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第3章 黒火の一族②

黒火の一族②





▪️▪️▪️▪️





「まずは全員と面接をする」と言う、オレの言葉から、各地の黒火一族を集める事になった。


集まるまでの間、村長ともう4人をリビングに連れて行き、黒火一族について話しを聞く。


黒火一族は所謂、諜報と暗殺を行う、忍者一族だ。


村長改め、族長は前族長である父親と共に、“2,000年前に殺された大魔王”に仕えていたそうだ。


最低でも2,000歳以上の現族長が4代目らしいので、かなり古くから有る一族の様だ。


前族長は大魔王対勇者の戦いで戦死。

その後、ミミッサス大森林に現族長が生き残りを連れてやって来た。


最初はキャンプ生活の様なモノをしていたそうだが、新たに立った現在の3ヶ国の魔族国の魔王からの勧誘と追撃。子供が産まれ出した事での移動の困難から、より奥地で定住を始めた。


しかし、ここミミッサス大森林は神獣 ナラシンハの治める森だ。

程なく、勝手に住み着いた彼らの元にナラシンハがやって来る。


その時の対応が良かった。

本来ならナラシンハが怒っても仕方ない。

しかし、常に死と隣り合わせの黒火一族は誰一人、怯える事なく、全員が膝を着いて頭を下げて、勝手に住み着いた事を詫びる事で、ナラシンハの興味が引けた。


そして、“夏至の祭”でご馳走を振る舞う事でナラシンハの許可を得た。

その後も時折、魔王からの勧誘や偶然訪れる冒険者達をいなしながら今に至るそうだ。


「なぜ、他の魔王に仕えなかったんだ?」と、聞くと、「大魔王様には到底及ばない器だったのです」と、言う。


「なら、オレでいいのか?」と、聞くと「クルス様は大魔王様をも超える器をお持ちです」と、答えた。


その時、シロネコが「まあ、アヤツも我と同じく“原初のモノ”、我が主には到底及ぶまい」と少し自慢気に言った。


『大魔王も“原初のモノ”だったのか。

なら、“伝説の勇者”はそれを破ったと言う事だ。

オレのステータスも念のため、もう少し上方修正が必要そうだな』




過去バナを聞いた後は、現状の話へ。


今日、一緒に来た53人以外の68人の内、18人は狩に、50人は世界各地に情報収集と出稼ぎに出ているそうだ。


今後は給料はオレから支払い、外に出る者は情報収集を優先させる様にする。

諜報と言えば定番の外部情報員について聞いてみると、“黒火一族の仕組み”について教えてくれた。


黒火一族を名乗るのは、“一族の家族”だけだと言う。

“一族の家族”とは、“一族の血を引き、一族で育てた者”らしい。


黒火一族には、夫婦は存在せず、一緒に暮らしているのは“恋人同士”か、“産みの母子”だと言う。

子供の“教育”は一族全員で行う為、親子で住むのは本当に小さい内だけだそうだ。


一族間での子供は、そのまま“一族の子供”だが、“一族以外の男性との間に子供が出来た女性”は相手の男性を捨てて、一族の元に戻って出産をし、“一族の子供”とするか、“一族を抜けて”、そのまま相手の男性と結ばれるかを選択する。


