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第14章 進化する魔獣⑦

進化する魔獣⑦





▪️▪️▪️▪️





国王の保養地方面



「研究者の自殺によって、危険度最高ランクの魔獣の封印が解ける可能性有り」


シェーラからの情報共有を受けて、オレはセスラーナに少し作戦の変更を伝えた。




ドン、ドン、ドン

「すいませ〜〜ん!!開けて貰えますか〜〜!!」


大きな扉の少し横、壁に偽装された、人間用の出入り口を叩く。

扉の向こうから、返事が返って来た。


「何者だ。何の用だ!!」


「私はクルス商会の会長をしています、クルスと言います。


第1王子の婚約者のセイレーヌス アスモデウス様と第3王子の婚約者のセリーヌス ラアスモデウス様のご紹介で、ここまで参りましたが、扉の開け方を聞いておりません。


責任者の方に取次いでいただけませんでしょうか?」


「クルス商会など、聞いていない。一体何者だ」


「西中央大陸で、Sランク商会の魔導具商を営んでおります。


向こうでは、死の商人として、それなりに有名だと自負しておりましたが、此方ではまだまだの様ですね。


それに、セイレーヌス様とセリーヌス様にもご同行頂いております」


「確認して来る、しばし待て」



待つ事しばし、オレ達の前には、汚ったない白衣の汚ったないオッサンが現れた。


「クルス商会とか言ったか?

魔導具商の死の商人と言う事は、とうとう、“アレ”に武器を持たせろと言う事か?」


「いいえ、私は何も聞いておりません。

こちらで注文に応える様にと言われて参りました」


「なるほど、そうかそうか、ならば“アレ”の武器で間違いないだろう。

ついて来なさい」


思った以上に簡単に入れた。

“魔導具商で死の商人”と言ったのが良かった様だ。



魔導具プラス死の商人と捉えれば、魔法剣を売る武器商人に、魔導具商を隠れ蓑にした死の商人と捉えれば奴隷商人だと、勝手に勘違いするだろうと思っていたが、簡単すぎて逆に心配になるレベルだ。



扉の奥は気持ちの悪い魔獣の博物館の様に、並んだ檻には1匹として、まともな魔獣は居ない、全て異形の魔獣だ。


奥に行くにつれて、檻も段々と大きくなって行ったが、離れていても見える1番奥の巨大な檻は空っぽだ。

しかし、空っぽに見える檻の中には、“原初のモノ”達を凌ぐ、“ナニカ”が居る。


空っぽの檻の格子の間から中へ。

その中には、人間用の檻が置いてあり、檻の中には、“獣人種族の様なナニカ”が居た…………




「どうしたゴミ共、やっと我に跪く気になったのか?」


檻の中の“ナニカ”が話し掛けて来る。


「クルス商会、コレに装備を見繕ってくれ」


檻の中の“ナニカ”の話しを完全に無視して、汚ったないオッサンが言う。


「この変わった獣人種族の方にですか?」


そう、見た目だけの話しをするなら、この“ナニカ”は、一般的には変わった獣人種族だ。


だが、この姿はおそらく“天使種族”だ。

人種族の背に白い1対の翼、そして頭上の荊の様な光の輪…………


しかし、鑑定での種族は火竜。

元は火竜だった筈の“ナニカ”…………



「コレは獣人種族では無い。魔獣だ。

まあ、それについて詮索せん方がいい。


とにかく、コレに合うモノを用意してくれればいい」


「畏まりました。

では、この魔獣はどの様な戦い方をされるのですか?」


「うむ、それについてはまだ、解明中だ。

直接聞いてみるといい。幸い喋るからな」


「畏まりました。

では、魔獣殿、あなたの得意な武器等はありますか?」


「んん?なんだ、おまえは?」


「私は魔導具商をしております、クルスと申します。

あなたの装備を見繕う様、命じられております」


「魔導具商?そうか、我はあらゆる武器を使いこなす故、戦い方も様々だ。

逆におまえの持つ最も強力な物を持って来るがいい」


「畏まりました。


しかしながら、私共の最も強力な物となると、オリハルコンでのオーダーメイド品になりますれば、お得意な武器の形状と属性、希望されるスキルをお聞きしない事にはお作りができません。


何卒、お教え頂けませんでしょうか?」


「なるほど、オーダーメイド での武器か。

ならば、剣だ。

属性は風が良い。スキルは結界だな」


「なるほど、では、剣の形状は如何致しますか?

