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第4章 クルス商会①

クルス商会①





▪️▪️▪️▪️




南の魔王が治める“ギルナーレ王国”第3の街、サーラールの街

西の魔王のドルレア王国と東の魔王のビルスレイア女王国との国境の真南に位置し、両国への貿易と防衛で発展した、とても大きな街だ。


その、商業ギルド サーラール支部の受付嬢が目の前で絶叫を上げた。


「レベル9,999ぅ〜〜〜……!!」


ギルド中の全員が驚愕の表情でこちらを見る。


「だから?さっさと登録を進めてくれ」


オレの対応と、その場の雰囲気で、受付嬢はオタオタして、「でも…」とか「えっと…」とか言っている…………





4月も残すところ5日、オレは今日、“計画”の“大きな商売”をとうとう始動する為、商業ギルドに“クルス商会”の登録に来ていた。


1人では無い。セバスとガリー、シエラールルとシェーラの執事2人、メイド2人を連れている。

オレ自身も黒のスラックスに白のワイシャツ、黒のベストで若社長感を演出している。


オタオタして進まない受付嬢に、セバスが助け舟を出すかの様に言う。


「お嬢さん、そんなにお疑いなら、“鑑定”をされては?」


「え、でも、その、スキルに“偽装”が…………」


そう、呟くので、オレは追い討ちを掛ける。


「セバス、この娘は、いったい何を言ってるんだ?」


「はい、お館様。お館様のステータスが高すぎて、少々驚いていらっしゃる様です。

確認も難しいのではないかと…………」


「これだから、俗世の者どもは…………。

分かった。娘、証拠を見せればいいのだろう?

この街を5分で火の海に沈めてやるから、許可を取って来い」


「えぇ〜〜……!!」


オレの物言いに周囲もみんな驚く、そこへシエラールルが、


「お館様。流石にその許可は出ないかと。

お嬢さん、そもそも、商業ギルドでの商業許可証の発行にステータスは関係あるのかしら?」


と、言うと、受付嬢は ハッとして


「いえ、関係ありません!!直ぐに手続き致します!!」


と、逃げる様に裏に引っ込んで行った。


無事に“クルス商会 会長 クルス”となった。




同じ様なやり取りを魔法ギルドでも行った。

まあ、どちらも、ほぼシナリオ通りだ。


今回見せたステータスは



----------


名前   クルス

年齢   27

種族   人種族

称号   魔導王、神獣召喚師、錬金術師、剣王


レベル  9,999

体力   9,999,999/9,999,999

魔力   9,999,999/9,999,999


力    9,999,999

耐久   9,999,999

知力   9,999,999

魔法耐久 9,999,999

俊敏   9,999,999

器用   9,999,999


スキル  

獣操術LV10、錬金術LV10、偽装、鑑定LV10、威圧LV10、話術LV10、幸運LV10、感知LV10、探索LV10、気配察知LV10、気配遮断LV10、料理LV10、全状態異常無効、状態異常反射、状態異常効果無効、、全病気無効、全ステータス異常無効、精神効果無効、虚偽感知、火属性魔法LV10、水属性魔法LV10、風属性魔法LV10、土属性魔法LV10、光属性魔法LV10、闇属性魔法LV10、雷属性魔法LV10、樹属性魔法LV10、時属性魔法LV10、空間属性魔法LV10、神聖属性魔法LV10、呪属性魔法LV10、重力魔法、複合魔法、剣術LV10、クルス流剣術LV10、双剣術LV10、クルス流双剣術LV10、体術LV10、クルス流体術LV10



----------



と、言う内容だ。


今後はこれを人に見せる用に使って行く。


“偽装”をあえて見せているのは、疑わせる為だ。

“本当は弱いのでは?”ではなく、もし、やり過ぎてしまった時に“本当はもっと強いのでは?”と、思って貰う為だ。


今の“偽装”は本来の“偽装”ではなく、オレが新たに作った“スキル 偽装2”だ。

“全ての鑑定、看破のスキル、魔法、魔導具が一切無効”と言うスキルだ。



シロリュウの“聖龍の目”にステータスを見抜かれたので新たに作った。

シロリュウの“聖龍の目”は“全てを見通す”スキルだったので、“全て無効”だと矛盾が起こるかも?と思って、念入りに“全て一切無効”にしてみたら、“聖龍の目”も欺けた。


