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第16章 東大陸①

東大陸①





▪️▪️▪️▪️





1月4日


今日から3日間はルナルーレ達の時と同じく、クリシュナと2人っきりで過ごす。

ちなみに、2日と3日は家族全員でサーラールの街、王都ビルスレイアの新年の祭りを周った。


今日からはクリシュナと3日間すごし、3日働いて、セレンと3日間すごし、また3日働いて、セリンと3日間すごし、また3日働いて、レンと3日間過ごし、喧嘩祭り4日間を経て、東大陸の調査の日程だ。






オレが起きると、クリシュナはまだ眠っていた。


特に何をするでも無く眠っているクリシュナを眺める。


こういう時間も悪くない。

オレには無限の時間があると言っても過言では無いのに、なんだかんだで忙しい。

こうして、のんびりと愛する妻の寝顔を眺める余裕も大切だ。


起こさない様に何もせず眺めていたが、暫くしてクリシュナも目を覚ます。


「おはよう」


「…………おはよう……何してたの?」


「可愛い妻の寝顔を眺めてた」


「?!妻!!そうか、私、結婚したもんね!!夢じゃないもんね!!」


「ああ、そうだな。クリシュナ クルスさん」


「!!クリシュナ クルス……えへへ……」


ニマニマしているクリシュナを優しく撫でて抱き寄せてから、


「奥さん、今日のご予定は?」


「お、奥さん!!えへへ……

あ!!えっと、今日は街にデートに行きたいの!!」





ギルナーレ王国、グズンの街


西中央大陸の最南端に位置し、他国との貿易で栄えるギルナーレ王国第2の都市だ。


クリシュナのお目当ては、世界各国から集まるこの街のファッションとスイーツらしい。


クルス商会の転移の魔導具を使えば何時でも来られただろうが、今日の日の為に情報だけ聞いて来るのは我慢していたらしい。



先ずは、モーニングを食べ、洋服にアクセサリー、洋服にアクセサリー、ランチを食べて、デザートを食べ、洋服、洋服、アクセサリー、おやつを食べて、下着、下着、そして、洋服、洋服、アクセサリーで、ディナーを食べてデザートを食べて帰った。



下着屋にはさすがに入らなかったが、洋服やアクセサリーは一緒に見て感想を言ったり、クリシュナに似合いそうな物を進めてみたりしながら、もちろん、片っ端から買ってあげた。




その日の夜は、やっぱりウェディングドレスだった。

妻達の中でルールが決まっているのかもしれない。


もちろん、しっかり堪能させて頂いた…………





次の日は、訓練希望だった。


クリシュナの武器は大鎌だ。

クルス流の中には鎌術は無いので、一緒に作って欲しいらしい。


先ずは、超圧縮黒オリハルコンでオレ用の大鎌を作って、久々のスキルリング“スキル 鎌術LV1”で鎌術を覚えて、“スキル スキルレベル操作”でレベル10にして、“スキル クルス流鎌術1”を生み出して、さあ、製作開始だ!!



2人で元の世界のマンガやアニメの知識からパクったり、キチンと合理的な動きを考えたりしながら色々な技を作って行った。



3日目は、やっぱり2人でゆっくり過ごして、昼食はクリシュナの手作りだった。

そこで、オレは気付いた!!



「クリシュナ、ラムから聞いたのか?」


「ヘヘッ……バレた?

うん、ラムさんから聞いて、空腹と愛情の2段調味料にしてみましたぁ〜!!」


「そうか、なら夕食はオレの担当だな?」


「期待してるわ、あ、な、た!!

でも、先ずは私の料理を食べて!!」



クリシュナの料理は、非常に美味しかった。

2万年も生きているのだ、遊び半分で料理をしていてもちゃんとレベル10になっていて、昨日の食事無しもクリシュナの愛情もちゃんと良く効いていた。



なので、夕食にはオレの秘密兵器を投入してあげた。


「お、お、お、お寿司だぁ〜〜〜!!」


「ふふふっ………クリシュナが1番喜ぶだろうと思って、誰にも披露せずに隠しておいた秘密兵器だ!!」


「!!私の為に?!」


「ああ、まあ、食べてみてくれ」


「んん!!美味しい!!

今まで食べた、どんな料理よりも美味しい!!」


「喜んでくれて、嬉しいよ。

結構大変だったんだ。


寿司に合う米を探して、すし酢を開発して、わさびを探して、“スキル 寿司職人”を作って、やっと美味い寿司が握れる様になったんだ。


“スキル 料理”じゃあ、シャリとネタは準備出来ても握りが上手くいかなくてさ」


「そうなの?

