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第2章 ミミッサス大森林③

ミミッサス大森林③



▪️▪️▪️▪️



相談会を終えて、3人が帰ってから昨日作った“ロック”達を確認する。

キチンと昨日のままだ。これについては今日のギルドでの一悶着で予想出来ていた。


“土属性魔法は大工が使う”と言っていたからだ。

家の壁に使えるなら耐久年数も長い事だろうと、予想出来た。


次に今日発見の課題、“状態異常耐性”だ。

スキル全集を確認して行く。


「毒、麻痺、気絶……毒にも麻痺にも種類と耐性率が各レベル毎にある……

これじゃあ指輪だらけになるし、“耐性”はあるが“無効”は無い……

無いなら作ればいいか!!そうだ、そうしよう!!」


“スキル 創造”、出来上がった指輪を“鑑定”、



----------


全状態異常無効の指輪


鉄製の指輪

全ての状態異常が無効


----------


「出来てしまった。ラストダンジョン内でしか手に入らない様なアイテムが……

これは絶対に常時装備だ。また指輪が増えちゃったなぁ〜……

これは絶対に外す事ないし、ブレスレットにしよう!!」


指輪をしまって、再度“スキル 創造”からの“鑑定”


----------


全状態異常無効の腕輪


ミスリルの腕輪

全ての状態異常が無効


----------


ついでにミスリル製にしてみました。

ボードードの武器屋で見ただけだったけど、ちゃんと成功した。


『1回見ただけだったけど、ちゃんとイメージ出来た。

そういえば、ギルドで話した時もルナルーレを口説いて…………

ルナルーレた・ち・と、話してた時もスラスラ言葉が頭に浮かぶし、内容の理解から結論が凄く速くなった気がする。

レベルアップでの知力上昇の効果かなぁ〜……

魔法の威力だけじゃないな、間違いなく。ステータス様様だ』




▪️▪️▪️▪️




冒険者ギルド、ラットック村支部 ギルドマスター室



今日の騒ぎを一緒に聞いて居た3人の男女がソファーに向かい合う。


副ギルドマスターのコーナー ビーンズウッド

同じく副ギルドマスターのリサリナ クルート

ギルドマスターのサラス ロールストス


クルスとテーブルに着いていた3人だ。


ビーンズウッドが話しを切り出す。


「で、マスターどうでしたか?」


「可能だろう、だが出来過ぎだ。“鑑定”結果も?」


「はい、ペンを渡す際に“鑑定”しましたが本人でした」


「異世界転移者か……1人で倒したと言うから、てっきり他人のステータスプレートを持った“勇者”かと思ったが…………」


「称号もステータスプレートと同様の“異世界転移者”と“冒険者 ランクD”のみでした。鑑定士を呼んでステータスも確認しますか?」


「いや、必要無いだろう。もしも“偽装”なら最も隠すべきは“異世界転移者”だ。

ハルマール王国の“人間兵器”だと言ってる様なものだからな。

我々は連絡を受けていたが知らない者が見れば騒ぎになる。


それを気にせず普通に提示し、尚且つビーンズウッドが周りに見せると言っても何の反応も無かった。

あの時ビーンズウッドが手で隠しているのを一瞥すらしなかった。


間違い無く王国の連中から何も知らされていない。


魔法についてもそうだ。

普通なら土属性魔法しか持っていなかったとしたら他の魔法を学ぶ、土属性魔法の応用だけで全て解決しようとは思わん」


「確かに……。ではマスター、王国に今日の事を報告しますか?」


「しなくていい!!連中の要望は“居場所の特定”だけだ。

ここにいるとだけ伝えておけばいい。急ぐ必要も無い。

来週か再来週の定期連絡便で王都本部に手紙だけ出しておけ」


「くっく……。マスターの王国嫌いも相当ですなぁ〜」


「嫌いなのは王侯貴族と軍共だけだ。

強欲共のせいで一体何百年戦争が続いている事か。

そのせいで森の魔獣は強く、多くなる一方だ」


「そうですね。そうなると、クルスくんが頑張ってくれたら有り難いですね。

今日の話しは目から鱗でしたよ」


「ああ、今日の狩り方だけでも十分有り難かった。

この方法が定着すれば、少しでも安全に強力な魔獣が狩れるかもしれん。

欲を言えば他の魔法でも新たな発想を思い付いてくれると有り難いな。

だが、どうだろうな。明日の報酬額は莫大だ。当分、金が必要なくなるからな」


「確かに、なら他の魔法も覚えて貰って、戦術指南としてギルドで雇いますか?」


「それも1つの手かもしれんが、昨日、ランクアップについて詳しく聞いて来たのだろう?