男性が“一族以外の女性を妊娠させた”場合は、産まれて来た子供は“一族の子供では無い”。


男性も“一族以外の女性”と結婚する場合は、“一族を抜ける”。

一族を抜けると、自分から、一族に接触してはならないらしい。


そして、この“一族を抜けた”者達が、外部情報員になっているという事だった。


現在の外部情報員は、一族との繋がりから、情報提供を行っているらしいので、今後は、情報の内容に応じて報酬を払う様に伝える。


一族の絆を疑っているのではなく、今後の諜報活動に置いて、情報を買って貰う必要が出た時の平等性を保つ為だと念を推しておいた。



今居ない人が全員集まるまで、どれくらい掛かるか聞くと、結界が無ければ明日の朝までには集まる様だったので、結界を解いて、黒火一族の事はシロネコに任せて解散した。






▪️▪️▪️▪️






翌朝、全員集まったと、シロネコが呼びに来たので“我が家の大広間”に行く。


挨拶と共にお礼を言われた。

昨夜は“裏の住宅街”は家具も生活用品も何も無かったので、“我が家の客間”に泊らせた。

絶賛される快適さだった様だ。



まずは、全員を座らせて、自己紹介と、シロネコ、クロリュウ、シロリュウ、クロクジラの紹介をする。

全員、驚いて言葉も無かったが、さっさと進める。



次に、今後の予定と目標、その為の人員の割り振りと役割を説明する。


質疑応答を少し挟んで、面接について話す。


面接では、“鑑定”を使うこと、オレが作った“真偽判定の魔導具”を使うこと、プライベートな内容も聞く事をあらかじめ伝える。


全員に異存が無い事を確認して、面接中に“客間にある物は全て、好きに自分の家に持って行っていい”と、伝えると、どよめいていたので、減った分はまた作るから遠慮はしない様に言う。


最後に、シロネコ達に“食糧庫”への案内を頼み食糧も好きに持って行く様に伝えると、面接を開始する事にした。






▪️▪️▪️▪️





しっかりと行った事もあり、面接は2日かかり、3日目にもう一度“大広間”に集めて、1人1人に仕事を割り振って行った。



まず、管理職を割り振る。



執事長 セバスニヤン クロヒ 

族長を筆頭執事にした。名前を聞いて、思わず『おしい!!』と、叫びそうになった。


「今後はセバスと呼ぶから!!」と、名前だけで執事は確定だったが、能力も素晴らしかったので、執事長にした。


なんでも、父は元族長で母は“大魔王の娘”らしく、血筋的には“大魔王の孫”にあたるそうで、ステータスも、“もう1人の大魔王の孫”を除けばダントツだった。


ちなみに、見た目は60前後だが、年齢は2,206歳。

“大魔王対勇者”の時にはまだ、200歳を超えたばかりの若造だったそうだ。若造?……



執事 ダルグニヤン クロヒ


族長の息子に当たるそうだ。正直、最初から分かっていた。

髪と髭が、白が族長、黒が息子!!と、言うくらい同じ顔だったからだ。


彼の名前も正直『おしい!!』だが、銃士隊を持つ予定が無いのが残念だ。

母は“もう1人の大魔王の孫”で、“大魔王の孫&孫のひ孫”だそうだ。

髪は黒いが見た目年齢は60前後、年齢2,092歳だった。



執事 ガリー クロヒ


黒火の集落を訪れた際に、族長といた3人目のガタイの良い人物だ。


あの時の対応はやはり、警戒していた様であの場の3人が“最強の男性”だった様だ。


彼も非常に高いステータスと、優秀なスキルを持っていた。

彼も“もう1人の大魔王の孫”の子供だったが父は族長では無い。

見た目は40代前半位、年齢は1,200歳だった。



メイド長 シエラールル クロヒ


最強の一角“もう1人の大魔王の孫”だ。

ある意味『おしい!』名前をしていた。


彼女はセバスの双子の妹だそうで2,206歳。しかし、見た目は40代の妖艶な美女だ。


本人が言わなければ、とても双子には見えない。

そして、ダルグニヤンは双子の間の子供だった。


この世界の常識に早く慣れないといけない……。


彼女は各能力も優秀だが、特に“接近戦闘”が優れ、“接近戦闘”だけなら歴代黒火一族最強だそうだ。

なんでも有りならセバスに全敗らしいが、脳筋では無く、セバスの技術が優れているからの様だ。



副メイド長 リンドレージェ クロヒ


ステータスはセバスとシエラールルに劣るが、最も多くのスキルを持ち、魔法も最も多彩なのが彼女だ。


それもそのはず、彼女は最年長の7,314歳、第2位のセバス達双子よりも5,000歳以上年上だ。


しかし、しかしだ!!

