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第16章 東大陸③

東大陸③





▪️▪️▪️▪️






ハルマール王国での問題を解決した翌日、オレは諦めて、みんなの装備作製に時間延長100倍を使う事にした。



時間延長100倍の工房を新たに我が家に追加して、宿泊や休憩もそこで出来る様に準備をしてから専用装備を作って行った。



しかし、時間延長100倍でもオレはもう困らない。


何故なら、第1メイド部隊の人数も増えて“色々なお世話”をしてくれる人員がちゃんと交代交代でやって来てくれるからだ。


結果、セリンとの3日間の前に、きちんと専用装備の支給を行い切り、ついでにメテオストーンの分解迄終了した。




このメテオストーンからは、真逆の効果を持つ2つの鉱物を発見した。


1つは受けたエネルギーを増幅するというモノだ。

これは“太陽石”と名付けた。


もう1つは受けたエネルギーを鎮静化するというモノだ。

こちらは“太陰石”と名付けた。



どちらも現状はスキルの付与で賄えているモノだが、今後何かに使える事があるかもしれないので、一応、“スキル 創造”である程度の量を作って第3部隊に研究材料として渡した。



そして、例によって、ウェディングドレスのセリンを迎えて、今日から3日間のセリンとの新婚さんタイムだ。






▪️▪️▪️▪️





「おはよう」


「おはよう御座います、ご主人様」


「…………今日は訓練か狩りかな?」


「はい!!

本日は是非訓練をして頂きたく。明日は実践をお願い致します」


セリンは昨日作ってあげた専用装備を既に身に付けて待っていた…………

喜んでくれるのは嬉しいのだが、新婚生活ってこういうモノだろうか…………





セリンの新武器は大きさ変更の出来る圧縮オリハルコンの双剣だ。


以前の最初から大きい剣よりも、持ち運びがしやすい様に普段は通常サイズの剣にしてある。


それを魔力を込めて以前同様の3mサイズとして起動すると、3mサイズから30mサイズ迄、無段階で長さ変更が出来る。


キチンとしたイメージと魔力操作が出来ないと左右差が出たり長さの感覚が狂ったりしてしまうが、セリンは魔法に関しても高い適正があり、微妙な力加減も苦手ではなかったので大きさの段階をあえて設けなかった。



鎧はラムとお揃い色違いのエメラルドグリーンのハイロースカートのドレスアーマーだ。

ちなみ、セレンもお揃い色違いで、こちらはアイスグリーンだ。



見た目は同じだが以前の失敗を踏まえて、2人の鎧は攻撃を受けると破損して行き、破損した箇所は結界が補って防御力は損なわない仕組みだ。


時間が経つと“スキル 自動修復”で元に戻って綺麗になる。



セリンは魔法も得意なので“スキル 空間把握”と“スキル 立体視点”の腕輪も準備した。


装備を整えた事で、おそらく“原初のモノ”を除けば現在最強はセリンだ。


殴り合いならブランド、魔法戦ならキスラエラ、殺すだけならセバスに軍配が上がるだろうが、セリンはオールラウンダーと言える。



そんな、セリンを更に強くする特訓が始まった。



特に指導したのは魔法の使い方だ。


セリンは一般の魔法使いと同じく自身の周りに魔法を展開して相手に放つ動きだったので、任意の場所に出現させる訓練を行った。


これが出来れば威力の高い双大剣が更に活きる。


相手の逃げ場を塞ぎながら魔法展開すれば、攻撃を“防ぐ”か“転移系で逃げる”選択しか出来なくなるからだ。




実際にやって見せた時には、斬り掛かりながら“ウィンドアロー”でセリンの周囲を囲み、目の前に“ストーン”を出して目隠しをして、セリンがさっきまで立っていた所に“グランドディグ”で落とし穴を作ったところ、セリンは落とし穴に落ちた。


