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第26章 ドゥアール④

ドゥアール④





▪️▪️▪️▪️






「はぁ〜〜……。神への信仰が厚いのも厄介な事だな…………」


「お館様、申し訳ありません」


ガリーの報告に溜め息がでた…………

神達の情報が全く入って来なかったからだ。


ドゥアールに来てから配下達には神達の情報収集を行わせて居たのだが、ミクチュリアの連中は、みんな口を揃えて、『神の事を語るなど不敬』と答えて、何にも教えて貰えない様だ。


残る手段は盗聴、盗撮なのだが、ドゥアールに住む87柱全員を対象に行ったのでは、時間が掛かって仕方ない。


普段であれば、100人程度の情報収集など、ウチの優秀な配下達にとっては造作も無い。

しかし、現在、ドゥアールで活動を許可しているのは一部の高レベルの者だけで、人数も少なく、神達は全員が配下達よりも強い前提での行動をさせている為、1人1人に非常に慎重に対応しているのだ。



「仕方ない。

現在、敵だと分かっている6柱の対応を先に済ませてしまおう。


その間、時間が掛かっても良いから、安全を優先して1柱づつ調査を進めてくれ」


「畏まりました」





さて、今回は、何度も言うが防衛戦だ。

いつもなら、妻達を連れて行く時は基本みんな一緒に行くのだが、現在は妻達にもローテーションを組んで貰っている。


訓練と防衛と待機だ。



基本的に、此方から出向く場合は、待機の妻達と出掛ける事になっている。

此れは、ペット達もセットで行動して貰っている。


普段は妻達に働かせたりはしないのだが、現在の人手不足に対して、レベルの高い妻達にも協力して貰った方が解決が早い。


完全にオレの我儘だが、2月中には、ハリルドラをどうにかしておきたいのだ。

3月は、余裕を持って、ルナルーレの出産に立ち会いたい。


妻達も理由がオレの只の我儘であるからこそ、非常に協力的だ。

良い妻達に恵まれていると思う。





そんな訳で、今日の待機組は、ラムとヒィだ。

ペットは、シロネコと応龍。


4人に声を掛けて、ガリーと共に『中層世界で新たに生まれる神を認めない派』の6柱の元へ向かう。

最初に行くのはフンドゥンキンの所だ。



この、フンドゥンキンを最初に対応するのは、場所の問題だ。

フンドゥンキンの住処は、オレが作った拠点と応龍の神殿の間にある森の中だからだ。

そして、オレの拠点とフンドゥンキンの住処の間には、小規模なエルフの集落が有る。

出来れば、戦いにこの集落を巻き込みたくは無いので、大規模な事になる前に対処をしておこうと思っていた。



フンドゥンキンの住処は、広大な大森林の中にある、巨大な木の中だ。

聖樹を彷彿とさせるくらいデカい。


応龍に乗って、木の中程にある、洞の中へ入ると、武装した天使たちが出迎えてきた。



「応龍様、ようこそお越し下さいました。

御用件をお伺い致します」


「要が有るのは私では無い。此方のクルス神だ。

この方は私よりも上位の神だ」


「其れは、大変失礼致しました。

クルス神様、どうぞ、お許し下さい。

改めまして、クルス神様。御用件をお伺い致します」


「ああ、フンドゥンキンに話が有る。

内容はオレの敵かどうか。

そして、敵で有るならその理由の確認だ」


「畏まりました。

確認して参ります。しばらくお待ち下さい」



待つ事しばし、以外とすんなりフンドゥンキンはオレ達に会うという。


木の中なのに普通の建物と同じ様に、床や壁が有り絨毯が敷かれている。

そんな廊下を歩いて通されたのは、かなり広めの応接室の様な部屋だった。


一応、警戒はしていたが、廊下でもこの応接室でも罠らしい物は見当たらない。


オレ達が席に着くと、フンドゥンキンがやって来た…………





フンドゥンキンは、一言で言うなら、“スーツを着たスライム人間”だった。


言わずと知れた“最弱モンスター代表”のスライムだが、アルファでも、もちろん最弱代表だ。

しかし、厄介な能力を持っているのも、アルファでも同じだった。



1つは、“崇高な書物”に良く出て来る、“何故か女性の服だけを溶かす”力だ。

此れは、オレには関係無いが、今日はラムもヒィも居る、非常に危険だ。


もう1つは、分裂する力だ。

