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第12章 聖剣②

聖剣②





▪️▪️▪️▪️





西の魔王に無事勝利した後、応接室に戻って、“クルス商会優遇政策”の締結と、“聖剣”の聴き取りだ!!


まずは、最初に提示した書類にサインをさせて、ゴラジスに直ぐに商会本部に持って帰らせる。


「そこまで、急がせる必要があるのか?」と聞く魔王に、「なら、ウチの従業員の残業代もドルレア王国に請求しても良いのか?」と、聞き返すと、大人しくなった。


本当は、ギルナーレ王国とハルマール王国にさっさと情報を流すためだが…………




「じゃあ、本題に入ろう、お義理兄さん。

まず、聞きたいのは、“聖剣”を警戒して、自分自身で戦場に立たないってのは本当なのか?」


「チッ、最初っから聖剣の情報が狙いで来てやがったのか。

まあ、仕方がねぇか…………


そいつは、オレが“聖剣にビビって、戦場に出てこねぇ”って、噂の事だろ?

合ってるとも言えるし、間違ってるとも言える」


「で?」


「チッ普通、ビビってるって話しを半分認めただけで、引き下がるもんだろうが。


合ってる部分は、オレが聖剣にビビってるって事だ。

アレはヤバ過ぎる。


間違ってる部分は、オレが戦場に出ねぇのは、ハルマールの連中を絶望させない為だ」


「?敢えて、ハルマール王国の士気が下がらない様にしてるって事か?」


「まあ、そうとも言える。

別にハルマールの兵士どもを絶望させない為じゃねぇ。


兵士も含めた、ハルマールの“人種族”を絶望させない為だ。

“聖剣の使い手を覚醒”させない様にな」


「…………人種族が絶望すると、聖剣の使い手が覚醒するから、ワザと一進一退を繰り返しながら、少しづつ進行してるって事か…………」

 

「そう言うこった。

王都ハルマールまでは、まだまだ時間が掛かるだろうが、聖剣の使い手が現れねぇ様に、ジワジワ行くしかねぇ」


「なるほど…………。


人種族が絶望したら、聖剣の使い手が覚醒するって言うのは、勇者が聖剣使いの勇者になるのか?

それとも、いきなり聖剣使いの勇者が現れるのか?

どっちなんだ?」


「……ソイツはわかんねぇな……。

良い発想だが、覚醒の危険もあるしな…………」


「そうだな、勇者が聖剣使いの勇者になるなら、勇者だけをみんな殺してしまえば解決だが、もし、反対なら、勇者が皆殺しにされた絶望が覚醒の引き金になり兼ね無いだろうな。


じゃあ、次は、聖剣使いの勇者は、聖剣使いになった瞬間からヤバいのか?

それとも、聖剣使いになったら、どんどんヤバくなって行くのか?どっちなんだ?」


「聖剣使いになった瞬間からヤバい!!