彼女はどう見ても女子高生くらい、頑張って20歳くらいにしか見えない。


そして、しゃべり方や雰囲気もその辺の若い子と変わらない。


“ロリ高齢者の代名詞、エルフ幼女の「〜のじゃ」口調”も無い、威厳も無い。


容姿も可愛らしくはあるが、普通、だが、そこが諜報活動に置いて非常に優秀だ。


最年長なのにメイド長にしなかったのは動いて貰う頻度が高い可能性と、やっぱり雰囲気の問題だ。



副メイド長 シェーラ クロヒ


彼女は絵に描いたような、ザ秘書!!だ。

見た目もクールビューティー、能力も管理や戦略に長けていて先を読む事や洞察力にも優れている。


今後の外出時には同行させる可能性の最も高い女性だ。

戦闘力は黒火一族の中では平均よりも高いくらい、見た目年齢は30代前半、実年齢は黒火一族の中では比較的に若い630歳だった。



以上6人が幹部だ。

黒火一族には族長以外の役職的な物は無かったが、シェーラ以外は元々一族の中でもそう言った位置付けに近かったので、すんなり受け入れられた。


この6人には、全体の管理と共にオレが起きている時には常に1人か2人側に控え、寝ている時にもオレの生活フロアに新たに作成した、事務及び通信統括が出来る控室で待機する様にさせる。



但し、ブラック企業にならない様に週1日以上は休みを取り12時間以上の勤務はしない事と食事や休憩はキチンと取ることを伝える。


ガリーから、「訓練は休みになりますか?」と、脳筋な“バナナはオヤツ?理論”が来たので、「訓練したら癒されて、疲れが取れるならそうしろ」と言うと、あちこちで安堵の溜息が聞こえ『訓練が癒しと休息なのか?!』と、思わずにいられない。



『“24時間365日休みも休憩も無く、食事も睡眠も一体いつとっているのか分からない常に側にいる執事”なんて、ありえないだろ!!』と、思っていたが、異世界なら有り得るのかも知れない。




執事3人と子供1人を除いた男性52人の割り振りは、18人が村での農耕、牧畜、狩り等の生活の維持管理をメインに必要に応じて潜入調査要員。


30人が外部調査と今後の“大きな商売”の補充要員。

4人が“大きな商売”の初期要員にした。



女性は計65人、内、赤ん坊が1人、メイド長及び副メイド長が計3人。

メイドは最も多く45人。メイドは家事全般は勿論、潜入調査と必要に応じて、別宅を作った場合の維持の為、多めにした。


女性の外部調査及び補充要員は14人。初期要員は2人だ。



因みに、赤ん坊は0歳で、男の子は見た目5歳の5歳児だったが、27歳男性のオレはこの次だった。


10歳くらいに見えていた女の子達は52歳と54歳だった。

黒火一族は成長が緩やかな傾向が強く、成人は見た目問わず30歳と決まっているそうだ。

2人の女の子は立派な女性だそうだ。




全員に仕事を割り振った後、1人大金貨5枚(500,000エル、日本円で約500万位)を1人1人に配って行く。

赤ん坊の分は母親にだ。疑問を浮かべながらも全員受け取る。



「この金で、生活に必要な物と衣類を揃えるように。

メイド服は日毎に統一される様に、外部に出る者は、その地域だけで無く、近隣の活動も出来る様に衣類や服飾は特に注力する事」

と言うと、セバスが「多すぎます!!」と言い全員頷く。



「残った分は足りない物が出たら、またその時使ってもいいし、酒やアクセサリーを買っても構わないから有効的に使う事。以上!!直ぐに行動して、明日から働けるようにしてくれ!!」