周囲を囲んで逃げ場を塞いで“スペースジャンプ”封じの目隠し、“リターン”封じの落とし穴だ。



どの魔法も初歩中の初歩の魔法で、簡単にしてやられた事に驚いてセリンはとてもやる気を出した。




身に付けるのは、集中力と冷静な判断力だ。

なので、オレは敵が集中力を乱す様な攻撃をして来てもセリンが対応出来る様に特訓を行った。


具体的には敵が突然スカートを捲って来た場合や後ろから胸を揉んで来た場合や不意にキスをして来た場合等、予想外の事態でも集中力を乱さない様に訓練をして上げた。



その甲斐あってセリンは戦闘中でも“スキル 空間把握”と“スキル 立体視点”を駆使して魔法を自在に展開出来る様になったのだった…………




セリンの作ってくれた夕食を食べながら、


「セリン、今日の訓練はどうだった?」


「……その……恥ずかしかったです…………」


「えぇっと……そっちじゃなくて、魔法の使い方の方だ」


「!!は、はい!!ご主人様の戦闘の多彩さに驚きました!!」


「うぅ〜…ん……そうか…………。

セリンはさ、今まで周りに自分よりも強いヤツが居なかっただろ?

なんなら、本気で戦える相手も居なかった」


「はい、その通りです」


「だから、ついつい手加減してても力押しでどうにでもなる感覚が染み付いてしまっているんだと思う。

だから、明日はセリンじゃ勝てないくらいの相手とだけ戦闘する様にしよう」


「それはSSランクのみと戦うという事ですか?」


「いいや、“原初のモノ”と戦おう」


「!!“原初のモノ”の方々とですか?」


「ああ、ウチの連中じゃなくてオレの事を知らないヤツに喧嘩を売りに行こう」


「…………その……それは、クリシュナさんが怒られるのでは?」


「…………そうかもしれないな…………。


でも、やっぱり、命の危険の有る環境でないとダメだと思うんだよなぁ〜……。


良し、どいつなら狩っても良いかクリシュナに聞いてみよう!!」









「ダメです!!」


「クリシュナ、必ず殺す訳じゃないんだぞ?

もしかしたら殺してしまうかもしれないだけだ。


だから、もし、死んでしまってもしょうがないヤツくらいはいるだろ?」


「いません!!みんな、良い子です!!」


「なら仕方ない…………。


気は進まないが山羊とトナカイを狩りまくって怒って出て来る様に仕向けよう。

そうすれば、正当防衛だからクリシュナも文句は言わないだろう…………」


「言います、文句!!


レンジさんがやったら、全然、正当防衛じゃ無いからね!!

完全に過剰防衛で、過失致死じゃなくて殺意有り有りでしょ!!」


「うぅ〜……ん…………」




オレが何か良い言い訳が無いか考えているとクロリュウ達が良い情報をくれた。


「ボス。だったら、神鳥の野郎を殺っちゃえば良いっスよ。

アイツなら“原初のモノ”じゃ無いっスからクリシュナも文句言わないっス」


「神鳥?ソイツは、“原初のモノ”じゃ無いSSSランクの魔獣なのか?」


「そおっス。前にナラシンハ達と一緒に他の“原初のモノ”を探してた時に久しぶりに見たっス。

ハルマールの王都の西の方にいたっスよ」


「そうか、それなら問題無さそうだな」


「うぅ〜……ん……

まあ、神鳥なら…………」


「お?!神鳥ならクリシュナもOKなんだな?」


「まあ、他の“原初のモノ”よりは…………」


「主よ、それならば丁度良さそうなドラゴンゾンビもいた。場所はグラール帝国だ」


「ああ、アイツもボスに会う前の自分達くらいはあったっスね。

でも、アイツはグラール帝国に飼われてるっぽかったっスけどね」


「?グラール帝国がSSSランクのドラゴンゾンビを飼ってるのか?

なんか、嫌な予感しかしないな…………」


「でも、今の自分達なら楽勝っスよ?」


「1対1ならじゃ、ないのか?

