第5章 進出①
進出①
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聖樹暦 20,018年9月3日
次のステップへの準備を進める中、問題が発生した。
今日までは順調だった。
クルス商会 サーラール本店は大成功と言って良かった。
予想していた商材の被る商会からの反発も無く、寧ろ吸収合併して欲しいと言う声すらあった。
会員登録の混雑がひと段落した後、従業員の2次募集を掛けて、吸収合併を希望していた商会の従業員は優先して採用した。もちろん、面接を通った者だけだが。
サーラールの街の運営もラルが頑張ってくれ、オレの噂も相まって街の要職のグレーな人物はほぼ白く、黒い人物もグレーくらいにはなり、黒いままの人物は居なくなった。
と、言っても、粛正や“事故死”は殆ど無く。強い者に従う魔族の常識が役に立った。
孤児院も無事にオレの傘下に入り、大改装済みだ。
6月半ばには、我が家の“シロネコ”の楽しみ、“黒火一族の夏至の祭り”を盛大に行った。
その時にラム達3人を“我が家”に招待して、祭りの準備中に、オレ達は“約束の狩り”に行った。
祭りに使う用の食材集めも兼ねて“スーパーウルトラグレートボア”“スーパーウルトラグレートベアー”“黒竜”“白龍”を狩って周った。
まだまだ、3人では全く歯が立たず、時々魔獣をオリジナル呪属性魔法“超緊縛”で止めて置いて、手取り足取り指導して、オレの魔法補助の下、なんとか狩って行った。
祭りの際には、オレが“異世界転移者”である事やセバス達が黒火一族である事、シロネコ達の紹介をした。
シロネコ達の真名を聞いて、それをオレが従えている事に度肝を抜かれていたので、ついでに、オレの種族が“神”になっている事と共に、「オレ達の間に子供が出来たら、種族は“神子”になっちゃうかもしれないから!!」と、ぶっ込んでおいた。
夏至の祭りの翌週には“再喧嘩祭り”を行った。
この日は事前に周知していた為、最初からラム達と黒火一族全員集合で1対125でのスタートだった。
シロリュウとクロクジラはもちろん見学だ。
7月に入り、本店は店長以外は現地採用で賄える目処が立ったので、南魔王国 ギルナーレ王国 第2の都市 グズンの街への出店を進める。
グズンの街は西中央大陸最南端の海に面した街で、大きな港があるためサーラールの倍くらいの大きさの街だ。
ギルナーレ王国の国土は西中央大陸の南部と南大陸全てだ。
グズンの街は西中央大陸と南大陸を結ぶ要であると同時にギルナーレ王国が世界各国と貿易する上での最大貿易拠点だ。
グズン支店の建物はサーラール本店の肉屋無しバージョンだ。
初期従業員は現地募集はせず、サーラール本店の中から転勤可能者を募って派遣した。
各店舗間に商品運搬の為の“リターンの魔導具”があり、従業員は簡単に店舗間を移動出来るが、従業員寮の同居人には許可していない為、転勤者の家族は別途通常移動をして貰った。
本店で教育を進めながらの準備の為、グズン支店は早々にオープン出来た。
8月の半ばには、初の別国。東魔王国 ビルスレイア女王国 王都ビルスレイアに出店した。
ここでも、我が商会は順調で、次のステップ。“2店舗同時出店”の計画を進めた。
この2店舗は、西魔王国 ドルレア王国最北端のダンジンスの街とハルマール王国南西のガルンの街への出店だ。
“人種族と魔族の戦争の最前線の城塞都市”への同時出店。
おそらく、最初はただの“死の商人”になるだろうが、最終的には数百年続くらしい、しょうもない戦争が終わってくれればと思っている。
そんな計画の会議中に、緊急連絡音が会議室に響いた…………
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タブレット型の“情報読み出し魔導具”から、顔を上げたセバスが代表して報告して来る。
「お館様、王都ビルスレイアの諜報を行っていたゴラジスが女王に捕縛されました」
ブワッと殺気が広がる。
会議室のメンバーが全員、硬直して冷や汗を流す。
「すまん、取り乱した。セバス、続きを」
そう言って、殺気を収める。
「はい、ビルスレイア支店にて、女王近衛兵勤務者の立て続けの高額購入があり、調査の為、ゴラジスとセンシアを昨日より派遣しておりました。
本日は女王城内への侵入を行っており、先程の警報はセンシアからゴラジスの定時連絡の途絶の緊急報告です」
「前回の定時連絡から何時間たっている?」
「3時間です」
ガタッと椅子を倒して立ち上がる。
「オレが行く。セバスは早急に集まる者を連れて、城を囲んで出入りを封鎖しろ。
“シロネコ”、“クロリュウ”、“シロリュウ”、“クロクジラ”!!