そう言って解散させた。






▪️▪️▪️▪️





翌朝から、非常に快適だった。


寝室から出ると、セバスとシエラールルが既におり、「お館様、朝食の準備が整っております」と、案内される。

黒火一族のオレの呼び方は“お館様”になった様だ。忍者っぽい。



リビングに行くと既にメイド達がおり、執事2人がシロネコ達も連れて来た。

いつものシロネコ達への食事の準備やクロクジラへの餌やりもやってくれた。



クロクジラはまだ食べていたが、シロネコは今日から黒火の装備品の制作だと聞くと自室に行き。クロリュウは、なにも聞かずに外を飛び回りに行った。


シロリュウは何も言わずにオレの背中にくっついて付いてくる。

シロリュウは大人しくて人見知りだが、結構甘えん坊だ。

寝ていてもちょくちょく、枕元にいるし、何か作っていてもよく、くっついている。






幹部6人を連れて地下1階の研究室エリアへ、“スキル創造”で魔導具を制作して行く。


“通信情報統括魔導具”、見た目は一体型のデスクトップPC。

送られて来た全ての情報、通話を受け、全て記録する。


“情報読み出し魔導具”、見た目はタブレット。

“通信情報統括魔導具”の情報を魔力を使って読み出し出来る。


“通話連絡魔導具”、見た目はガラケー。

見た目通り“魔力式”の携帯電話、魔力を使って指定した番号の相手と通話が出来、内容が全て“通信情報統括魔導具”に録音される。


“通話連絡魔導具小”、見た目はハンズフリーイヤホン。

“通信情報統括魔導具”とのみ、魔力を使って通話が出来る。


“情報送受信魔導具”、見た目はホームボタン付きスマホ。

魔力を使って、カメラで撮った写真を“通信情報統括魔導具”に送信し、“通信情報統括魔導具”からの受信も出来る。魔力を注いでいる間は保存も出来る。


“緊急脱出魔導具”、見た目はブレスレット。

全てのスキル、魔法、魔導具の影響を受けず、指定した任意の場所に魔石を消費して“リターン”を発動する。




以上の物を作成した。


“通信情報統括魔導具”は我が家に設置、複数箇所可。

“情報読み出し魔導具”は幹部6人のみ。

それ以外は全員に配布する様に伝える。



幹部6人とも目を白黒させていたが、シロリュウは「なんだか、凄そうですね。さすが主様です」と、よく分かってなさそうだが、褒めてくれた。


オレが「集中!!」と、言うと6人とも「「「申し訳ありません!!」」」と、頭を下げて、真剣な表情で顔を上げたので、使い方の説明をして、質疑応答を行う。


全員が理解したのを確認して、「今から6人で、運用方法を話し合う様に!!オレは作るから」

と言って、6人に話し合いをさせ、オレは作り続けた。






▪️▪️▪️▪️





必要数出来たので、昼食へ。


昼食も準備出来ていて、シロネコ達の世話も不要、とても快適だ。


食後のコーヒーを飲みながら、セバスとシエラールルから、運用方法の草案を聞く。

他の4人には、「ちゃんと食事を取って休憩しろ!!」と、言って追い出す。


運用方法は概ね良さそうだったが、幾つか『ケチケチするな』と、思う部分があったので修正する。


運用方法が確定して、少しすると、4人が戻って来たので確定内容を共有して、ふと気付く。


「今夜は誰が控室にいるんだ?」

と聞くと、


「私とシエラールルが詰めます」

と、セバスが答える。


「2人は今朝何時から控室にいたんだ?」

と、聞く。


「本日は全員、5時からおります」

と、セバスが答える。


「ほぉ〜…そうか……なぁ、シエラールル。

5時の12時間後はいったい何時なんだ?」


と、オレが低い声で聞くと、幹部6人と周りにいたメイド達が ビクッとする。

関係無いのに、近くでゴロゴロしていたクロリュウもビクッとする。


「…………17時です……」

「だ、そうだが?セバス?」


「「「申し訳ありません!!」」」


幹部を含めメイド達も一斉に頭を下げる。


