第9章 ダンジョン①
ダンジョン①
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ダンジョン攻略開始から3日、オレ達はまだ300層に居た。
初日はまず、ダークエルフの里の冒険者ギルドで、移動手続きと、ダンジョンへの入場手続きを行って、そのままダンジョン攻略に向かった。
ダークエルフの里は、エルフの里と何も変わらず普通の街で、ダークエルフがエルフとどこが違うのかも全く分からなかったので、面白味が無かったからだ。
肌の色が違うわけでも、耳の長さが違うわけでも、闇魔法特化なわけでもない。
ただ、種族がダークエルフ種族なだけだ。
服装も普通で、“ダークエルフはビキニアーマー”と言う世界の常識も無かった。
そんなわけで、初日は100層まで進み、実験も兼ねて“リターン”で戻った。
この実験を初日に行ったのは正解だった。
翌日、“リターン”で100層に向かおうとして、出来なかった。
100層だけで無く、ダンジョン内に“リターン”で入る事も出来なかったのだ。
中に入って行ってもダメだった。
転移系の魔法もスキルも同一階層内でしか使えなかった。
その後、通信や緊急連絡系の魔導具を試していったが、全て同一階層内しか効果が無かった。
この事を一旦伝えにシルバーウィングに戻って、当初の予定のオレと妻達4人、セバスとリンドレージェに加えて、新規執事のゼグドロとシロネコ達を連れて行く事にした。
1週間くらいで500層以上に進み、その後はどうするか考えるつもりだったが、1万層以内なら、攻略仕切る事にしたからだ。
手順としては、まず、1ヶ月は全員で進み、そこまでで攻略し切れなかった場合は、ゼグドロだけ“リターン”で戻らせ、その後どうする予定かを伝えさせる。
1ヶ月以上かかり、且つ、妻達がついて来られない様になったら、妻達とリンドレージェを戻らせる。
その後、シロネコ達もついて来られない様になったら、シロネコ達とセバスを戻らせ、1万層以上あった場合はオレも戻って来る事にした。
最後に、オレが居ない間は、オレの帰りを待たずに、全ての判断をシエラールルに任せる事を伝えると、
「お館様は、1万層以上、もしくは、それに近い程のダンジョンだとお考えなのですか?」
「あのダンジョンはおそらく、“ディファレントスペース”か、それに近い魔導具が使われている可能性が高い。
それが、定期的に内容変更が掛かるなら、終わりが無いか何処かで無限にループする可能性も十分考えられると思っている。
逆に、1,000層くらいで直ぐに終わるかもしれないけどな」
「畏まりました。では、しっかりとお楽しみ下さい。
こちらの事は滞り無く行っておきます」
「ああ、しっかり遊んで来るよ、よろしく頼むな」
「はい。お気を付けて…………」
と、余裕の有る表情で見送ってくれた。
会議の時は、あれだけ連れて行けと言っていたのに、指輪プレゼントの効果は絶大だなと、思った。
そして、現在300層、ここまで進んで、疑問が出て来た。
オレの“ディファレントスペース内の館”で夕食を取りながら全員と話す。
ちなみに、このダンジョンアタック期間はセバス達も同じ席で食事を取らせている。
家事もオレを含めて分担だ。
「疑問に思ったんだが、最高記録が500層のダンジョンの300層にしては、魔物が弱過ぎないか?」
「そうですわね。
今日のボスっぽい魔物ですらBランクにギリギリ届いているくらいでしたわ。
先日のダンジョンなら20層くらいですわね」
「だよな、だったら今後一気に魔物が強くなるか、500層に何か有るかだな」
「ご主人様、おそらく後者ではないでしょうか。
500層に到達したパーティーは1組だけでは無い様ですが、大魔王様も500層まで行かれています。
その時の話しで『自分には向かなかった』と、仰っていましたから」
「そうなのか?大魔王も500層で断念したのか…………」
「レンジ様、おそらくキスラエラさんの仰る通り、500層に何か有るのだと思います。
2,000年前の勇者の物語の中でも、『勇者が大魔王と同じく500層まで到達した』と言う一節がありますから」
「そうか、勇者が大魔王を超える500層以上に行っていないなら、500層から先に進めなかったんだろうな。
なら、明日はちょっとペースを上げて、499層まで行ってしまおうか。