此れは同一個体のまま、複数になる事が出来る力だ。

なので、この力を持っているならば、目の前のフンドゥンキンも、フンドゥンキンの一部で有る可能性も有る。


もう1つは、再生能力だ。

アルファでは、スライムは基本“火属性魔法”で焼却して倒す。

何故なら、弱すぎて魔核が小さい為にキチンと殺せたかどうか、確認が大変だからだ。

このフンドゥンキンは、神なので、そもそも魔核が有るかどうかも分からない。

非常に厄介だ。


最後は何と言っても、吸収能力だろう。

相手の力を奪う事が、このフンドゥンキンにも出来るかも知れない。

警戒は高くしておくに越した事はない。



オレがスライムの危険性を考えていると、席に着いたフンドゥンキンが早速口を開いた。

いや、口も目も何も無い顔なのだが、とりあえず話し掛けて来た。



「クルス神、話しは聞いている。

率直に言うなら、私は貴様の敵だ。


だが、敵対する理由はシュウウキョーヴ神や、ハリルドラ様達とは若干違う。


私の目的は、アールドゥアーデに攻め込み、クスレン神を討つ事だ」


「魔導神クスレンを討つ為に、中層世界の神を皆殺しにしようと云うのか?」


「私自身は、クスレン神さえ討てればとりあえずは良い。

しかし、他の神々が貴様やもう1柱に対して何か行動を起こしても止めるつもりは無い。


何故なら、貴様ももう1柱のクリア神もクスレン神と同じく、進化を冒涜する可能性が有るからだ」


「…………なるほど…………。


じゃあ、おまえは進化の冒涜をしたクスレンを討ちたい。

しかし、自分1人では勝てないから、他の神達と協力出来る、中層世界の神殺しに参加しているって事か?」


「そうだ。

私は進化を司る神として、クスレン神に罰を与えようと何度も試みたが、全て失敗した。

おそらく、直接対峙しても全く歯が立たないだろう。


なので、応龍様にも、何度も進言した!!

クスレン神の暴挙を止めて頂きたいと!!


応龍様と共に、クスレン神の元に向かった事も何度か有るが、ことごとく逃げられた。

私は諦め切れなかったが、応龍様は飽きっぽい。


次第に、私の進言にも耳を傾けてくださらなくなった。


そんな私に声を掛けて来たのが、ウォットゴツ神だ。


ウォットゴツ神は、ハリルドラ様の破壊と再生を繰り返す世界に共感し、私にもハリルドラ様の傘下に加わり、中層世界から神を無くし、人々が均一な能力を持つ中層世界にしようと言って来た。


ウォットゴツ神も私と同じく、進化を司っている。

しかし、戦乱も司っているのだ。


なので、今のアールドゥアーデの一部の強者が治める世界では無く、大勢の弱者が潰し合う世界で、人々が進化して行く事を望んでいるのだろう。


私は、戦乱の続く進化を求めている訳では無いが、クスレン神打倒の為ならば致し方なしと考えている」


「そうか。なら、最初におまえが言った通り、おまえはオレの敵だな。


おまえは仕方ないと言ったが、戦乱が続く世界をオレは、否定する。


其れに、おまえ達神はどうも、中層世界の事を自分達で勝手に決めて良いと思っている様だが、中層世界の人間からしたら、いい迷惑だ。


大体、おまえの負け犬根性が気に入らない。


クスレンに勝てないなら、修行するなり特訓するなりして、クスレンよりも強くなってから自分で追いかけ回せば済む話しだ。


“進化”を司なんて偉そうな事を言っておいて、おまえは、自分自身の“進歩”すら疎かにしている。

そんなヤツが神なんて名乗るな」


「く!!貴様、言わせておけば!!」


「まあいい。

とりあえず、おまえはオレが死んでも仕方ないと思ってたんだから、おまえが殺されても仕方ないよな?」


「…………殺せるモノならばな…………」



「じゃあ、ラム。お待たせ、やって良いぞ」


「分かりましたわ。

では、フンドゥンキン神、お覚悟を」


そう言って、ラムは立ち上がり腰の2刀を抜く。



オレはいつも通りだが、此処は敵地だ。

ラムはもちろん、他のみんなもちゃんと武装している。


唯一していないのは、装備の無い応龍だけだ。

応龍はまだ、装備の重要性が感じられないのだろう。


まあ、自分の爪や牙よりも、オレが作った武器の方が強いと思っている、シロネコ達の方が特殊と言えなくも無い。


ラムが抜いた刀を見つめながら…………

いや、目は無いのだが雰囲気的にだ。



「クルス神では無く、妻が私と戦うのか?

