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第11章 祭り②

祭り②





▪️▪️▪️▪️






クルス商会誕生祭の翌日、ミミッサス村で、配下を集めて誕生祭の後夜祭だ。

後夜祭とは言っても昼過ぎからドンチャン騒ぎをするだけだが…………




夕方になって、みんなが出来上がった頃、この後夜祭のメインイベントの1つ、料理選手権の決勝戦が始まった。


決勝に進出したのは、妻達の中では、キスラエラ1人、最高幹部の中では以外な事にセバス1人、第1メイド部隊からマルスと、第3部隊のゴズンギの4人だ。



審査員は5人、オレとルナルーレ、第2メイド部隊のサラステとシャンシェ、第1部隊のルークレンだ。オレ以外はベスト8で敗れたメンバーだ。


1段高い審査員席の前に4つの屋外調理場が並ぶ。


司会のリンドレージェが、


「それでは、これより、料理選手権、決勝戦を開始致します。

制限時間は30分。作る料理は1品のみです。


5人の審査員の多数決で勝者を決め、同点の場合は同点決勝を行います。

それでは、よ〜〜い、スタート!!」



開始と同時に4人が目にも止まらぬ動きで、調理を始める。


キスラエラは魚を捌いているのは分かるが、他の3人は、食材が一体何なのか、見ただけではサッパリ分からない。


おそらく、大きな魔獣の一部なのだろうが、特にゴズンギの調理している物体は、ド紫だ!!

通常、ブドウ以外では認められない様な色をしていて、まだ動いている。


セバスの調理は、なんだか見ていて怖い。

いつもの背筋の伸びたピンっとした姿勢で、一歩も動かず、視線すら動かさずに、手だけが縦横無尽に動いている。


オレにも出来るし、セバスが可能な動きなのは分かるが、絵面的に怖い。


キスラエラは、食材を炒め始め、マルスは揚げ始め、ゴズンギは大きな鍋を掻き混ぜている。

セバスは不明だ。



1番手は、キスラエラのパエリアだった。

オレが米派な事と、最初に量を食べさせる2段作戦なのだろう。


相変わらず美味い!!オレは愛されている!!



2番手は、ゴズンギのつみれのすまし汁だった…………。

あの、紫の蠢く物体から、どうやったらここまで澄んだ透明な汁物になるのか、全く分からない…………


つみれを割っても、紫要素は一切無い…………

そして、味もとても繊細な魚介の旨味がスッと喉を通っていく。



3番手は、マルスの串揚げだった。

一品一品、キチンとそれぞれ下味が付いており、各食材にマッチしていてとても美味い。



最後はセバスだ。

ドーム状の料理を割ると、半熟卵の様に、トロッとしたソースが溢れて来て、中には5色の球状の白玉団子の様な物が入っていた。


セバスの言う通りに、ドームの部分に球とソースを乗せて食べる…………

美味い!!何なのかは良く分からないが、めちゃくちゃ美味い!!


魚の旨みを感じさせつつも、柔らかい味わい。

おそらく、最も味の濃いであろうマルスの料理を見て、敢えてその後に持って来たのだ。




優勝は全員一致でセバスだった。

大歓声の中、そのまま、賞品の希望を聞く事にした。


「セバス、おめでとう!!とても美味かった!!」


「有難う御座います」


「賞品は決まってるんだろう?」


「はい、宜しければ、次に生まれて来る子に、名前を付けて頂きたく…………」


「それは、黒火一族の次の子供という意味か?