もしも、複数いたら?もしも、軍と一緒に攻めて来たら?」


「ゔ!!それは、ちょっと厳しいかもしれないっス…………」


「でも、よく見つけたな。

ウチの諜報でもそんな情報入って無かったのに」


「自分達は強そうな気配を空から探してたっス。

そのドラゴンゾンビがいたのは谷間で、近くには何にも無かったっスから」


「飼ってそうなヤツらは近くに居なかったのか?」

「見張り小屋みたいなのに何人かはヒトがいたっスよ」


「そうか、分かった。

じゃあ、明日は神鳥とドラゴンゾンビを狩って来よう」


シロネコとクロリュウから詳しい場所を聞いて部屋に戻るとセリンに明日の予定を伝えて、そのまま、準備万端だったセリンからの感謝の気持ちを頂戴した…………






▪️▪️▪️▪️






「八咫烏か…………」



王都ハルマールから西北西に1,000km程の森に囲まれた山の中腹辺りに真っ黒い塊が有り、近づくとソイツがいた。


クロリュウから聞いた“神鳥”だ。

遠くから見て『神鳥ってカラスかよ……』と思って近づくと、そのカラスには足が3本有った。


八咫烏なら確かに神鳥だろう。


しかし、“原初のモノ”でも無いカラスが、どうやったらSSSランク迄成長する事が出来たのか、ちょっと興味がある。



とは云え、今日は細心の注意が必要だ。

いつもなら、ダメージを受けない様にフォローをするが今日は違う。


セリンに命懸けの戦闘をさせる事に意味がある為、セリンが死なない様に、しかし、ギリギリ迄はダメージも自身で対処させなければならない。



「セリン、オレは基本手を出さない。

オレが止める迄自分の力で何とかするんだ」


「はい、ご主人様。

では、行って参ります!!」




八咫烏はセリンが近づいても何もしない、完全に見下している様だ。


しかし、セリンが双剣を最大迄巨大化して振り抜こうとした瞬間、八咫烏は上空に転移で移動して翼を広げる。


翼を広げた大きさはシロネコと同じく、ショッピングモールくらいはあるだろう。

その翼が羽ばたく、並の“風属性魔法”よりも強力な突風がセリンを襲う!!


セリンは自身の周りにも“風属性魔法”を展開して、耐えようとするがそれは悪手だ。


八咫烏は、3本の足の左右に“火属性魔法”と“水属性魔法”で炎と水の玉を作り出す。


『もしかして、あの伝説の“対消滅魔法”を使うのか?!

だから、SSSランク迄上り詰めたのか?!』


と、一瞬考えたが冷静に水蒸気爆発の危険性に気付く。


やっぱり水蒸気爆発が正解の様で、セリンを囲む様に“ストーンウォール”で壁が作られると同時に炎と水の玉が放たれた!!


念の為、セリンの頭部だけはオレが結界で守る。

ドゴンッ!!と、低い音と共にキノコ雲が上がる。


セリンは双剣を盾代わりに守ろうとしていた様だが密閉空間での爆発は全方向から来る。

セリンの翼や背中はズタボロだ。


八咫烏に殺意が湧いたがここは我慢だ!!

この苦戦はセリンにとって必ず意味がある。


“スキル 超速再生”で一瞬で元に戻ったセリンは鎧の仕様の為、半裸の状態で再度八咫烏に向かって行く。


「え!!」


八咫烏が初めて声を出した。

ちゃんと喋れるっぽい。


セリンはそのまま斬り掛かりながら昨日オレがやった“ウィンドアロー”で八咫烏の巨体の全周囲を囲んで、“ストーン”で目隠しを行なって八咫烏に迫る!!


八咫烏は自身の“ストーンウォール”で囲まれた元々居た場所に“リターン”を行った。


もちろん、そこにはセリンの罠が有る。

“ストーンウォール”の囲いの中を“雷属性魔法”が縦横無尽に駆け巡った!!


そこに八咫烏の周囲にあった“ウィンドアロー”が大量に襲い掛かる!!


「カァーー!!」


全てを吹き飛ばす程のブレスが上空に放たれる。


しかし、セリンはもう其処には居ない。

八咫烏が上空に向けていた首に双剣を叩き込んでいた。


そのまま首に連撃を加えて、一旦離脱する。

もがき苦しむ八咫烏の眉間に双剣を突き立て、少し刺さった所でオレがセリンの剣を持って止めた…………





「セリン、どうだ?

何か掴めたんじゃないか?」


「はい、最初の爆発の時にご主人様が守ってくださらなかったら、そのまま死んでいたと思います。

ご主人様の仰られる『もしも、自分よりも強い者が現れたら』と、言うのが良く分かりました。


攻める、避ける、迫る、引く、全ての自身の行動後の相手の動きを予測して、行動する必要性が有ると言う事ですね」


「そうだな、その上で更に予想外な事をされた場合への対処迄、出来れば一応合格だ。

まあ、今のが分かったならセリンは強敵との戦闘経験が積めれば一気に成長出来ると思うぞ」


「はい!!頑張ります!!」


そんな話しをしつつ、八咫烏を回復してやる。

セリンに殺させなかったのは聞きたい事があったからだ。




「でだ、神鳥。

お前、もしかして、転生者なのか?」


「!!どうしてそれを!!

