村に住む配下の家族達も招待している。
最も上座のオレの席はカウンターだ。
カウンター席では無い。カウンターの内側だ。
オレは、“アレ”と“アレ”事、寿司と日本酒を提供する為にカウンターにいる。
カウンターの内側に居るのは、オレとシエラールル、コレッティ、ケイシェットの4人だけだ。
オレ達は祝われる側だが、今回、妊娠した3人への思い出作りの為の遊びだ。
こういう時こそ、オレのステータスは輝く!!
みんなからの「おめでとうございます」の一言の内に、寿司ネタを引き、握って、手渡しながら「ありがとう」と、答える。
他の3人も、「ありがとうございます」と、言いながら、お盆や酒を渡して行く。
1万人近い来客だが、まあ、余裕だ!!
こういう時の為に、オレのステータスはあると言っても過言では無い!!
挨拶の行列が終わったので、自分と3人の分の寿司を握って一緒に食べる。
3人共、ちゃんと楽しんでくれた様で寿司も喜んでくれた。
オレは基本何でも1人でやるので、最古参の最高幹部のシエラールルでさえ、こうやって一緒に何かをするのは、非常に珍しい体験だった様だ。
もちろん、シエラールルに後から言われて気付いた訳だが…………
因みに、みんなに振る舞った事でオオサカ国には似たような料理がある事が分かった。
寿司では無く“刺身お握り”、日本酒では無く“蒸米酒”と、言うらしい。
おそらく、転移者や転生者達も寿司と日本酒に挑戦したが納得の行く物が出来なかったのだろう。
だから、寿司や日本酒と呼びたく無かったのではないかと思う。
寿司も日本酒も、以前クリシュナが言っていた通り大好評で、商業部社長ローラスから商品化を頼まれた。
これについては、クルス商会の周年祭の会議でついでに話し合う事にした。
オレ達自身も、しっかりと呑んで騒いで、夜は更けていった…………
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2回目の無限ダンジョンアタック8日目、今回は1日遅れのスタートと明日は帰りの移動の為に今日は最終日になる。
オレは、今、走っている。
妻達がローテーションで、魔物を一撃で倒して行く後ろを付いて走っている。
妻達がレベル350万を超える魔物達を駆け抜けながら一撃で倒して行く後ろを付いて走っている。
オレの仕事は魔核を回収しながら、ただ走って後ろを付いて行くだけだ。
前回は、指導の意味も込めて一緒にいたが、正直言って暇だ…………
今回は、妻達同士でアドバイスし合っていて、オレの出る幕は特に無かった…………
ダンジョンに戻って来た初日は、一気に100万スタートだ!!
と、思ったのだが楽勝過ぎた…………
オレが働いている間も妻達は訓練をしていて、レベル100万の魔物も一撃ローテーションから始まったのだ…………
なので、ちょっと難易度を上げてみた。
前回の10万づつ上げて行くのでは無く、一気に50万づつレベルを上げて進む事にしたのだ。
150万では効果は無かったが、200万からは効果が有った。
ちゃんと苦戦してくれたのだ。
ちゃんとと、言うのもおかしな話だが…………
そんな訳で、50万づつレベルを上げながら来た結果、今、正にレベル350万の魔物を一撃で倒して行く妻達の姿があった…………
オレは、妻達にストップを掛けて、今回はここまで次回はレベル400万からスタートの予定を告げる。
1日早く帰って、最高幹部達とちょっと会議をする事にしたのだ。
今回はクロリュウに乗って来ていたが、今日中に帰る為にオレが自分で走って帰る事にして、全員に“ディファレントスペース”に入って貰う。
もちろん、不満を言う妻は1人も居ないが、一応ご機嫌取りでレベル100万用装備を渡しておいた。
妻達の目標は此れだった様で、みんなルンルンで“ディファレントスペース”内の私室に着替えに行ったのを確認して、一気に走って帰る。
ダンジョンが壊れない様に350万kmを10分程で駆け抜けた。
「…………と、言うわけで、ほんの20日程で妻達4人のレベルが1万ちょっとから100万を超えた。
