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第3章 黒火の一族①

黒火の一族①



▪️▪️▪️▪️



「食べ終わったら、オレは出掛けるからな」

一緒に朝食を取っていた4人?に声を掛ける。


ナラシンハくん改め“シロネコ”と出会って1ヶ月が経った。季節は、もう春だ。

と、言ってもこのミミッサス大森林は冬も寒くは無かったが……




▪️▪️▪️▪️




“シロネコ”との共同生活は順番に問題解決をする所から始まった。


先ずは、食糧問題。

余りにも巨大になり過ぎて“龍脈から殆ど出られない”ほど、魔力か食糧が必要になっていた“海外のスーパーダイエット番組”の様な問題だ。


これは元々目処が経っていた。

“某耳のない水色のネコ の秘密道具”の様に、自分が小さくなれば、1個のドラ焼きも山の様な巨大ドラ焼きになり、食べ切れなくなる。

この、発想だ。


“スキル 創造”で超巨大な“任意の大きさに小さくなれる首輪”の魔導具を作った。


しかし、ここで、次の問題が発生した。


「正式な主従関係が無ければ、首輪を着ける事は出来ない」と、言うのだ。


これは、“彼のわがまま”では無く“この世界のルール”によるモノらしい。


なので、続いて“スキル 獣操術”をレベル10にして、目の前の神獣を従えた。


この“獣操術”は心を通わせたり、屈服させたりして“従魔”にし、使役出来たり、召喚出来たりする、スキルだ。

目の前の“神獣”は既に屈服している。


従魔になった事で“呼び名”が必要になった。


“ナラシンハ”は聖樹に与えられた“原初のモノ”だけが持つ“真名”で、同じ名前ではダメだそうだ。


そして、その日から彼は“シロネコ”となり、オレの魔導具で大きさも“マフィアがワインを飲みながら、膝の上で撫でるネコ ”くらいの“もふもふくん”になった。

顔立ちも若干、ライオンからネコ寄りになった気がする。



そして、次の問題が発生する。

オレが一瞬の内に“創造”で魔導具を生み出し、スキル全集に載っていなかったので知らなかった“獣操術”をあっという間に極めたりして、とても驚いていた“シロネコ”は小さくなれた事で、キャラにも無く、喜びの余り「主ぃ〜〜!!」と、飛びついて来た。

思わず、ネコの本能が出てしまった様だ。


オレは大丈夫だったが、“力 15億”のスキンシップに、“黒竜の鱗20枚重ねパーカー”が破れたのだ。


これから、家を建てる上で“黒竜の鱗”を建材に考えていたが、心許ない事が分かった。


そこで、素材集めをする事にした。

黒竜の鱗がダメなら、“暗黒竜”の鱗だ!!


シロネコ戦から、“大きい魔獣の大きさ”の認識を改め、刃渡り100mの“超長刀”を作る。

抜くのが大変なので、鞘無しだ。




“森羅万象”に暗黒竜の住所を聞いて、シロネコを肩に乗せ“スキル 飛翔”で訪問する。


西大陸の最南、コシュツマーヤ山脈の主“暗黒竜 シェーシャ”はとてもヤンチャだった。


“スキル 感知”に反応する、100km圏内に入った瞬間、ブレスが飛んで来た。

今まで使わなかった、“スキル 言語理解”の“念話”で話し掛けたが、“オレ様キャラ”がウザかったので、“拳の言語”に切り替えて“円満で一方的な話し合い”をした。


シェーシャくんと“上下関係が分かり合えた”ので、従魔契約を行って、首輪を着け、“クロリュウ”と名付けた。


小さくなれて、喜んで何処かに行こうとする、クロリュウに、“再度、拳で言い聞かせ”、ちゃんと、お供にした。“オレ様キャラを舎弟キャラ”にキャラチェンジさせる事にも成功した。