そんで、時間が経てばもっとヤバくなる」


「そうか……で、効果は?」


「…………人種族の命を使った分だけ、相手よりも強くなれる。

命の重みは、残り寿命と使用者への親愛で決まる…………」


「…………それ、聖剣?」


「ああ、聖剣は、名前が聖剣なだけで、人種族が大事なモンを犠牲にして、一発逆転する為の魔剣だ。


2,000年前、大魔王様を殺しやがった、あの勇者を正直言ってオレはそんなに恨んじゃいねぇ。

アイツは、既に大分壊れちまってた。


そりゃぁそうだろう、アイツは敵よりも仲間や家族を殺し続けてやがったんだからな。


オレとやり合った時も、明らかに戦えねぇ女子供も居やがった。

ソイツらを殺しちゃぁ、オレに斬り掛かって来て、それでも無理ならまた、ソイツらを殺すの繰り返しだ。


そん時の感じだと、おそらく、寿命が発動時間で、親愛が強さの底上げだろう。


オレん時でさえ、親しげな女を殺してやがったんだ。

大魔王様相手なら、それこそ自分の女か、ガキでも殺してんじゃねぇかと思うがな」


「…………そこまでして、勇者は大魔王を殺さなきゃいけなかったのか?」


「いんや、そんな必要は全く無かっただろうよ。勇者にはな」


「勇者には無かったが、当時のハルマールにはあったって事か…………」


「必要性って意味なら、当時のハルマールにもねぇよ。

だが、必要かどうかってのと、欲望はイコールじゃねぇって事だ。


聖剣使いの勇者は、ハルマール建国に利用されただけだ。

そもそも、聖剣の覚醒も大魔王様のせぇじゃねぇ。


グラールの当時のクソ皇帝のせぇだ。

あの野郎のせぇで覚醒した聖剣使いを利用して、領地を奪う為に大魔王様を殺しやがったんだよ」


「…………つまり、多くの人種族を絶望させさえすれば、聖剣使いが現れるが、覚醒した聖剣をどう使うかは、勇者次第って事か…………


なら、例えばだが、ハルマール王国が全ての国民の苦しむ様な政策をとって、聖剣使いの勇者を覚醒させて、勇者にとって最も大切な人物を人質にとって、自分達に都合良く、言う事を聞かせるって事が出来る訳か」


「ああ、例えでも何でもねぇ。2,000年前は正にそうだった。


ついでに言うなら、その方法で女子供を殺させ続けて、罪の意識に耐えられなくなってから、最後のパワーアップの為に人質だった連中もステータスアップの道具にしてやがったがな」


「……聖剣、最悪だなぁ〜〜……。

なあ、聖剣を盗んだり、壊したりして無いのも理由があるんだよな?」


「ああ、本物の聖剣はハルマール城の地下にあんだが、聖剣使いじゃねぇと抜けねぇんだ。

それ以前に透けてて触れねぇらしい。


部屋ごと壊そうと爆破もしてみたが、時間が経つと勝手に修復しやがる。

土属性魔法で埋めても一緒だった」


「もうちょっと、詳しく教えてくれ。

部屋は地下なんだよな?出入り口は1箇所だけか?」


「ああ、あの城は元々は聖剣の神殿があった上に建ててんだが、神殿へ続く入り口は1箇所だけだ」


「爆破した時は、その入り口の階段も爆破したのか?」


「いいや、あん時は部屋だけで、階段までは爆破してねぇ。


だが、火属性魔法の魔導具を部屋中に設置させたから階段にも被害はあった筈だ。

それでも、爆破の1週間後には入れる様になってたって聞いてる」


「今まで、地下を掘って聖剣の神殿に侵入しようとした事は?」


「いや、ソイツはやってねぇ」


「階段に入れなくする様な魔導具を設置した事は?」


「それもやってねぇ…………」


「その神殿を丸ごと、“ディファレントスペース”に入れようとした事は?」


「…………それもやってねぇ……。てか、そんな事出来んのか?」


「出来るだろ。

あの城だって別の地下があるかもしれないが、城ごと引っこ抜けばいいじゃないか。


その神殿の広さも壁の厚みも知らないが、ハルマール城よりは狭い範囲だろ?

そうじゃなきゃ、あの城の基礎が組めないだろうからな。


なら、城を引っこ抜いて、掘り出しさえすれば、そこら辺の家を入れるのと一緒だろ?」


「……………………おまえ、なに言ってんだ?」


「失礼ながら、発言をお許し下さい。


お館様、ハルマール城を引き抜くとなれば、お館様か原初の方々が数名でなければ難しいかと思われます」


「そうか?多少壊しても良ければ、アイツらでも抜けると思うけど…………」


「おまえ、“原初のモノ”云々言ってる時点で無茶苦茶だからな?

意味が分かんねぇからな?」


「まあ、いいか。

聖剣は厄介そうだから、対処はオレの方でもやってみるよ。


ところで、お義理兄さん。

もし、ハルマール王国に聖剣が無くなったら、ハルマール王国を攻め滅ぼすのか?

