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第16章 東大陸⑤

東大陸⑤





▪️▪️▪️▪️





今日からは、みんな大好き喧嘩祭りだ!!


そう、みんな大好きなのだ……脳筋どもめ…………




まあ、しかし、月に1度の全ての配下達とのコミュニケーションだ。

オレもイヤな訳ではない。



初日は新規参入のホネリュウを加えたクルス商会の最強軍団だ。


“原初のモノ”達に最高幹部、幹部の中でも特に戦闘能力の高い最上位のメンバー達だ。


妻達の中ではキスラエラ、クリシュナとセリンだけだろうと思っていたが、今日はリムもこちらに参戦らしい。

それもクロリュウに乗って……………




リムとクロリュウは他のペット達に比べて非常に仲が良い。

そこは一重にペット達の性格の問題でもある。


シロネコはオレへの忠誠心からラムにも従っている。

ラムは普通に猫好きだ。


クロクジラは基本ルナルーレにされるがままだ。


シロクラゲとキスラエラはお互いに真面目な対応をし合っている。


ミケネコはクリシュナが今でも聖樹として敬う様に接しているし、アカリュウは最近セレンと一緒にいる様だが、まだ、お互いに初対面の時の関係修復を行いあっている様な感じだ。



それに引き換えクロリュウは完全にリムと友人の様な、リムに飼われている様な感じになっている。

外出時もよく一緒に出掛けている。


きっと今日もドラゴンライダー訓練を積んで来たのだろう。

少し楽しみだ。



楽しみだったのだが…………

リムとクロリュウのドラゴンライダーは最初の奇襲の為だけだった…………

それ自体は効果的だったが、その一撃の為だけにリムは初日に参戦していた。



開始と同時にクロリュウが5mくらいになりながら突っ込んで来た。


噛み付きからの回し蹴りと尻尾攻撃の連撃をオレが避けると、クロリュウの尻尾に捕まっていたリムが尻尾攻撃の遠心力を利用して飛んで来た。


クロリュウの巨大な存在感にリムを紛れさせ、小柄なリムは尻尾に完全に隠れて見えなかった。



作戦としては良い、が、残念…………。

クロリュウの尻尾に振り落とされない為のリムの“風属性魔法”にオレは気付いていた。



オレに躱されて、リムがそのまま戦線離脱しようとしていた。


残念ながら今のリムでは、まだ、このレベルの戦闘には参加しても足手纏いどころか、自分の身を守るのも難しい。



クロリュウに守られながら訓練場の隅っこに向かう、哀愁漂うリムの後ろ姿が可哀想だったので、サッと、リムの所まで行ってリムをお姫様抱っこして、


「ハンデだ!!」


と、みんなに言って、そのまま蹴りと魔法だけで相手をした。

お姫様抱っこにリムも最初はとても嬉しそうにオレにスリスリしていたが、途中からは真剣な表情でオレやみんなの動きを必死に見ていた。



因みに、初参加のホネリュウだが鎧の手甲剣を爪代わりに使って来た。


残念ながら全く使いこなせておらず、ただの長い爪としてしか使えていなかったが見ため的には良かった。




夕食時に全員にアドバイスを行う中、リムとクロリュウには、クロリュウの蹴りや尻尾攻撃の時に“風属性魔法”で、攻撃を加速させる様な動きの中にリムを紛れ込ませていたらもっと良かったと教えて、ホネリュウにはセリンから、剣を教えて貰ったらどうかと、言っておいた。





2日目は上位メンバー、3日目は中位メンバー、4日目は下位メンバーだ。


今回、全員のレベルアップをして装備の拡充を行ったので、何となく最上位はレベル100万以上、上位は10万以上、中位が1万以上、下位が1万以下みたいになっていた。


なので、勇者パーティーはレンだけ中位の3日目で、他の3人は下位の4日目だった。



昼食時にアヤ達3人にアドバイスがてら「レンと一緒じゃなくて良かったのか?」と、聞いてみたが「自分達が上がって追い付く!!」と、力強く言っていたので良い友人達だと思ったのだが…………