それとも、セバスに子供が出来たっていう意味なのか?」


「後者で御座います」


「そうか!!おめでとう!!」

そう言って、セバスの手をとって強く握る。


「有難う御座います」

そう言ってセバスもしっかりと握り返して、深く頭を下げた。


「で、相手は?」


「はい……」

セバスは、オレから視線を逸らせて、オレの後ろを見る。

オレも視線を追うと、審査員席のシャンシェが立ち上がって頭を下げた。


「相手はシャンシェか?」


「はい」


シャンシェは、黒火一族のおっとりした雰囲気の20代半ばくらいに見える女性だ。

スタイルは抜群!!シエラールルといい、セバスの趣味が見え隠れするが、そこは良いだろう。


シャンシェを手招きして、こちらに呼び、

「出来るだけ、良い名前を贈れる様に、しっかり考えておく!!元気な子を産んでくれよ!!」


「「有難う御座います!!」」

今日1番の大歓声が上がる。


子供の出来にくい、この世界では、とてもめでたい。

仲間内なら尚更だ。



「よし!!とても、盛り上がってる所で、昨日の屋台競争の結果発表だ!!」


オレの声と共に、ローラス社長が壇上に上がって来る。

賞品は1位だけだが、雰囲気作りの為に5位から順番に発表された。


5位は、リムのドリンク店。

大きな拍手に、リムとチームメイトは、嬉しさ半分、残念半分だ。

4位は、第1部隊の毛皮店。

3位は、第3部隊の魔導書店。

2位は、第1部隊の串肉店。

そして…………


「それでは、今回のクルス商会誕生祭、屋台売上第1位…………」

ローラス社長の発表を、全員が静まりかえって、耳を傾ける。


「第2メイド部隊と第3部隊の合同チーム。

“クルス様の名言Tシャツ店”です!!」


会場が割れんばかりの大歓声に包まれる中、オレだけが「…………え?」と、なっていた……



販売しているのも見た。

繁盛しているのも見たが、まさか1位がアレとは…………


“クルス様の名言Tシャツ”とは、要はオレが妻達に言った口説き文句をイラスト付き、文字のみの2種類で描いたTシャツだ。


イラストは、写真か?と、思うほどの完成度で、セリフも第2メイド部隊が直接本人達から聞いたのだろう一言一句間違い無い…………


売れているだけでもイヤだったのに、まさか1位になる程出回ってしまうとは…………


脳裏に、ブームが去って、フリマアプリで売られる、自分の口説き文句のTシャツが思い浮かび、なんだか無性に寂しい気持ちになった…………



しかし!!1位は1位だ!!

次回は禁止確定商品だが、今回は1位だ!!


気を取り直して、拍手で迎え、賞品の希望を聞く。




「それでは、もし宜しければ、私達の娘に会って頂けないでしょうか?」

「…………は?」




第2メイド部隊や第3部隊には、ビルスレイア女王国から、支店、本部経由での出勤組が多くいる。

黒火一族と違い、普通にビルスレイア組には家庭のある者もいるからだ。


彼女達はそんな家庭の有る者達で、“同じ悩みを持つ母”のチームだった。


彼女達には全員娘がいる。成人前の本当の10代の娘だ。

魔族の国の成人は、マチマチだが、基本的に30歳が多い。10代なら本当に子供だ。


そんな娘達がオレに憧れているらしい。

まあ、アイドルとか憧れのスポーツ選手とか、そんな感覚だろう。

オレはビルスレイア女王国では有名人だし。


普通であれば、ただそれだけの事だが、なんと、自分の母親がその憧れの人のところで働いているのだ。


なら、『もしかしたら会う事が出来るかも知れない』と、考えるのも、まあ、あり得る事だろう。

しかし…………



「…………事情は分かったし、別に会うのも構わないが…………

ただ会いたいだけなら、昨日の誕生祭に正規ルートで呼んで、オレが店を見に行く時に会わせれば済んだんじゃないのか?」


「「「!!!!」」」


「何か、他の理由があったのか?」


「いいえ!!

……ただ、その様な畏れ多い事を思い付かなかっただけで…………」


「そんなに畏まらなくていい。

おまえ達がちゃんと働いてくれている事は知ってる。


昨日も見てただろうが、一般の従業員もサーラールの住人も結構気兼ね無く話し掛けて来てただろ?

オレにとっては彼らよりも、おまえ達、直轄の部下の方が大切な存在だ!!

もう少し、肩の力を抜いて、接してくれて構わない」


「「「クルス様!!」」」


1位の10人だけで無く、あちらこちらで、跪かれた。

結局は、なんだか全員が跪く。


まあ、いいか…………


「キスラエラ!!」


「はい!!」


「今回の優勝チームと、その家族を招いて、ビルスレイア城で晩餐会をしよう。


セバス、折角だから、今日の決勝メンバーで、晩餐会の料理を頼む。

シエラールル、日程の調整と、お嬢さん方の衣裳の手配をしてくれ」


「「「畏まりました!!」」」


「!!そんな!!クルス様、宜しいのですか?」

チームメンバー達もオタオタしている。


「頑張った部下を労うのは、上司の務めだ!!

遠慮なく家族全員呼んだらいい!!