それとも、和平交渉か?どっちの予定なんだ?」


「…………聖剣が無くなったらってのは考えちゃぁ、居なかったが、王都ハルマールまで攻め切って、聖剣の確保が出来たら、グラールに攻め込まれねぇ様に占拠する予定だった。元々はな」


「それは、和平でも良いと受け取っても良いのか?」


「ああ、もしおまえが聖剣を手に入れたとして、その後、オレがハルマールを攻めたら、おまえ、ハルマールの味方すんだろ?」


「オレもハルマール王国は好きじゃ無いから、味方はしないけど、戦争の邪魔は本格的にするかもな」


「そりゃぁ、必ず負けるハルマールの味方をするって事だろぉが。


まあ、どっちにしろ、おまえとやり合ったんじゃぁバカを見るのはコッチだからな。

聖剣の問題が無くなんなら、休戦って事になんだろうよ」


「そうか、それは良かった。

オレは個人的には、お義理兄さんの事が嫌いじゃないから出来れば仲良くやりたいところだからな」


「あぁ〜ん?それが、あんな政策を押し付けた相手に言うセリフかぁ?」


「オレが聖剣の問題を解決したら、軍事予算が減らせる。


その金を融資に回して、農業や牧畜が発展して行ったら、国民の生活が安定するし、ゆくゆくはそれを貿易に回しても良い。


国全体としては豊かになるんだから、別に良いじゃないか」


「チッ、最初っから、そこまで折り込み済みって事か」


「まあ、オレにも聖剣はどうにもなんないかも知れないから、何とも言えないけどな。

どっちにしろ、結果だけは伝える様にする」


「そうだな、上手く行ったらめっけもん位で考えとく」





こうして、ドルレア王国での、“クルス商会優遇政策”と“聖剣の情報”を手に入れた…………






▪️▪️▪️▪️





その日の夜。我が家で緊急会議を行った。

西の魔王の前では、軽い感じで話したが、聖剣はヤバ過ぎる。



最高幹部だけで無く、幹部も全員を招集して、妻達やシロネコ達も呼んだ。


オレが緊急で、ここまで勢揃いさせるのは初めてだ。

全員が、緊張した面持ちで集まった。


「みんな、悪いな、急に呼び出して。だが、最優先事項が出来た。

全員に動いて貰う可能性が有るから、情報を共有しておきたい。

シエラールル。西の魔王との話しをそのまま、伝えてくれ」


まずは、西の魔王から得た、聖剣の情報を全員に伝える。

聖剣の悍ましさに、驚愕する者も大勢いた。


最終的には、オレの“ディファレントスペース”利用案を聞いて、幾分かは落ち着いた様だが、動揺はしていた。


特に、人種族である、ルナルーレや、元大魔王の十将のキスラエラとブランドの動揺は大きい様だ。



「聞いての通り、聖剣はヤバ過ぎる。


最も大きな問題なのは、万が一、覚醒した聖剣使いの勇者が現れた場合、オレが戦う事が出来ない事だ!!


西の魔王の話しを補足するなら、おそらく、自分と親しい者を殺せば、聖剣使いの勇者はそれだけで、相手のステータスを上回る事が出来る。


但し、ここに居る者には分かるだろうが、単純にステータスだけが高くても勝てる訳じゃない。

だから、何人も殺して、勝てるまで、ステータスを上げ続けるんだろう。


オレが戦えない理由はそこだ!!