後日、“追い付く”の部分が“強さ”ではなく、“女として”の方だったとシエラールルから聞いてしまった…………





▪️▪️▪️▪️





喧嘩祭りを終えた翌日、先ずは会議で幹部達から報告を受けて行く。


東大陸は特に新発見は無し。

ロンドベレクロ侯爵との“例の魔獣”と武器の交換は終了して、金属板の回収も終了。

ハルマール王国での“人種族至上主義の撤廃”は正式発表された。

残り2枚の金属板と新たな聖剣の情報は無しだった。




クルス商会からの報告も順調そのものだったが、2つ、ローラス社長から提案があった。


1つ目はクルス商会の現地採用組みから特にオレへの忠誠心の高い者をオレの直轄の配下に組み込んではどうか?と、言うモノだった。


理由は、セレンだ。


ほんの数ヶ月でセレンは一般人レベルから一気にレベル1万超えになった。


現地採用組みも幹部に取り立てた者達が自身の身を守れる様になれば、第1部隊への負担の軽減になり、今後の出店も第2部隊だけで行える様になる。


ただ強くなるだけなら訓練場をクルス商会に作れば良い話しだが、それではレベル9,999で頭打ちになってしまう。


オレとの合同訓練に参加出来なければ、オレの“スキル 限界突破LV10”の“他者の限界突破を促すことが出来る”効果の恩恵が受けられないからだ。



これについては、比較的賛成も多く、特に反対意見も無かったので採用した。


但し、審査基準や身辺調査は厳重に行ってから、と、いう事になった。



今までの黒火一族だったり、ビルスレイア女王国のキスラエラの推薦だったり、アスモデウス公爵家の分家だったり等と違って、クルス商会の従業員はクルス商会が立ち上がってからの関係だ。

全員、まだ2年経たない。



本人のやる気があって、誠実なら従業員として採用をしているが、過去にどんなアキレス腱が有るか分からないからだ。


審査基準や身辺調査は幹部達の判断に任せる事にして、もう1つの提案だ。




2つ目の提案は現在クルス商会で管理をしている孤児院と学校を独立管理にしてはどうか?

と、言うモノだった。


これは悩んだ。

出来れば子供達の教育は信頼のおける者に任せたい。



なので、統合を行っても既に300ヶ所を超えている今でも孤児院と学校の先生は基本はオレが最終面接を直接行っている。



そして、クルス商会の管理下ではあっても各孤児院と学校は独立しているのだ。


此処に孤児院の管理と学校の管理を行う協会なりを作ると、なんとなく腐敗して行きそうなイメージがある。


しかし、その方が効率が良いのも事実だ。

人員や管理もだが、商会で運営するよりも寄付にした方が税金対策にもなる…………




しっかり悩んだ結論として、


「やっぱり、孤児院も学校もクルス商会の傘下のままにしよう。


但し、商会内で全く別の部署にしておこう。

それに伴って孤児院や学校を管理する幹部を新たに立てよう。


あと、全体の組織編成も見直そうと思う。


孤児院と学校の管理の部分だけで無く、現地採用者も配下に加えて行くなら、ビルスレイア女王国のまだオレの直轄になっていない者達もそのままって訳にはいかないからな。



今言った、組織編成の見直しは東大陸の調査と対応が終わったら行う。


なので、第2部隊は現地採用者の中から直轄にと考えている者のリストアップと、審査、身辺調査がそれまでに済んだ者のリストを作っておいてくれ。


ビルスレイア組は、まだ、オレの直轄になっていない者の現在の情報のリストアップ、最高幹部は全配下の現在の情報をリストアップしておいてくれ。以上だ」


「「「は!」」」





その後は、最高幹部と第1部隊の幹部のみ残って、東大陸の調査予定を立てて行った。


最も悩んだのは魚の確保に大勢連れて行くか、今回は魚は諦めるかだ…………



魔獣は居ないのでレベルアップにはならないが、大陸1つ分の範囲の魚を腐らせるのも勿体無い。

しかし、“天使種族”と“悪魔種族”の危険もある。



結果、第1部隊とメイド部隊の8割を投入して通常の6人1チームを12人1チームにして、6人が回収、もう6人が1人づつ護衛と警戒に当たる事になって、最低でも水抜きは2日で行い切る事にした。