暗黒竜訪問は、鱗以外にも成果があった。


“宝石、貴金属大好き”な、ドラゴンのキャラ付けはこの世界でも有効で、クロリュウは沢山のお宝を“一切渋る事なく、快く”くれた。


オレの「後でちゃんと全部返すよ」と言う言葉に“一切疑う事なく、ハッキリ”と「……本当っスか?」と、答えてくれた。


お宝の中に、なんと、“アダマンタイト”と“黒オリハルコン”を発見して、2万年も生きているだけあり、脱皮?した鱗も大量にあった。大満足だった。


更にクロリュウから、有益な情報も手に入った。

聖龍がおそらく、“白オリハルコン”を持っているだろうとの事だ。


聖龍さん家は、この西大陸の最北、ルヴェスト山にあるという。

そのまま、向かう事にした。


途中、遠くに“聖樹”が見えた。あれは木では無い…………

「軌道エレベーターかよ……」と、思わず呟く巨大さだった。


遠目に見ても大きな山くらいの太さで、見えなくなるまで伸びていた。異世界感満載だ。


そんな“聖樹”を通り過ぎて、ルヴュスト山に。聖龍さん家を訪れる。


この世界で初めての“龍”だ。

うねうねと、空に浮いているが、真っ直ぐになったら、100km以上ありそうな気がする。

クロリュウも山の上にいる山だったが、聖龍はダントツでデカい!!


シロネコの大きさに驚いたのが、ウソの様に次々とデカい魔獣に出会うものだ。


聖龍は、その巨大さに対してギャップの強い、“引っ込み思案な女の子”だった。


クロリュウの「自分の時と対応が違うっス!違いすぎるっス!」と、いう声を後ろに聞きながら、丁寧な口調で、鱗と白オリハルコンを少し分けてほしい、とお願いすると、

シロネコとクロリュウと「少し話させて欲しい」と言われたので了承し、少しの間待っていた。


小さくなっても“ナラシンハとシェーシャ”だと、分かっていたようだ。


しばらくして、チラッチラッとオレを見ながら、

「あ、あの……鱗も白オリハルコンも差し上げるので、その……私も、小さくして連れて行ってくれませんか?……」

と、超巨体からは、考えられない様な、か細い、可愛らしい声で呟く。


「ああ、それは良いんだけど……」


「えぇっと……、ごめんなさい、やっぱりご迷惑ですか?」


「いや、そうじゃないよ。

神獣は、他の魔獣と違って従魔契約をするのに、必ず屈服させないといけないんだ。

キミみたいに大人しい子に攻撃するのは、ちょっと気が引けるんだよなぁ〜……」


「!!!」


「なんっスか、それ!!自分の時と対応が違いすぎ……ぐはっ!!」


騒ぐクロリュウを裏拳で、そっと撫でる。クロリュウは、100mくらい先の地面に、

ドッカァーン!!と、大きな音を立てて埋まった。


地面でピクピクする、クロリュウをチラッと見て、シロネコが話し出した。


「主よ、獣操術における屈服は、なにも、戦って勝つ必要はない。相手が負けを認めれば良いのだ。

知恵比べでも何でいい。


但し、通常、魔獣や魔物は例え知恵比べで負けても、負けを認めず、結局は力比べになるのだ。


だが、アナンタならば問題無い。

アナンタの“聖龍の眼”ならば、主に手も足も出ない事は分かっているだろうからな」


「“聖龍の眼”?」


「はい……私の“スキル 聖龍の眼”は“あらゆるモノを見抜く”スキルです……

なので、貴方が“見えた時から”、勝つどころか、逃げる事も出来ないと、分かっていました……


それに、私なんかより、こんなにも強い方に、優しくされて……

私……そのぉ〜……えぇっと…………」


元々、か細い声が、どんどん小さくなって行って、なんだか恥ずかしそうにしている様にすら見える。

超巨大だが…………


「ええっと、つまりキミはもう“屈服”していると?」


「はい……その……身も心も、屈服しています……」


なんだか、ニュアンスがアレだったが、「なら、やってみよう」と、“獣操術”を使うとあっさり成功。“任意の大きさに小さくなれる首輪”も付けた。


“シロリュウ”と名付ける。

シロネコとクロリュウの首輪は黒にしていたが、シロリュウは女の子なので、薄いピンク色にした。


嬉しそうに、モジモジしていた“小さくなったシロリュウ”に、「じゃあ、鱗と白オリハルコンを少し貰うね」と言うと、「いえ、全て差し上げます……その……私のモノは貴方のモノなので……」と、“ダメな男に貢ぐ彼女”の様に原初より生きる最古の龍は全てのお宝をくれた。