長さや厚み、重さもご希望がございましたらお申し付けください」


「そうだな、サイズは片手剣サイズ、厚みは斬れ味が損なわれなければ、いくら重くなっても良い」


「畏まりました。

後は、名前を刻印し、使用者の魔力を登録して他の者には使えない様にも出来ますが、如何致しますか?」


「ほう……そんな事も出来るのか。

ならば、我が名、ベリアルを刻印せよ」


「ベリアル様ですね、畏まるました。

では、ベリアル様、武器以外の御所望の品が御座いますか?」


「後は服だな。丈夫で煌びやかな我に相応しい物を用意せよ。


それと、魔導具商だと言ったな。

拡声や蓄音の魔導具も取り扱っておるのか?」


「はい、御座います」


「では、何方も持って参れ、蓄音の魔導具は有るだけ全てだ」


「畏まりました。

其れにしても、ベリアル様は先程、魔獣だとお伺いしましたが、とても高貴な方の様に感じられますね」


「それは当然であろう。

我は元々は王だからな」


「一国の王で在られましたか。


これは、魔獣などと失礼な事を申しました。

お許しください」


「よい。確かに今の我は魔獣だからな」


「何か事情がお有りの様で」


「うむ、おまえはここのゴミ共と違い話しが分かる様だな。


我は元々此処では無い、別の惑星から来たのだ。

と言って意味が分かるか?」


「ええ、空の彼方の別の星、別の世界から来られたと言う事ですね」


「!!おお、おまえは本当に話しが通じる様だな。

そうだ、別の星から来たのだ。


我はその星で王の1人であった。

しかし、民が増えすぎてな。

資源や食料は100年保たん事が分かった。


故に我が国を含む、近隣の5ヶ国は新たな居住可能惑星を探し母星を旅立ったのだ。


しかし、宇宙の旅は窮屈で長い。

話し合いの結果、2カ国が生活をし、3カ国が冷凍睡眠を行う形で1,000年毎に交代する事になった。


何度目かの冷凍睡眠に入り、気付いた時には我はこの魔獣の中におったのだ。


魔獣や我の様に喰われた者の怨嗟が喧しかったのでな、全て取り込んでやったら、我の元の姿と同じになっておったのだ」


「なるほど、その様な事が…………」


『……冷凍睡眠か…………

もしも、オレの仮説通り、東大陸が宇宙船だった場合、その中で、眠っている者が国単位で居ると言う事か…………


そして、ベリアルは偶然、睡眠状態で放り出されて、そのまま喰われたのか…………

他にも放り出された“天使種族”や“悪魔種族”が居るかもしれないな…………


其れにしても、ベリアルか、確かソロモン72柱の悪魔だよな…………


セレンのご先祖は厨二病じゃ無かったっぽいな、“天使種族”や“悪魔種族”は悪魔の名前な気がする』


「ところで、ベリアル様はこれからどうなさるのですか?」


「ん?そうだな……折角の生存可能惑星だ。

我が支配するのが良いだろうな。


新たな力も手に入ったしな」


「ベリアル様、大変申し上げ難いのですが、それは些か不可能かと存じます。

ベリアル様程度のお力では、私に遠く及びませんので」


「…………なに?」


「ベリアル様は今、力を封じられているご様子。

私との力の差がお分かりにならないのも致し方ありません。


ですので、少し場所を移しましょう。


此処では建物が壊れてしまうかも知れませんので。


セスラーナ、終わっているな?」


「はい、全員の拘束、情報の収集、魔獣の処理共に終了しております」


一つ頷くと、“オレ達だけ”になった研究施設からベリアルの檻を片手で持って出るのだった…………






「では、ベリアル様、こちらをどうぞ」


ベリアルの拘束を解き、檻から出して、封印の魔導具も獣操術の契約も解いてあげてから、先程要望があった、剣、服、拡声機、蓄音機の魔導具を出してあげた。