今のところ、宝箱も面白い物が無いし、一気に進んでしまおう」
「「「はい!!」」」
と、言うわけで翌日は500層への階段の手前で一泊した。
499層もAランクの魔物すら出て来なかった。
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ダークエルフの里のダンジョン500層。
ここは、階段を降り切ると、神殿の様に左右に白い石柱が並び、奥には大きな門、そして、門の手前には一組の机と椅子、机の上には板状の魔導具が数個取り付けられている。
全員で机まで行くと、机にこの層のルールが書かれていた。
1つ、この室内の机、椅子、魔導具、扉を破壊してはならない。
破壊した場合は室内の者全員を強制排出する。
1つ、出題される1万問の問題、その全てを24時間以内に正解しなければならない。
1つ、回答は椅子に座った者のみが行う。途中の交代は認められない。
以上の3点だった。
とりあえず、オレが座って始めてみる。
万が一、トラップだった場合に備えて、シロネコ達も臨戦大勢だ。
椅子に座ると、目の前の魔導具に手のひらのマークが現れたので、そこに手を置いて見る。
「レンジ クルス 男性 28歳。これより、交代は認められない」
との声がした。
「…………第1問、初恋の相手の名前は?」
「…………は?」
「第2問、その相手のスリーサイズは?」
「な!!さっきので答えた事になるのか!!」
「第3問、その相手との今の関係は?」
「喋ったら、そこが回答なのか」
「第4問、ここから太陽の表面までの距離をm単位で答えよ」
「突然、方向性が変わる上に、難易度高いな」
「第5問、今日の天気は?」
「難易度ランダム過ぎだろ、いや、外の情報が分からないから難易度高いのか?」
「第6問、初めて女性と関係を持った場所は?」
「また、突然プライベート質問かよ」
「第7問、初体験の感想は?」
「そんな事聞くか?そもそも、それに正解あるのか?」
「第8問、3+7+6は?」
「無茶苦茶だな、何だこの問題!!」
「第9問、この惑星の質量はこの銀河で何番目?」
「また、難易度上がったし、それに1問もまともに答えてないのに、このまま1万問も続くのか?」
「第10問、…………」
と、続いて行った…………
途中立ち上がって喋っても無反応、座って声を出すと、回答した事になる様だ。
そして、1万問終わるまで、他の人が座ってもリセットされない事が分かった。
「…………これが、攻略されていない理由かぁ〜…………」
「どうされますか?レンジ様」
「とりあえず、2、3日挑戦してみるよ。
その間、暇だろうから、“ディファレントスペース”の扉を開けっ放しにするから好きに過ごしてくれ」
「では、私達はお邪魔にならない様に中に居ますので、必要で有ればお呼び下さい」
ルナルーレがそう言うと、セバス1人残して、全員が“ディファレントスペース”に向かった。
そこからは苦難の連続だった…………
明らかに何処かから見ていて、明らかにイヤな問題を出して来る。
例えば、ルナルーレが軽食を持って来たタイミングで、「第1,153問、第1夫人との今までのキスの回数は?」とか、「第1,154問、第1夫人との初夜での体位を全て答えよ」とか、ルナルーレが恥ずかしがってモジモジしている間中連続でルナルーレとの色々を聞きまくる内容だったり、リムがコーヒーを持って来たら、「第6,323問、第2夫人と第3夫人のスリーサイズの差を上から順に答えよ」とか、「第6,324問、第3夫人の昨年1年間のバストサイズの成長をmm単位で答えよ」とか、リムをイジメ続ける内容など、非常に非常にイヤな問題ばかりだった…………
そして、必ず答えが曖昧な問題が含まれており、オレの“知力”や“スキル 森羅万象”でも、どうにもならない。
3日間で5回挑戦したが、一旦休憩にして、別の方法を考えることにした…………
「はぁ〜〜……こりゃぁ、大魔王や勇者も諦めるよなぁ〜…………」
思わず溢れた愚痴に、ルナルーレとリムが激しく同意する。
「はい!!アレはプライバシーのカケラも無い、とても陰湿な魔導具です!!」
「あの魔導具も、このダンジョンも悪意しか感じません!!」
途中で交代はさせたが、最も長く付き合っていたセバスが言う。
「お館様、おそらくですが、大魔王様も勇者もあの質問の内容に我慢出来ず、魔導具を破壊して退場になったのではないでしょうか?