ステータスにも載ってないのに!!」


「やっぱりな。

水蒸気爆発を使った事とセリンの格好に反応したみたいだからな」


オレの言葉でセリンは自分の格好にやっと気付いてサッと隠す。

背中がボロボロになった後に激しく動いて色々と見えてしまっていたのだ。



「ちなみに何でステータスに載ってないんだ?」


「オレは厳密には転生者じゃない。


転生して、その後死んで、もう一度記憶が残ってたんだ。

だから、転生前と転生後の両方の記憶が有る。


でも、今は前世の記憶が有るだけだから転生者にならなかったんだと思う」


「転生したのと、八咫烏になったのはいつ頃なんだ?」


「転生したのは、聖樹暦で2,000年くらいだ。


八咫烏になったのは、それから少ししてからだ。

転生した後は子供の頃に死んだからな」


「ふ〜…ん。元の世界は地球で日本か?」


「ああ、お前もか?」


「ああ、オレは転移者だけどな。

日本で死んだのは何年だ?」


「たしか、1,998年になったばかりの時だ。

それがどうかしたのか?」


「そうか……。

いや、向こうの世界で1年がこっちで大体2,000年くらいっぽいから確認でな」


「そうなのか?

だが、それが分かって何になるんだ?」


「この世界は魔法がある分、科学が進んでないだろ?


だが、お前もさっきの水蒸気爆発みたいに、科学の知識があったからSSSランクの神鳥に迄なったんじゃないのか?」


「まあ、そうだな」


「なら、20万年後には向こうで100年進んだ科学知識を持ったヤツがこっちに来るかもしれない。

ソイツが良いヤツならいいが嫌なヤツだったら困るだろ?」


「まあ、確かにそうだな…………。


気の長い話しだな。

オレはこの1万8,000年で生きる事に飽きてしまったけどな…………」


「そうか。なら、最後にオレの可愛い妻の経験値になってくれ」


「!!なんか、そう言われるとイヤだな!!

その娘になら別に殺されても良いかと思ったけど、おまえに協力したくないな」


「なら、丁度いい。

全力で抵抗してくれた方がオレの可愛い妻にとっても良い経験になる」


「…………おまえ、性格悪いって言われるだろ…………」


「いいや。妻達からも配下や部下達からも、オレより性格の良い人物は居ないって言われるぞ」


「!!おまえ、今、妻達って言ったか?妻達って!!

そんな、天使みたいに可愛い奥さんが居て他にもいやがるのか!!」


「ああ、天使の様に可愛いこのセリンの他にも妻だけで7人いる」


「…………おまえ、ワザとだろ。ワザと今、妻だけでって言っただろ。

愛人もいるよ、アピールをしただろ!!」


「ああ、妻達も他の者達もオレの自慢だからな」


「〜〜〜!!オレはずっと、1人だってのに!!

ふざけんなよ!!このハーレム野郎め!!」


「そうなのか?この世界は比較的、強いヤツがモテるだろ?

“原初のモノ”達と違って、お前は段々と強くなったんだろうからモテたんじゃないのか?」


「!!ああ!!モテたよ!!

モテモテだったよ!!カラスにな!!」


「ダメなのか?」


「ダメに決まってんだろ!!おまえはカラスにモテて嬉しいか?

カラスにフリフリ踊られて興奮するか?!」


「だって、おまえもカラスだろ?

だったら、カラスの求愛行動に興奮しないお前が間違ってると思うぞ?


オレは一夫一妻制の世界からこの一夫多妻制の世界に適応して、多くの可愛い妻達に囲まれた生活をしている。


おまえも“ヒト”からカラスになったんだから、ちゃんと適応して多くの可愛いカラスに囲まれた生活を送れば良かったじゃないか」


「一緒にすんな〜〜!!やっぱり、おまえを殺す!!」


「無理だな」


キーンッ


オレの納刀の音と共に、八咫烏は尻餅を付いた。

足と翼を失って…………



「!!!!」


「お前程度じゃ、オレを殺すのは無理だ。

大人しく、オレの可愛い妻のセリンの経験値になるんだな」


「う、う、うわぁ〜〜〜ん!!理不尽だぁ〜〜!!


何で、オレが人間の時には簡単に殺されるくらい弱くって、魔獣になってやっと強くなれたのに、コイツは人間のままで強いんだよぉ〜〜!!