私は手加減するつもりは無いが良いのだな?」


「ああ、全く問題無い。

多少おまえが特殊でも、ラムなら余裕だろう」


「ふむ、ではさっさと済ませてしまおう。

此方はこれから、連戦になるからな」


「ふふ、その心配は、必要ありませんわ。

私が最初で最後ですもの」


そう言って、ラムがフンドゥンキンの腕を斬り落とす。


「ほう、まさか私の身体を斬り裂けるとは…………」


と、言うフンドゥンキンの言葉は、そこで途切れた。

ラムが首も斬り落としたからだ。



しかし、やはり見た目通りスライムなのだろう。

首が斬られた時には腕は戻っていたし、斬られた腕と首がラムに飛んで行った。


ラムは左の刀に火を、右の刀に雷を纏わせて、飛んで来た腕と首を斬り裂く。

火の刃で斬られた腕の方は燃え尽きたが、雷の首の方は帯電したまま地面で蠢いている。



「火を纏う剣か、厄介な代物だな。だが…………」


またも、喋っているフンドゥンキンを今度はラムが火の刀で細切れにした。


フンドゥンキンは燃え尽きて無くなってしまったが、その瞬間、ラムの後ろに現れる。

今回は何も着ていないが人型のスライムだ。


しかし、現れたと同時にラムは火の刀でフンドゥンキンを細切れにして、そのまま、床も斬り裂いた。


床の穴の向こうには、巨大なスライムがいた!!

普通の丸いスライムだ!!

まあ、オレも気付いていた訳だが…………



「ふむ、見つかってしまったか、此れはいよいよ…………」


と、また喋っているフンドゥンキンに向けて、


「クルス流剣術1……“連閃”!!」


二刀を一旦鞘に納めたラムは、流れる様な動作で抜刀術を繰りだし、その流れのままに火の斬撃を飛ばしまくる。

巨大スライムはどんどん燃えて小さくなって行く。


其れにしても、わざわざ、技名を叫んで放つのは、ブランドの血筋だろうか…………

オレは、無駄だと思うのだが…………



例えば、今の“連閃”も、ラムの声がフンドゥンキンに聞こえる前に既に1発目が当たっている。

ラムの攻撃の方が音よりも速いからだ。


其れでも、ラムだけで無く、リムも技を放つ時には声に出している。

まあ、本人が良いなら良いのだが…………


おそらく相手は、その技名を喰らった後で聞いているだろうに…………



ラムが最後に、


キーーーン


と、納刀の音を響かせて、


「では、あなた。外に出ましょうか」


と言って、先導し始めた。

理由はきっと、ラムがこの木ごと焼き尽くすつもりだからだろう。


穴の下にいたスライムは燃え尽きて、フンドゥンキンも出て来ないが、まだ生きている。

上の階にもいるし、下の階のもっと下にもいる。


神スライムは、やっぱりデカい様だ。



ラムは、出て行きながら、天使達に、


「貴方達も外に出ていないと、命の保証は致しませんわよ」

と、声を掛けている。


天使達が戸惑っている様だったので、


「神の戦いの邪魔をするな、今直ぐ退去しろ!!」

と、大きめの声を上げる。


まあ、此れで神であるオレとフンドゥンキンが戦っていて、邪魔をするのは不敬だと勘違いしてくれるだろう。

予想通り、天使達は、ワラワラと、出て行った。



外に出たラムは、先ずオレ達が居た階の辺りを上下に斬り飛ばし、だるま落としの様に蹴り出した。


もちろん、何も言わずとも、オレが“ディファレントホーム”でキャッチする。

ウチの夫婦間には、アイコンタクトすら不要なチームワークがあるのだ!!


『一声掛けてくれても良いんじゃ無いか?技名は叫ぶのに…………』などとは、微塵も思っていない!!