「はぁ〜〜……。張り切ってくれるのは嬉しいが、作業の分担だけで無く、時間の分担もこなせる様になれ。

お前達の能力なら、数日休まず働いても問題ない事は分かっている。


だが、これから先は、お前達より、遥かに能力が劣り、十分な休息が無ければ身体に支障が出る者達も管理して行かなければいけない。


まずは、自分達でローテーションを組んで、無理なくスムーズに働く実践をする様に!!」


「「「畏まりました!!」」」


全員の元気のいい返事を聞き、オレも表情を緩めて、そのまま、“勤務計画会議”を目の前でさせた。

ワーカーホリックの治療には時間が掛かりそうだ。


クロリュウが「ボスは1週間以上、寝ずに働いてるっスけどね〜…」と、呟いていたが無視だ。




セバスとシエラールル、今日の勤務から外れたメイドを帰らせて、ダルグニヤンとガリーには“初期要員組み”に魔導具の使い方と運用方法の指導に行かせる。


リンドレージェは外部調査要員を現地に向かう優先度の高い者から、メイドに指示して研究室に呼ぶ様にさせる。

シェーラはオレに付いて、オレが制作した魔導具を個人毎に内容を記させる。


ここからは、個人装備の作成だ。



やって来た外部調査要員に、現地での一般的な服装や装飾品の情報を聞きながら、面接時に聞いた個々の能力にあった装備を作って行く。


完成した者から、10階の訓練場で装備品の確認をさせて行く。

訓練場はラットック村で作った物と同じだ。

30人で今日は終了して続きは明日にした。






準備された風呂から出ると、セバスとシエラールルがおり、4人が帰っていて、メイドも切り替わっていた。


準備された夕食を食べて、ゆっくり紅茶を飲む。

シロネコ達も今日一日でメイド達に対応してもらう事にも慣れたようだ。




オレが寝室に入ると、シエラールルだけが付いて入って来た。


「ん?」


「お館様、夜伽はどうされますか?」


「夜伽?」


「はい、必要であれば、ご希望の者を呼んで参ります」


「ああ、そういう事か…………」


平静を装って答えながら、『ハーレムイベントきたぁ〜〜!!』と、心の中ではジャンプガッツポーズ!!


しかし、そこで思い出す。

『90世帯121人、恋人同士は一緒に住む……。

これから毎日、顔を合わせるのに“寝取り”はなしだな……』



「希望者がいれば、その人がいる日にオレが呼んだらにしてくれ」


「畏まりました。明日、希望者の確認をしておきます。今夜はどうされますか?」


「……今いる中に希望者がいれば呼んでくれ」


「畏まりました。それでは、本日は私がお相手を務めさせて頂きます」


「…………え?……いいの?」


「はい、嬉んで、誠心誠意、務めさせて頂きます…………」



濃密な、それはもう濃密な夜を過ごした…………





▪️▪️▪️▪️





翌朝……


シエラールルの谷間で目が覚めた……

オレの“環境適応”がレベル10でなかったら、窒息死だったかもしれない……


オレが起きると、既にシエラールルは起きていた様で、「おはようございます」と言って、テキパキと服を着るとオレの支度もテキパキ手伝ってくれた。


昨日から始まった、快適な朝食を終えると、いつの間に確認したのか、


「お館様、“昨日の件”ですが、希望者は30名でした。

こちらもローテーションを組み、常時対応出来る様に致します。


後ほど、名簿と待機表をお持ち致しますが、それ以外の者もご要望がございましたら、その都度、お申し付け下さい」


とシエラールルが報告して来た。

オレが『ハーレムじゃん!!ガチハーレムじゃん!!』と、思っている間に、シエラールルはリンドレージェと入れ替わって、帰っていた。

勤務ローテーションが機能している様だ。




今日も引き続き、装備作成。

残りの外部調査要員の装備を揃え、お昼ご飯に。


昨日、早い段階で装備が完成した外部調査要員が、もう出発すると聞いたので、今日出発する者に1人1人声を掛けて、最後に全員に向けて話す。


「いいか、最優先は自分と仲間の命だ!!