オレだって、人間のまま強くなって可愛い彼女や奥さんが欲しかったよぉ〜〜!!」


八咫烏は泣き出してしまった…………

終いには、とうとう「カァ〜〜。カァ〜〜。」と、泣くだけになってしまった……


まあ、カラスが泣くのはカラスの勝手だと言うし…………





とりあえず、翼と足を治してからセリンとイチャイチャしながら泣き止むのを待った。


もしかしたら、そのせいでなかなか泣き止まなかったのかもしれないが、オレ達は新婚なのだ。

何もせずに、ただただ待つ事など出来る筈もない。


泣き止んだ八咫烏を今度はセリンが無傷で、キッチリと止めを刺したのだった…………






▪️▪️▪️▪️





グラール帝国南西部の深い渓谷の底に、ソイツは居た。


シロネコとクロリュウからはドラゴンゾンビと聞いていたので、何となく毒っぽいドロドロのドラゴンを想像していたが完全に骨のドラゴンだった……元は竜の方の様だ…………



これはもう、ボーンドラゴンかスケルトンドラゴンなのでは?と思ったものの、鑑定結果はドラゴンゾンビで合っていた。



腐った肉は時間と共に無くなったのかな?と、一応の納得をして、近くにあった建物を中の人ごと“ディファレントホーム”に放り込む。


セリンとの新婚タイムから仕事タイムに変わってから彼らには色々と教えて貰おうと思う。




ドラゴンゾンビは骨なので魔核が丸見えなのだが、どういう理屈なのか胸骨と脊柱の間で浮かんでいる。


そして、魔物のもう一つの不思議、


「なんだ、おまえらは。見掛けんヤツだな…………」


そう、喋れる……

脳も無く、口も骨で舌も無いのに…………



「お前と戦いに来たんだ。結構強そうだからな」


「ヒトが2人程度でか?」


「いいや、このセリン1人でだ。オレは、一応、見学予定だよ」


「は、は、は、まあ、動けんオレなら時間を掛ければ殺せるかもな。頑張ってみると良い」


「その前に少し聞きたいんだが、お前はずっとここに居るのか?」


「?どう言う意味だ?昔から此処を根城にしているか、と言う意味なら否だ。

ここから、動けずにここに居るのかと言う意味なら是だ」


「そうか、なら捕まってここに来たのか?」


「そうだ、元々はもっと南の地に居た。

まあ、此処に来てからも2,000程だから此処に捕まってからも随分経つがな」


「…………捕まえたのは勇者か?」


「いや、まあ、勇者達ではあったが、オレを捕まえたのは勇者と一緒にいた賢者だ」


「そうなのか…………

因みに此処で2,000年も何をしてるんだ?」


「最初は此処の“原初のモノ”の方を殺させる為に連れて来られたが、その後は、まあ、見ての通り飼い殺しだな。

特に何もしていない」


「あそこにあった小屋のヤツらは何なんだ?」


「オレを封印しておく為にただ居るだけのヤツらだな。

アイツらも基本ずっと何もしていない」


「…………もし、ここから自由になれたらどうする?」


「?そうだな…………。


いや、自由になったとしても結局は此処か何処かの龍脈に居続けるしかないだろう。

そもそも、捕まる前から殆ど龍脈から離れられなかったからな」


「そうか、お前も“原初のモノ”と同じか…………」


「ああ、元々オレは“原初のモノ”だった様だからな」


「そうなのか?記憶が有るのか?それとも、予想か?」


「予想だ。オレは気付いた時には今の強さで龍脈に住んでいた。

おそらく、その龍脈に居た“原初のモノ”が死んでオレになったのだろう」


「なるほどな……分かった。

じゃあ、今から封印と、契約を解くから…………

セリン、お待たせ。じゃあオレは離れて見てるから」


「はい!!」


「…………どういうつもりだ?」


「言ったろ?おまえと戦いに来たって。

セリンに経験を積ませる為にな」


「…………攻撃しても良いのか?