ステータスを高めにして、スキルも多めに見せているのは、“戦っても力じゃ勝てない”と、思わせるのと、“どんな魔導具を生み出しても不思議じゃ無い”と思わせる為だ。




商業ギルドと魔法ギルドの登録が済むと、セバスに魔法ギルドでオレの作った魔導具の登録を任せて、ギルドを出る。「まだあるんですか〜〜?!」と、“ディファレントルーム”から資料を出し続けるセバスに受付嬢が涙声で叫んでいた…………





次の目的地は“建設予定地”だ。


1箇所目は街の中心からやや北寄り、中央の大通りから1本奥に入った場所だが、かなり広い倉庫だ。

聞いていた通りの条件で、一応周りも見て回って問題ないと、判断する。


2箇所目は北門の直ぐそばで、外縁道沿いのこちらは広い空き地だ。

周りの建物は高く無いが位置的に高層ビルを建てても日照を妨げ過ぎる事も無さそうだ。


どちらも購入して来る様に、シェーラに指示を出して、ガリーとシエラールルと共に低所得者層街とスラム街を見て周る。


ある程度見て周り、この街の低所得者とスラムの住人の生活水準と環境が分かって来た頃、5人の少年少女と3人のいかにもチンピラ風の男達が揉めているのが目に入った。


別にオレは“正義感の強い少年”でも“勇者”でも無いので無視しても良かったが、少年少女の内、少女2人のステータスが目に入り、助ける事にした。


チンピラ風なだけで本当に向こうが悪いとは限らないが、多分間違ってないだろう。



「すいません、どうかされましたか?」


「あぁ〜〜ん?なんだ、てめぇは!!」


『おお〜テンプレ!!なら……』


「通りすがりの者です」


「てめぇにゃぁ、関係ねぇ!!すっこんでろ!!」


「関係あるか無いかは、お館様がお決めになる。さっさと事情の説明をしろ!!」


『はい!!テンプレぶち壊し!!“今日の設定”は終了だって言って無かった。

それにしても、この“テンプレ感”は“この指輪”の効果か?それなら成功だな』


「な、なんだ!!テメェは!!関係ねぇだろうが!!」

「関係あるか無いかは、お館様がお決めになると、言っているだろうが!!