あの質問に耐えてお答えになり続けられているだけでも、お館様はご立派だと存じます」
「……ありえるな、オレも退場の条件がないなら、このダンジョンごと破壊したい。
特にリムがいた時の質問は完全に嫌がらせだった。
オレのリムをイジメたんだから、破壊されても文句は言わせない」
「お父様……ハッ!!でも、あの時の答えは、冷静且つ正確に!!」
藪ヘビだった…………
「コッホん、でだ。明日からは、扉を壊さずに抜ける方法を試してみようと思う。
扉自体を調べるのと、周りに他の通路がないかと、扉をすり抜ける方法とを調べるつもりだから、全員参加してくれ」
若干不満そうなリムも含め全員が頷いたので、各自に役割を分担して行った。
ちゃんと、その“夜の対応”で翌朝のリムは超ご機嫌だった。
調べた結果、やっぱりイヤらしいダンジョンだった…………
どう見ても両開きの門が上に持ち上がったのだ。
オレがこれを発見した時、シロネコ達を含めた全員が、「そんな!!まさかこんな事が!!」と、途轍も無く驚いていた。セバスでさえ表情に出ていた。
オレにとっては、ギャグ漫画等で、時々あるパターンなので、ちょっとイラッと来ただけだったが、この世界では常識破りのとんでもない事だった様だ。
更に、重さもイヤらしかった。
ここまで、Aランクの魔物すら出て来ていないのに、レベル1万を超えている、妻達ですら持ち上げられなかった。
キスラエラとセバス、リンドレージェは問題無かったが、新規執事のゼグドロでやっとだった。
501層、ここから先は未だかつて、誰も到達していない、未知の領域だ。
門の重さもあり、全員警戒を強めて進む。
今までとは格の違う魔物……は現れなかった。
未だかつて無い宝……も無かった…………
その後、3日で999層まで進んだが400台の層と何も変わらず、一応念のため999層で一泊してから、1,000層に挑んだ。
1,000層を見た瞬間、完全に固まってしまった…………
「これは…………」
「見た事のない建物ですが、街の様ですわね?」
「私は似たような建物を見た事があります。
大魔王様の別荘の一つにこの様な建物がありました」
「……大魔王が?そうか……この建物は、日本建築様式といって、オレの元居た世界のオレの住んでいた国の伝統的な建物だよ」
「レンジ様の居た世界の建物ですか?変わった形ですね」
そう、ここはこの世界に来る直前に見ていた京都の古い町並みの様な、木造白壁に瓦屋根の街が広がっていた…………
但し、街並みだけ。
500層と同じく、魔物の気配も人の気配も無い…………
とりあえず、近くの大きめの建物に入ってみた。
中も土間、障子、畳に庵や縁側。完全に日本の古民家だ。
このダンジョンには、転移者か転生者の誰かが関わっている。
もしくは、現在もここにいる可能性がある。
このダンジョンの危険度を1ランク上げた方が良いだろう。
この世界の常識外、予想外な出来事が起こる可能性がある。
その後、大小3ヶ所の建物を確認してから、中央の大きな寺か神社の様な建物に向かった。
石造りの鳥居を潜り、松に似た木の立ち並ぶ参道を進む。
本堂?本殿?に入ると、中には大きな鏡が1枚有るだけだった。
装飾も立て掛ける物も何も無く、円形の鏡が立っている。
入り口で、警戒体制で全員を待機させて、オレ1人で鏡に向かう。
すると、鏡に映るオレがオレの声で、
「4つの宝玉を4方の塔に奉納せよ」
と、言った。
「宝玉とはどんなモノなんだ?」
と、鏡に尋ねる。しかし、無言…………
「…………おまえ本当に性格悪いよな、友達いないだろ?」
「!!私は性格悪く無いもん!!お友達もいっぱいいるもん!!」
と、鏡の中のオレが怒り出した。
『オレの声で“もん!!”って言うなよ、気持ち悪い!!