なら、名誉の為にランクアップを望んで今後も活動してくれるかもしれん。

ただ、魔法についてはそれとなく他の属性の魔法を教えてみてくれ」


「わかりました。では、その様に」





▪️▪️▪️▪️




翌朝、宿屋の受付で今夜から他の冒険者を呼んで話し合いをするからもう少し広い部屋は空いてないかと相談すると、2人部屋が空いていて今からでも移れるとのことだったので、今日の差額分とそのまま明日からもう3日分を支払って、先に朝食をとる。


その後、新しい部屋に移動、2人部屋は並びのベットとテーブルには椅子が4脚あった。


石像達を運ぶのが地味にめんどくさかった。

一瞬『もう壊れてもいいかな?』と考えたが一応、実験は継続しておこうと運び込んだ。


前の部屋の鍵を返して宿屋を出ると、宿屋の前にルナルーレが1人で待って居た。


「おはよう、1人でどうした?」

「おはよう御座います。約束のお弁当をお持ちしました」


「相談会は今夜からなんだから明日からでよかったのに、もしかしてずっと待ってた?」


「はい!!今夜からなので今日から持って来ました。

レンジさんが何時頃出発されるか聞きそびれた私のミスなのでお気になさらず」


「ごめん、寒かったろ?受付に預けるか、部屋に持って来てくれたらいいのに……」


「あの!!それでしたら明日からはお部屋にお持ちしても良いですか?」


「ああ、じゃぁお願いするよ。あと、さっき2人部屋に移ったんだ。

毎日集まるなら椅子が足りないのは不便だから」


「それで今朝は少しのんびりめだったんですね。

でも、すいません。私たちの為に部屋を代わられたんですよね。

余分な出費になった分は私たちでお支払いします」


「いや、いいよ。その分、美味しいお弁当をお願いしていいかな?」


「はい!!レンジさんの分は特別仕様にします!!」


「ありがとう。でも、みんなと同じでいいよ。

だから、みんなのをちょっとだけ贅沢にしてあげて」


「はい!!」


「ところで、2人は?今日は狩りには行かないの?」


「今日は元々休みの予定なので。

ウチのパーティーは長期の依頼でない時は3日働いて1日休むローテーションなんです。

でも、今夜からは相談会をして頂くので2人はギルドで明日からのターゲットと依頼の絞り込みをやってるはずです」


「そうか……ローテーションの休みか……。そのルールも前のリーダーが決めたの?」


「!!はい、そうです」


「そうか、本当に優秀なリーダーだったんだね……。

オレも今夜からの相談会、気合い入れないといけないな!!」


「よろしくお願いします。レンジさんも今日は休まれるんですか?」


「いや、昼までは買い物をして、お昼を食べてから森に行こうと思ってる」


「なら、お買い物について行っても良いですか?それと、お昼をご一緒しても……」


「ルナルーレに時間があるなら勿論良いよ」


「あります!!時間!!」


「じゃぁ、行こうか。欲しい物があるからオススメの店があったら教えてよ」


「はい!!」


満面の笑顔で返事をしたルナルーレと連れ立って買い物を進めて行く。


ルナルーレは流石に長くこの村に居るだけあってオススメの店もどんどん出て来た。

途中、ルナルーレ達の家に寄ってルナルーレのお弁当も持って来て広場で一緒に食べた。


ルナルーレの料理は本当に絶品で一撃で胃袋を掴まれる勢いだった。

一瞬、ルナルーレとの結婚生活が頭を過ったのは内緒だ!!