これからは、お寿司が食べられるのかと思ったのに…………」


「う〜〜ん……

でも、オレやクリシュナ、あと、レン達には好評でも、こっちの世界のメンバーには抵抗が無いかなぁ〜?」


「それは大丈夫だと思うよ。すっごく美味しいし!!

前の世界でも、外国人の人に喜ばれたりしてたじゃない」


「確かにな……

じゃあ、今度、メイド達にも“スキル 寿司職人”を覚えさせてみようか」


「その前に、みんなにも一度レンジさんのお寿司を食べて貰ったら良いよ。

そしたら、きっと人気メニューになるから」


「そうだな……

じゃあ、もう1つの秘密兵器と一緒に、みんなに振る舞ってみようか」


「…………天ぷら?」


「いいや、こっちはレン用だから、まだ秘密だ」


「レンさん用…………

ごめんなさい、分かっちゃった…………」


「…………ああ、きっと正解だ…………」


その後、2人でたらふく寿司を食って、2人で大満足だった。





▪️▪️▪️▪️





仕事日のスタートは、先ず報告を受ける事から始まった。


クルス商会の状況、配下達のレベルアップ状況、東大陸の調査の状況報告と、世界各国の近況についての報告を受ける。



クルス商会については、新規出店のエルフの里、ダークエルフの里、竜人の里、龍人の里、全ての店舗で好調との事だった。


本来、順番的にはハルマール王国の次は北上してグラール帝国に進出するつもりだったが、優遇政策を受けている4ヶ国から魔導具を輸出する時間が必要だった為、先にクリシュナの顔の効く4つの里に出店を行ったのだ。



配下達のレベルアップも順調で、メイド部隊への配属者も増えたとの事。



東大陸の調査は、相変わらず“ヒト”は居らず、集落跡等での発見が無いかを調査中だ。



世界情勢は特に大きな変化は無し。

キルス王国もまだ内乱が収まりそうに無い様だ。

しかし、内乱自体は兵士のみでの戦闘で、街や住民を巻き込む様な戦闘はしていないとの事。


その辺りは、獣人種族の特性だろう。

戦うのは戦士のみで、街への襲撃や一般人への被害を出したりは殆どしない様だ。

戦士が負けたら潔く服従するのだろう。





一通り報告を聞いてから、工房へ。


今日も含めて、新しい妻達と過ごす合間の仕事は決まっている。

レベル1万を超えた者と、レベル10万を超えた者、レベル100万を超えた者の装備の拡充を行う予定だ。



今回導入した勤務時間中のレベルアップと、オレの直接指導で全員大幅にレベルアップしているためだ。


特にレベル1万超えは人数も多く、最初の専用装備になる為、1人1人に時間が掛かる。

最悪、時間延長100倍を活用する必要が有るかもしれないが、一応は9日間で終わる予定だ。


しかし、予定は予定になってしまった…………





翌々日、キルス王国の内乱の中で、“第5の聖剣”の金属板を所持している可能性の高い魔獣が現れたとの報告を受けてしまった。


今回、政権獲得に乗り出した各地の領主達は現在7つの家にまで絞られている。

その内の1つ、ロンドベレクロ侯爵家のお抱えテイマーが例の魔獣を使役しているらしい。



本来であれば魔獣を殺して金属板を回収すれば済む話しだが、このロンドベレクロ侯爵はギルナーレ王国ともアスモデウス公爵領とも友好的で、出来れば新たな国王になって欲しい人材の1人だった。


