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第29章 魔導神⑨

魔導神⑨





▪️▪️▪️▪️





「私、大きくなったらパパのお嫁さんになる!!」


娘を持つ父親の言われたい言葉ランキングで必ず上位に入るであろうこのセリフ。


オレも初めて言われた時は非常に喜んで、


「楽しみにしてるからな!!」


と、云う、間違った回答をしてしまった…………





ラムとの最初の娘レイム。リムとの最初の娘レーム。

この2人は、妻達との間の最初と2番目の娘だ。


娘達が、「パパのお嫁さんになる」と言うのは小さな子供の内だけで、大きくなれば自然と恋人が出来て、いつの間にかお嫁に行くモノだとオレは思っていた…………



しかし、この2人は幾つになってもそう言い続け、元の世界ではあり得ない事に、母親達が其れに協力的と云うおまけ付きだった…………



2人は母親達から英才教育を受け、しこたまレベルを上げていた。


そして、2人にはオレの“スキル 創造”の一部の様なスキルが発現した。

レイムには“スキル 増殖”、レームには“スキル 模造”だ。



そして、レイム25歳、レームが20歳の時に2人は修行に出ると言い出した。



2人の成人は、ラムリム同様に30歳だろうと思っていたので、そこ迄は面倒を見るつもりではあったが、出て行くと言うのを止めたりはしない。


寂しい気持ちも、もちろんあったが快く送り出した。


しかし、この段階で、既に2人の計画は進んでいたのだった…………





2人を送り出して10年が経った。

其れ迄、完全に音信不通だったのだ。


居場所は分かっていた、2人は我が家から最も近いラットック村に家を買って其処に住んでいた。


だが、家を購入して荷物を運び込んで以降、2人は一度も家から出て来なかったのだ。

厳密には、家の中で作った“ディファレントスペース”から一度も出て来なかった。


その家には住み込みの女中が1人おり、税金を年に一度、自分の分を含めて3人分払い続けると云う事を行っているだけで、それ以外は家の掃除だけをして暮らしていた。


その女中曰く、この家を管理して渡されているお金で税金をキチンと払い続ければ、この家が貰えると云う事で雇われているらしい。

期間は最短で10年、最長で20年の契約らしい。


と、言う報告を受けた…………


修行に向かった先が“ディファレントスペース”の中とは、やはり、我が子かと落胆したものだ…………





そして、10年後に帰って来た2人は、開口一番に、


「「ただいま戻りました、お父様。結婚して下さい!!」」


と、声を揃えて言って来たのだ…………


そして、オレが、


「2人とも…………」


と、断る為の言葉を言おうとすると、


「もちろん、無条件でと言うのではありません」

「私達2人で、お父様に一撃入れる事が出来たら結婚して下さい」


と、言って来たのだ。

こう言われると…………


「ほぅ…………その為の“修行”だったと言う事か…………」


と、言ってしまう…………


今となっては、オレがそう言って興味を持つであろう事も含めて、母親達の入れ知恵だったのだろうと思う…………


そんな訳で、戦う事になったのだが…………


まあ、一撃貰ってしまった訳だ…………



2人が行ったのは一言で言えば、“レベル詐欺”だ。


2人が修行に出た当時、2人のレベルは100万程で、クルス商会のメンバー以外で言うならかなりの高レベルだった。


其れが、10年後にはなんとレベル10億だったのだ。

とんでもなく過酷な修行を行ったのだろうと思っていた。



だが、開始早々、違和感が有った。

暫く様子を見て2人の攻撃を避けていたのだが、どうにもステータスの割には動きが遅い…………

連携はスムーズでしっかり修行をして来た事は伺えるのだが、様子見という感じでも無い…………


そう思っていると、2人が一旦距離を取って、武器を地面に立てた。



「やはり、お父様相手にこのままでは無理な様ですね。レーム、行くわよ!!」

「はい!!」


そう言って、徐に鎧を脱ぎ始める。

そして、2人が脱いだ鎧は、ドゴーン、ドゴーンと、床に放り投げられた。


そのまま、ドゴーン、ドゴーンと、服も靴も脱ぎ捨てて、とうとう2人は下着だけになった…………


『修行と云えば、やっぱり24時間重たい服を着るのは基本中の基本だな!!』と思わずテンションが上がってしまった。


決して、久し振りに見た娘達がいつの間にかスタイル抜群になっていたからテンションが上がった訳では決してない!!



下着姿の2人の娘は、更に、


「「はぁーーーーー!!」」


と言って、全身に闘気を纏った!!

完全に、“某7つの龍の玉を集めるアレ”状態だった!!


更にテンションの上がってしまったオレに、


「「行きます!!」」


そう言った2人は、先程までとは打って変わって、完全にステータス以上の速度で迫って来た!!



レイムの双剣を敢えて躱さず全て去なして、背後から迫って来たレームの槍の穂先を右手の闘気の黒刃で跳ね除けるとレームは勢いを利用して石突でオレの顎を狙って来たので左の闘気の白刃で止める。

するとレームはグッと近付いて来て、息が掛かりそうな程、顔を寄せて来た。


右手の剣を振らせない、双剣相手のセオリーの動きだ。


そして、オレを押し退ける様にグッと力を入れて、距離を取ろうとバックステップをしようとして、オレの闘気の白刃とレームの槍とが離れた瞬間、


ガツン!!