もしも、聖剣使いの勇者が、オレと敵対して、親しい者を1人でも殺して、オレを上回るステータスを得た場合、確実に力をコントロール出来ない。

そうすると、この星が壊れる可能性が高い!!」


全員が驚愕の表情をする。

いつも落ち着いて居るセバスも、一緒に西の魔王の話しを聞いた、シエラールルもシロネコ達“原初のモノ”も含めた全員だ。


当然だろう、オレは遠回しに、オレにはこの星を壊せる程の力があると言っているのだ。


「だから、なんとしても、聖剣を手に入れて、封印か破壊をする必要がある。

それも、覚醒する者が現れる前にだ。


第1案としては、現在進めている、“クルス商会優遇政策”の条件として、聖剣を要求する事だ。


これは、通常であれば通らない話しだが、西の魔王の言う様に、聖剣が持ち出す事が出来ないモノなら、交渉次第では可能性がある。


但し、交渉が上手く行っても、オレの考えた“ディファレントスペース”に持ち込む方法が上手く行かない場合もあり得る。



第2案は、地下を掘って盗む方法だ。

こちらも、第1案と同様に、“ディファレントスペース”が上手く行かない場合があり得る。



第3案は、聖剣の神殿へ入れない様に、地下室周辺か、最悪、城ごと封印する。

これは、成功する可能性は高いが、クルス商会とハルマール王国が対立する可能性が高い。



第4案は、覚醒した聖剣使いの勇者を暗殺し続ける方法だ。

これは、第1案から第3案までの成功があったとしても、覚醒者の手元に、聖剣が現れてしまうシステムであった場合も同様だ。


もし、この第4案を行わざる負えなかった場合は、申し訳無いが、幹部に命掛けで取り組んで貰う事になる。


出来るだけ早く、第1案を実行に移したいから、第2部隊は、ハルマール王国が交渉の席に着く様に扇動して貰うのと並行して、第3案を採用せざるを得なかった場合の早期対応が出来る準備を進めてくれ。


第1部隊とメイド部隊は、交渉が早期に行われる様に、根回しをするのと共に、“聖剣と同様の能力を持った魔導具”が他に存在しないかの情報収集を行ってくれ。


第3部隊とビルスレイア組は、済まないが、現在進めて居る研究を一時停止して、覚醒した勇者を早期に発見する方法と、魔導具との親和性を下げて、覚醒状態を解く方法が無いかの研究を行ってくれ。


最悪の場合、魔導神が行った様に、この星からの脱出の必要も有る。

オレはその為の準備をしておくから、完成し次第、全員への運用方法の伝達も早急に行ってくれ。


以上だ!!」


「「「ハッ!!」」」


配下達全員が立ち上がり、即行動を開始する。




残ったのは、妻達、シロネコ達とセバス、シエラールルだ。


「と、言う訳だ。悪いけど、しばらく働き詰めになる」


「いいえ、それよりも何かレンジ様をお手伝い出来る事は御座いませんか?」

妻達を代表して、ルナルーレが聞いて来る。


「そうだな、なら家族構成に合わせた家の間取りと生活に必要な物の一覧を作って貰えるかな?


一般の家庭と、貴族なんかの使用人を雇っている場合の物も頼む。


広くなっても構わないから、ワンフロアでの間取りにして欲しい。

生活に必要な物は、ちょっとした掃除道具や食器なんかも細かい内容の物を頼む」


「はい!!お任せ下さい!!」


「主よ、我らにも何かご命令は無いだろうか?」


「そうだな…………。

前に言ってた、“原初のモノ”の中にも殺されたヤツもいるって話しだったけど、どうやって殺されたかを知ってる“原初のモノ”がいないか、聞いて回る事って出来るか?」


「ふむ……それならば、クリシュナか聖樹が同行すれば、知っている者がいれば話してくれるだろうと思う」


「それなら、私とアナンタ、ケートーのチームと、聖樹とナラシンハ、シェーシャ、ネーレウスのチームで分かれて聞いて廻りましょう。


私は、私の事を慕ってくれている子達の居る所は知ってるから、先にそっちから回ってみるから、ナラシンハ達は、居場所の分からない、フラフラしてる子達を探しながら、当たってみて」


「うむ、では、その様に手分けしよう」


「じゃあ、それで頼む。

ある程度、情報が集まったらか、“聖剣と同様の能力”の可能性が有る物の情報があったら教えてくれ」



こうして、最悪の魔剣“聖剣”への対策が始まった…………





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