「ふむ……。特に仕掛けはない様だな…………」


「先程も申し上げた通り、ベリアル様程度のお力では、私に遠く及びません。

小細工の必要も御座いません」


「…………貴様は一体何者だ?」


「私はクルス商会と言う魔導具商会で会長をしております」


「話す気は無いと言う事か。

まあ良い、で、我をどうしようと言うのだ?」


「ベリアル様には3つ選択肢が御座います。


1つはこの星で、他の種族とも共存して暮らすか。


もう1つは、この星ではない別の星で暮らすか。

ちなみに、この別の星は現在は生き物はおりませんが、水と空気は御座います。


そして、最後の1つは私に殺される事で御座います。

いずれを選ばれますか?」


「何を言っておる、もう1つあるではないか。

最初に我が言った様に、この星を我が支配する!!」


そう言って、ベリアルがオレの首に向けて、剣を抜く。


オレは親指と人差し指で、剣を摘んで止めて、ベリアルの腹に回し蹴りを入れる。

内臓が結構イったと思うが、ベリアルも“スキル 超速再生”があったので問題無いだろう。


「先程も申し上げた通り、その可能性は御座いません」


「貴様!!一体何なのだ!!」



ゆっくりと近づくオレに向かって、低い姿勢で猛然と迫って来て右下から切り上げて来る。


右足で手首を、左足で後頭部を踏み付けて、手首を砕いて、顔面を地面に埋め込む。


「何度も申し上げた通り、私は只の商会長で御座います。ベリアル様」


オレがゆっくりベリアルから降りて、そう言うと、ガバっと顔を上げて、顔の泥を拭いながらベリアルがギャーギャー言う。


「おかしいであろうが!!

我は“天使種族”最強の16柱の王の1人だぞ!!


何故、商人におくれを取るのだ!!


それに、我はこの身体を得て、遥かに強大な力を手に入れたのだぞ!!

なのに何故手も足も出ん!!」


「ベリアル様、こちらをご覧下さい」


オレは2、3歩距離を空けて、ベリアルにオレの全身が見えるくらい離れる。

ベリアルと目が合った事を確認すると笑顔を向けて、


キーンッ


「な?  うがっ!!  クッ!!」


オレの振るった白刃が、ベリアルの四肢と翼を斬り落とす。

ベリアルは、“超速再生”で、手足や翼を再生して、オレを睨む。


「今、私が、この剣を“ディファレントルーム”から取り出して、貴方様の背後に行って翼と四肢を斬り落として此処に戻って来たのが見えましたか?」


「!!!!な、なんだと……。何か特別なスキルでは無いのか!!」


「では、もう少し、速度を落としましょう」


キーンッ


「今度は見えましたか?」


ベリアルは“超速再生”を使い、手足を回復しながら俯く。


「僅かに残像が見えた……

これが貴様と我の実力差と言う事か…………」


「いいえ、ベリアル様を殺さない様に手加減した私とベリアル様との実力差です」


「!!!!我が見る事すら出来んというのに、それでも手加減していると言うのか!!」


「ええ、剣圧で貴方様の原型が無くならない様にそっと斬っておりますよ」


「!!!!もうよい、殺せ。

我が進むは覇道のみ、貴様らとの共存も慈悲を受ける事もせぬ」


「これは、おかしな事を仰いますね。

16人の他の王とは共存し、5人の王とも話し合いで冷凍睡眠を決められたのでは?」


「それは、貴奴等が、同じく“天使種族”であったからだ。

貴様ら、劣等種族と違ってな」


「“天使種族”は特別な種族で、それ以外の種族は、“天使種族”の奴隷だと?」


「ああ、そうだ。我ら“天使種族”のみが、支配者で有り唯一の貴き種族だ。


他種族は全て、我らの手足となる為に存在する。

その、道具に敗れたとあっては、我の存在意義等無い」


王だから傲慢なのでは無く、オレの嫌いな種族至上主義者の様だ…………


「…………そうか、それはお前の考えなのか?