みんな!!優勝チームに拍手!!優勝おめでとう!!」


そう言って、オレが拍手をすると、全員から、大きな大きな拍手が贈られた。

優勝チームの面々は泣き出す者もいた。いや、みんな泣き出した。







▪️▪️▪️▪️






翌日は、誕生祭の報告を受ける。


屋台の売り上げと、収支報告を受けたが、最下位はキスラエラの衣料品店だった。


女性物の衣料品だったので、よく見ていなかったが、アレはキスラエラの古着を売っていたらしい。

そして、全く売れない事で、キスラエラの服装のセンスの悪さをシエラールルがスパルタで教えていた様だ。



そして、トータル売り上げは12兆5,000億エル。

殆どが、オークションの収入で、オレが作った物と、海底ダンジョンで拾って来た物を出品しただけなので、ほぼまるまる利益だ。


屋台で使った材料費など微々たるモノで、基本は元々あった食材や材料を使っている。



今回の誕生祭は、商会では無く、オレの個人主催だったので、各ギルドへの税金も掛からない。


魔導具類も、基本、発掘品なので、魔法ギルドに登録もしていない。

12兆エルを売り上げた、1周年記念剣もどうせ複製は不可能だろうと、登録していないので、丸儲けなのだ。


一応、運営費として、20%を商会に入れる事にしたので、そちらは商業ギルドに税金を納める事になる。


商業ギルドにだけ税金が行く様にしたのは、これで、クルス商会のギルドランクがSになるからだ。

思わぬ高収入だったので、この際に上げてしまう事にした。



我がクルス商会も現在世界に7つしか無いSランク商会の仲間入りだ!!




オレが金を大量に持っていても仕方ないので、オレの直轄の者には100万エルづつ、ビルスレイア女王国所属の者には50万エルづつ、一般従業員と外部諜報員には10万エルづつ臨時ボーナスにした。


オレは、10倍で提案したが、さすがに多すぎると、ストップが掛かった。

今後の運営の為にも、ある程度の貯蓄がある方が良いのかな?と、幹部達に従った。




続いて、誕生祭中のトラブルについての報告を受ける。


来場客同士の揉め事が27件。

若干、殴り合った者もいた様だが、大した問題にはならなかったらしい。


こちらは、問題が起きた現場に到着した際には、「お客様方の事情は分かりませんが、クルス商会会長主催の祭りで、揉め事を起こされるのですか?」と、言ってバッチリ殺気を送ってOKと、指示していたので、基本、到着と同時に解決した。



屋台にイチャモンを付けて来た案件が7件。

いずれも、キスラエラとラムの屋台だったので、シエラールルと、ラムの神対応で解決。

今後、辛い人生を送る貴族が7家出来た様だが…………



そして、店休日を襲撃されたのが、ハルマール王国の戦争最前線のガルンの街だ。


店舗裏口を破ろうと頑張っていた所を支店長と主任2人が向かって、13人の強盗を確保、ただの強盗で裏に誰も居ない事が確認出来たので皆殺しにして、証拠写真と共に警備詰所に死体を持って行かせた様だ。


この街はやっぱり治安が悪い。

未だに、現地採用体勢が取れず、第1部隊で運営される非常に残念な店舗だ。


唯一の救いは赤字覚悟で出店したが、売り上げ自体は非常に良い事だ。

完全に死の商人としての売り上げだが…………


戦争が終わって、魔族の国との貿易都市になるには、まだまだ時間が掛かりそうだ…………






続いて、後夜祭で決定した、ビルスレイア城での晩餐会について。


参加希望者が37人、内オレに会いたいと言っていた子が11人だそうで、日程は3日後を提案されたので、了承する。


席の配置を聞かれたので、円卓を3卓にして、オレと11人の子供、残り2卓に家族を分配する形で提案すると、オレの横の取り合いになるのでは?と、いう事になり、11人の子供の席順はくじ引きにさせた。


家族側の席には仕切り役でルナルーレとラムリムに入って貰う事にする。


キスラエラは一般には、結婚している事を秘匿しているのと、クリシュナは正体がバレると面倒だからだ。


料理に関しては、オレは基本大皿派だが、今回は大きめの円卓になる事から、コース方式にして、マナーはオレが面倒なので会席風で楽に食べられる様に頼んだ。








誕生祭関連の話しが終わったところで、1件報告があると言う。


それは、ギルナーレ王国からビルスレイア女王国への国王会談の申し込みだそうだ。


オレの感覚では、「それが、どうしたの?」だったが、これは、ギルナーレ王国とビルスレイア女王国の建国以来初めての事らしい。


3人の魔王はそんなに仲が悪いのかと思い聞いてみる。


「キスラエラ、3人の魔王はそんなに仲が悪いのか?」


「もちろんそれもありますが、単純に戦力バランスを取って魔王同士が直接会うのが難しかったからです」


「…………なるほど、ブランドか?」


「はい、あちらが魔王とブランドさんの2人でも、こちらは1個師団を率いねばならず、逆に魔王だけで来るとなると、ブランドさんの配置に合わせて軍を展開する必要がありますから」


「お互いにそれが分かってたから、会わなかったと。

で、ブランドが抜けたから会えるだろって、わざわざ会いに来るのか?会談の目的は聞いてるのか?」


「あちらからの打診では、国の運営について学びたいと…………」


「お館様、おそらくですが、ビルスレイア女王国における、クルス商会への優遇政策について聞かれたいのではないでしょうか?