ちなみに、今日の買い物は今夜からの相談会用品がメインだった。


給湯用の魔導具と4人分の茶器セット、コーヒーミルにドリッパー。

カップ、取り皿、フォーク、スプーンを各4つ。紅茶にコーヒー豆とお茶請けにお菓子。

紙束とメモ帳、鉛筆と赤鉛筆、鉛筆削り、懐かしの革製鉛筆キャップを4人分。


ところで、この世界の紙はほぼA4普通紙だ。ペンもボールペンはないが、万年筆っぽいのは普通にある。先達の影響、技術はやはり凄い。


2人で荷物を運び、新しい部屋に案内する。

買った物を片付けたいと言うルナルーレに鍵を預けて森へ向かった。




▪️▪️▪️▪️




今日は昨日、自信満々で説明したやり方で本当に魔獣を倒せるかを検証する為に来た。


もちろん、ランクアップも必要なのでBランク以上がターゲットだ。


運が良い事に一発でウルトラグレートベアーに出会えた。

今日のは大型トラック位で名前も無くレベルも200しかない。

昨日の“炎の爪”は超強力個体だったようだ。


穴を掘って放り込んで生き埋め、ただ待つのも退屈なので近場にある毒草や毒キノコで食べたら効果がある物を採取して無限収納袋小に集めていった。


そうする内に“感知”の反応が消えたので掘り出す。ちゃんと上手くいった。


少し離れたところにもう1つ大きめの反応があったので、昨日より大分小さい球を持って向かう。


今度はウルトラグレートボアだった。

穴を掘ると、向こうからやって来て勝手に落ちた。

そのまま埋める。猪もちゃんと窒息死した。

クマを出して猪と重ねてまた球にする。


半径100kmには目ぼしい反応がなかったのでもっと森の奥に進み、また、ウルトラグレートベアーを発見、1匹目と2匹目の間位の大きさでレベルも1150と間くらい。


ちょっと新しい狩り方を試してみた。




▪️▪️▪️▪️



「おお、クルスくん、報酬は準備できてるぞ!!」


「ありがとうございます、ビーンズウッドさん。でも、その前に今日も村の外に置いて来てるんで運んで貰えませんか?」


「今日も?」



ビーンズウッドさんとジャックさんを連れて村の入り口まで来た。

今日もゾロゾロついて来たがその中にジャックさんの部下っぽい人もついて来ていた。


村の外には昨日より、少しだけ小さいがやっぱり巨大な球。


「クルスくん、今日は一体なんだ?

オレ達は昨日から寝てないんだが…………」


と、ジャックさん。


「大丈夫です。球にしたから大きいだけで昨日のより1匹づつは小さいですから」


そう言って“グランドディフォメイション”で球から台に。

中から3匹のウルトラグレートベアーと1匹のウルトラグレートボアが出て来た。


「全然……大丈夫じゃない……」


血だらけエプロンの集団が涙していた。


呆然としていたビーンズウッドさんがハッとこっち向いた。


「クルスくん、あの2匹は倒し方が違う様だが?」


「はい、あの2匹は別の倒し方を試したんです。

効率は良かったんですが危ないのでお勧め出来ません」


「それでもいいから、一応教えて貰えるか?」


「はい、教えるのは問題ないですよ」


涙するジャックさん達を残してギルドに戻った。




「気になるから先にどうやって倒したか、聞いてもいいか?紙はいるか?」


カウンターでステータスプレートを渡して、最初から酒場のテーブルに座る。


「今日のは単純なんで紙はいらないです。

ちなみにこれは昨日のジャックさん達の解体を見て思い付きました。


昨日のクマは皮膚が凄く硬いですよね、剣とかが弾かれるくらい。

でも、ジャックさん達はノコギリで切ってました。

つまり、ガリガリやれば切れるんだって思ったんです。そこで……」


そう言って立ち上がると、腰を落とし脇に槍を両手で持って斜め上に向けて構えるポーズをとる。


「ここに槍を作るイメージで“ストーンアロー”を作って、それに掴まってクマに向かって一緒に飛びます。

“ストーンアロー”は“放つイメージ”ではなく、“作るイメージ”と“飛ばすイメージ”の2段階で行うのがポイントです。


そして、狙うのは1番柔らかい目です。

躱されたら距離を取って飛び降りてもう一度です。

叩き落とされたら死ぬので気を付けて下さい。


上手く目に刺さったら槍に連結する様に上に向かって“ロック”を使って“L字型の槍”にします。そうしたらクマの手が届かない位置までよじ登って“グランドディフォメイション”で槍の先端をドリルにします。


その時のポイントは引き抜きにくい様にドリル部分を太くする事です。


あとは、振り落とされない様に頑張ってしがみ付きながら、“グランドディフォメイション”ドリルを回転させてクマが死ぬまで推し進めるだけです。

痛がって凄く暴れるのでしがみついたまま魔法を使い続けるのは大変です、オレも何回も殺されそうになったのでこのやり方はお勧めしません、罠に落とすより効率は良いんですけどね」


一息に説明すると、ざわつく周りの冒険者達……


「昨日の安全な罠から、一気に命懸けの特攻かよ……」


「普通に言ってるけど、常に死と隣り合わせだな……」


「でも、やっぱ魔法の発想はすげぇ!!