それとも、“天使種族”とやらは、全員がそう考えているのか?」


「“天使種族”が至高の種族である事は、この世の摂理だ。

全ての“天使種族”がその摂理を理解しておるわ」


「…………そうか、それは残念だ」


オレは、ベリアルの首を落とし、心臓と金属板、漆黒の掌台の魔石を斬り出した。

ベリアルの死体も含めて、全て“ディファレントスペース”に放り込んで、セレン、セリン、セスラーナの元に行く。


「残念ながら、交渉決裂だったと伝えてくれ」


「畏まりました」


突入開始から、一言も声を出さなかったセレンが問い掛けて来る。


「主様、先程のベリアルという者……。

もしかして、私達のご先祖様と同じく東大陸から来た者ですか?


最初にお会いした時に、私を殺す可能性があると仰られたのは、私達があの者達の血を引いているからですか?」


「…………そうだな……

セスラーナ、他の地点の状況は?」


「はい、第2王子方面の情報回収が間もなく終わる様です。

その他の地点は、撤収済みです」


「分かった。

セレン、セリン。オレ達も戻って、昼食を食べながら話そう」





▪️▪️▪️▪️





昼食を食べながら、セレンとセリンに一通り話そうと思ったのだが、残念ながら、2人は食事に手を付けられそうになかったので、先ず、2人に話しをする事にした。


この世界の歴史を踏まえて、“天使種族”と“聖剣”の問題を簡単に話し、3人の魔王国との協力関係についても話した。


「…………で、キスラエラは勿論、他の2人の魔王にもアスモデウス家に連なる者達は、オレの配下に入ったから問題無いと伝えている。

だからもう、心配しなくていい」


オレの話しを聞き終えても、2人はまだ浮かない表情だ。


「しかし、主様、私達のご先祖様がこの世界への侵略者であった事は変わりません……

ならば、私達にもその責任が…………」


「無いな!!

ご先祖だろうが、親だろうが、やったのはそいつらだ。

子孫や子供には関係無い。


セレンもセリンも他の者達も別に何もして無いんだから、なんの責任も無い。


オレが最初に話した時、殺す可能性を示唆したのは、“天使種族”と、敵対関係になる可能性があったからだ。


アスモデウス家がオレの配下になった今は敵対関係になる事は無いから誰も手出ししない」


セレンはまだ、納得し切れていない様だ。

幼い頃から家を任されたからだろう、責任感が強い娘だ。


そして、セリンはもう一つの懸念が気になる様だ。


「しかし、ご主人様。

“天使種族”の“歌”の危険性が有る以上、私達の存在がご主人様のご迷惑になってしまうのでは…………」


「…………言い方を変えよう!!」


オレはそう言って立ち上がって、2人と向き合い、2人の手を握る。

2人とも戸惑いながらも立ち上がり、オレを見つめて来る。


「いいか、2人とも。おまえ達はオレの女だ!!

世界中が何を言って来ても、誰にも渡さないし、指一本触れさせない!!


全ての事からオレが守ってやる。

だから、何も心配するな!!