現在も南の魔王陛下は、ビルスレイア女王国での政策内容を調べられておりますから」


「一昨日、会ったからか?」


「いえ、ラム様、リム様とのご結婚式の後から、調べられていた様ですが、お館様からブランド様への書状が届いて以降、熱心に調べられていた様です」

ガリーが、第1部隊の情報を用いてだろう答えをくれた。


「…………キスラエラ、ビルスレイア女王国としては、どうする予定なんだ?」


「現在、協議中ですが、ご主人様のご命令が御座いましたら、そちらで決定致します」


「なら、会談は受ける様にしよう。良い事を思い付いた!!」


「畏まりました。では、直ぐに対応させます。

ところで、良い事というのは、お訊ねしても宜しいでしょうか?」


「ああ!!」

そう言って、キスラエラを手招きして呼ぶ。

キスラエラの肩に手を回して、2人でみんなの方を向く。


ハテナ顔のキスラエラをそのままに、


「ガリー、国王会談が終わったら、直ぐに、『南の魔王が東の魔王に、クルス商会への優遇政策を学ぶ為に建国以来初めての魔王会談を行ったらしい』と、言う噂と、それっぽい情報を、ドルレア王国とハルマール王国の諜報部に流せ。


実際にどんな話しになるかはどうでもいい。

あくまで、南の魔王がギルナーレ王国にもクルス商会優遇策を取り入れようとしているという印象さえ与えればいい。


ローラス、ギルナーレ王国、ドルレア王国、ハルマール王国から優遇政策検討の打診があったら、ビルスレイア女王国での政策の資料を渡すのと、『1日だけなら、オレが出向いて政策内容を直接聞いてやる』と、言っていると伝えろ」


「「は!!」」


キスラエラはまだ、ハテナ顔だ。

そうだろう、別にここまでは普通に普段からやってる事だ。


思い付いた良い事は、ここからだ。

キスラエラを引き寄せて、


「そして、3ヵ国で、一定の政策が行われたら、キスラエラをオレの妻だと公表する!!」


集まっていた幹部の拍手と祝福の言葉で、やっと自体が飲み込めたのか、キスラエラが静かに泣き出した。




キスラエラとの結婚を隠した理由は大きく2つ。


1つは、オレが支配者側で、魔導具販売が国の支配の下で行われていると国民に思われない為だ。

こちらは、既に解決していると言っていい。


クルス商会の商品価値は完全に国民に認められているし、クルス商会優遇政策は成功だったという支持を受けている。


もう1つは、他国がクルス商会による支配を恐れて、進出を拒まれない様にする為だ。


オレの“キスラエラを脅した事件”は、多かれ少なかれ、他国も情報を得ている。

その上で、オレがキスラエラを娶ったとなると、キスラエラが女王のままでも、オレがビルスレイア女王国を征服したと思われてしまう。


そうなると、国防の為とかで、出店拒否をされる恐れがあったからだ。

しかし、4ヵ国で優遇政策を受ければ、その内の1つの王族と結婚しても、恋愛話しで済むだろうと考えたのだ。






キスラエラと全体が落ち着いたのを見計らって、ローラス社長から質問が入る。


「ちなみに会長。会長の目算では、どの程度の政策内容になるとお考えですか?」


「予想では、ビルスレイア女王国の8割以上の内容にはなるだろうと踏んでる」


「!!そんなにですか?」


「ああ、そうだな…………。

これから話す内容も各国に配る、ビルスレイア女王国との協議内容に組み込んでくれ。

女王がここにいるんだ、嘘にはならないだろう」


「はい、畏まりました」


「じゃあ、ローラス。

クルス商会優遇政策において、国のデメリットはなんだ?」


「……誘致する土地の確保と、魔導具店の商品買取でしょうか」


「そうだ。官僚の手間を除けば、その2つが大きい。

クルス商会は現在、どれほど大きな街でも1店舗しか出店していない。


ウチの店舗程の大型の建物を住民に便利の良い場所に確保するだけでも大きな負担だ。


それに加えて、魔導具の買取も、クルス商会の進出後は価値が下がるのは間違いない。

買取後の不良在庫も大きな負担になるだろう。


これは、ビルスレイア女王国でも実際に行った方法だが、少しでも負担を軽減するには、クルス商会の進出していない国に、クルス商会が進出するよりも早く輸出し切ってしまう事だ。