“ストーンアロー”に掴まって飛んでくとかありえねぇ!!」


「そうだな、“他の属性のアロー”じゃぁ不可能だが、土属性魔法だから出来る」


「オレ土属性魔法覚えるよ、今日の特攻は無理でも昨日の罠なら出来る。

こんなに役に立つ魔法だったんだからな」


周囲で飛び交う色んな声を遮って、ビーンズウッドさんが声を上げた。


「クルスくんが勧めないのもよく分かった。

だが、どうしても逃げられない時の最後の手段としては有効だ。


もしも、今後も新しい狩り方があったら教えて欲しい!!


んで!!お待ち兼ねの報酬タイムだ!!確認してくれ!!」


大きな声でそう言って、テーブルに皮袋を置く。


中には白金貨2枚と大金貨50枚、2,500万エル、日本円なら2億5,000万円だ!!


『よし!!白金貨ゲット!!これでいざという時の貯金効率が上がる!!』


周りから「「「おおぉ〜〜……」」」と、感嘆の声が出ていた。


「ありがとうございます」


「ところでクルスくんはこれからどうするんだ?金には当分困らないだろう?」


「今回の報酬は装備や道具に当てようかと思ってます。

オレはまだ、駆け出しなので。


そうだ!!魔獣の居場所が分かる魔導具って無いですかね?」


「あるにはあるが凄まじく高い。

それにクルスくんなら魔法を覚えた方が良いんじゃないか?」


「ちなみに魔法はどうやって覚えるんですか?


本屋で買った、魔法全集には呪文は載ってなかったですし、レベル5までしか載って無いですし…………」


「魔導書は本屋じゃ売って無いよ、魔法屋だ。


魔導具の材料や魔法薬の材料を主に取り扱ってるが、魔導書も売ってる。


ルーン語と古代語の辞書もそこに売ってるよ。

但し、呪文の発音は誰かに教えて貰わないといけないけどな。


ちなみに、索敵の魔法は“空間魔法”だ。

あと、本屋の本にレベル5までしか載ってなかったのはレベル5までの魔法とレベル6以上を上級魔法として区別してある本だったんだろうな」


「そうなんですね、勉強になりました。

家を買ったら挑戦してみます」


「お!?家を買うのか?」


「はい、Bランクになったら買う予定です」


「今日の報酬で十分だと思うが?」


「Bランクになったら半額なのに、今買ったら勿体無いでしょう?」


「そういうもんか?」


「そういうもんです!!」


「今日の獲物の報酬も明日でいいか?」


「はい、明日で大丈夫です。それと…………」


そう言って、ビーンズウッドさんの前に大金貨を1枚出す。


「頑張ってくれてるジャックさん達にお酒でも振る舞って上げて下さい。

もし、解体が早く終わる様なら皆さんもどうぞ」


そう言って周りを見回すと全員がジャックさん達の手伝いに走って行った…………


1人残ったビーンズウッドさんに、

「……何人くらい行きました?」


「……50人はいたな……」


「…………足りませんよね…………」


「……多分な……」


ビーンズウッドさんに大金貨をもう2枚渡してステータスプレートを受け取って宿屋に戻る。

無事にCランクだ。




▪️▪️▪️▪️



「レンジ様!!なんて無茶を!!」

バンッ!!と大きな扉の音と共にルナルーレに怒られた……


肉運びをしていた冒険者に今日のオレの戦闘内容を聞いたらしい。


「心配かけて、ごめん……」


「心配しました……心配しました……」


そう言ってオレの胸で声を殺して泣くルナルーレの頭をそっと撫でる。


入り口で苦笑いのランドとグッサスに視線で入室を促す。


ルナルーレとは昨日出会ったばかりだ。

でも、本気の気持ちを感じて、嬉しさと“本当のオレの強さ”を隠している罪悪感を感じた。

それでも、まだ、本当の事を話す訳にはいかない。

“この国”に勝てると自信が持てるまでは……



ルナルーレが落ち着いたので仕切り直して第一回相談会を始める。


まず、今日の買い物品の片付けをルナルーレにお礼をいい、コーヒーをお願いする。


オレがコーヒーにすると、全員コーヒーになった。


ルナルーレが準備している間に全員分の文房具を配る。

コーヒーが出来てルナルーレが席に座ると文房具の使い道から説明した。


紙束は全体の問題や陣形や連携について書き込み残して行く。


メモ帳は個人用で表面から戦闘が終わる毎にその都度、自分の動きと結果を繰り返す形で書いて行く。

問題点、改善点をこの相談会で考える。


裏面からは、疑問に思ったことや気付いた事をその都度メモする習慣をつける様に言う。

ハテナ顔で頷いていたので少し話す事にした。


「キミたちは昨日、自分達はバカだと言ったが、バカじゃない!!