でも、チャンスかもしれない、ちょっと挑発しよう』
「本当か?友達だと思ってるのはおまえだけなんじゃ無いのか?」
「そんな事無いもん!!みんな私の事、慕ってくれてるもん!!」
「でも、今まで彼氏は居ないんだろ?1人も」
「!!いたもん!!ちゃんと、お付き合いした事あるもん!!」
「たった1人だけだろ?
それも、『めんどくさい』とか、『疲れる』って言われて振られたんだろ?」
「!!何で知ってるのよ!!あなた!!さては、私のストーカーね!!
私の事、色々調べてたんでしょ!!私が可愛いから!!」
「はんっ、何でオレが。
オレの可愛い妻達が見えないのか?
おまえとは比べ物にならないくらい、“見た目だけ”で無くて“性格まで良い”妻達がいるのに、オレがおまえごときをストーキングする必要が何処にある」
「私だって、性格もちゃんといいもん!!
みんな、良いお嫁さんになれるよって言ってくれるもん!!」
「じゃあ、宝玉が何処にあるのか教えろよ。
こんなだだっ広い街で、どんな物かも分からない宝玉を探させるなんて、性格の良いヤツが人にさせる事じゃ無いだろ?」
「!!でも、そんな事教えたら、ここを作った意味が無いじゃない!!」
「じゃあ、おまえは自分の作った作品を見せ付ける為に、他人に苦労させる、“性格の悪い女”って事で良いな。
なら、ここに居るだけ時間の無駄だから、オレ達は苦労して苦労して、探して来る。
じゃあな、“性格の悪い女”」
「待って!!ちょっと待って!!
教える!!教えるから、“性格の悪い女”って呼ぶのはやめて!!」
「教えるぅ〜?
“性格の良い女”はそんなに上からものを言うのか?」
「教えさせて下さい!!
皆さんが快適にダンジョンを攻略出来る様に、是非教えさせて下さい!!」
鏡の中で土下座するオレ…………
「分かった。そこまで言うなら聞いてやる。
だが、忘れるなよ、宝玉の場所を教えるのは、普通の事だ。
これでやっと、おまえは“普通”だからな。
“性格の良い女”になりたいなら、今後も努力するんだぞ」
「はい!!努力します!!」
「よし、で、何処にあるんだ?」
宝玉の場所は本当に陰険だった…………
何の目印も、ヒントも無い、何でもない民家の中途半端な位置の部屋の畳の中とか(畳の下では無く、本当の意味での畳の中だった)。
場所の説明すらまともに出来ない、何の変哲も無い庭の地中とか。
お茶屋のズラリと並んだ、茶筒の中とか。
極め付けは、民家の井戸の下、水中では無く地中、それも200mも地中だ。
ハッキリ言って、見つかる訳が無い。
場所を聞いて、げんなりしながら、探しに向かった。
最初の民家に向かいながら、シロネコ達に聞いてみる。
「なあ、ただのカンなんだけど、さっきの鏡の中のオレって、アレの中身がハイエルフって事はないか?」
「!!確かに、アヤツと同じ様な喋り方だった!!」
「そうっス!!確かにそうっス!!