幸い、3ヵ国、いや、ビルスレイア女王国を含めた4ヵ国には共通の仮想敵国があるだろ?」


「……グラール帝国ですか」


「そうだ。今の出店の流れで行けば、クルス商会は次はグラール帝国への出店になると予想される。

その前に、出来るだけ、グラール帝国に輸出しておけば、不良在庫を捌け、クルス商会進出後にゆくゆくは、不良在庫を多く抱えた事での国力の低下を狙える。


それに、輸出先を1つ失う毎に、不良在庫の価値が下がって行く。

やるからには出来るだけ、早い方がいい」


「確かに仰る通りです。

しかし、3ヵ国が乗って来るでしょうか?」


「断言する。必ず乗って来る!!


まず、ドルレア王国は元々、優遇政策を行う事を前提に情報収集をしていた筈だ。

そうじゃないか、ガリー?」


「はい、現在、前向きに検討されている様です」


「そうだろうな。


おそらく、ドルレア王国はビルスレイア女王国の成功面だけを取り入れる為に、情報収集と協議をしているのだろう。


優遇政策自体を行うのは、決定している様なものだ。

ビルスレイア女王国に遅れを取らない為にな。


そこに、先を越す様に東と南の魔王の会談だ。


西の魔王は南の魔王が決定を下す前に、クルス商会優遇政策を摂ろうとする。


しかし、ここでさっきの条件だ。“オレと会えるのは1日だけ”だ。

なら、必ず、オレと会う日に、優遇政策は決定しなければならない。

何故だ?ローラス」


「その日に決定しなければ、ギルナーレ王国に遅れを取る可能性がある事と、後日になれば、より、クルス商会に有利な条件を提示しなければならないからでしょうか」


「そうだ。そして、もう1つある」

そう言って、キスラエラを見るが、国を治めるキスラエラにも分からないようだ。


「それは、優遇政策は3ヵ国の内、他の1ヵ国でも受ければ、クルス商会が有利に、ドルレア王国が不利になって行くからだ。


まず、ギルナーレ王国が優遇政策を行ったとしよう。

そうすれば、先程言った、魔導具を多く抱える国はまず、ドルレア王国になる。


ギルナーレ王国に出店が進むにつれ、現在のビルスレイア女王国だけでなく、ギルナーレ王国からも大量に輸入されて来る。


そして、ドルレア王国が魔導具で溢れた後に、クルス商会は普通に出店を進めれば、大きく国力を下げる結果になる。

そうなってから優遇政策を行うのは、今行うより遥かにキツい。


そして、ハルマール王国が優遇政策を先に行うのは、もっと分かりやすい。

戦争中の敵国が豊かになるんだ、当然ドルレア王国が不利になる。


つまり、ドルレア王国は、ギルナーレ王国が優遇政策を取る可能性が出ただけで、優遇政策を取る他ない。

そして、オレに足元を見られない様に交渉する他、選択肢がないんだ」



「「「おお〜〜……」」」


幹部達も、オレの強気発言を理解出来た様だ。

本来ここまで強気では行けないが、クルス商会は、武力や裏工作では全く揺るがないからこその強気だ。

最後に、そう付け加えると、みんな力強く頷いた。






「……ところで、シエラールル。

3日後の晩餐会までは予定は無いよな?」


「はい、今のところ御座いません」


「キスラエラ、ビルスレイア女王国には、国営の農場とか、果樹園ってあるか?

あ、あと、海に面した女王の保養地も」


「はい、全て御座います」


「よし!!気分が乗って来たから、ビルスレイア女王国では、農業や魚の養殖なんかも、国を上げてクルス商会の魔導具を導入している事にして、各国に売りつけよう!!」


「会長、農具の販売も手掛けられるのですか?」


「ああ、大型の物だけな。結界柱の応用品だ。

ローラス、明日、工場にその農業、漁業用品の生産ラインを作って、明後日、商品説明会をするから、第3部隊と、大型商品販売の責任者の手配をしといてくれ」


「はい、畏まりました」


「キスラエラ、今からその農場と保養地を見に行こう。

それと、明後日の説明会にビルスレイア女王国の幹部達も参加させてくれ」


「はい、ご主人様」



その後、キスラエラと長閑な牧場デートを楽しみつつ、商品計画を立てて行った。








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