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第11章 祭り③

祭り③





▪️▪️▪️▪️






誕生祭報告会の翌日は、製造ラインを製作して、人員の分配を行って、今日は説明会だ。



牧場用は、単純に結界柱の簡易版だ。


タブレット型の管理端末と、2mの柱が2種類。

上下30m、横に100mの結界を張る柱と、上下30mの所に100m四方の結界を張る柱だ。


本当に簡易な結界で、Sランクの魔獣なら破れる上、水も空気も通さないので、日々開閉して、ちゃんと管理をしなければならない。


但し、価格も安価だ。広い農場になると大量に必要になるが、それでも、万が一の予防策に欲しいと思える程度の価格だし、魔獣被害が出て大きな損失になるよりも余程いい。



養殖場用もほぼ同じだ。

海底に柱を立てるので、下が10m、上が80mの設定になっている事と、横の結界が網状になっている事だ。


海流やプランクトンを通す為だが、小さな生き物も通れてしまう。

その為、こちらも管理はしなくてはならない。これも安価な設定価格だ。


段差や隙間が出来にくい様に、以前作った“液体だけ吸い込むディファレントスペースバック”の応用で、“指定した範囲内の土と石だけを水平に吸い込むディファレントスペースチリトリ”を購入者には、設置面積に応じた期間、無料で貸し出す事にした。



続いて、農場用はいわゆる、ビニールハウスだ。


こちらも管理用のタブレット型の魔導具と、2m四方の透明な白龍の鱗の板に組み立て用の枠が付いている。

これも安価にする為、一度組み立てて起動するとバラせない。


完全設置型なので、扉用のパーツと、空調用のパーツ、温度管理のパーツが取り付け可能になっている。

もちろん、管理と水遣りに人手が必要だ。


クルス商会の商品なので、全て魔力電池で動くところは共通だ。



今回の商品がここまで中途半端な内容なのは、価格を抑える事と、猟師や漁師の仕事を奪わない為だ。

と、いうところまでを一気に説明した。



会場からは、「中途半端か?」とか、「十分すぎるのでは?」、「安すぎないか?」

などなど、疑問の声もあったので、質疑応答タイムに入った。



まず、性能については問題無し、唯一の質問は、「安価な結界柱を盗賊がアジト等に使うのでは無いか?」と、言う物だ。


最低サイズが100m四方なので、街中では使えないが、確かに、山中のアジトや人里離れた家では使えるだろう。


これについては、上下に色を付ける事にして、発見次第、盗賊団を皆殺しにして、使っちゃダメだよと、警告する事にした。


今日は一般の従業員も多いので、「クルス会長、やっぱこえぇ〜」とか、「でも、盗賊が悪いんだし……」とか聞こえたが、もちろんそこはスルーだ。


基本、真偽の魔導具で犯罪や転売での購入は出来ないので、問題はそんなに起きないだろう。


商品の説明については、この後、実際にビルスレイア女王国で設置するので実物を見せながらになった。



価格については、もう少し高額にすべきと言う意見が結構あった。


最初に導入が進む予定のビルスレイア女王国の幹部達も交えて協議した結果、国が導入時の分割融資を低金利で提供する事で、オレの設定額の1.2倍の価格で決着した。


昼食を挟んで、オレの“リターン”で昨日行った、牧場、保養地、農場を回って実際に使って見せて、従業員達にも設置をさせてみた。


概ね問題無く、若干のステータスが必要な様だが、最悪、冒険者ギルドに設置の以来を行って貰えば良いだろうと言う事になった。



本部に戻って一旦解散。

ビルスレイア幹部組は残って貰う。


「今日の設置分と、残りの国営農場への設置の代金だが、出来れば、ビルスレイア女王国から出して貰いたい。


もし、難しい様ならビルスレイア女王国が支払ったていでオレが支払うから、帳簿だけ帳尻を合わせて貰ってもいい」


「国庫からのお支払いで問題御座いません。

間違いなく、今後は増収が見込める投資になりますので」

と、宰相が答えた。


「そうか、なら、そうしてくれ。

それと、農場と牧場の警備の人員を移動させたら、兵の余裕が幾らか増えるか?」


「はい、おそらく300〜500人程の余裕が出来るかと思います」


「なら、人員の分配を頼む。

今後、出店が増えて行くから、出来れば第1部隊向きの人員をオレの直轄に回してくれ。

人選は宰相の目に任せる」


「ありがたき幸せ!!