次に情報を漏らさない事、最後に情報を得る事だ!!


情報収集も任務も失敗したら、再度、別の方法を試せばいい!!


オレは全世界と戦争しても勝てる自信がある。

命と秘密を天秤に掛ける時は、迷わず命を優先する様に!!


だが、お前達なら安全を優先しても、最良の結果を齎してくれると思っている。

頼んだぞ!!」


「「「ハッ!!」」」




リビングに戻り、メイドにコーヒーを頼むと、リンドレージェが聞いて来た。


「よかったのですか?あの様な事を言って。

“秘密”は、お館様の“計画”の要なのでは?」


黒火一族の最年長者として、長年“任務が最優先”、“命に代えても達成する”事を実践し続けたからこその意見なのだろう。


「そうか……リンドレージェですら、そう思ったのなら、もっとキチンと話した方が良かったな」


「と、仰いますと?」


「万が一、お前達の命と引き換えに“秘密が漏れても”、本当に、問題ない。なぜなら……」


そう言って“ほんの少し殺気”を出す。


「オレの部下の命に手を出す様な奴らは、“皆殺し”だからだ!!」


SSSランク 神獣 ナラシンハにすら毅然とした態度を取った黒火一族が、息も出来ずにダラダラと冷や汗を流す。


時間が止まった様な沈黙を破って、シロリュウが涙目、上目遣いでこっちを見る。


「主様……ちょっと、怖い……です……」


殺気をパッと消して、笑顔で優しくシロリュウを撫でる。


「ごめんごめん、ちょっと演出が過ぎたかな?」


安心したシロリュウが膝の上で丸まって頬擦りしてくる。

リンドレージェ達は、全員、膝から崩れ落ちていた。


「“全世界と戦争しても勝てる自信がある”と、仰られたのは、例えでは無かったのですね……

不躾な事を言い、申し訳ありません…………」


座り込んだまま、リンドレージェが頭を下げたので、


「ああ、だから安心して、命を大事にする様に、リンドレージェから、彼らに伝えてやってくれ。

それと、謝る必要はない、これからも気付いた事が有れば、遠慮なく言ってくれ。

頼りにしている」


「勿体無い御言葉、ありがとうございます」


と、いい感じで締め括れた雰囲気だったが、“オレの殺気”に反応して、休んでいた者まで全員集まってしまい、てんやわんやになってしまった…………


“殺気の範囲を調整出来るスキル”を開発した……





▪️▪️▪️▪️





午後からは、村の“農耕、牧畜組み”の装備と、農耕に必要そうな魔導具を揃えて、使った感想と他にも有れば便利そうな物の希望を出す様に指示して、今日の作業を終了する。




そして、今夜も“呼んだ”。すると、なんと4人来た。

“4人から選ぶ”ではなく、“4対1”だった。


十分に、それはそれは十分に堪能させて頂いた。






更に、翌日の夜、再度、“指定一切無し呼び出し”に挑戦すると、“あの、52歳54歳ペア”がやって来た。


名簿を見て、気付いてはいた、年上で成人もしていると、理解はしているが……

見た目から来る、“背徳感”が癖になってしまうかもしれない……


しかし、この流れに、


「オレ、搾取されてる?」


と、シエラールルに聞かずにはいられなかった。


「滅相もございません。全員、献身ゆえです」


との、笑顔の答えに“一切疑わずに信じる”事にした…………






▪️▪️▪️▪️