まだ、ピクピクしていた芸の細かいクロリュウを、“神聖属性魔法”で回復して、“リターン”で我が家(建設予定地)に戻った。



“聖龍の鱗20枚重ね”、“暗黒竜の鱗20枚重ね”、“厚さ2mの黒オリハルコン”を圧縮して、縦横5m厚さ1mの板状のモノを作り、“我が家の外壁”と、名付ける。


この、新たに作ったモノに名前を付けて、認識するのが大切だと、実験を繰り返す内に学んだ。

これを行うと、“スキル 創造”が格段に効率アップする。


“グランドディグ”で幅、奥行き500m、深さ200mの穴を掘って、そこに、幅と奥行きはピッタリフィット、地下200m、地上1,000mの“我が家の外壁”で作った箱を“スキル 創造”で作り出した。


目を見開いて、ずっと驚きっぱなしの3人?を放置して、入り口を作り、中に1階を作る。

そのまま、取り敢えず必要な物をどんどん作って行った。


2日後、我が家の建築を進める中、クッション性のある素材が欲しくて3人?に相談する。

曖昧な質問では“森羅万象”は答えてくれないからだ。


「それならば、“コンティネントホエール ケートー”が良いのではないか?主」


「そうですね、ケートーの皮膚なら主様のご希望にあっていると思います……」


「皮膚?キミ達の鱗みたいに色々検証するから、何度も切り取るのは、ちょっと可哀想だな。

ケートーもキミ達と同じ“原初のモノ”なんだろ?それなら、狩るんじゃなくて、従魔にしたいからさ」


「ケートーなら、バカでかいんで、多少切っても大丈夫っスよ、ボス。

ちなみに、ケートーは男っスよ!!

なんで、自分の時みたいに問答無用でボコって問題無いっスよ?

もち、速攻でボコるっスよね!!」


シロネコは“主”、シロリュウは“主様”、クロリュウは“ボス”と呼ぶ様になっていた。

最初は“オレ様キャラ”だったクロリュウは完全に“番長を煽る子分”だ。


「まあ、会って話してみてからだな」


「いや、主よ、それはお勧めせん。遺憾だが、今回はシェーシャに賛成する」


「?」


「主様、ケートーはとても“のんびり”なんです。

おそらく、僅かな会話をするだけでも1年はかかってしまうかと……」


「!!それは、“とてものんびり”のレベルじゃないな。なら、クロリュウの意見を採用?」


「あざっス!!じゃあ、さっそく行くっス」



南海の主 コンティネントホエール ケートー……

クロリュウは彼に対して“バカでかい”と、言っていた。

山くらいの暗黒竜が“バカでかい”と言ったのだ。それは推して知るべしだった。


見えている部分だけで、北海道よりデカいのではないだろうか。


ちまちまやるのが面倒に思えたので、ステータスを殺さない程度に調整して、“クルス流体術1”、“破”の拳で殴る。この技は攻撃の衝撃を相手の全身に拡散させる技だ!!