配下達の勤務の調節の為、決行は2月1日に行う事になった。






▪️▪️▪️▪️







2月1日、“宇宙船の水全部抜いてみた計画”を決行した。


水深500mづつ水を抜いては魚介類を回収。


内部調査は基本行わない、魚介類の確保が優先だ。

今回は妻達やペット達は全員参加にはしていない。



妻達はキスラエラ、クリシュナ、セリンのみ、ペット達はクロクジラとシロクラゲのみ。

他のメンバーは、シルバーウィングで待機だ。



シルバーウィングに残った妻達には、万が一、“天使種族”や“悪魔種族”が地上に溢れ出した時にペット達の指揮をとって貰う。



水を抜いて行く途中、明らかに中枢っぽい上下300mで1,000km四方のゾーンが有ったが、取り敢えず中には入らず、夜はシルバーウィングで過ごして2日で水は抜き切った。


その後、警戒しながら中枢部分を除く周囲の生活空間っぽい所の家具や魔導具、生活用品を2日掛けて回収。

長い年月、水没してしまっていた為、まともに使えそうな物は無かったがそれでも一応回収は行った。





2月5日



中枢っぽい部分への突入を決行しようとして、シルバーウィングから報告が入る。

なんでも、今までよりも魔力の吸収が僅かに弱まっているというのだ。


長時間、この場に留まっていたシルバーウィングだから気付けたのだろう。


中枢に入って、その理由はなんとなく分かった。




突入をしたのはオレとキスラエラ、クリシュナ、セリンとクロクジラとシロクラゲの水抜きの時の面子と、最高幹部はシエラールル、リンドレージェ、ダルグニヤン。

幹部は工場長と副工場長が2人。以上12人だ。



中枢部分は予想通り冷凍睡眠装置だった。


縦横1m、高さ2mの箱の中に入った“悪魔種族”達がズラリと並んでいる。

前にも横にも上にもだ。


直方体の箱に入っているので延々と棺桶が並んでいるかの様だ。


床には魚の死骸があちこちにある。

水の量から予想はしていたが、この中も水没していたのだろう。



そして、所々にある円柱から伸びたチューブが這い回って浸水による冷凍睡眠装置の劣化を修理し続けている。


腐食部分を切り取って、新たに金属板を生み出して補修したり、内部にチューブを入れて直接魔力供給を行いながら魔導具の修理をしていたり…………





オレはこの東大陸の宇宙船の魔力吸収機関が故障して魔力を吸収し続けているのだと思っていたが、この冷凍睡眠装置の維持と修理に魔力が必要で吸収していた様だ。


恐らく此処の修理の優先順位が高い為、周囲の修理では無く冷凍睡眠装置の修理を行う。

しかし、浸水を防がなければ永久に修理と劣化の繰り返しだ。


その結果、消費した魔力の吸収を行い続けていたのだろう。

オレの魔力電池の様な数万年単位での貯蔵が有るかと思っていたのに残念だ。





一応警戒しながら中心に向かう。

中心には白い直径100m程の塔が床から天井迄伸びている。


入り口の様な部分について、オレとキスラエラ、工場長達で調べてみたが鍵となりそうな部分も取っ手も無い…………


しかし、周囲を調べ始めると不意に扉が開いた!!


もしかして、と思って、セリンに1人で扉に近付いて貰うと、やっぱり開いた!!



「“天使種族”は、ホントに種族至上主義だったんだなぁ〜……」


「申し訳ありません、ご主人様…………」


「セリンが謝る必要は無いさ。

言ったろ?先祖は先祖だよ。セリンは何も悪くない」


「…………はい……」


「セリン、どうしても気になるなら此処の“天使種族”も、元居た星の“天使種族”も皆殺しにして来ようか?」


「!!え!!」


「セリンを悲しませるヤツは存在するだけで、“悪”だ」


「いえ!!

私が勝手に気にしているだけで、彼らはまだ何もしていませんし!!」


「だろ?