頭が良いか悪いかは“閃きがある”か“試行錯誤を続けている”かだ!!


“閃き”は天性の物だが“試行錯誤”は努力で賄える!!

キミたちは“試行錯誤”を怠っているだけだ!!

ランド、グッサスちょっと立ってくれ」


そう言ってオレも立ち上がり、空いたスペースに行く。


「2人共、目の前にこれくらいのウルフ系の魔獣がいると思って構えてみてくれ」


そして、オレの肩くらいの高さを示す。


ランドは双剣使いらしく、両手に剣持った様に腰を落として構える。


グッサスはタンクらしく、左腕を盾支える様にし右手を後ろに引いて剣を持つ様に構える。


「じゃあ、今度は自分達より遥かにデカい格上のベアー系の魔獣がいると思って構えてくれ」


ランドは顔だけ少し上に向ける。グッサスは顔と盾を上に向けた。


「そう、そう言う事だ!!

なんで構えがほとんど変わらない?

自分達よりデカくて格上なんだ。攻撃よりも回避と撹乱が優先だ。


なら、武器は下げて構えて、一瞬でも速い一歩目が踏み出せる様に体は起こして立つべきだ。


ランドの剣は敵の攻撃を受けるんじゃ無い。

攻撃は全て避けて相手の足を削る為だけに構える。


グッサスの盾も攻撃を受け止めるんじゃない。

受け流して逸らすんだ。


剣は盾で逸らした相手の腕にカウンターを入れる為に構える。

ほら、もう1回構えて」


ランドとグッサスはハッとして構え直す。


ランドは走り出しそうな姿勢で剣先は低く、グッサスも走り出しそうな姿勢で左腕は肘を曲げ少し掲げて斜めに、剣は肩に担ぐより少し低めに構える。


「バッチリだ!!」


そう言って頷き笑顔を向けると、2人も満足そうに頷いた。


「オレは剣を使わないが、考える事は常にしている。

“試行錯誤を続ける”ってのはそう言う事だ。


もっと言えば、その都度相手の大きさや強さスキルは違う。

だから常に考えて動き、戦闘が終わったら本当にそれが最善だったか、もっと良いやり方や動きは無かったかをまた考えるんだ。


ルナルーレは分かるよな?オレのやり方が答えだ」

3人は強く頷く。


「“試行錯誤を続ける”人間にバカはいないよ」


そう言って笑顔を向けると3人も満面の笑顔を返してくれた。




今のアドバイスを直ぐにメモを取らせる。習慣付けは最初が肝心だ。


2人が書いたメモの内容を見て、書き方や書くポイントの絞り方をアドバイスして、明日の狩りの予定を話し合う。


幾つかターゲットの候補を見繕っていたが、先ほどのアドバイスを試したいらしく、“ウルトラグレートベアー”に挑みたいと言って来た。


“ウルトラグレートベアー”はパーティーが3人になってからは倒していないらしいので、普段から狩っている“ビッグベアー”と“グレートベアー”で新しい動きを何度か試してから挑戦するように言うと、ルナルーレから「レンジ様は危険な方法を格上の魔獣相手に試している」と、強い、強い批難を受けたので「ルナルーレが心配なんだよ。オレも“ウルトラグレートベアー”に挑む時には付いていって良いかな?勿論、手出しはしないから」と、自分でも歯の浮く様なセリフで誤魔化した。


ルナルーレは大変ご満悦だった。兄達も満更でも無さそうだった。


ランドとグッサスが手足を削って、ルナルーレが援護とトドメを行う動きを確認する。


前もって近くに落とし穴は準備しておき、通常の攻略が無理なら撤退して落とし穴に誘き寄せる。

撤退して誘き寄せる動きも“グレートベアー”で練習しておく様に伝える。


ルナルーレの魔法に関しては明日の朝、早起きして見せて貰ってアドバイスする事になり、第一回相談会はお開きとなった。





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