殴った後で“獣操術”で契約、上手くいった。名前は“クロクジラ”だ。

ゆっくりと沈んで行っている事に気付いて慌てて“神聖属性魔法”で回復。


海に潜って大きさを確認して、首輪もとい腹輪を作る。

今回は“製作者か本人の意思で任意の大きさに小さくし、ステータスを下げる事ができる”効果とオリジナル“水属性魔法 ウォーターバルーン”の常時発動を付与する。


“ウォーターバルーン”は僅かな魔力消費で、空中にふわふわ浮いて自由に動ける水の球を作る魔法だ。

これを半球状に発動し続ける様に付与した。


これによって、バランスボールを半分にした位の水に浮かぶ“小さなクジラ”になった。


上手く行ったので、元の大きさに戻して、1m四方の皮膚を10ヶ所ほど切り出して、再度、小さくする。

傷は全く見えなかったが、念のため“神聖属性魔法”で回復して、我が家に連れて帰った。





クロクジラを連れて帰って1週間で、一応、快適に住める様になった。

生活スペース、来客用スペース等と共に4人?の各部屋を希望に沿って作った。


実はこれが1番大変だった。

シロネコは遠慮してなかなか注文して来ず。

シロリュウはその都度、恥ずかしがってモジモジし、クロリュウは我儘で注文が細かい。


クロクジラに関しては、帰って来てから全く会話が出来なかったので、腹輪に“思考加速”のスキルを追加してみた。そうする事で、話しかければ答えが返ってくる様になった。


のんびり屋な性格は変わらず、放って置くとただただプカプカしているが……


ちなみに、オレの呼び方は「ご主人ん〜〜」だ。

間延び言葉でずっと話すので、彼は聞き取りに多大な時間が掛かった。


内装が済めば次は外周だ、龍脈のエリアを確認して、元々の開けた空間を拡張。

そこに合わせて外塀を作って行き、周囲と屋上に“結界柱”を立てて行った。




そうして、広大なスペースと多種多様な素材を手に入れたので、次の段階、“商品開発”と“製造ライン”の制作に進んだ…………





▪️▪️▪️▪️





そして今日、活動を開始する。


「主、出掛けると言う事は、以前話されていた、“計画”の為に動かれるのか?」


テーブルの上に座り、前前足に付けたフォークとナイフで器用にステーキを切って食べていた手を止めて、シロネコが聞いてきた。


「ああ。でも、まずは足元を確認しておきたい。

だから、以前シロネコに聞いた“あそこ”に今日は行く予定だ」


「であれば、我もお供させて欲しい。

万が一、“彼ら”が主に粗相をしてはいけないので……」


「向こうにも都合があるんだ。無茶苦茶な事を言うつもりはないぞ?」


「でも、ボスはまず拳でかた……ぶっ!!」


オレがクロリュウへのツッコミの為だけに、編み出した、“クルス流体術1”、“デコピン空気弾A”を食らって、クロリュウは吹っ飛んで壁にぶつかる。

壁には傷1つない、良い仕事している。


この“デコピン空気弾”はその名の通り、デコピンで空気弾を飛ばすが、Aは1,000、Bは1万、Cは100万の固定ダメージで衝撃だけは受けると言う、素晴らしい出来の技だ。