もちろん、ショートカットでレベルアップ効率を上げた効果は大きいと思うがそれにしても早過ぎると思わないか?」
我が家のリビングに、妻達、ペット達、手の空いていた最高幹部に集まって貰って、無限ダンジョンでの経緯を話す。
「お館様の仰る通り、明らかに異常であると思われます」
セバスの言葉に妻達や幹部達も頷く。
レベルの上がった本人達も「確かに……」と、言っている。
「クリシュナ、ちょっと確認なんだが、ダンジョンを作る時にレベルが上がり易くする事は出来るよな?」
「ええ、出来るわ」
「だったら、無限ダンジョンはレベルアップをさせる為のダンジョンの可能性も有るな…………」
「お館様、それは“対天使種族”の為のレベルアップダンジョンだとお考えですか?」
「「「!!!!」」」
「さすが、セバスだ。
オレもそうじゃ無いかって考えている。そして、その先には……」
「聖剣が有ると言う事ですね」
キスラエラの怒りの籠った呟きが漏れた…………
キスラエラは聖剣の真実を知っても、やはり元夫の大魔王の命を奪った聖剣が憎い様だ。
ちょっと妬けるが仕方ない。
「その可能性が有ると思う。
だが、そうなるとシロネコ達には残念な事になるかも知れない」
「何でっスか?ボス」
「もし、“対天使種族用のダンジョン”だったらレベルは1,000万くらいで終わるかも知れない。
高くても1億程度だろう。
じゃないと、聖剣が誰の手にも渡らない」
「「「そんな!!」」」
シロネコ達が、驚きと共に途轍もなく悲しい表情をする。
「レンジさん、その予想だったら絶対に1億も無いよ。
だって、レベル1億なら聖剣なんて無くても天使種族に勝てるじゃない。
レンジさんの作った訓練場の所為でみんな感覚が狂ってるみたいだけど、普通、レベル500万を超えたら、同レベルの相手すら殆ど居ないから全然レベルは上がらないからね。
みんな、長い時間、魔力を溜め込んで少しずつレベルを上げてるんだから」
「ウム、クリシュナの言う通りだな…………。
主の予想が当たって居れば我らの出番は無さそうだ…………」
クリシュナの意見にシロネコはとっても哀愁漂う雰囲気だ。
猫背も悲しそうだ…………
「そうだな……なら、その時は、オレがダンジョンを作ってやるか…………」
「「「!!!!」」」
シロネコ達だけで無く、全員がガバッとこっちを見る……
「…………欲しいのか?」
全員が首がちぎれそうな程、頷いている…………
「分かった。
もし、レベル10億よりも早く、ダンジョンが終わったら作ってやるよ」
…………大歓声が上がったのだった…………
今迄はコッチ側だったシロリュウも、アッチ側に行ってしまった…………
オレの家族や配下達は一体何処を目指しているのだろう…………
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1日早く帰ったのは結果として良かった。
ロロルー王国とリリルー王国での工場建設の準備が出来ていたのだ。
オレの産業ギルド設立に伴い、ロロルー王国とリリルー王国は最大輸出国であるグラール帝国と袂を別つ事になった。
このままでは、大量の失業者が出て経済は破綻する。
なので、先ず、クルス商会の第3工場と第4工場を建設して、そこに雇用を作り、その工場では両国の鉱物を使う様にした。
そして、魔導具の製造と販売に関しては、他国同様にクルス商会優遇政策を取る事になった。
それ以外の通常の装備品の製造販売に関しては、産業ギルドを通しての輸出の方が今迄の商業ギルドよりも税金が非常に低くなるので、産業ギルド加入国への輸出だけで問題無いとの判断になった。
一般の衣類や装飾品を作っている人達にとってはグラール帝国への輸出は他国と大差無いので、税金が安くなって良くなっただけだ。
失業し、クルス商会への就職も出来なかった人達は此方にシフトして行って貰いたい。
と、言う事で、工場と店舗の建設地の準備をして貰っていた。
店舗と違い工場は郊外で構わないので、広い土地さえ有れば良い。