最良の配置となる様、務めさせて頂きます」


「あと、南の魔王との会談はどうなってる?」


「はい、ギムルスタ王に王都ビルスレイアにお越し頂くか、キスラエラ様がここサーラールの街に秘密裏に来る形にするかの返答待ちとなっております」


「?キスラエラがこっちに来て、国の面子的に問題無いのか?」


「国の面子と言う意味では、公式に王都に来て頂いた方が良いのですが、キスラエラ様が出来るだけ早く進められたいと、仰られまして……


現在、ギルナーレ王がこのサーラールの街にご滞在中である事と、ここであれば、クルス様のお膝元ですので危険も少ないから問題無いと…………」


「そうか……キスラエラ、宰相達には、あの事を言ってないな?」


「…………はい…………」


「クルス様、あの事とは?」


「ああ、今回の国王会談の後の計画なんだが…………」


と、先日の3ヵ国への優遇政策促進計画とキスラエラとの結婚発表の計画を話す。


「…………と、言うわけだ」


「…………つまり、キスラエラ様は、クルス様との結婚発表を行われたいが為に、会談を急がれていたと?」


「……ええ、そう……」


「どうしてそのお話しを先に仰って下さらなかったのです!!

それならば、そうと言って頂ければ、使者など使わず、私共がご一緒して、即会談を行いましたものを!!」


「はっは……キスラエラ、愛されてるな!!」


「!!ご、ご主人様!!」

恥ずかしそうに、むくれた表情をしているが、内心の嬉しさが隠せてない。


「まあ、しかしだ。

それだと、今回の農場への仕込みが無駄になるから、晩餐会の後にして貰いたいとこだな」


「ハッ!!確かにそうで御座いますな。

キスラエラ様のご結婚発表が出来る喜びにうっかりしておりました。申し訳御座いません」


「いや、謝る必要はない。

キスラエラを大切に思ってくれて、こちらこそ感謝している。

ありがとう」


「勿体無いお言葉で御座います。


キスラエラ様、本当に素晴らしいお方を見初められましたな。


大変、不敬では御座いますが、大魔王様を超えられるお方はクルス様を置いて他に居られますまい。

力だけでなく、その御心も、貴方様への愛も」


「もちろんさ、特に愛は!!な?」


「はい!!」

涙を浮かべながらも、はっきりと笑顔で答えるキスラエラはとても美しい…………

キスラエラの為に、サクサク計画を進めるとしよう。



オレは、宰相に王都ビルスレイアで南の魔王を迎える準備をする様に指示して、オレの考えた作戦を伝える。


宰相は驚いていたが、国境の警備担当や南の魔王の移動ルートの各地の領主への伝達を早急に行う為、即行動し始めた。



オレは今日の夕食にブランドを呼ぶ様に連絡させた。





その日の夕食は、妻達とシロネコ達にクリシュナとミケネコのメンバーに、ブランドを交えて行った。


「ところで、シロネコ。ミケネコは、次の合同訓練に参加出来そうか?」

オレの質問に、シロネコ本人よりも、ブランドがクワっとこっちを見て反応した。


「主との訓練は、聖樹にも良い刺激になるとは思うが、さすがにまだ、他の者と合同でと、いうのは難しいと思う」


「そうか、見学だけなら、意味がありそうか?」


「それならば大いに意味があるだろうと思う。

我の動きを見るだけでも、普段とは、また、違うであろうからな」


「そうか、なら、ミケネコは見学に来ると良い。

クリシュナはどうする?」


「私も参加して良いんだったら、したいです!!

