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第29章 魔導神④

魔導神④





▪️▪️▪️▪️





本来ならこんな予定では無かった。


クスレンを“殺す方法”はもちろん、ちゃんと以前から準備してあるし、殺し合いになる可能性も高い事は分かっていた。

兄弟であろうとも、キッチリ殺そうとも思っていた。


予定外なのは迄情報が不十分な状態で対峙しなければならなかった事だ。

クスレンについては迄情報収集を行う予定だった。



不明なのは大きく2つ。


クスレンのステータスの中のオリジナル言語の部分と、移動惑星内の戦力や魔導具だ。


ステータスのオリジナル言語については、先ず桁数が分からない。

レベルや各ステータスの数字は100なのだが、その後の桁数がオリジナル言語の為に不明なのだ。


そして、スキルについても、オリジナル言語が使われたモノが有り、不明なモノが存在する。



移動惑星内の戦力や魔導具については、本来なら、今日、追跡監視魔導具が設置された事で、これから分かって行く予定だったのだが…………

残念だ…………


運命の日に、トラブルメーカーのヒィとレイヒが揃って出掛けようとして居たなら、全力で止めておくべきだった…………



だが、こうなってはもう仕方がない。

いつも通り、相手が奥の手とかを使う前に、さっさとトドメを刺してしまおう。


「…………此処で良いのか?」


宇宙空間でも当たり前の様に付いて来て、当たり前の様に話し掛けて来る魔導神。


宇宙に出られる事は、“スキル 環境適応”がレベル10なので分かってはいたが、宇宙空間での会話は、読めないスキルのどれかの力だろう。


「ああ、これくらい離れれば、あの星への影響も出ないだろう」


「ならば、命を賭けた兄弟喧嘩を始めようか。


最初から全力で行くぞ!!


グルオス戦隊、レイダー戦隊、ソール戦隊!!」




…………完全に予想外だった…………

オレもいつの間にか、完全にこの世界の常識に囚われていた…………


1対1で戦う意思を示したら、そのまま、1対1で戦うモノだと思い込んでいた…………

1人を相手に窮地に立った訳でも無く、初っ端から大部隊を呼び寄せる戦法を取るとは…………


オレの前には3,000体程のゴーレムの軍勢が現れていた…………





クスレン本人はさっさと後方に下がり、結界の様なスキルを張ってオレへ向けて“スキル 絶対殺し”を試している。


そして、オレに絶対殺しが効かない事が分かったからか、敵軍勢がオレに向かって来て、クスレンは、更にゴーレムを呼び出し続けた。



「セバス、見ているな?

予想外の大規模戦闘になってしまったから、此方も相応の対処をしよう」


オレがそう呟くと、オレの背後に突如、白銀の壁が現れる。シルバーウィングだ!!


そして、シルバーウィングの周囲に配下達が展開して行き、オレの直ぐ後ろには妻達やペット達が現れる。

全員、宇宙戦闘用に、パイロットスーツ着用だ。


因みに、以前のモノと違い、完全な肌着で、上から通常の装備を付ける仕様になっている。

まあ、此処に来たであろう者達の殆どは“スキル 環境適応LV10”なので、パイロットスーツはあくまで補助だが…………



「みんな!!久しぶりの大規模戦闘だ!!派手に行こう!!」



オレの掛け声に5,000人程の配下達が一斉に声を上げた。

予定外ではあったが、これはこれで都合が良い。


魔導神クスレン一派を一網打尽にさせて貰おう!!