おまえ達は、これからセバスに同行し、“元の大きさ”で、街の上空に待機だ。
オレが指示するまでは動かなくていい。住民も威圧しない様にしろ。詳しくはセバスに聞け」
“シロネコ”達も召喚し、セバスに預ける。
「出るぞ」
「「「は!!」」」
そう言って、結界を解除して、ビルスレイア支店に“リターン”、そのまま女王城へと“飛翔”した。
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ビルスレイア女王城は“某夢の国の玉の輿お姫様のお城”をサイズ、範囲共に巨大にした様な城だ。
王都だけあって大きな街だが、街中から見える程、大きな城だ。
そんな女王城の敷地に入り、城が見えてくると、昼間っから“我が商会の結界柱”の結界があった。
愛刀を取り出して、柱を一閃する。
『ゥワン!!ゥワン!!』と、大きな警報が鳴り、光の柱が立ち登る。
ゴラジスの位置は“スキル 感知”で確認済み。
地下に居るので、多分、地下牢とかだろう。
裏庭に周り、“グランドディグ”で直通通路を作る。
魔法に対しての抵抗を感じたが僅かなものだ。
穴が開いたらそのまま駆け込み、壁を殴って中へ…………
中に入ると、ゴラジスは全裸で鎖にぶら下げられてボロボロだ。
左腕と右足もない…………
オレに気付いて、ハッとした後、目を伏せて。
「申し訳ありません」
とだけ、言った。
鎖を切り落とし、“神聖属性魔法”で完全回復して、オレの予備の服を渡す。
オレの開けた穴からワラワラと兵士が入って来ていたので、穴を崩して生き埋めにし、ゴラジスが服を着終わったのを確認して話し掛ける。
「喋らなかったのか?」
「……はい。まだ“命の危険”では無かったので……」
「心配させるな」
そう言って、肩に手を置くと、ゴラジスは目に涙を溜めて、何も言わなかった。
「女王に“少し注意”して帰るぞ。着いて来い」
そう言って、ゴラジスと“リターン”で、女王城の前へ。
まだ、ゥワンゥワンうるさかったので、結界柱を“重力魔法”で10cmくらいの玉にする。
続けて、“重力魔法”で城を上から圧縮して、瓦礫の山に変えた。
ガラガラと騎士や兵士、使用人達が瓦礫を押し除けて出て来る。
オレに気付いて、戸惑いながらも取り囲もうとする中、キンキン声が響いた!!
「いったい!!なんなのよ〜〜!!」
現れたのは、如何にも成金趣味の金ピカ、宝石だらけのドレスに“音楽の教科書”に出て来そうな盛り盛りクルクルの金髪の女だ。
多分アレが女王だろう。
周囲を一瞥して“スキル 殺気コントロール”で、目に付くヤツらを全員尻餅失禁状態にしてから、ゆっくり歩いて近付く。
もちろん、魔王であろう女王?も失禁状態だ。
メイド達にラムリムを加えたメンバー達による“自主的な献身”で、オレの“殺気コントロール”は完璧だ。
ラムリムも“そちら側の人”だった。
目の前まで行って見下ろすと、女王?が、
「妾を誰だと……」
と、言ったので女王だと確信して、オリジナル呪属性魔法“拷問用 無言”をかけ、蹴り上げてから腹を踏みつける!!