いいから、さっさと話せ!!」


「ああ、もういいよ、ガリー。少し、素直になって貰え」


「畏まりました」


そう言うと、ガリーは一瞬で3人の“膝を折った”。

例えではなく、前蹴りで骨折させた。


痛みを与え且つ逃げられない様にした様だ。仕事が早いな。


「うぎゃ〜〜!!」「いてぇ〜〜!!」「オレの足がぁ〜〜!!」


と、テンプレキャラらしく、それぞれ別のセリフで痛がっているので、“神聖属性魔法”で痛みだけを取る。


「痛く無いかもしれないが、まだ折れてるから立てないからな。

じゃあ、仕切り直しで。


んっん。すいません、どうかされましたか?」


3人がなんだか恐ろしいモノを見るように、オレの笑顔を見て来る。


「えぇっと、このガキどもが役所からの支援金を運んでたんで、奪おうとしてました…………」


「そうなんですね。いつもこんな事をされてるんですか?」


「いえ!!初めてです!!」


「本当に?」


「「「はい!!本当です!!」」」


「そうですか。では、どうして彼らが支援金を運んでいる事を知っていたんですか?」


「ええっと……その、ちょうど役所から出て来るのを見てて……」


「……ガリー、膝は面倒だ、脛にしろ」


「はっ!!」


ガリーが座り込む3人の膝の折れて無い方の脛を踏みつけて折る。


「「「うぎゃ〜〜!!」」」


と、今度は全員合唱のテンプレで応えたので、また、痛みだけ取る。


「どうして知っていたんですか?」


「い、いえねぇ!!言ったら殺される!!」


「はぁ〜…いいですか?よく考えて下さい。今、言わなかったら確実に死にます。

言えば、追ってから逃げ切れば助かります。どちらがいいですか?」


「あんた、このガキどもを助けようとしてんじゃ無いのか?良いヤツじゃ無いのか?簡単に殺すとか言っちゃダメじゃ無いのか?」


「おまえらが死ねば、この子達は助かる。オレは別に良いヤツじゃない。オレはおまえらの命に価値を感じない。面倒だからさっさと殺して構わない。

分かったら、さっさと話すか、喋らないから死にます、か、どっちか答えろ」


オレの冷たい視線に3人は正直になった。





3人の話しを要約すると“悪徳地上げイベント”だった。


子供達はこの街の教会にある孤児院の子達で、場所が低所得者層と高所得者層の境にあり、その土地をドルスンダ商会のドルスンダが強引に手に入れる為、経営破綻に持ち込もうとしているらしい。


土地の所有権は誰に有るのか聞くと、所有権はシスターが持っているらしい。


普通に購入して移転して貰えば済むのではないか?と聞くとドルスンダは非常に悪徳で、更にこの街の領主とも繋がりがあり、まともな方法では勿体無いから、安く買い叩く為に行っているそうだ。


領主と繋がっているから、ビビっていたのか聞くと、ドルスンダは私兵団を持っているらしい。


その私兵団は冒険者ギルドを追放になったゴロツキの集まりで、普段は魔獣を狩ってギルドの代わりにドルスンダが買取、必要な時には今回の様に嫌がらせや暗殺をしているらしい。


魔獣を買い取っていると聞き、ふと気になったのでドルスンダがどんな商売をしているのか聞くと、肉屋、魔法屋、武器屋、魔導具屋を行っていて、肉屋と魔導具屋はこの街の半分の3店舗づつ持っているらしい。


『これか!!“指輪効果”はもしかしてこっちか?!いや、両方かもしれないな!!』


“偶然”から、この街の“魔導具屋の最大手”と、敵対しそうになり、若干ワクワクしながら、子供達に教会への案内をお願いして、ガリーにセバス達への連絡と、ドルスンダ商会の情報収集を頼み、シエラールルと2人で教会に向かった。


もちろん、ゴロツキ3人衆は骨折したまま放置した。






シスターはちょっとキツそうな顔立ちの60代くらいに見える女性だった。

正直、若い女性かおばあちゃんを予想していたので、『あれ?テンプレ展開は?』と少し思った。


シスターに先程の経緯を簡単に話し、中で詳しく聞く事にする。


中に入って驚いた!!

外から見たら、十字架は無いもののイメージ通りの教会風の建物だったが、神像が予想外だった。


ゴッツイ、ムキムキのムサイオッサンの像だった。


こっそりシエラールルに聞くと“大魔王の像”らしい。

教会は“大魔王崇拝”だった…………




お礼を言われて、お茶を出して貰って話しを聞いた。


実は3ヵ月前にも被害があり、先月と先々月はシスターが支援金を取りに行ったが、何事も無かった為、今日は子供達に行かせたらしい。


3ヵ月前は貯蓄を切り崩して凌いだそうだが、もし今回被害にあっていたら厳しかったそうだ。


ドルスンダの買取提示額を聞き、シエラールルに“通話”で“この街の調査員”に確認させると、この土地の条件なら半額以下だそうだ。


そのまま、この土地の相場と、この街の最安の土地にこの教会を移転もしくは建て替えた場合のおおよその金額を聞く。


“通話の魔導具”に驚くシスターに、安全の為なら移転する事自体は問題無いのか聞くと、子供達の安全の為なら仕方ないが、可能なら思い出あるこの場所を移転したくはないそうだ。


そこまで聞いて、この教会のルールを確認して行った。




収入源は何なのか?

教会への寄付と街の支援金のみ。

但し、寄付の多くはこの教会の孤児院の卒院者らしい。


現在の世話係、子供の人数、最大の収容人数は?

世話係はシスターと娘の2人、子供は28人、ベットの数で言えば最大50人らしい。


子供達の卒院の条件は?

基本は各種族の成人までか就職まで。

ごく僅かに養子に行く子供がいるらしい。


孤児院はこの街に幾つ有るのか、孤児はどうやって来るのか?