ただ、クルス商会の工場はとても大きく従業員寮と自由研究工房の建設も希望された為、途轍も無く広い土地が必要だが…………
結果、サーラールの街と同じく、王都の外壁を広げる形で決まったそうだ。
王都ロロルーと王都リリルーの工場で製造する商品のラインナップも用意されており、シルバーウィング以来、久しぶりに、“精密複合 創造”を行って、製造ラインも一気に作る予定だ。
王都ロロルーに行くと、王都の外の西部に3km四方の線が引かれており外壁にも印が付けられていた。
先ずは3km四方の外壁を作って、その後、一気に第3工場を建てる。
自由研究工房に従業員寮も次々と建てて行く。
シルバーウィングの発着場が無い分、土地は非常に余るのだが、今回は優遇政策の一環で土地はタダなので、最初は余っても良い。
最後に王都の外壁との間に通行スペースと門、警備詰め所を作って完成だ。
サーラールの街と違い、目の前の本部から見張っている訳では無いので、此方はキチンと警備をしている事を見せておく必要がある。
同じ様に王都リリルーにも作って、警備を諜報守護部に工場の確認は製造部に任せて我が家に帰った。
翌朝、ロロルーとリリルーの工場の報告を聞く。
製造ラインは、各金属を使って問題無く動いた様だ。
問題があったのは、初日にして侵入を試みた者が居た事だ。
もちろん、全員、捕縛して雇い主を吐かせてあった。
雇い主は、ファレマーテ商会だった…………
「…………はぁ〜……。で、目的は?」
「製造ラインの窃盗、若しくは破壊が目的だった様です」
新規執事のナルクタスが報告して来る。
ナルクタスが1人でオレに着くのは今日が初めてなので、嫌な日に当たってちょっと可哀想だ。
「ファレマーテは爵位も持ってたよな?
グラール帝国は、平民の貴族への復讐は禁止だったな?」
「はい、タッキン ファレマーテは子爵位を持っております。
そして、貴族に対して、平民は復讐も暴力も誹謗中傷も禁止されております」
「だよなぁ〜……。どうしよっかなぁ〜……。
暗殺だと何回もしないといけないだろうしなぁ〜…………」
「では、ファレマーテ商会の店舗を全て焼き払いますか?」
「それだと、何にも知らない普通の従業員や近所の家も巻き込んじゃうだろ?」
「では、ファレマーテ商会の幹部を全員暗殺するのはどうでしょう?」
「それだと、今回の件に関係無い幹部も巻き込むだろ?
因みに、逆もダメだぞ?
今回の件に関わっている幹部だけを暗殺しても、関わって無い幹部が同じ事をして来るだろうから何度も暗殺しないといけない」
「なるほど……。
全て解決とは行かない訳ですね…………」
「…………こういう時、オレに高い身分が無いのは不便だなぁ〜…………。
でも、爵位とか持ちたく無いしなぁ〜…………」
そこで、ラムからナイスアイディアが齎される。
因みに、今いる妻はラムだけだ。
他のみんなは、今日からの喧嘩祭りの準備で食後はさっさと訓練場に向かっていた。
「あなた、それでしたら全ての従業員を外に出してから、店舗のみを完全に破壊されては如何ですか?
その際に馬車用の馬も全て、逃して仕舞えば経営の再会は不可能になるのでは?」
「なるほど……。それなら良いかも知れないな。
ファレマーテ商会は、貿易と馬車の運営がメインだったからな。
なら、ついでに商会の金は全て従業員に配って仕舞おう。
どうせ、低賃金で働かせているんだろうから丁度良い」
「畏まりました。
決行は今夜で宜しいでしょうか?」
「ああ。
折角だから残業になるけど、指揮はナルクタスに任せる」
「!!はい、必ずや最高の結果にしてみせます!!」
「いいか、分かってると思うが…………」
そう言って、言葉を切ると、
「はい!!全員無傷で、最高の結果に致します!!」
と、キチンと答えが返って来た。そして、
「もう1つ…………」
と、言って指を一本立てて、もう一度言葉を切る、
「はい、ロロルー王国とリリルー王国の内通者も洗い出して置きます」
「良し、頼んだぞ」
笑顔で答えると、オレも訓練場に向かった…………。