「オレはクルス商会の会長のクルスだ。オレの部下が世話になったな!!」
仰向けに踏みつけられて、女王がもがく、流石に魔王の1人だけはあるが、オレの足を退けられる程ではない。
ゆっくりと“拷問刀”を抜いて、暴れる女王の左腕と右足を斬り飛ばした。
「!!!!!!」
絶叫の表情をする女王の頭を掴んで持ち上げ……ようとして、カツラだった様でカポっと外れたので、それをポイっとする。
気を取り直して、クルクルの金髪の中から現れた黒髪を掴んで持ち上げる。
涙を流して口をアウアウする女王に顔を近付けて、
「いいか、オレの部下が調べに来たんだ。おまえは大人しく調べられていればいいんだ。
分かったな?」
髪でぶら下げられたまま、コクコク頷くのを見て、ポイっと投げ捨てる。
ちょうどその時、王都ビルスレイアの空に巨大な影が突然落ちる。
シロネコ達の4つの巨体が街を覆ったのだ。
想像を絶する巨大な魔獣に、周りの騎士達や女王も震え上がる。
オレが見上げると、シロリュウと目が合ったので、手招きして呼ぶと、シロリュウが顔を近付けて来た。
「主様、呼びましたか?」
「ああ、これからゴラジス達に、この城を調べさせるから、悪いんだけど、それまで見張っといてくれ。
もし、おまえ達に何かして来る様なら殺していいからな」
そう言って、シロリュウの鼻先を撫でる。
「分かりました。多少は周りを巻き込んでも良いですか?」
「ああ、ウチの連中に被害が無いなら、多少は構わない。
余りに態度が悪い様なら、ウチの連中だけ残して、この国が無くなってもいい」
「分かりました。任せて下さい」
そう言って、シロリュウはシロネコ達に説明しに行く。
殺気は解いたが、女王達はガクブルのままだ。
「ゴラジス、セバスに連絡して、センシアと数名連れてここを調査しろ。
おまえの装備の回収もしておけ。
終わり次第、シロリュウ達と一旦帰って来い。
オレは先に帰るから、セバス達は戻って会議の続きだと伝えておいてくれ」
「ハッ!!」
オレは“リターン”で帰って、自分でコーヒーを淹れてセバス達を待った……
『……普通は連絡要員に何人か残すよなぁ〜……ちょっと、カッとなり過ぎたな。気を付けよう……』
と、1人寂しく2杯目のコーヒーも自分で淹れた…………
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翌朝、目が覚めると、枕元にシロリュウ、腹の上にシロネコ、ベットの横にクロリュウ、頭上にプカプカ浮いてクロクジラ。
『なんだか、久しぶりだな……』と思いつつ起きる。
昨日の“見張り番”を労って、夜遅くまで話し相手になって、そのまま久しぶりに一緒に寝たからだ。
シロリュウは“終わった後”を見計らって、時々枕元に来るが、他の3人は部屋を割り振る前以来だ。
オレは起こさない様に、そっと部屋を出て、外に控えていたシエラールルと別室で支度をしながら報告を聞く。
「お館様、昨夜、ビルスレイア女王から謁見の申し入れがありましたが、如何致しますか?」
「女王が商会長に謁見?」
「はい、先方がそう申しております。
正しい言い回しであると思いますが?」
「そうか?
