第15章 合同結婚式③
合同結婚式③
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今日の主役の3人、セバスとシャンシェと息子が、みんなの拍手と共に入って来て席に着くと、オレは壇上に向かった。
「今日は、セバスとシャンシェの息子の誕生を祝ってのパーティーだ。
最近、オレの直下になった者は知らないかもしれないが、セバスは料理コンテストで優勝してその賞品はオレに子供の名付け親になって欲しいというモノだった。
先ずは、2人の子供の名前を発表しようと思う」
オレが手で示すと、セバスとシャンシェが赤ん坊を抱いて立ち上がる。
オレは用意していた色紙をみんなに見せた。
色紙には、『蓮二』と漢字で書いて、横に『レンジ』と汎用語で振り仮名が振ってある。
「古代語が読めるものは分かるかもしれないが、この字はオレの元いた世界で“漢字”と言われる文字だ。
そして、この漢字の文字を1つ含んで名前を付けられる事を1文字貰うと言う。
セバスとシャンシェの子供の名前はこれだ!!」
そう言って、もう1枚の色紙を掲げる。
そこには、『紅蓮』『グレン』と書いていた。
全員から、割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こる。
「この『紅蓮』という言葉は、猛々しく燃える炎を現す言葉だ。
何者にも負けない“黒火一族の強い炎”となって貰いたいという思いを込めて、この『グレン』名を贈る。
『グレン』の誕生を祝って、かんぱぁ〜〜〜い!!」
「「「かんぱぁ〜〜〜い!!」」」
乾杯の後の拍手と歓声の中、セバスが、「うぉ〜〜ん……」と、大声で泣いていた……
セバスが、声を上げて泣いているのを初めて見た!!
黒火一族の面々も、わんわん泣きながらガバガバ呑んでいた…………
みんなが、どんちゃん騒ぎ出した頃を見計らって、セバスとシャンシェがオレの所に来る。
「お館様、大変、素晴らしい名前を有難う御座います」
セバスとシャンシェがいつもの綺麗なお辞儀で頭を下げる。
「喜んで貰えたなら、良かった。
しっかりと、強い子に育ててやってくれ」
「はい、必ずや、お館様のお役に立てる立派な戦士に育ててみせます」
シャンシェも強い眼差しで頷く。
「その事だがな、セバス。
さっきはああ言ったが、もしも、本人が此処を出て行く事を望んだら、ちゃんと希望を聞いてやってくれ。
その子の人生は、その子のものだ。
黒火一族としてオレに仕えるのも、此処を出て別の人生を送るのもその子の自由にさせてやって欲しい。
ただ、強い子には育ててくれよ。
何があっても自分と家族を守れる様にな」
「お心遣い、有難う御座います。
しかし、私とシャンシェの子に限って、お館様にお仕えする以外の選択肢を選ぶ事は御座いません」
「セバスぅ〜〜、そういうのは良く無いぞ。
親に強制されると、子供は反発したくなるもんだぞ」
「いいえ、お館様。黒火の血を引くものが、お館様に心酔しない筈は有りません!!」
…………セバス、酔ってるな。
相変わらず、通常と酔ってる時の見分けが付きにくい……
「まあ、今日は祝いだ。将来の事は将来考えよう!!