で、ついでにおまえ達の家族も守ってやる。

こっちも世界中から守ってやる。

だから、安心しろ!!」


2人とも目を見開いて驚いていたが、オレが笑顔を見せると、段々赤くなって、声を揃えて、


「「はい!!」」


と、言って涙を浮かべていた…………




セレンとセリンが落ち着いた…………若干、妻達とキャイキャイなっているが、気持ちは落ち着いた様なので、食事を取りながら、大まかな報告だけ聞いた。


最早、絶対条件と成りつつ有る、全員無傷の報告を最初に受けて、聖剣についての報告からだった…………



困った物だ…………


今回、聖剣が回収されたのは、予想通り、ブランドを追加した人体実験施設とオレが行った魔獣実験施設の2ヶ所。

そして、発見されたのは、“第5の聖剣”だった…………


そして、第5の聖剣はやはり、5本だった。

これで、第2の聖剣2本と第4の聖剣4本を探さなければならないのは、ほぼ確定だ。


第5の聖剣は、2本は回収済み、1本から10枚の金属板になっていた様で2本の聖剣が使われて金属板は計20枚。


金属板は現在回収出来た物がアカリュウの物も合わせて17枚。

3枚が行方不明で、最後の1本の聖剣が王城に有る様だ。


王城はこれから攻めるので問題無いが、行方不明の3枚の金属板は探すのに時間が掛かりそうだ…………




次に10ヶ所の魔獣実験施設について、簡単に結果を聞いた。


オレが殺したベリアルは、最も特殊ではあったが、1番見た目はまともだった様だ。


オレは状態異常も病気も効かないが、食べたら体調を崩しそうな魔獣のオンパレードだった。


念の為、研究用に一部だけ残して、折角グロい見た目の様なので、王城を攻撃する前のデモンストレーションに使う事にした。



人体実験施設に関しては、重度の者は既に“ヒト”では無くなってしまっていた様で、処分して死体を回収しているらしい。


軽度の者も念の為、通常の奴隷からは隔離してあるそうだ。

こちらに関しては、全て終わってから、オレが直接確認する事にした。



奴隷は一旦一律で、食事と風呂と着替えを与えて待機させている。


こちらは、第2部隊の幹部に任せて、使えそうな者は、ウチで雇って、それ以外は、各地に戻してやる予定だ。


犯罪者はもちろん、鉱山に戻してやる。



一通り報告を聞いて、戦闘内容については、後ほどと、含みのある言い方をされたが、まあ、午後からの王城攻めが終わってからで問題無いと思う。



では、張り切って、キルス王家を滅ぼそう!!





▪️▪️▪️▪️





キルス王国、王都キルス



「本日の天気は、晴れ時々、血の雨が降り、魔獣の肉片にご注意下さい」


意味の分からない言葉が、王都中に響き渡り、直後、“魔獣の様なナニか”の肉片が、夥しい血を撒き散らして、王都一面に降り注いだ。


王都は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。



男も女も老人も子供も、道行く人々は、血だらけになり、そして、その血を撒き散らしたのが、ヒトと魔獣の混ざり合った、悍ましい異形の怪物の肉片だ。

正気で居られる訳が無い。



血の雨が止むと、また、声が響いて来た。


「王都キルスの皆さん、こんにちは。

私はクルス商会の会長をしている、クルスと言います。


今、皆さんに降り注いだ、気持ちの悪いナニカは、キルス王家が魔獣を改造して、大量に“ヒト”を喰わせ続けて生み出した怪物です。


皆さんの周りにも、突然居なくなった人や、不当な罪で、鉱山送りになったのに、いつまで経っても帰って来ない人は居ませんか?


私の家族も、この悍ましい忌むべき実験の被害に遭いました。

私はキルス王家を許す事が出来ません!!


なので、これから、この実験に加担した者を皆殺しにします。


国王と5人の王妃、4人の王子と5人の王女。

宰相と8人の大臣、その側近達。近衛騎士団と一部の騎士達です。


これは報復です。


私が奪うのは、彼らの命とこの実験への代償だけですので、この飛空船が王都を離れた後であれば、皆さんの被害の対価を、衣類のクリーニング代も含めて、ご自由に王城からお持ち帰り下さい。


但し、飛空船が離れる前に城に入った場合は巻き添えで命を落とされても責任は持ちません」



先程まで、この世の終わりの様に騒いでいた人々は、只、呆然と空を飛ぶ船を見上げていた…………





▪️▪️▪️▪️





飛空船から、前庭に飛び降りて、ちゃんと、血も肉片も無い所を選んで着地する。


オレに続いて、セバス、シエラールル、ガリー、ゴラジス、シェーラが降りて来て、その後に第1部隊隊長と3人の副隊長、第1部隊120人、メイド部隊が30人。最後にセレンとセリンが降り立つ。