全員分の装備、農耕具、生活用品を揃え、“我が家の客間”の補充や、働き安さの向上の為の“我が家の改築”を経て、今後の計画を立てていた、4月の下旬。


一旦、休憩にして、一緒に話し合いをしていた幹部と数名のメイドと共に紅茶を飲んでいると、


「お館様、1つお願いが有るのですが宜しいでしょうか?」


「?ガリーが珍しいな。極力叶えるよ、なんだ?」


「ありがとうございます。

もし、よろしければ10階の訓練場を自由に使わせて頂けないでしょうか?」


「……はぁ〜…修行バカなのか……。ガリー……訓練、好きか?」


「はい!!」


「分かった、だが、あの訓練場のデメリットは分かっているな?」


「デメリット?」


「はぁ〜…なんだ、その“デメリットなんて存在しますか?”って、顔は……

“時間加速は同時に老化”だ。

黒火一族の寿命がいかに長くても、いつかは限界が来るだろう?」


そう言って、セバスを見る。すると、


「お館様、申し訳ありません。

おそらく、寿命もあるだろうとは思いますが、“老衰”で亡くなったのは一族の歴史の中で、初代様だけだったと伝わっておりまして、はっきりとはお答え出来ません」


「…………そうなの?」


と、最年長 リンドレージェを見る。


「はい、そう伝わっています。私も“老衰”で死んだ者は見た事がありません」


「…………なら、問題無いか!!いいぞ、ガリー。

なんなら、住宅街の地下に作ってやろうか?」


「本当ですか!!みんな、喜びます!!」


「…………みんな…………まあ、いい。

但し、時間感覚が狂い過ぎない様に、時間は許可した時以外は10倍までにする事。いいな」


「はい、十分です!!ありがとうございます!!」



そして、翌日、住宅街の地下に訓練場を作る事になった。







▪️▪️▪️▪️






翌朝、休みなので私服でオレを迎えに来たガリーと共に、あらかじめ、決めておく様に言っておいた“訓練場入り口予定地”に行った。


住宅街の中央道のど真ん中に、今日休みだと思われる人だかりがあり、ガリーが「ここです!!」と、言った…………


どう考えても、不便になるバカな意見に即却下。

住宅街から少しずれた所に作ることにした。


「みんなに平等な場所だと思ったんですが……」と、ガリーが呟いていた。

普段は優秀な意見が多いと思っているが、完全な修行バカだ。




もう、作り慣れているので10分ほどで完成。


今日休み組達が

「「「ありがとうございます」」」


と、全員で頭を下げて来た。


嬉しそうな表情に、ちょっと気分が良くなり、


「せっかくだから、ちょっと揉んでやろうか?」


と、カッコつけて、ニヤッと笑った。


…………これが良くなかった…………





「ありがとうございます!!では自分から!!」

と、ガリーが言うと、「ずるいぞ!!」、「オレが最初だ!!」、「1番は、私よ!!」とか、聞こえて来たので、


「全員まとめてかかって来い!!」

と、これまた、カッコつけて言って瞬間、背後に、“殺気の様な僅かな違和感”を感じて避ける。


今まで、ずっと黙って背後に立っていたセバスが“オレの首が有った場所”をナイフで薙いでいた。


「流石で御座います」


「その楽しそうな表情が何秒続くかな?」


そう言ってセバスの方を見ていたオレの後ろから、鉈で斬り掛かって来たガリーの手首を掴み、セバスに向かって投げ飛ばし、視界が隠れた瞬間に“デコピン空気弾”で飛んで行くガリーをもう一段加速してセバスにぶつける。