ところで、セバス、主役のおまえが踊らないと、みんな踊れないんじゃないのか?」
「は!!そうで、御座いますね!!行って参ります!!」
そして、裸踊り祭りが始まった…………
昨日の今日でパーティーに参加した勇者パーティーも、妻達やシロリュウのフォローも有り、しっかりと打ち解けている様だった。
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異世界転移者の移住先は、ビルスレイア女王国の農業中心の街になった。
ハルマール城に残っていたのは、雷十ノ助さん達も含めて、89人。
その内、移住して来たのは、72人で、男勇者君達を除く、12人は、ハルマール王国で自分で生きて行くそうだ。
男勇者君達も、ハルマール王国に残って、そこで冒険者を始めるらしい。
移住した人達の中には獣人種族を怖がる人もいたが、後の事は雷十ノ助さん達に任せる事にした。
移住が完了して、セバスとシャンシェも復帰したので、本格的に東大陸の調査を開始した。
先ずは、第1部隊に地形と動植物の調査を行わせ、第3部隊に地中を調査させた。
現状では、住人に出会っても接触はしない様にさせている。
10日掛けて調査した結果。
動植物に関しては、情報通り、魔獣のいない生態系だった。
生き物自体は結構多く、一体何故そんな進化を遂げたのか意味不明な動物なんかも結構いた。
地下にはやはり金属のゾーンが有り、ここが宇宙船の上で有る可能性が高くなった。
そして、住人に関しては中央まで来ても出会う事はなかった…………
大陸中央部にシルバーウィングを停めて、念の為、外部からの侵入を防ぐ様に結界を張って拠点を作ってから内部の調査を開始したが…………
結果は外周調査への切り替えになってしまった…………
オレが、“グランドディグ”で穴を掘って、“錬金術”で金属部分を階段状にして、内部に侵入した迄は良かったが、入って直ぐの場所は何も無い部屋で、その後も訓練場や一般兵用の武器庫、休憩所、兵士用の住居等があっただけ。
東大陸が宇宙船だった事はほぼ確定だったが、進めたのはここまでで、更に中心部に行かなければならないのだが、浸水してしまっていたのだ…………
なので、海底ダンジョン同様に水を抜く為、海中の浸水箇所を探す事になってしまったのだ…………
正直言って面倒なので、オレが東大陸を持ち上げて水を抜こうかとも考えたが、これだけの質量が無くなって海水が戻ったら災害が多発してしまうので止めておいた。
海底用の装備を準備して、海底の探索と穴の修復に1ヶ月掛かってしまった。
その間でも、東大陸で人を発見する事は無かった。
もう年末なので、東大陸の水抜きは年が明けてから行う事にした。
東大陸の修復は配下に任せていたので、この1ヶ月オレは引き続き全体のレベルアップとクルス商会の拡大を行う傍ら、1月1日の結婚式の準備を行った。
人種族の成人は、15歳で元の世界でも女性は16歳から結婚出来る。
この際なので、レンとも結婚する事にした。
言い方はアレだが、元々シロリュウがそこまで話しを進めていたのだ。
レン達4人はオレのところに来てから驚きの連続の日々だった様だが、1番驚いていたのは毎月恒例の喧嘩祭りでオレの実力を知った時だった。
“原初のモノ”については知ってはいた様だが、今のシロネコ達は他の“原初のモノ”達とは比べ物にならないくらい強い。
それでも、“原初のモノ”6人掛りでオレに傷1つ付けられず、そこに魔王や魔王を超える者達が加わって、最高幹部や幹部が加わって、数十人を相手にしても結果無傷なオレに驚き。
更に別の日には、いくら回復するとはいえ、自分の妻ですらズバズバ斬り、ボコボコにする姿に驚き。
更に別の日には、自分たちでは見るのがやっとのスピードの者達が数百人で挑んでも攻撃が擦りもしない事に驚いて。
最後は、自分達や7歳児すらズバズバ斬り、ボコボコにするオレに驚いていた。
しかし、驚かせまくったのが悪かった訳では無い。
オレの圧倒的な強さにレンも含めて、4人がオレにマジ惚れしてくれた様だったのだ。
この世界に来た事で、強いイコールカッコイイになってしまったのか、元の世界でも彼女達がそうだったのか、今のオレにはもう判断が付かないが、まあ、結果オーライだ。
そんな訳で、レンはオレとの結婚にノリノリになり、他の3人も第1メイド部隊に入れる様に真剣に取り組み始めた。
色々あったが、今年も間もなく終わろうとしていた…………
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1月1日
もはや、催事場となってしまった。サーラールの街のシルバーウィング発着場。
ここに、1万5,000人程の人が集まって日の出と共に聖樹に向かって祈る。