▪️▪️▪️▪️





クスレンが次々とゴーレムを呼び出し続ける中、ルナルーレは雑魚処理を行っている様だった。


敵のゴーレムは、5、6体毎に隊長っぽいのが1体混ざっている。


ルナルーレはその他の兵士っぽいゴーレムを各種魔法で次々と倒している。

そして、隊長っぽいゴーレムは2人の双剣士が確実に倒して行っていた。


2人の双剣士はハズキとムヅキ、オレ達の息子だ。

2人ともクルス商会に入社して、現在は執行部に所属している。


オレは成人した子供達の面倒は基本的にみていないので、2人ともお母さんでは無く、“ルナルーレ奥様”を仕事で守っている形だ。


だが、まあ、ルナルーレの方が隊長っぽいのを残してあげている様に、ちょっと息子達に甘い。

ルナルーレの魔法ならたとえ1体1体倒しても息子達が攻撃する暇など有る筈が無いからだ。


オレが世界にレベル上げ用の真無限ダンジョン2を設置してから、世の中のレベル水準は大きく上がった。

しかし、ウチのトップグループである妻達は、神の中の神、大神達を単独で倒せる程のレベルだ。


子供達もみんな頑張ってはいるが、一部例外を除いて、基本的にまだまだ、お母さんの背中は遠いのだ。





ランドは今や諜報守護部の大隊長で、グッサスは大隊長補佐だ。


いつもなら指揮を取るべき2人だが、オレの言葉が『好きにやって良いよ』と云う意味だと分かっているので、2人して最前線で暴れ回っていた。



2人とも、出会った頃と変わらず、息の合ったコンビネーションで、そして、出会った頃では考えられない程の強さでゴーレムを次々と屠って行く。


その2人の後方には、2人と同じく剣と盾を装備した方が攻撃を逸らせ、双剣を装備した方が敵を削って行く戦い方をする男女のペアがいた。


ランドの娘レーミライミとグッサスの息子ルーカス夫婦だ。


ランド、グッサスペアに比べれば手数の多い戦闘をしているが、父親達から受け継いだ堅実な戦い方をしている。


因みにこの2人は、親の影響で結婚したのでは無い。

グッサスの息子ルーカスが産まれたのは、ランドの娘レーミライミが成人した後で、2人が出会ったのはクルス商会の諜報守護部にルーカスがレーミライミの部下として配属されたからだ。



親同士の関係を知らない2人は、普通に一緒に働いて、恋に落ちて両者の親を驚かせた。


今となっては良い笑い話しだが、ランドとグッサスは、『産まれて来る性別がもしも違ったなら…………』と、当分みんなに言われていた。





シロネコは宇宙空間にも関わらず、悠然と歩いていた。


敵のゴーレム達も、シロネコの雰囲気に呑まれているかの様に遠巻きに距離を取って近付かない。

シロネコの向かう先に居るのはゴーレムでは無い。

3対6枚の翼に大きな天輪…………


天使だ。


「其方は指揮官だな?

我は、白銀の獅子 チャンディスィンハ ナラシンハだ。

我が主の命により、その首頂戴する」


「…………神獣ですか…………

ならば、神である魔導神クスレン様に従うべきでは?」


「我が主も神であるが故に、その理屈は通じぬが、我が主曰く『神など所詮は只の種族』だそうだ。

もしも、天使故に魔導神クスレンに仕方なく従っているのであれば、投降すれば命迄は奪わぬが?」


「いいえ、結構です。

私はクスレン様の行いの正しさ故に従っていますので。

最も優秀な種族は“天使”であると証明する事が私の使命。


神獣程度に遅れを取る訳には行きません。

そうそうに狩って差し上げましょう」



天使は細っそりした女性だったが、彼女が構えたのは凶々しいデザインの巨大な戦鎚だった。

その戦鎚からは白いモヤの様なモノが出ている…………


戦鎚を振りかぶった天使は、そのステータスからは考えられない程の猛スピードで、一瞬でシロネコに迫り振り下ろす!!