その後、ラムは反撃を警戒しながらも、木が完全に無くなるまで、斬りまくっていた…………


念の為、途中で森羅万象にフンドゥンキンの生存を確認したが、とっくに死んでいる。

其れでも、根っこまで焼き尽くす程、斬りまくっていた…………



「なあ、ラム。

あのフンドゥンキンに何かあったのか?」


余りにも念入りに、焼き尽くすので、聞いてみたのだが…………


「いいえ。

ただ、出掛けにレンさんが『スライムは女の敵だから、必ず完全消滅をさせなければならない』と、仰っていたので」


…………レンの入れ知恵だったらしい…………


と、なると、今後の残り5柱の内、少なくとも3柱は、完全消滅対象だろう…………





▪️▪️▪️▪️





猪が槍で突っ込んで来た…………


しかし、シロネコのネコパンチで、地面にクレーターを作った…………


フンドゥンキンさん家を焼き払った後に、此処、ウォットゴツさん家を訪れたのだが、敷地内に入っただけで、猪が襲い掛かって来た…………


まあ、この猪が、ウォットゴツさんな訳だが…………



シュウウキョーヴは、見た目は完全にオークだった。

要は直立歩行のブタだ。


そして、このウォットゴツも、見た目は完全にオークだ。

此方は、直立歩行の猪だ。

猪パターンのオークと云う訳だ。



今日の戦闘に関しては、前以て、クジで順番を決めてあった。

と、言っても、オレと応龍は不参加だったので、ラム、ヒィ、シロネコ、ガリーの4人が行ったのだが、順番は、ラム、シロネコ、ガリー、ヒィの順だった。


さっきは、ラムだったので、今度はシロネコの番ではあったが、シロネコがオレに確認もせずに攻撃するのは珍しい。


「シロネコ、おまえもレンに何か言われたのか?」


「うむ、レン奥様からは『オークは女の敵だから、有無を言わさず完全消滅させなければならない』と言われている」


「…………そうか…………。まあ、なんだ。

いきなり攻撃して来たし、フンドゥンキンの話しだと敵対は確実だから好きにしていいぞ」


「うむ。では、いざ参る!!」



シロネコは、其れはもう、ウォットゴツをボッコボコにしていた…………

最後は、其れはもう、カケラも残らない程、細切れにしていた…………





次はエイトアットだ。

おそらく、彼も完全消滅対象だろう…………


エイトアットは、王城の様な建物に住んでいた。

規模で言えばビルスレイア城の5倍はある巨大な城だ。


オレ達が近付くと、大量の天使が出て来た。

500人くらいは居るだろうか…………


ドゥアールに天使は3,000人程だと言っていたから、たった1柱で、6分の1を確保していると言う事だ…………


理由は恐らく、コイツも“女の敵”だからだろう…………



天使達の陣形が左右に割れて、中央に道が出来、奥に居る神が見える様になった…………





エイトアット。

コイツは、まあ、所謂、ゴブリンだ。

身長は130cm、緑色の肌に一切毛の無い頭に小さなツノが有る、典型的なゴブリンだ。


ゴブリンっぽく無い部分は、豪華な服を着ているところと背後の光輪だろう。

王の様な格好で、マントに錫杖を持っていて、後光が指す様に光輪が有る。



ゴブリンと言えば、村を襲っては、若い娘を攫って、子供を産ませて大量に繁殖するのが定番だ。

絶対にレンから、完全消滅指定を受けている事だろう…………



「貴様がシュウウキョーヴのヤツを殺った、神モドキかギャ?

今度はオレ様を殺しに来たのかギャ?」


『!!コイツ、語尾に“ギャ”が付いているじゃないか!!

なんて、ちゃんとしたゴブリンっぽいんだ!!


ちょっと、殺すのが惜しい気がして来たが…………

多分、完全消滅されちゃうんだろうなぁ〜…………』



などと、考えながらも、


「ああ、オレの事を神モドキって言ったからな。


そう云う言い方をするヤツとは、敵対するだろうから多分、おまえを殺す事になるだろうな」

と、答えておいた。


「チッ!!偉そうなヤツだギャ。

応龍様、あんたもソイツに付くのかギャ?」


「うむ、私はクルス神に敗れて、クルス神のペットになった故な」


「はぁ〜〜ん?!あんた、ソイツのペットに成り下がったのギャ?