ガリーの後ろにいた入り口周辺の集団の後ろに“リターン”で移動して“全員を“風属性魔法”で500m先の入り口の反対の壁まで吹っ飛ばす。


唯一、飛ばされながら“スペースジャンプ”でオレの左後ろに現れたセバスの更に後ろに“リターン”して蹴り飛ばし、壁際に仲良く一塊にした。


全員の状態を確認しつつ“神聖属性魔法”で回復しながら、ゆっくりと歩いていく。


指先で“クイックイッ”をして、

「さあ、第二ラウンドだ」

と、またカッコつけた。やった後で『ちょっと古いか?』と、思った…………






その後も、千切っては投げ、千切っては投げ、していると、後ろから強烈な殺気が来た。


振り返ると、大剣を上段に構えて、シエラールルが斬り掛かって来ていた。


「その殺気じゃあ、バレバレだ」


そう言って、振り下ろされる大剣を手の甲でいなし、メイド服のスカートを バッとめくる。

スカートで視界を塞いで、『今日は白か、シエラールルのキャラにこう言うのもありだな』と、考えて、足を払って、お姫様抱っこにする。


驚いて、ちょっと赤くなったシエラールルに、優しく微笑み掛けて、一緒にやって来たであろうメイド達に向かって……


投げつける!!


一緒に来たメイド達も武器を持っていたので、“殺る気”だろう。


「「「えぇ〜!!あの空気感で投げる〜?」」」と、言っているメイド達に、“リターン”で近付き、彼女達も飛んで来る、シエラールルに向かって、次々と投げつける。


みんな仲良く団子状態になった所で、左右にセバスとガリー、背後に3人が“スペースジャンプ”と“リターン”で一斉に現れるが、体勢を下げて、全員纏めて足払いをして、オレは“リターン”で待避。


散らばって迫っていた十数人を各個撃破、その間に怪我をしている者は回復して行く。




いつの間にか、全員やって来て、てんやわんやになっていた所に、圧倒的な存在感が近付いて来る。


「主よ、我もたまには運動が必要だと思う」


「2対1なら、自分達が勝っちゃうっスよ!!」


と、シロネコとクロリュウが3m位になって襲いかかって来た。

シロリュウは見学の様で、クロクジラはそもそも来ていない。



小さくても、ステータスは変わらない。

SSSランクの神獣と暗黒竜が黒火一族達の比では無い、圧倒的なスピードで迫って来る。


“4本の前足”を一気に振り下ろして来るシロネコに、こちらから詰めて、前足を掻い潜り、真下から上空に蹴り飛ばす。


「今日は小さいんだから、こういう攻撃にも気を付けろよ」


そう言って、シロネコを空中で捕まえて、持ち替え、フライングバックドロップで“クロリュウの頭”に落とす!!


ゴキンッ!!と、生物からは鳴りそうにない音をさせた。

一撃で伸びてしまった、2人?を“神聖属性魔法”で回復して、最強の“原初のモノ”を交えた“ケンカ祭り”がヒートアップして行った…………





全員キチンと平等にボコボコにした。

シロネコもクロリュウも男も女も5歳児も平等にボコボコだ。



最後まで残ったのは、幹部6人とメイド4人だけだった。男性陣、頑張って欲しい。


シロネコとクロリュウはちょっと強めに攻撃して、その後回復せずに放置した為、脱落した。

はしゃぎ過ぎだったからだ。


途中、ギャラリーと化した脱落組みから、「お館様、マジやべぇ…」とか「ナラシンハ様とシェーシャ様を同時に…」とか「お館様、素敵…」などなど、お褒めの言葉を頂きながらすっかり夜になってしまった。



息を整えた幹部達が前に来て、


「「「お館様!!ありがとうございました!!」」」

と、頭を下げると、


「「「ありがとうございました!!」」」

と、全員が声を揃えた。


「ところで、お館様、お昼のご用意が出来ているのですが……」

と、言うシエラールルに


「もう、夜だよ」

と、返した…………






そのまま、訓練場で“宴だぁ〜〜!!”と、なった。

唯一のお留守番のクロクジラもちゃんと連れて来て上げて、みんなで飲んで騒いだ。

オレが、「無礼講だぁ〜!!」と、言うと…………






セバスとダルグニヤンはそっくり親子だ。

伸び放題に見せていた髪もオールバックにし、髭もボックスカー髭に整えられ、背筋のピンッと伸びた紳士な執事だ。


だが、裸踊りはする様だ。両手にお盆を持って…………



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