オレの後にセレンとセリン、セバスとシエラールルにメイド部隊が12人付いて来て、それ以外は一斉に散開した。


オレは真っ直ぐ城に向かう。

邪魔する者は誰もいない、全て、対処が為されて行く。


メイド部隊が2人先行して扉を開け、第1部隊の示す通りに迷う事なく進んで行く。


2階に上がり、3階に上がり、一際豪華な扉を潜ると、そこは謁見の間の様だった。


玉座にはキツネの様に尖った耳と虎柄の尻尾がある、ジャンボジュニア髭とボサボサ頭のオッサンが座っている。


その周りで、王子っぽいのや王女っぽいのや王妃っぽいのがギャーギャー言っている。



「貴様かぁ〜〜!!さっきの戯れ言を言いおったのはぁ〜〜!!」


こっちを向いていた、国王っぽいヤツが大声を上げる。


「ああ、そうだ。

国王、殺す前に聖剣の場所を教えろ」


「貴様の目的は聖剣か!!

貴様も永遠の命が目的だったのか!!」


「違う。そもそも、オレには寿命は無い。


オレは聖剣を封印する為に回収しているだけだ。

お前の様なバカに悪用されない様にな」


「クッ!!貴様、言わせておけばぁ〜〜!!

ワシらを殺して、その小娘を王に祭り上げるつもりだという事か!!」


「それも違う。この2人は家族の仇が死ぬ所を確認させてやろうと思っただけだ。

この国が今後どうなるかは、この国の者が決めればいい。

オレは国にも王にも興味が無い」


「貴様、仇と言ったか?

ワシが殺したという証拠でもあるのか?」


「いいや、無い。だが、お前が殺させたんだろ?だから、お前を殺す。

まあ、もしも、お前が殺させてなくても、お前は殺す」


「ええい!!お前達、やれ!!」


「一体誰に命令してるんだ?

この部屋で生きているのは、もうお前だけだぞ?」


「な、なにぃ〜〜!!」


周りを見回し、やっと気付いた様だ。


オレのオリジナル呪属性魔法“拷問用 無言”で、声も出せず、痛覚を2倍にされて、セバス達に斬り刻まれ、肉片と化した王子達の血の海の中に自分が座っている事に…………


「さっさと聖剣の場所を喋れ」


「誰が貴様なんぞに教えるものか!!ワシは王だ!!ワ………………」


“拷問用 無言”を国王にもかけて、拷問刀を抜く。


「なら、喋りたくしてやる」


ノコギリの様にガタガタの刃で、ゴリゴリと膝から下を斬り落とす。

国王は何かを叫んでいる様な表情をしているが、息を吐く音すらしない。


そのまま、腕を斬り落とし、腹を抉り、目を潰して、“神聖属性魔法”で回復する。


今度は、足の指を足首を脛を膝を太腿を順に切り落として行き、腹を縦に斬り裂いて回復する。


涙を流して、何かを必死に訴えるのを無視して、何度も何度も斬り刻んだ…………





「そろそろ、喋る気になったか?

言えば、殺してやるぞ?」


「……………………この、指輪、を、玉座の、後ろ、の、壁、に、はめ、た、先、に……」


「そうか、セバス」


「はい、畏まりました」



「お館様、発見致しました」


「じゃあ、約束通り殺してやる」


最後に拷問刀でゆっくりと首を刎ねた…………




振り返って、セレンとセリンを見ると、2人は対照的な表情をしていた。


セレンは今の残酷な光景に少し青い顔をしている。

セリンはうっとりした顔でオレを見つめていた。


「ご主人様、素敵です…………」

「えぇ〜!!」


2人は見た目はそっくりでも、性格は大きく違う様だ…………






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