あんたには、大神としてのプライドは無いのギャ?!」


「クルス神は私よりも強い。

故にクルス神の言葉が正しい」


「あんたが、そんな雑魚だと分かってたら、さっさとオレ様が、あんたをペットにでもしてやれば良かったギャ!!


おい、応龍!!

オレ様が其処の神モドキを殺したら、おまえはオレ様のペットになるギャ!!」


「良いだろう。

其方が勝てば、其方が正しい。其方に従おう」


「良し、なら神モドキ。おまえを殺してやるギャ!!

おまえ達、行くギャ!!」



なんだか、勝手に話しが進んで、勝手に始まってしまった…………

其れに、1対1とかじゃなく、この大量の天使が向かって来る様だ…………


まあ、オレを殺すのが目的なら、正しい判断と言えなくも無い。

数は戦いの基本とも言えるだろう。しかし、気に入らない…………



エイトアットは、オレが少なくともシュウウキョーヴを殺して、応龍に勝ったくらいの力が有る事は分かっているだろう。

つまり、天使達は、完全に捨て石にするつもりなのだ。


シュウウキョーヴの時にも思ったが、此れの一体何処が神なのか…………

やはり、神など所詮は、唯の種族と云う事だろう。



今回は、ガリーだ。

此れは、天使達にとってはとても良かっただろう。


ガリーは、オレの意を汲んでくれていて、必要以上の殺生はしない。

其れに、黒火一族で有るガリーは、対人の非殺生無力化は、専門だ。


レベル1億前後の天使達が次々と向かって来るが、ガリーは的確に一人一人意識を刈り取っている。

そして、ちゃんとエイトアットへの警戒を怠ってはいない。


しかし…………



「なんだギャ?神は殺しても天使は殺さないのギャ?


女は殺さないとか、甘いヤツらだギャ!!

おまえ達、ソイツを囲んで、逃げ場を無くすギャ!!」


ガリーが天使達を殺さないのは、天使達がエイトアットに逆らえないからだが、理由はどうあれ、今のエイトアットの発言で何をするつもりかは分かる。


味方ごとガリーに攻撃するのだろう。



「喰らうギャ!!インフェルノリピットファイア!!」


エイトアットが火属性魔法を放つ。

サッカーボールくらいの火球が連続して現れては、ガリー目掛けて飛んで行く。



「ギャッギャッギャ!!どうするギャ?

おまえが避けたら、周りの天使達が焼け死ぬギャ?」

と、エイトアットが安い挑発を飛ばすが…………



「ギャギャ!!何で普通に避けるギャ!!


ギャ?!今度は天使を盾にしたギャ?!

おまえ、天使達は殺さないんじゃ無いのギャ?!」



ガリーは、キチンと線引きが出来ている。


オレは、勇者でも正義の味方でも無い。


配下達には、可能ならば無益に殺さない様には言っているが、この“可能なら”と、云うのは、“自分自身と仲間が無傷で”と、云うのが含まれている。



正直言って、どんな理由があろうと、本人の本意では無かろうと敵対したのだ。

別に殺しても構わない。


ガリーがかすり傷を負うくらいなら、この天使達が何人死のうがオレは別に気にしない。

あくまでも、可能ならば殺さないだけで、巻き込まれて死んだなら、其れは本人の問題だ。



「ぐぬぬ〜〜!!

1発も攻撃を当てられないなんて、本当に天使共は無能ギャ!!


やっぱり、コイツらには、オレ様の苗床以外の使い道なんて、全く無いギャ!!


もういいギャ!!纏めて全員、殺してやるギャ!!


インフェルノヘル!!」


エイトアットの全てを焼き尽くす様な魔法は…………



何も起きなかった。



無駄な前口上の所為で、ガリーに、首を飛ばされていたからだ…………


本気で殺すつもりなら、何で無駄に『纏めて全員、殺してやる』などと大規模攻撃のヒントをわざわざ言うのだろうか…………


様式美も大切だが、億レベルの戦いでは、声よりも動きの方が速いだろうに…………



などとオレが思っている間も、ガリーは、エイトアットをグチャグチャに斬り裂いていた…………


やっぱり、完全消滅対象だったようだ…………







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