セリンも同じさ、セリンは何もして無いんだから関係ないさ」


「!!そうですね。

ご主人様、お気を遣わせてしまって申し訳ありません」


「妻の気持ちを気に掛けるのは普通の事だ。謝る必要はないさ」


「有難う御座います」



セリンの表情が吹っ切れた様だったので中に入ってみる。


ここも浸水していた様で冷凍睡眠装置の修理が行われていた。

恐らく外が“悪魔種族”中が“天使種族”なのだろう。

若干、箱も豪華っぽい。



そして、ズラリと並んではいるが上には積み重なっておらず、天井も3mくらいで中央にはエレベーターの魔導具らしき物がある。


この魔導具もセリンが近付くと開いたので、そのまま中へ。

予想通りエレベーターの魔導具で一から九十九までのボタンが並んでいた。



漢数字で書かれている…………


この世界では古代文字の一部だ。

しかし、他の星から来たはずの“天使種族”が使っているのは何故だ?


オレはてっきり、ベリアルはこの世界の汎用語を覚えて喋っていたのだと思っていたが、そもそも、“天使種族”達の居た星でも言葉が共通なのか?



有り得るのか…………。


オレの推測通り元の世界での1年がこちらの世界で2,000年なら50年前は10万年前だ。

他の星にも転生者や転移者が居て、言葉を広めれば古代語は共通していてもおかしくは無い。





先ずは最上階へ行ってみる事にした。

目的地はコントロールフロアだ。

最上階が1番可能性が高いだろう。


エレベーターの魔導具も問題無く動き最上階99階に出る。



予想通りコントロールフロアだった。

最初に出入り口がこのエレベーターのみしか無いか確認を行った。


結果、別のエレベーターも非常階段も無く、このエレベーターの魔導具での出入りしか出来ない様だ。

まあ、“天使種族”も“悪魔種族”も飛べるんだから非常階段は必要無いのだろうが。



その後、コントロールフロア内に並ぶ魔導具類がどう言った物かを調べて周る。


クリシュナ、セリン、クロクジラは周囲とエレベーターの警戒だ。

只の偏見だが、この3人はうっかり変なスイッチを作動させてしまいそうなキャラだからだ。



色々と調べて、魔導具の凄さを実感した。


ぶっちゃけ、オレでも作れそうな宇宙船だった。

宇宙船と言えば、科学技術の結晶の様なイメージだったが途轍も無く単純だった。



移動は、前、後、左、右、上、下、停止のボタンがそれぞれ有り、押すだけ。

それによって魔力で推力を発生させて進む。



現在、発生している魔力吸収も同じだった。

方向を決めて吸収するだけ。



生命維持は、空気も水も魔力で作っている。

それも、たった1,000ヶ所程しか無かった。



この宇宙船は約1,800万k㎥もの大きさが有るにも関わらずたったそれだけ。

更に、ONと OFFのスイッチが有るだけだ。




正直言って元の世界の科学者の方々からは宇宙で生きる事を舐めていると言われても仕方ないレベルの単純さだ。

残りは外の監視機能と出入り口の開閉機能のみ。

この星迄の航海記録や移動ログなども無く、全体の管理や維持を行う様なシステムも無い。



『全てスイッチのみの手動操作とは…………

よくこんな程度の乗り物で宇宙に出ようと思ったな…………


でも、この程度でも宇宙を何千年も旅して来て、この星迄辿り付いたって事だもんな。

やっぱり、魔法やスキルは凄まじいな。


しかし、このコントロールフロアですら碌な情報が無い、一応、全階を確認して必要なら何人か起こすか…………』






その後、全階を見て周ったが“天使種族”と“悪魔種族”の元の星の情報は得られなかった。


しかし、大きな発見もあった。


“天使種族”が洗脳に使っていた魔導具の製造ラインが治っていたのだ。

そのおかげで、洗脳用魔導具を入手出来た。これで対策出来るだろう。



そして、この宇宙船の魔力を貯蓄する魔導具だ。


この魔導具は素材が素晴らしかった。

オレの魔力電池に使っているルナストーンを遥かに超える魔力貯蔵量の“天の雫”という鉱石が使われていたのだ。


“天使種族”達の星は、もしかしたら、この星よりも遥かに魔力の強い星かもしれない。

この“天の雫”の膨大な魔力貯蔵量にモノを言わせて、この適当な宇宙船でも宇宙での航海が出来たのだろう。




一旦、シルバーウィングに戻って、明日からは“天使種族”の歌対策を完成させてから、“悪魔種族”を起こして、情報収集を行い、それでも情報不足なら“天使種族”を起こすという流れにした。






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