……まあいい、今日の午後からなら会ってやると言っておけ」
今日は“我が家の地下工場”で商品ラインナップの追加と変更を予定していた。
従業員から商品デザインのアイデアを募ったところ、なかなか良いものがあったので、製造ラインを追加したり、変更したりするつもりでいたのだ。
ちなみに採用者には追加ボーナスだ。
そうしていると、女王が今日の午後“謁見”に来ると報告を受ける。
製造ライン工事も終わり、昼食を食べ始めると、
「お館様、女王がビルスレイア支店に来たそうです」
「……横の空き地に正座でもさせて、待たせとけ」
という、やり取りがあり、そのまま昼食を取って、ゆっくりと紅茶を飲んで、セバスとシエラールルを連れてビルスレイア支店の会長室に行った。
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会長室に来たのは女王のみ、ちゃんと五体満足だった。
ソファーに座って待っていたが、向かいには座らず、いきなりの土下座から始まった。
「昨日は、クルス様のお怒りに触れてしまい、大変申し訳ありませんでした!!
身も心も全てクルス様に捧げますので、どうか、この、キスラエラ ビルスレイアをクルス様の従僕の末席にお加え下さい!!」
オレは立ち上がると、土下座する女王の頭を踏みつける!!
「あっ……」と、ちょっと嬉しそうな声が聞こえたが、無視だ!!
「理由は?」
「貴方様の御力に感服致しました。
魔王の地位もこの命も捧げます。
貴方様こそ真に忠誠を誓うべきお方です」
「オレの部下に手を出してか?」
「知らぬ事ととは言え、大変な不尊を働き、申し訳ございません。
如何様な罰もお受け致します」
「…………分かった、シエラールル、審査だ」
そう言って、ソファーに戻った。
シエラールルが女王を連れて行ってから、セバスに女王について聞く。
女王は元大魔王の妻で、大魔王直轄の10人の将軍の1人だったそうだ。
大魔王の妻で唯一の将軍だったらしい。
年齢は13,333歳、大魔王没後は結婚もしておらず、子供もそれ以降は居ないそうだ。
元々は研究者肌で、魔法の研究が第一で戦闘は二の次だったらしいが、それでも魔法戦に置いて将軍になってからの5,000年以上無敗だったらしい。
そんな彼女がなぜ魔王になったのか、それは……
“大魔王対勇者の戦争”で大魔王が暗殺された後、10人の将軍の中で生き残っていたのは5人。
その中で現在の南の魔王が自身が新たな魔王になると表明し、大魔王国の再建の為に残りの将軍に傘下に入るよう声を掛けた。
それに賛同したのがラムの父親だ。
しかし、他の将軍達は首を縦に振らなかった。
1人は自由に生きる事を選び、もう1人は自らが魔王に相応しいと言い出した。
それが西の魔王だ。
その西の魔王と女王は元々犬猿の仲だった。
西の魔王は10人の将軍の内、最も多彩なスキルを持ち、極端な“スキル至上主義”だった。
対する女王は“魔法至上主義”の筆頭だ。
そして、南の魔王も肉弾戦を優先する思想だった。
南の魔王が元大魔王国の王都を自身の国の王都だと主張し、西の魔王は自身の出身地を王都と主張した為、最も遠方の大都市を女王は王都として主張した。
それが現在のビルスレイアの街だ。
女王は魔法使いの冷遇を危惧して国を立ち上げただけで、大魔王の没後は研究のみをしていたかったのではないか?とは、セバスの予想だ。
但し、南の魔王と西の魔王がキライなだけの可能性も十分にあるだろうと、付け加えた。
そうこうしていると、シエラールルが女王を連れて戻って来た。
シエラールルが報告を始める。女王はもちろん土下座だ。
「…………以上の結果、問題無いかと思われます」
審査内容は従業員採用の審査のアレンジ版だった。
さすがシエラールルで、オレが確認したいであろう内容は全て網羅して、もっと突っ込んだ内容まで聞いていた。
例えば、「お館様に抱かれたいのか?」「はい!」「求められたらか?自ら進んでか?」「自ら進んでです!!」「どんなプレイが……」等々だ。