シロネコはしっかりと距離を取ってその攻撃を躱した。



「あら?避けるのですね…………

もしかして、私の天輪の力を知っているのですか?」


「うむ、其方の持つ4つの天輪の力は全て知っている」


「なるほど…………

では、私の攻撃を一度でも受ければ貴方の負けだと云う事も分かっているのですね…………」



彼女の持つ天輪の力は、全て既に知っているモノだった。


“天変”、物質を作り変える力。

“天武”、あらゆる武術を1度見ただけで覚えられる力。

“天壊”、あらゆるモノを壊す力。


“天壊”も天使っぽく無いが、彼女は更に最も天使っぽく無い天輪の力を持っていた。


“天霊”、名前は天使の力っぽいが、この力は殺した相手の魂を吸い取ってエネルギーとして使う力だ。

完全に悪魔の能力だろう…………



組み合わせとしても、非常に戦闘向きだ。


攻撃が何処かに掠ったなら、“天変”で相手の動きを阻害する物質に変え、致命傷を与える事が出来る場所に当たったなら、“天壊”で一撃死だ。


そして、殺した後はその力で更に強くなる。



万が一、シロネコがやられたならば、ウチのトップグループが複数人で当たるか、オレが出て行く他無いだろう…………


いや…………シロネコがやられる可能性は1万分の1も無いだろうが…………



天使はとても良い、悪役っぽい残酷な笑顔を向けて、再度戦鎚を振りかぶる。


が…………


シロネコのネコパンチを天使は視認出来なかったのだろう。

笑顔のまま、弾けていた…………


「…………主ならば、この哀れな魂を救えるやもしれぬな…………」


シロネコは、そう云うと凶々しい戦鎚を前足で、ペシッとして、“ディファレントホーム”に放り込んだ…………





クロリュウは、武者クロリュウから、侍クロリュウにジョブチェンジしている。


クロリュウ曰く「頭と胸に防具が有ると、生死を賭けたギリギリの感覚が狂っちゃうんっス!!」だ、そうなので、折角だから、なんちゃって羽織袴にしたのだ。


そんなクロリュウはシロネコと違い、ゴーレム達を次々と斬り伏せながら敵指揮官っぽいヤツを目掛けて進んでいた。

クロリュウが向かった先に居たのは、開眼状態のヒィの様に、金髪を逆立てた6本腕の“鬼”だ。



「刀を扱う魔獣とは珍しいな」


「そうっスね。自分も他のヤツは見た事ないっスねぇ〜…………」


「吾輩の首を取りに来たと云う事で良いな?」


「まあ、あんたの首も当然貰うっスけど、わざわざ来た訳じゃないっスよ。

自分の進んでった方にたまたまあんたが居ただけっス」


「…………吾輩もそこらのゴーレムと変わらぬと言うのか?」


「しゃべる以外に違いがあるんっスか?」


「吾輩を愚弄した事を後悔するといい!!」



鬼は6本の刀を抜くと、クロリュウに斬り掛かった。


6刀とも、ほんの僅かに時間差が有り、同時に迫って来る様に見える連撃の様だが、クロリュウは緩やかな動きで、全ての斬撃を2刀で受け流す。



「ぬるいっスねぇ〜〜。

折角6刀有るのに全く同じ時間差なんて、ヒィ奥様に比べたらぬる過ぎっス。


今度は自分が行くっスよ?


暗黒竜流双剣術、流水十字の太刀!!」



流れる様な動きで、鬼の6刀を次々と払って行き、最後は横凪と斬り上げで、鬼は十字に斬り裂かれた…………


リムの影響受けまくりなクロリュウは、必要無いと分かっていながらも、ついつい技名を言ってしまう体質になってしまっていた…………





シロリュウは今日はお留守番だ。

クルス商会絶対の掟、“妊娠中は訓練も戦闘も禁止”だからだ。


シロリュウの変身魔法は究極に至っていた。

なんと、自分の体内迄完全に変身を遂げて、とうとう妊娠してしまったのだ。


龍は本来、産卵だ。

そして、人間との間に子供が出来たりはしない。


龍人種族などは、別に龍と人間との間に出来た子供では無く、龍と人間の魔力が混ざった魔力溜まりに貴龍人 ハイドラゴニュートが生まれて、そこから別の種族の人間との子供が出来て行って生まれるのだ。



しかし、シロリュウはオレとの子供が欲しい一心で、変身魔法をそこまで昇華させたのだ。


正直言って、オレに頼って、オレが新たなスキルなり魔導具なりを用意すれば直ぐに解決するが、シロリュウはあくまで自分の力で辿り着いた。


相変わらず可愛いヤツなのだ。



そんな訳で、シロリュウは妊娠をしているのだが、実際に生まれて来る子供はどんな姿かは、まだ分からない。

まあ、どんな姿であれ、元気に生まれて来てくれさえすれば良いと思う。





クロクジラは、長い長い金髪を靡かせ、真っ赤なローブを纏い、魔法を撃ちまくる女性を背に乗せて、戦場を縦横無尽に飛び回っていた。



クロクジラの背に乗っているのは、オレとルナルーレの娘、カンナだ。


カンナは、産まれて間も無い頃から、ずぅ〜〜〜〜っと、クロクジラにベッタリだ。

父親であるオレや母親であるルナルーレに抱かれるよりも、クロクジラの背に乗り続けて育った。


クロクジラは、しゃべるのが、ひじょ〜〜〜に遅いが、カンナとは何故か会話も無いのに以心伝心なのだ。

別にカンナに特別な能力やスキルが有る訳でも無い。

しかし、2人はお互いに考えている事が分かるらしい…………



そして、カンナはクルス商会で働きながら、我が家のクロクジラの部屋に一緒に住み、クロクジラの妻を自称している。


そんなクロクジラ本人に聞いた、


「クロクジラ、おまえ本当にカンナと結婚する気なのか?」


と…………。すると、


「…………ええ〜〜〜〜っとぉ〜〜〜〜…………」


「ケイちゃん、お父様の前だからって恥ずかしがらなくて良いの!!

私達は、相思相愛なんだから!!」


「…………クロクジラ、そうなのか?」


「…………いやぁ〜〜〜〜……そのぉ〜〜〜〜…………」


「もう!!ケイちゃんは本当にシャイね!!

いつもみたいに愛してるって言ってくれれば良いのに!!」


「……………………」


「…………あのぉ〜〜〜〜…………」


「じゃあ、お父様!!そう云う訳で私達は結婚するから!!」


「……………………良いんだな?」


「…………はぁぃ…………」


と、まさに今の見た目通り、完全に尻に敷かれている…………





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