おまえの親しい者ではないのか?」


「ああ、本気でやって良いぞ、殺すつもりでな。

でないと成長にならないからな」


「ふむ…………

舐められたモノだぁ〜〜!!」


ドラゴンゾンビが叫ぶと同時にセリンの居た場所に黒い球体が現れて、球体の触れた地面がごっそり無くなった。


セリンはちゃんと上空に避けていたが、そこにも黒い球体が現れる。



ドラゴンゾンビが顔を向けているところをみると、恐らくブレスなのだろう。

空間を抉り取るブレスの様だ。


セリンがブレスを躱しながら迫る。


ブレスの危険性から思わず転移を選択したくなるだろうが、魔力の発生箇所を感知しながら進むのは良い判断だ。



胸の魔核を目指して進んでいるが、恐らくフェイクだろう。


セリンは自身の周囲に10本の“ウィンドランス”を発生させて、周囲に展開したまま進む。

これもおそらくフェイクだ。


ドラゴンゾンビの口が届く距離迄迫って、ドラゴンゾンビがセリンに噛みつこうとした瞬間、ガクンッと傾いた。


ドラゴンゾンビの左後ろ足が穴に嵌っている。

この、“グランドディグ”が狙いだった様だ。


姿勢が崩れた瞬間にセリンの“ウィンドランス”が魔核に向かって飛んで行く。


ドラゴンゾンビは前足で魔核を守ろうとし、セリンは双剣を巨大化して下顎の骨を叩き斬った!!


驚くドラゴンゾンビの鎖骨の横を通って、魔核に双剣を振り下ろす!!


魔核に半分程食い込んだところで、オレが剣を掴んで止めた。


「セリン、今のは大分良かった。

格上との戦いが分かって来たな」


「有難う御座います、ご主人様!!」


褒められて嬉しかったのか自分でも手応えが有ったのか、セリンはとても可愛らしく返事をした。





「オレが負けたのか…………。


オレの方が強いと思ったんだがなぁ〜……鈍っていたかな。

で、何で止めたんだ?」


「お前をウチのペットにしようかと思ってな。

意思の疎通が出来るゾンビ系の魔物は初めて会ったからさ」


「おいおい、流石にペットは無いだろう。

負けたら従うって言ったなら、まだしも…………」


「じゃあ、オレとやろう。

どうせ、魔操術はオレが使うから、オレが屈服させなきゃならないしな。


オレが勝ったらウチのペットになる。


おまえが勝ったら、このままオレに封印を解いて貰ったお礼を言わずに好きにして良いぞ」


「…………おまえの都合で封印は解いていた様に思うが…………

まあいい、今度は気は抜かん!!」


ドラゴンゾンビはセリンの時と同じ様に空間を抉り取るブレスをオレに放つ、オレは少し下がって避ける。


ブレスが消えた時にはドラゴンゾンビはオレの上空に転移をしていた。



オレは白刃と黒刃を取り出して、抜くと刀を返す。


ドラゴンゾンビがさっき迄よりも広範囲のブレスを放とうとしていたのでセリンを結界で守りつつ、ブレスを放つ前にジャンプして、刀の峰で滅多撃ちにして、骨という骨を全て粉々にして、魔核をキャッチして、着地する。


魔核をポイッと投げて、ドラゴンゾンビを“神聖属性魔法”で元に戻してやる。


「今、自分がどうなったか分かるか?」


「…………ああ、粉々にされて、魔核だけになっていた…………。

何があったんだ?」


「これで、叩きまくって粉々にした」


「…………全く見えなかった……感じる事も出来なかった…………」


「オレの勝ちでいいよな?」


「ああ、完敗だ。おまえに従おう。


しかし、オレは龍脈以外に長時間居る事は難しいぞ。

延々と魔獣やヒトを狩り続けるなら別だが…………」


「それについては問題ない。

じゃあ、契約するから」






ドラゴンゾンビはホネリュウと名付けて、いつもの首輪で小さくさせた。

ホネリュウは魔核が剥き出しなので帰ったらフルプレートアーマーを作る事にした。



小さくなれた事にとても喜んだホネリュウはオレをボスと呼ぶ様になった。

竜は主人をボスと呼ぶのが普通なのだろうか…………


ホネリュウには明日まではオレの“ディファレントスペース”に居て貰って、みんなには明後日、紹介する事にして、セリンとの新婚タイムに戻る。


この時は未だ配下達への装備の支給が終わった事で、自分には余裕があると思っていた…………





SSSランク狩りが思いの外早く終わったので我が家に帰って、遊び半分で大剣用の“クルス流 双剣術2”を作って、セリンと色々考えて、試して過ごした。


その際についでに白刃と黒刃にも大きさを変えられる機能を追加した。



3日目は例によって、のんびり過ごして、夕食はオレが作った。

愛情たっぷりの料理をセリンもとても喜んでくれた。







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