孤児院はここ1箇所のみ。

孤児がやって来るのは、役所から依頼されるか、シスター、娘、子供達が見つけて来る。


孤児院にいる間にアルバイトなどはさせているのか?させる事は可能か?

働きたくても、孤児で未成年の子供を雇ってくれるところがないらしい。

働けるならば、働きたい子もいるだろうと思うらしい。




「分かりました。ありがとうございます。

オレから1つ、提案が有るんですが良いですか?」


「どう言った事でしょう?」


「オレがこの“教会”を買取ます。1億エルで」


「!!1億エル?どうしてそんな高額で?」


「買取るのが“この土地”ではなく、“この教会の経営”だからです。運営はシスターにやって貰います」


「?なぜそんな事を?」


「理由は2つです。1つはドルスンダ商会の営業拡大の妨害です。

もう1つは人材の発掘です。オレはこれから業務拡大をしていきます。

それに伴って“信用出来る人材”が必要です。その為の投資です」


「…………“信用出来る人材”と言うのは、“子供達を洗脳する”と、言う事ですか?」


「いいえ、洗脳なんて、絶対にしません。洗脳した者では役に立ちませんから。

それに、洗脳した者は、“信用出来る人材”では有りません。

洗脳が解けた時に100%裏切りますからね。


“信用出来る人材”は、オレが直接面接して判断します。


オレが求めるのは、“仲間を裏切らない”、“私欲に走らない”、“仕事に真剣に向き合う”、そんな人材です」


「…………それだけですか?」


「ええ。そこから先の教育は働き始めてからですから。

先程の子供達を見て、シスターはそう言った教育が出来ていると思ったのでこの提案をしました。


暴漢に襲われても、男の子達は女の子達を守っていた。女の子達も見捨てて逃げなかった。


おそらく、怖かったでしょうが、孤児院の仲間の生活の為、お金も必死に守ろうとしていた。

それだけでも、十分、オレにとっては“信用出来る人材”ですから」


「…………少し考えさせて頂いても宜しいでしょうか?」


「ええ、構いません。その前にもう少し、提案内容をご説明しても?」


「!!はい、申し訳ありません。お伺いします」


「では、“教会の経営”の買取後のお話ですが、あくまで“経営の買収”ですので、相場の土地、建物代以外はシスターの物ではなく、教会の運営費です。

そのお金で設備の修繕や拡張をして頂き、収容人員も増やして貰います。


そして、今後は運営費とシスター達の給与も毎月お支払いします。


子供が増え、アルバイトに出る大きな子供が増えて行くと、人手が足らなくなると思いますので、子供達の世話をする人員も雇って頂くことになると思います。


その際も必ず最終面接はオレが行います。

シスターの取り分と設備の修繕拡張の計画書が必要であればご返答の前に用意しますが?」


「いえ、それは大丈夫です」


「では、今の内容を書面にして持って来させます。シエラールル」


「はい、本日中にお持ち致します」


「では、ご返答をお待ちしています。……あ、そうそう。もし、検討中にドルスンダ商会が何か言って来るようなら“クルス商会”がもっと良い条件を持って来た、と言って頂いて構いません。

それでは…………」


そう言って、孤児院を後にした。






▪️▪️▪️▪️





少し遅い昼食と情報交換の為、個室のあるレストランで集まって食事を取る。


全員で席に着き、「食べながら話そう」と切り出す。


「セバス、登録の方は?」


「はい、提出は完了しましたが、量が多いので3日後に結果の確認に参ります」


「不正の監視は?」


「ミャータがアルバイトとして潜入、監視をしています。今のところは問題ない様です」


「分かった。シェーラ、土地の購入の方は?」


「滞りなく完了しています。こちらが権利書になります」


「いや、そのまま持って帰って、“我が家”の方で一括管理してくれ」


「畏まりました」


「ガリー、分かった事まででいい報告してくれ」


「はい、魔法屋1、武器屋1、肉屋3、魔導具屋3、情報通り店舗数と売上も肉屋、魔導具屋はシェア約50%でした。それと、非合法の店が今分かっている段階で2、あります」