その為、無碍に戦力の低下を強要するのも憚られる。



なので、ギルナーレ国王と、アスモデウス公爵の連名の書状を持って会いに行くことになった。



シロリュウはオレ以外は断固として乗せないので、クロリュウに乗ってセレンとセリンを伴いロンドベレクロ侯爵家へ。


書状を見せると、すんなり応接室へ通された。

内乱中なのでもっと警戒されるかと思っていたが、門番がセレンの顔を知っていたらしい。





しばらくすると、イケメンの優男が入って来た。

熊の獣人種族だと聞いていたが、普通に人種族にしか見えない。


オレの疑問顔に気付いた様で、


「初めまして、救国の英雄、クルス殿。

私がロンドベレクロ侯爵家の当主、レイライザ ロンドベレクロです。

初めてお会いする方は結構驚かれるんですよ」


そう言って、ロンドベレクロ侯爵は、服を少し捲って見せる…………




『今だ嘗て、こんな無意味な獣人がいただろうか……

確かに彼は、熊の獣人種族なんだろう……

腹部には、熊の毛皮がある……

しかし、熊の獣人種族なのに細身で牙も爪も無いなんて……

彼に熊の獣人種族として生まれて来た意味はあるのだろうか……

せめて彼に、熊耳と熊尻尾くらい与えて上げても良いのではないだろうか……』



そんな葛藤を内に秘めつつ、ポーカーフェイスでゆっくりお辞儀をする。


「初めまして、ロンドベレクロ侯爵閣下。

私はクルス商会の会長をしております、クルスと申します。

先程は失礼な視線を向けてしまい申し訳ありません」


「いいえ、慣れているのでお構い無く。

それとセイレーヌス アスモデウス公爵、セリーヌス ラアスモデウス子爵、お久しぶりです」


「お久しぶりです、ロンドベレクロ侯爵。

ですが、私達、先日結婚しまして、今はセイレーヌス クルスになりました!!」


「私もセリーヌス クルスとなりました」


「!!それは、おめでとう御座います。それでは後程、お祝いの品を…………」


「いいえ、ロンドベレクロ侯爵、お気持ちだけ頂いておきます。

早々にこの地を去ったアスモデウス領と違い、此方ではまだ戦火が続いておいででしょうから」


「それは痛み入ります。クルス殿、お2人を宜しくお願いします」


「ええ、お任せ下さい。ところで、本日お伺いした要件ですが…………」


「おっと、失礼しました。どうぞ、お掛け下さい」


「ありがとうございます。

では、本日、お伺いしたのは、侯爵閣下のところにいる魔獣を処分させて頂きたく参りました」


オレの言葉にロンドベレクロ侯爵は難しい顔をする。


「…………“アレ”ですか…………」


「はい、閣下は私が王都で行った事はご存知かと思います。

その魔獣は恐らく旧王家が行った非道な実験施設から逃亡した魔獣だと思われます。


閣下がその実験を継承されるとは考えてはおりませんが、普通に食事を与えるだけであの魔獣達は精神が侵されて行ってしまうのです」


「クルス殿のご家族も被害に遭われたのでしたね…………」


「ええ、幸い私の家族は龍脈で魔力のみを吸収して一切の食事を取らなかった為、精神を侵されずに済みましたが、通常の環境では同じ様にはならないでしょう」


「?ご家族とは、そちらの魔獣の事ですか?」


「ロンドベレクロ侯爵、お言葉にお気を付け下さい。

此方は、主人のペットで、聖龍 アナンタ様と、暗黒竜 シェーシャ様です」


「!!聖龍様と暗黒竜様ですか?!」


「ええ、この2人もオレの家族ですが、被害に遭ったのは別の家族です」


「…………そうですか…………。

ギムルスタ ギルナーレ陛下もセイレーヌス アスモデウス公爵も書状にクルス殿を神の如き人物だと書かれていたので、一体何の事かと思っていましたが、正にその通りの意味だったのですね…………」


一体どんな書状だったんだ…………

内容を知りたい様な、知りたく無い様な…………


「分かりました。

魔獣は処分致しましょう」


「ありがとうございます。

ですが、その魔獣は侯爵領にとっても貴重な戦力だと思いますので、買取か武器との交換にさせて頂けないでしょうか?」


「なるほど、お気遣いありがとうございます。

では、武器との交換でお願い出来ますか?


クルス商会の武器が非常に優秀だという話しは伺っていますので」


「…………クルス商会の武器の使用条件はご存知で?」


「ええ、此方から“ヒト”を攻撃する事は出来ないのは存じています。

ですが、使役されている魔獣の討伐や防衛に使う場合には此れ以上無い程であると考えています」


「分かりました。

では後日、魔獣の今後の戦果を超える内容での武器をお持ち致します」




その後、ギルナーレ王国や他国でのクルス商会の優遇政策の内容や成果なんかを簡単に聞かれたので、掻い摘んでではあるが話したり説明したりした。


柔和な雰囲気のイケメンだが、ロンドベレクロ侯爵は『この国を取る気』なのだろう。



オレとしても、この人なら良さそうだと感じたので、魔獣と交換の武器に魔法効果のある装備品や魔力電池も融通して、ちょっとだけ協力する事にした。



その夜は、セレンのウェディングドレスを堪能して、そのまま、セレンとの3日間に入った。






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