ナラシンハ達から話しだけは聞いてるから」


「なら、クリシュナは参加だな」

と言って、ブランドを見ると、まだかまだかと目が言っている。

しかし!!ラムを見て、


「ラム、ブランドの様子はどうだ?」


「お父様は、まだ、私の家との往復ではありますが、毎日、ミミッサス村の訓練場に通われておりますわ」


「訓練だけなのか?狩りは?」


「其れが、誕生祭の準備で、皆さんかなり大量に狩って来られていた様で、まだ、狩り自体が再開されてない様でして…………」


「そうか……じゃあ、ブランドはまだウチに来て、“何も仕事をしてない”んだなぁ〜……」

チラッと、ブランドを見ると、驚愕の表情をしている。


『もしかして!!ワシ、参加させて貰えないの?!』と、顔に書いてある。


そこで、ガリーがフォローを入れて来る。


「お館様、お館様の合同訓練は大変有意義なモノです。

特に今回は、最近行えていなかった分、通常の2回分の4日間行うご予定のはず。

そんな時にブランドさんが参加出来ないのは、ルールとはいえ大変不憫です」


「まあ、訓練好きのガリーは、そう思うかもしれないが、無理に今回参加しなくても、次回もあるんだぞ?」


「いいえ。きっとブランドさんも多少、時間的に難しい内容であったとしても、参加のチャンスが欲しいに違いありません。


ですので、例の件をブランドさんにお任せになってみては如何でしょうか?」


「うぅ〜…ん、しかしなあ〜……。


ブランドはウチに来る為に、ギルナーレ王国の爵位も将軍の地位もすでに返上してしまってるからなぁ〜……。

無駄足になるかも知れないからなぁ〜……」


また、チラッとブランドを見ると、グワッと立ち上がって、


「クルス様!!ガリー殿が仰られていたチャンスを是非お願いしたい!!」


「そうか?そこまで言うなら、一応教えるが、無理なら無理だと言ってくれよ?」


「いいえ!!必ずや、成し遂げる所存!!」


「じゃあ、話すが、今、南の魔王からキスラエラ宛に国王会談の話しが来てる。


ビルスレイア女王国としては、南の魔王に王都ビルスレイアへ正式に訪問して貰いたいが、さっき話した合同訓練は7日後に行う予定だ。


時間が無いので、南の魔王に王都ビルスレイアに来て貰うか、キスラエラが極秘にサーラールの街に行くかの選択を南の魔王に委ねたんだ。


しかし、オレも出来れば王都ビルスレイアへの正式訪問をして貰いたい。


オレが協力して、クルス商会の転移の魔導具を使えば簡単なんだが、ラムから聞いていると思うが、オレとキスラエラの夫婦関係は、まだ公式発表していない。

だから、公にキスラエラへの協力が出来ないんだ。


そして、ここからが、ガリーの言っていた、時間的に難しい任務なんだが、明日、早急に南の魔王に王都ビルスレイア行きを決定して貰って、2日で王都ビルスレイアまで行って、2日間、会談と視察をして貰って、2日で帰って来る事が出来れば、ブランドも7日後の合同訓練に参加が可能なんだが?」


「お任せください!!

必ずやヤツを王都ビルスレイアに訪問させ、期限内に戻って来てご覧にいれます!!」


「ちゃんと、会談も行わせるんだぞ?往復させるだけじゃ意味無いからな?

南の魔王を夜通し走らせても構わないから、会談の時間はキチンと取らせる様にな」


「はい!!お任せ下さい!!」


「あと、いつも言ってるが、オレに迷惑が掛からない様にな?

南の魔王との揉め事は全て自分で解決してから帰って来るんだぞ」


「もちろんです!!

クルス様の合同訓練の邪魔だけは絶対にさせません!!」


「いいか、ブランド。合同訓練だけじゃない。

オレに迷惑そのものが掛からない様に自分でなんとかして来るんだ。分かったな?」


「畏まりました!!

クルス様のお手を煩わせる様な事は絶対にさせません!!」


「よし、なら任せる!!

明日からは走りっぱなしで、まともに食事が出来ないかも知れないから、今日はしっかり食べてくれ」


「はい!!ありがとうございます!!」


と、言ってゴリゴリ食べ始めた。


ビルスレイア女王国の宰相に伝えたのはこの作戦だ。

『ブランドを使って、南の魔王に走って行かせる作戦』だ。


馬車でチンタラ向かわせたら、何日掛かるか分からないが、南の魔王とブランドのステータスなら、丸1日、寝ずに走れば着く距離だ。


オレは愛する妻の結婚発表で喜ぶ顔が早く見たいが為に、魔王を一晩中走らせる事にしたのだ。


そして、こっそりとアドバイスも入れる。


「そうだ、ブランド。

魔王が部下を連れて行かない訳にはいかないだろうが、お前と魔王が全力で走ったら誰も着いて来れないよな?」


「!!確かにそうですな!!」


「なら、“ディファレントホーム”を使える部下の“ディファレントホーム”に大勢詰め込んで、ソイツをおまえが抱えて走れば、より早く着くんじゃないか?」


「おお、それは名案ですな!!」


「更に早い方法は、南の魔王にオークションで買ったオレが作った剣を装備させたら、ステータスが2倍になる。

だから、南の魔王におまえと“ディファレントホーム”を使ったヤツを担がせて走らせる事だ。


この時、気を付けないといけないのは、おまえは絶対に“ディファレントホーム”に入ってはいけないと、言う事だ。


何故なら、南の魔王はおまえと違って急いでいない。

おまえが見張ってないと休憩したり、夜に寝たりするかも知れないからな!!」


「なるほど!!さすがクルス様です!!」


「最後に注意しとくぞ。

まず、どんなに早く着いても、明日の夜は、オレ主催の晩餐会があるから、絶対に来てはいけない!!絶対にだ!!


そして、今のアドバイスも含めて、今回の訪問をオレが指示した事も絶対に言ってはいけない!!絶対にだ!!


あくまで、おまえは個人的に親切で王都ビルスレイアへの往復を手伝ってあげる。

ただ、それだけだからな!!」


「分かりました。

あくまで、ワシが個人的にヤツを王都ビルスレイアに運びます!!」


「ああ、よろしくな」


非常に力強く頷くブランド。


まあ、説明するまでもないが、ラムもガリーも勿論仕込みだ。

ガリーの迫真の演技は、ほぼほぼ本心だからに違いない。人選も完璧だ。


笑顔でお義父さんをパシリに使い、魔王を休憩も睡眠も無しで走らせようとするオレを、クリシュナだけがジト目で見ていた…………


しかし、クリシュナはシロリュウの有り難いお話しを頂いていたので、全く問題無いだろう。


後は、ブランドが上手くやれるか祈るばかりだ。






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