「商品は?」

「違法薬物と人身売買です」


「魔王の支配下は3カ国とも奴隷は禁止だったよな。

違法薬物はこの国でか?それとも世界でか?」


「世界的に禁止されている物が2、確認出来ています」


「はぁ〜……真っ黒だな、それは領主黙認か?それとも、領主にも隠しているのか?」


「おそらく黙認です。ドルスンダ商会は領主公認の専用通用路を与えられていますので」


「城塞都市に、1商人の為の専用出入り口かよ。

一応聞くが、専用通用路は申請すれば許可が出るのか?」


「表向きは申請は可能です。しかし、許可を得ているのはドルスンダ商会のみです」


「2人の関係は何時からだ?」


「現領主に代替わりした、1,200年ほど前からです。

その頃からドルスンダ商会も台頭して来た様です」


「セバス、シエラールル、ここの領主との面識はあるか?」


「直接の面識はございませんが、何度か勧誘を受けた事があります」


「私はあります。前領主時代に僅かな期間ですが、潜入しておりました」


「シエラールルから見た、印象は?」


「一言で言えば、“強欲”です。

欲しいモノは力尽くで奪う、気に入れば他人のモノでも平気で奪う。

そう言った人物でした…………」


「…………シエラールルも何かされたのか?」


「……潜入任務でしたので、覚悟の上ではありましたが、当時は私も成人して間もなく、力も含め、対応能力も高くありませんでしたので…………」


「……そうか、それだけでも殺す必要があるな」


「お館様……」


「現領主は公爵だったな。

この国なら、どんな貴族が相手でも正面からなら殺しても問題無かったな?」


「はい、正面から武力での争いであれば、負けた方が“悪”です」


「セバス、現領主が死んだらどうなる?」


「はい、最有力は長男が継ぐ事になると思われます」


「ガリー、長男の人物像は?」


「現領主の劣化版と言ったところの様です」


「ダメだな。他の候補者の数と、その中にまともな統治が出来そうな者はいるか?」


「候補者は7人、その中では次女が最も評判が良く、次いで4男です。

この2人は母が同じだからだと思われます」


「分かった。本部を置く街くらいはクリーンにしておこう。

計画を少し変更する。


シェーラ、商業ギルドに行って“食糧品の取扱い”を追加だ。

ガリーとシエラールルは人員を追加して、情報収集の指揮をとってくれ。


シエラールルは孤児院への書類も並行してくれ。


セバスはオレに付いて来て“野次馬の対応”をしてくれ。

今から“本部”も“店舗”も作り切る事にする」


「「「はっ!!」」」




当初の予定では“多少不思議に思う”程度の日数を掛けて“本部”と“店舗”を建てる予定だったが、オレ自身が忙しくなる可能性が出来た為、今日中に建ててしまう事にした。


みるみる出来て行く大きな建物にギャラリーが集まっていたが、完無視でゴリゴリ建てて行った。






▪️▪️▪️▪️





夕食後、リビングで“店舗”の図面を引き直す。


建物は出来ているが、商材に“肉”を追加した為だ。


ドルスンダ商会を完全に潰す事と、ドルスンダ商会が無くなった場合の供給を減らさない事が目的だ。




ある程度、目処が立ったところで、ガリーとシエラールルが入って来る。

「街の情報収集は夕食時が最も多く集まるから」との意見から“残業”を許可した。





ドルスンダ商会の違法薬物、人身売買の販売先は、魔王の支配下の3カ国とハルマール王国だった。


違法販売の供給を止める事で、逆恨みされるのは面倒だが、脅威に感じる下っ端貴族や中小商会が出て帳尻があってくれればいいか。と、考える事にした。


違法薬物は魔獣の内臓から作られる物で、人身売買の“商品”は誘拐で仕入れているようだ。




領主に関しては、街の評判もこれまでの行いも、シエラールルの意見とほぼ同じ。


領地の運営に関しては、“自身の我儘以外”は、官僚に丸投げ。


官僚の白黒は白2、グレー3、黒5、だった。本当に真っ黒な街だが、“官僚を全粛正”すると運営が回らなそうなので、こちらは徐々に行う事にした。