吹っ飛んだ、クロリュウには一瞥もくれず、

「シロネコともシロリュウともちゃんと話し合いだったろ?」

と、言うと、


「はい、主様はとても紳士的に対応してくれました」


「我の時は、ほぼ奪うつもりで……!!主はまずは、話し合いから入る!間違いない!」


オレの“デコピンの構え”で素直になったシロネコは何度も頷いた。

クロクジラは最初にあげた、一切れ目のステーキをまだ、もぐもぐしていた……




▪️▪️▪️▪️




シロネコを肩に乗せたオレの前に、22人の男女が立っていた。


ここは、このミミッサス大森林の中の唯一の集落だ。その入り口で向かい合う。

集落と言っても、廃村の様に壊れかけの建物と隙間だらけの柵、荒れ果てた畑そんな場所だ。


目の前の男女の格好も、大きな麻袋に穴を開けて着ている様な服装にボサボサの頭、汚れた身体だった。


村長の様な白髪に伸び放題の白髭の人物が前に出て来る。

「この村には見ての通り何も有りません。お引き取り下さい」


そう言って、全員が頭を下げた。

とても自然で、おそらく、“普通は気付かない”だろう。

頭を下げていても、警戒を一切解かず、いつでも動ける様に構えている事に。


「何か欲しい物があって来たんじゃないんです。話しがあって来ました。

取り敢えず、座りませんか?」


そう言って、オレと村長?の間にテーブルセットと椅子を“土属性魔法”で一瞬で作る。


テーブルセットはオレの目の前にオレ用の椅子と直ぐ横にシロネコ用にチャイルドチェアー。

オレの席と向かい合う様にテーブルの向こう側に3脚作り、椅子は横に10列、縦に5列作り、各椅子の横にサイドテーブルを作った。


後方の3人が一瞬だけ身構えたが、村長?は一切動じず、もう一度頭を下げた。


「申し訳ありません。当方には何もお話はございません」


オレは1人で席に座り、シロネコをチャイルドチェアーに移す。


「オレには有ります。そして、オレにはその権利が有ります」


そう言って、シロネコを目で指す。


村長?が驚き、目を見張ったので、


「どうぞ、お座り下さい」


と、笑顔を向けた。




村長?が目の前、村長の息子?が向かって右、1番ガタイが良い人が向かって左に座り、

他の人達がバラバラに座る。


「他の人達は?」


「ここにいる者だけで、お伺いします」


ズラっと並ぶ椅子は適当では無い。

村の中の人、隠れてオレの周りを囲んでいる人が赤ん坊を除いて計53人居たからだ。


この場の全員が座ったのでオレの前、3人の前と、座った人のサイドテーブルに“コップの魔導具”を出す。


「コーヒーと念じればコーヒーが、紅茶と念じれば紅茶が出るのでお好きな物をご自由にどうぞ」


そう言って、オレはコーヒーを出して向かいの3人に中身を見せると、一口飲んで、手で示す。


村長の息子?が、最初に作って最初に飲む。それを見て、村長?も一口飲んだ。

左の人は手も付けないので、話し始める。


「あなたが村長さんですか?」


「はい、私が代表をしております」


「どう、お呼びすれば?」


「村長で構いません」


「分かりました。オレはレンジ クルスと言います。

今日のお話はこの集落を移って貰いたいと、お願いに来ました」


「移ると言うと?」


「皆さんのご希望で決めて頂きたいんですが、このミミッサス大森林を出るか、もっと奥地の安全な場所に移るかです」


「この森を出ると、言う事は“クルスさんについて来い”と言う事ですか?」


「いいえ、逆ですね。この森を出て、“好きな所”に引っ越すか、この森の奥地の“オレの家の近隣”に住むかです」


「!!クルスさんの家が“この森の奥地”にあるんですか?」


「ええ」


「…………先程、権利が有ると仰いましたが?」


「オレがこのミミッサス大森林の主になったからです」


「何か証拠が御座いますか?」


「“鑑定”して貰ったら、称号に載ってますよ」


「“偽装”できます!!」


村長がそう言うと、周囲を含め全員が殺気を込めて来る。

「はぁ〜〜……」と、大きく溜息を吐いて、ずっと黙っていたシロネコが話し出す。


「止めよ!!“黒火の者”よ!!我が主が言った事は本当だ!!」


その声を聞き、全員が ビクッとした。


「黒火の長よ、薄々、感づいて居たのだろう?我だと」


「!!やはり、ナラシンハ様なのですか?しかし、お身体が……」


「うむ、これは我が主が与えて下さった、新たな力だ」


そう言って、シロネコはチャイルドチェアーから飛び降りて、100倍くらいの大きさになる。


「この様にな」


シロネコがそう言うと、この場に居たものも含め、村の中に居た者や隠れて居たものも出て来て、全員が膝を着いて、頭を下げた。


オレの表情を見て、シロネコがもう一度、溜息を吐く。


「主よ、その驚かせたがる癖はどうに……!!その癖は、主の美徳だと我は思う!!」


“デコピンの構え”に手のひらを返して、肉球を見せるシロネコに、「冗談だよ」と、笑い掛ける。

オレ達のやり取りを待っていたかの様に、多分実際に待っていた、村長が、更に頭を下げる。


「知らなかったとは言え、数々のご無礼、申し訳ありませんでした!!」


「いいですよ、わざと最初は言わなかったんで。それより、座って下さい」


「しかし!!」


「村長さんが座らないと、みんな座れませんよ。

そちらや、奥の皆さんも座って、コーヒーでも紅茶でもお好きな方をどうぞ」


村長が座り、他の人達もバラバラと座り、先程は手を付けなかった人達も飲み物を飲んで、一息ついた。




今回の“引っ越し依頼”の内容を説明する。

まず、この森の最奥、“元ナラシンハの住処”にオレが家を建てた事。