「…………後半だいぶ必要無かったが、分かった」
「はい」
シエラールルは「はい」と言ったが、顔には「必要ですよ」と書いてある。
「…………見た目が気に入らない。シエラールル」
「はい、直ぐに」
そう言って、にっこり笑って、女王を連れて行った。
シエラールルが再度連れて行ってから、セバスと今後の女王の利用方法に付いて意見を聞きつつ話しをした。
思ったより、時間が掛かってシエラールル達が戻って来た。
シエラールルは「お待たせ致しました」と、オレの後ろに控え、女王は今度は正座だ。
『なるほど……さすがシエラールルだが、癪だな……顔を上げさせているのも、シエラールルの指示だな……シエラールルは今夜は“残業、お仕置き”だな』
派手なドレスをメイド服に変え、変なクルクル金髪カツラの下の黒髪をストレートにし、ケバケバの化粧は全て落として、あえてのスッピンだ。
“文化祭の出し物がメイド喫茶で仕方なくメイド服を着るクラス委員”、まさに、そんな感じの13,333歳女子高生な出立ちだった。
オレには見抜けなかったが、シエラールルは見抜いたのか、知っていたのか……
確かに、今の“夜の部のメイド”には、いないタイプだ。
と、思いつつも表情には出さず、
「女王、いや、キスラエラ!!おまえを配下として受け入れよう。
但し、オレは魔王になるつもりは無いから、おまえは女王としてこの国がオレの都合の良い国になる様にしろ。
そして、オレの傘下に入った事も口外するな。
あくまで、クルス商会の“商品が優秀だから”優遇処置をとっている事にしろ。
それと、おまえの配下の中で真に忠義に厚い者はこの店の店長を通して審査を秘密裏に受けさせろ。
通った者のみオレが会う。以上だ」
「は!!有り難き幸せ!!今、この時より、この命クルス様の為に!!」
その日の夜、シエラールルを“指名”して、“残業、お仕置き”の為、“呼び出し”た。
すると、シエラールルは入って来るなり、床に手を付いて頭を下げた。
「お館様、この度はキスラエラ様への寛大なご処置、感謝致します」
「…………あの時もそうだが、ずいぶんキスラエラの肩を持つんだな。何かあるのか?」
「はい、“大魔王様と勇者の戦争”の際、私はキスラエラ様の部隊にいました。
尊敬出来る上官でした。そして、命を救われました」
そう言って、シエラールルは、命を救われたエピソードやキスラエラの戦場での武勇等を話していった。
そして、もしも、キスラエラからの勧誘が“黒火一族”では無く、“シエラールル個人”で有ったなら、勧誘を受けていたかも知れないと言った。
「しかし、今では、私への勧誘も無く、キスラエラ様へお仕えしなくて良かったと思います……そのおかげで、お館様にお仕え出来るのですから」
「シエラールル、正直に言ってほしい。
もしオレがキスラエラを殺していたら、おまえの中でオレの評価は下がっていたか?」
「いいえ、まったく。
ゴラジスが囚われたと聞いた時の、お館様のお怒り。
そのお姿こそが私が真に忠誠を誓う主人の最も素晴らしい美徳です」
「…………シエラールル、今後、もしオレと敵対した相手が、殺して欲しくない場合には進言する様に全員に伝えろ。
相手のやった事の程度によるが、進言があった場合は極力善処する」
「…………私のせいで……」
「いや、おまえ“達”の“ため”だ。
オレは部下を大切にする良い上司だからな!!」
「!!ありがとうございます!!」
「ところで、キスラエラの私室をオレが作って、ここと行き来出来る様にするのと、向こうに影武者を置くのと、どっちが良いと思う?」
「……それでしたら、両方とも採用されては?
私室を分割して、影武者用と分けられては如何ですか?」
「そだなぁ〜…そうしようか。キスラエラには、そう伝えといてくれ。
影武者に関しては、用意が難しい様なら、見た目はオレが何とでもするから」
「畏まりました」
結局、その後は“お仕置き”では無く、感謝の“ご奉仕”になったが、それはそれで、とても良かった…………