次期領主候補の2人は、まあ、まずまずの評判だった。


とりわけ良い訳ではないが、悪い部分は「真面目すぎる」や「頭が硬い」などだったので、使い様だと判断する。

この2人だけ他と毛色が違うのは母親の影響の様だった。


2人の母親は、“力は正義、曲がった事が大嫌い、考えるより即行動で有名な公爵”の娘だそうで、同格の家の娘の為、現領主も教育に口出しが出来なかったらしい。


なんでそんな人が悪徳領主と結婚?と、思ったが、「戦って、負けたら嫁ぐ」の約束を守ったからだそうだ。

この街では有名な話しらしい。




オレにとって有益だったのは、領主と夫人の関係は完全に終わっており、領主の“他人に取られたら負けた気がする”と言う理由だけの関係で別宅に住んでおり、さらに領主との間以外の子供もいて黙認だそうだ。

領主が死んだらむしろ喜ぶ可能性が高いと言う。


その他、サーラールの街の肉の種類や調理方法等の情報を聞いて、ガリーとシエラールルの残業を労って休ませた。




“今夜”は、始めて指名をした。

指名したのはシエラールルだ。

嫌な事を思い出させてしまった罪滅ぼし的な気持ちで、出来るだけ優しくした。

シエラールルも珍しく甘えて来た…………








▪️▪️▪️▪️





翌日、店舗に行って地下倉庫に“ディファレントスペース”から魔導具を出しまくる。


黒火一族“初期要員”の6名は、この“クルス商店 サーラール本店”の主要メンバーだ。

その6人に出した魔導具の設置、陳列、在庫分の整理を任せ、オレは肉屋の内装を作っていく。



クルス商店 サーラール本店は5階建の真っ白い大型の建物だ。

1、2階の表部分はガラス張りになっている。


壁は“聖龍の鱗10枚重ね”の“店舗の壁”で、ガラスは“聖龍の鱗10枚重ね”の色素を抜いた“店舗のガラス”だ。


入り口は縦横2.5mの“純鉄とアダマンタイトの合金”の枠と“店舗のガラス”で出来た“両開き自動ドアの魔導具”。


入ってすぐは5mほどの廊下兼エントランスに僅かに休憩用のテーブルセット。

右端にエレベーターの魔導具。


店は左から肉屋、生活用小型魔導具屋、魔力電池屋、生活用大型魔導具屋、武器防具魔導具屋になっている。

各店は壁で仕切られているが、前面は全開。イメージはショッピングモールの専門店街だ。



2階は全面、大型魔導具屋だ。

メインは“自動車の魔導具”で外から見て、2階のガラス張りの中に高級車が並んでいる様に陳列する予定だ。


3階以上は従業員スペースでバックヤードからしか上がれない。

3階は、事務所、休憩室、更衣室、大会議室、3つの小会議室。


4階は従業員の寮。1LDK、バス、トイレ付きの部屋が40部屋と食堂に大浴場。


5階は幹部以外立ち入り禁止区画。

実は会長室と店長室以外は全てダミー情報。

魔導具資料や材料の入手先資料の偽資料保管庫と偽金庫だ。


地下は1、2階共に倉庫で、地下2階には更に下の階への階段があるがその先は無意味な迷路になっている。





6人の初期要員は“5つの店”の主任と店長の配置予定だったが、肉屋が増えた為、もう1人補充して7名の店舗幹部でスタートする。


店長はローラス クロヒ、ホストっぽいキリッとしたチャラそうなイケメンだ。



肉屋の改装が終わり、ローラス店長に内装の飾り付けと、“スラムへの従業員の募集”の手配を任せて、ダルグニヤンを伴って出掛ける。





まず、領主夫人の別宅に来た。予想はしていたがノーアポでは会えなかったので、準備しておいたプレゼントを渡して、気に入って貰えたら会って欲しいと伝言して帰った。


その足で、領主館とドルスンダの表と裏の店舗を周り、一応、“リターン”の備えをして、街のレストランで食事を取る。


食後のコーヒーを飲んでいると、予想より遥かに早く、領主夫人がいつでも会いに来て良いと連絡して来たと、ダルグニヤンに通話が来た。

その際、プレゼントを大変気に入られていたと強調していたそうだ。もう1つ、ご所望らしい。





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