そこを拠点にして、これから“大きな商売”をしようとしている事を話す。


続いて、オレの考える“大きな商売”が無事に成功したら、多くの“敵”が出来、オレの“商売の秘密”を探りに大勢の人が来て、この村に迷惑が掛かるかも知れない事を話す。


この村が、“隠れ里”だという事は知っているので、“引っ越し”の無理強いはしないが、今後、住みにくくなったとしても責任は持てないと話す。


「奥地に住む場合は何処になるのか?」と言う質問が来たので「見てみるか?」という流れから、現地見学会になった。最悪の場合は記憶を消去すればいいだろう。


ある程度大きくなったシロネコの背中に、村に居た全員を乗せて我が家に向かう。

「畏れ多い」と遠慮する村人達を「主の手を煩わせるな」とのシロネコの一言で、みんな仲良く乗っている。


そして、シロネコのスピードに必死に毛にしがみついていた。

オレの風属性魔法なら風圧を防げるが、面白かったので、赤ん坊を抱いた母親と、3人の子供以外は手助けしなかった。

“ジェットコースターを楽しむ子供と、怖がる親”の様でとても絵になっていたからだ。


“結界”の前で急停止し、通り抜けると再加速で“我が家”に向かう。

常時張っている結界は“我が家”を中心に周囲100km四方、地上1,500m、地下300mの箱状で、この結界は“生物は歩いてしか入れない”という結界だ。


走っても、飛んでも、“リターン”でも通れない。

“生物は歩いてしか入れない”という条件は弱点は多いが、オレの知らない“転移手段”を優先して防ぐのが目的だ。


結界を抜けて我が家が見えて来た。

はしゃいでいた子供達は驚いて固まり、必死な大人達は見ることが出来ない。


高さ100mの外塀にある、高さ80m幅50mの大きな門の前で止まり、全員を下ろして、小さくなったシロネコを肩に乗せる。


目の前の高い門、そこから延々と続く、高い壁、そして、その壁の向こうに見える、高い高い塔。

全員の驚き顔に少し、ニヤニヤしながら、大きな門の横の普通サイズの扉を潜って中へと案内する。

ちなみ門は雰囲気で作っただけで、“ディファレントスペース”を使えるオレには大きな門は必要無い。


我が家の横を通り過ぎて裏手へ、少し我が家から距離を取って、振り向き全員を見渡す。

我が家の方をチラチラ見ている者もいたが、先頭の村長はこっちを見ていたので話し出す。


「アレはオレの家だ。で、この辺から北は好きに使ってくれていい。

条件はここの情報を絶対に漏らさない事と、オレと敵対する組織に付く場合は出て行く事だ。

村長、今ここに居ない人も含めて、村は何世帯、何人なんだ?」


「“出ている者”も含めれば、我等一族は、90世帯121人です」


「そうか、分かった」


そう言って、頷き、“我が家の外壁”を使って、“4LDKバス、トイレ付き”の家を、“スキル 創造”で次々と建てて行く。100棟出来たところで、振り向くと、“村長すら”目を見開き、あんぐりしていた。


その表情に、ニヤっとして、


「もし、ここに移住でよければ、この家も好きに使ってくれていい、気に入らなければ、自分達で建ててくれても構わない」


表情を元に戻した村長が、少しの沈黙のあと、聞いてくる


「…………見返りは?」


「そうだなぁ〜……毎年、夏至の日に、ウチのシロネコの為に祭りをしてくれてるんだろ?

今年からは、オレとウチのヤツらも招待してくれ」


沈黙…………


「あの……他には?」


「他に?…………じゃあ、畑作ったり、牧場作ったりして、出来がいい物があったら、オレ達が食べる分だけでいいから分けてくれ」


沈黙…………


「それだけですか?」


「それだけでいいよ。そもそも、オレの都合で長年住んで居たところを“引っ越し”て貰うお願いをしてるんだ。

今よりもいい環境は提示するさ。


それに、パッと見て、若い女性も多いし、子供もいる。

女性が好きにオシャレが出来て、子供が走り廻って遊べるくらいの“隠れ里”にしてあげようかと思ったんだ。

ウチのシロネコがあなた達の事は気に入ってるみたいだからさ」


少しの間、考えていた風の村長さんが口を開く。


「クルス様は、ナラシンハ様から我等一族の事はお聞きになられていますか?」


「簡単にはな」


「では、今後、クルス様の“計画”が進めば“戦力”が必要なはず。

我等一族を取り込むお考えは?」


「戦力?……もし、“汚い手段で”攻められたり、オレの身内に手を出して来たら、“徹底的に叩き潰す”けど、進んで戦争をするつもりは無いから、あなた達を戦力として取り込もうとは思ってないよ。

個人的に働きたいなら、面接するよ?」


また、全員が驚き顔をする中、シロネコが語り掛ける。


「黒火の者よ、主は、こう言う方だ、難しく考える必要は無い。

我も自らの意思で我が主に忠誠を誓っている。

だが、もし、恩義を感じるならば、今年の祭りは美味い酒を用意するがいい」


「「「!!!」」」


「それは、お前が呑みたいだけだろう?」


「主よ、感謝と言えば酒だろう?」


「全く……」


シロネコとのやり取りに、意を決した様な村長が、後ろの村人達を見回す。

村長が頷くと、全員が力強く頷き、オレに向かって膝を着いた。


「クルス様、我等一族はこの地に移らせていただきます」


「分かった、じゃあ……」


「そして、我等、黒火一族一同、クルス様に忠誠を誓います。

どうか、我等をクルス様の下にお仕えさせて頂きたい!!」


声と同時にガバッと音がする勢いで全員が頭を下げた。




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