オレの爪先に、レームの槍の石突が決まっていた…………

此処までの戦闘は、全て、2人の演技だった…………



オレが攻撃を受けてしまった理由は、オレが2人に合わせる形で、レベル10億くらいのステータスで対応していたからだ。


普段であれば、同レベルに落としていても、オレの感覚はレベル9000無量大数のモノだ。

攻撃を受ける事は無い。


しかし、2人のレベルは偽装だった…………

本当のレベルは、200兆だったのだ…………


“ディファレントスペース”で修行をして、オレに情報を与えず、偽装したステータスを隠す為の演技をし続け、敢えてセオリー通りの動きをしてから、突然、2万倍の速度で完全な死角を突いて来た訳だ…………


其処に至る迄の種明かしをされて、オレは2人を妻として受け入れる覚悟を決めた…………



レベル200兆は、ウチの連中でもトップランカー達に匹敵する程の強さだ。

一体どうやって此処までに至ったのか?


レームの“スキル 模造”は、同じモノを作り出すスキルで、レイムの“スキル 増殖”は、同じモノを増やすスキルだ。


但し、オレの“スキル 創造”と違い、“現物の材料”が必要なスキルだ。



なので、2人は母親達の助力で、各材料を集め、其れをレイムが増殖させて、レームが模倣して、クルス商会の訓練施設に在るゴーレム作成装置と真無限ダンジョンを“ディファレントスペース”内に作って修行をしていたのだ。


更に、“ディファレントスペース”の機能を活用して、時間延長は1000倍にしていた…………

この10年は、彼女達には1万年の修行期間だったと言う事だ…………


2人の真剣さと愛情を深く感じると共に、“可能性を与える事の残酷さ”を強く感じてしまった…………


なまじ、“オレとの結婚の可能性”が有るから、2人は此処までの無茶をしてしまったからだ。

この2人との結婚を機に、「今後は合同訓練を含めて、オレに攻撃を当てても“結婚はしない”」と公表した。



こうして、「私、大きくなったらパパのお嫁さんになる!!」を実現した、第14夫人のレイムと第15夫人のレーム。

“問題のある恋愛をする子供達”の筆頭と言える2人だ…………



2人は今日も仲良く出撃して、見事な連携でゴーレム達を破壊しまくっている…………





▪️▪️▪️▪️





「お館様、ご報告が御座います」


延々とゴーレムを出していたクスレンが、徐々にジリ貧になっていたタイミングでガリーがやって来た。


「先程、トーナ奥様からお預かりした捕虜からの情報で、3点。


1つ目は、移動惑星内の戦力について、封印されているバケモノが5体いるそうです。


5体とも、新たな種族を生み出そうとした過程で偶然出来てしまった“異常個体”だそうで、理性が無く、周囲のモノを襲い続ける為、封印されたそうです。


但し、戦闘能力は天使を遥かに凌駕しており、クスレン神自身が封印をしたそうです。

クスレン神にも殺す事が出来なかったのではないかと言っておりました。



2つ目は、未確定情報についてです。


移動惑星内には、10ヶ所、クスレン神以外は立ち入る事が出来ないエリアが在る様です。

此処には何が有るか完全に不明だそうです。


そして、1つ目の5体の封印解除と立ち入り禁止区画の内の5ヶ所のロック解除命令が出ている様です。



3つ目は、移動惑星の逃走手段についてです。


“最も近い安全な場所へ転移する”魔導具が備え付けられているとの事です。

但し、此れはクスレン神以外は操作が出来ないモノの様です。


現在、移動惑星内にはネーレウス様と諜報守護部の者が侵入しておりますので、情報を共有し調査を開始しております」


「…………封印されたバケモノと不確定要素か…………

出て来るなら、タイミング的にそろそろか?」


と、オレが呟いた瞬間、移動惑星の各所で爆発が起こった。

なんとまあ、タイトなフラグ回収だ。



「シロクラゲ達には最優先でロック解除がされていない残り5ヶ所の調査をさせろ。

おそらくその内の何処かに、クスレンの奥さん復活の準備が有る筈だ。


其処を押さえておけば、クスレンの逃走の可能性もかなり低くなる。


バケモノ5体は味方も襲う様だから、ゴーレム達との戦闘を確認して情報を集めてから戦闘に入るように、未確定要素の5つは、警戒を怠らない様に伝えろ」


「畏まりました」


「其れにしても、クスレンは本当に本気で来てた様だな。

最初から、物量戦で未確定な切り札迄切って来ていたとはな。



…………やっぱり、兄貴と言う事か…………


…………ガリー、全員に『絶対にクスレンから注意を外すな』と伝えろ。

移動惑星内に居る者にもだ」


「畏まりました…………

お館様、クスレン神に動きが?」


「いや、まだ無い。


だが、“もしも、オレなら”味方がゴーレムだけになった箇所に向けて、大規模攻撃でゴーレムごと焼き払う可能性が高い。


もしも、正体不明のスキルがそう言ったモノだった場合、対処が難しい可能性も有るからな」


「そして、“お館様ならそう言ったスキルも用意している”と、言う事ですね」


「そう言う事だ。

特にバケモノ5体が簡単に死なないなら、バケモノとの交戦中もその対象になる可能性がある」





残念ながら、この指示は杞憂では終わらなかった…………







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