ボスの見た目だったんで笑いを堪えるのに必死で……ヘブッ!!」
「主様の予想は正しいと思います。
どうして、ダンジョンに彼女が居るのかは分かりませんが…………」
「そうだな、それにオレ達がエルフの里に行った時には聖樹の中に居たっぽいから、我が家と本部みたいな直通か、遠隔操作だろうな。
それなら、もしかしたら、直通通路か、通信手段が作れるかもしれないな」
オレの話しに3人共同意だった。
いつもの様に、“クルス流体術1”“デコピン空気弾A”で吹っ飛んだクロリュウは、リンドレージェが無駄の無い動きでサッと回収して来た。
変なトラップがあると困るので、一応全員一緒に1ヶ所づつ周って回収し、各塔に置いて、中央の本殿?に戻ると、階段が現れていた。
下の階に降りれる事を確認出来たので、この街を見て周って、珍しい物や使えそうな物を回収して周った。
畳や緑茶、漆喰の壁や瓦など、その内研究する為に結構回収して周った。
その後、一泊してから、1,001層に向かった…………
やっぱりイヤらしいダンジョンだった…………
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1,001層で最初に出会った魔物は、いきなりSランクだった。
そして、その後もSランクの魔物が続いた。
999層まで3桁程度のレベルの魔物しか居なかったのに、いきなり10万オーバーだ。
オレやシロネコ達が出る必要は無かったが、妻達と執事達は念のため総出で対応した。
戦闘に時間が掛かる様になった為、1日50層づつ、キチンと訓練になる様に進んで行った。
10日後、1,500層は500層と全く同じだった。
持ち上げられる門も同じで、重さも同じ。
1,501層からは、Sランクの魔物が複数で現れる様になった。
戦闘に更に時間が掛かる様になったが、オレとシロネコ達は手出ししないまま進んだ。
1日のペースが20層まで下がってしまい、1,660層で、1ヶ月になってしまったので、ゼグドロをシルバーウィングに帰らせる。
ここで、通常使っている“直通ドアの魔導具”と、新たに内容を強化した“新直通ドアの魔導具”と、新規で作った“直通連絡専用魔導具”を持って帰らせる。
実験の結果は成功で、全ての魔導具がちゃんと機能した。
ちなみに、今回の新規魔導具は、このダンジョンを攻略後には、封印の予定だ。
妨害されない様に色々と盛り込んだ結果、オレも妨害方法が思いつかなかったからだ。
その日は休みにして、シエラールルから報告を受ける。
オレがいない事で唯一滞っているのが、孤児院の採用面接だ。
これは必ずオレ自身が最終面接を行っているので現在2人待ちとの事、“直通ドア”が使える様になったので、一旦戻って面接も考えたが、万が一、オレが戻って来れなくなると困るので、今回はダルグニヤンに“変身魔法の魔導具”で、代役を頼んだ。
その他としては、ハルマール王国とドルレア王国の戦争でのクルス商会の商品利用が更に増加していると言う。
こちらもそろそろ考えた方がいいかも知れない。
行き来が出来る様になったので、セバス、リンドレージェ、ゼグドロはしばらくお休みにして、それ以外の最高幹部でのローテーションに戻し、明日からは希望者は攻略に参加しても良い事にした。
翌朝、“ディファレントスペース”の屋敷の前には100人以上居た。
チーム分けを行って、ダンジョン攻略へ。
そこからは、完全にダンジョンの蹂躙だった。
毎日100人以上やって来るので、1日100層のペースに戻り、4日目には2,000層に到着。
ここも、1,000層と全く同じで、宝玉の隠し場所も同じ、但し、オレが持ち出したはずの物は元に戻っていた。