現在、クルス商会の従業員は6,000人強、オレの配下が3,000人強、残りの5,000人は従業員の家族、エルフ種族、獣人種族、異世界転移者の結婚式の参列者だ。
オレは今回の年末も呉服屋をやった。
1万着の羽織袴と振袖を作って全従業員に配った。
毎年の事だが、最も時間が掛かったのは妻達や恋人達に最も似合う振袖を作る事だ。
今年は8人分を考えなければならなかったので、“スキル 並列思考”をフル回転で考えた。
ちょっと、可哀想だったのは4人の恋人達だ。
彼女達も振袖をとても気に入ってくれたのだが、彼女達は朝のお祈りが終わると直ぐにウェディングドレスにお色直しだ。
太陽が完全に姿を現して、お祈りが終わると、
「去年1年、みんなご苦労だった。今年も宜しく頼むぞ」
と、いう超簡単な挨拶をしただけだったが、大歓声が上がった。
そのまま、従業員やその家族にお年玉を配って、従業員達はそのまま街の新年のお祭りに向かって行った。
因みに孤児院に関しては数が増えすぎた為、各孤児院の院長に配布を任せている。
今日の為に作ったチャペルに向かって、オレもタキシードにお色直しだ。
今回も神父役は、シロネコだ。
勇者パーティーの神官ちゃん、ケイコに任せる案も出たが「レンの結婚式なんて、絶対泣いちゃうから無理!!」と、断られた。
教壇のシロネコと共に、壇上で新たな妻達の登場を待つ。
先ず入って来たのは、クリシュナだ。
プリンセスラインのロングトレーンドレスに、普段よりも非常に大人っぽいメイクをしている。
いつもの軽い感じはなりを潜めて、エルフの祖たるハイエルフの神聖な雰囲気を醸し出していてとても美しい。
続いて入って来たのは、セレンとセリンだ。
2人はお揃いのマーメイドラインのドレスを身に纏い、背中の翼も相まって正に天使だ。
スタイル抜群の2人には、身体のラインのハッキリ分かるドレスがとても良く似合っている。
最後に入って来たのは、レンだ。
レースが幾重にも重なった、Aラインのドレスだ。
普段は少し、ボーっとした雰囲気で年齢よりも幼く見えるが、今日は大人な雰囲気のメイクをしてとても色っぽく感じる。
オレがシロネコの正面に、その後ろに一段下がって4人が並ぶ。
「……我が主、レンジ クルス。その者達、クリシュナ、セイレーヌス アスモデウス、セリーヌス ラアスモデウス、レン ヒガシサンジョウを妻とし、生涯愛する事を誓うか?」
「ああ!!誓う!!」
「クリシュナ。我が主、レンジ クルスを夫とし、生涯愛する事を誓うか?」
「はい!!誓います!!」
「セイレーヌス アスモデウス。我が主、レンジ クルスを夫とし、生涯愛する事を誓うか?」
「はい!!誓います!!」
「セリーヌス ラアスモデウス。我が主、レンジ クルスを夫とし、生涯愛する事を誓うか?」
「はい!!誓います!!」
「レン ヒガシサンジョウ。我が主、レンジ クルスを夫とし、生涯愛する事を誓うか?」
「はい!!誓います!!」
「では、誓いの口付けを」
オレは、クリシュナの手を取って、一段上がらせて、キスをして、そのまま横に並ばせる。
続いて、セレン、セリン、レンともキスをして横に並ばせて行った。
「ここに誓いは交わされた。
我が主の奥方、クリシュナ クルス、セイレーヌス クルス、セリーヌス クルス、レン クルスの誕生を宣言する!!」
シロネコの宣言にチャペルの中は大歓声に包まれ、あちこちで号泣する声が聞こえた…………
そして、パーティー会場に移動しても、今だに泣いているエルフやエルフ種族達…………
クリシュナの20,020年に及ぶ、長い長い独身生活に終止符が打たれ、感無量なのだろう……
本来、1番感動しそうな本人が若干引く程、泣いていた…………
パーティーは、例によって唯の宴会だ。
セバス達にならって脱ごうとする呑んだくれ代表の賢者アヤを、ショウコとケイコが必死に止めている姿も見える。
挨拶に来た雷十ノ助さんとキヨさんに街での暮らしを聞いてみたが、一応は上手くやれている様だ。
勇者君パーティーも挨拶に来たが、ハーレム願望のシロウ君が妻達を見て、オレを神の様に崇め始めてしまい、パーティー丸ごと、シロリュウに連行されて行った…………
勇者君パーティーも近い内に、オレの傘下に入るかもしれない…………
途中、パーティーには参加していなかったが、ラルと共にサーラールの官僚達が挨拶に来たり、従業員達が来たりと、千客万来で、朝から晩まで騒ぎ通しだった。
その日の夜は、初夜初夜初夜初夜だ。
4人に指輪とブレスレットを贈ると、クリシュナが盛大に泣き出して、それに釣られてか、セレンとセリンも泣き出し、普段は余り感情を表に出さないレンまで泣き出した。
1人1人優しく宥めて、4人纏めて相手をした。
もちろん、そっちは優しくではない。
こうして、オレは8人の美しい妻を持つ、いつ後ろから刺されてもおかしくない男に成長したのだった…………