2,001層からは、1,001層と全く同じだった。
魔物の強さ、出て来る配置も同じ。
そして、宝箱は1,001から開けた物は空いていて、無視した物は中身があった。
2,001層から魔物が1匹づつになった為、2日で2,500層に着く。
また、500層と同じ、10日で3,000層に、ここも1,000層と全く同じだった。
3,000層を超えた日の夕食中、
「ご主人様、このダンジョンはやはり、ご主人様が言われていた様に、ループを繰り返す終わりの無いダンジョンなのでしょうか?」
と、キスラエラが聞いて来た。
「いや、おそらくループしているわけじゃ無い。
ループしていると思わせているだけだ。
2,005層で、ほんの少しだけ、位置を動かしていた宝箱が3,005層では元の位置に戻っていた。
これはおそらく、中身が連動しているだけで、ダンジョンそのものはちゃんと下層に向かっているんだと思う」
「いつの間に!!さすがご主人様です。
では、このまま完全攻略を目指されるんですね」
「ああ、そのつもりだ。
ちょっと時間は掛かるが、このまま進む方が全員の良い訓練になるし、そろそろ4人共、レベルアップの実感が出て来てるんじゃないのか?」
「はい、ここに来る前よりもとても強くなりました!!」
「ええ、Sランクの魔物でも、2対1くらいで勝てると思いますわ」
「私も勝てると思います!!」
「私も、久しぶりにレベルが上がって、自分が強くなって行くのを実感しています」
キスラエラは最初からレベル50万を超えていたが、それ以外の3人は1万を超えたばかりだった。
訓練は元々1万を超えてからも続けていた様だが、オレの作ったゴーレムよりも動きが悪い魔物とはいえ、実戦はやはり、レベルの伸びが良い。
新規装備もしっかりと使いこなしていた。
逆に、
「ボス……自分達は暇っスよ……」
シロネコ達はまだ出番が無い。
「これも、おそらくだが、今後、何処かのタイミングで急にまた、魔物が強くなるんじゃないかと思う。
多分、次は、切りのいい階層じゃなくて、中途半端な階層でいきなりだろう。
そうなったら、シロネコ達4人以外は全員観戦になるくらい強い魔物だろうと予想してる。
まだ、時間は掛かるかもしれないが、気は抜き過ぎるなよ」
「主は我らよりも強い魔物が今後、現れるとお考えか?」
「そうだな、同等かそれ以上だろうと思ってる」
「それは楽しみっスね!!
そろそろ、ボスの作ってくれたゴーレムも1対1で勝てそうっスから、ちょうどいいっス!!」
「ほぉ〜……それは、思ったよりも早いな……。
念のため、聞いてみるんだが、ちゃんと順番を守ってるよな?
独占して、使い続けたりして無いよな?」
「「「!!!!」」」
「主様!!私はちゃんと、後ろに並ぼうとしたんです!!
でも、シェーシャが後ろの人達に、『もうちょっと使ってもいいっスか?』って言い続けて!!」
「!!な!!アナンタ裏切るっスか?結局、一緒に使ったのに?!」
「…………シロネコ、言い訳を聞こうか」
「我は、主の判断に全て従う所存だ」
「ナラシンハも何、いい子ぶってるっス!!
ボス!!自分も従うっス!!超ぉ〜反省してるっス!!」
「はぁ〜〜……。まあ、おまえらが使ってたら、他のヤツらは遠慮するだろうな。
そこまで、考えてなかったオレのミスでもある。今回は見逃そう。
だが、今後はちゃんと順番を守れよ、訓練場以外でもな」
「畏まった!!」
「はいっス!!」
「はい!!」
「…………はぃ」
今まで、完全に我関せずだったクロクジラが、最後だけ返事をした。
多分何か罰があったら、無視を決め込むつもりだったに違いない!!
実は結構したたかなのかもしれない…………




