第26章 ドゥアール④
ドゥアール④
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「はぁ〜〜……。神への信仰が厚いのも厄介な事だな…………」
「お館様、申し訳ありません」
ガリーの報告に溜め息がでた…………
神達の情報が全く入って来なかったからだ。
ドゥアールに来てから配下達には神達の情報収集を行わせて居たのだが、ミクチュリアの連中は、みんな口を揃えて、『神の事を語るなど不敬』と答えて、何にも教えて貰えない様だ。
残る手段は盗聴、盗撮なのだが、ドゥアールに住む87柱全員を対象に行ったのでは、時間が掛かって仕方ない。
普段であれば、100人程度の情報収集など、ウチの優秀な配下達にとっては造作も無い。
しかし、現在、ドゥアールで活動を許可しているのは一部の高レベルの者だけで、人数も少なく、神達は全員が配下達よりも強い前提での行動をさせている為、1人1人に非常に慎重に対応しているのだ。
「仕方ない。
現在、敵だと分かっている6柱の対応を先に済ませてしまおう。
その間、時間が掛かっても良いから、安全を優先して1柱づつ調査を進めてくれ」
「畏まりました」
さて、今回は、何度も言うが防衛戦だ。
いつもなら、妻達を連れて行く時は基本みんな一緒に行くのだが、現在は妻達にもローテーションを組んで貰っている。
訓練と防衛と待機だ。
基本的に、此方から出向く場合は、待機の妻達と出掛ける事になっている。
此れは、ペット達もセットで行動して貰っている。
普段は妻達に働かせたりはしないのだが、現在の人手不足に対して、レベルの高い妻達にも協力して貰った方が解決が早い。
完全にオレの我儘だが、2月中には、ハリルドラをどうにかしておきたいのだ。
3月は、余裕を持って、ルナルーレの出産に立ち会いたい。
妻達も理由がオレの只の我儘であるからこそ、非常に協力的だ。
良い妻達に恵まれていると思う。
そんな訳で、今日の待機組は、ラムとヒィだ。
ペットは、シロネコと応龍。
4人に声を掛けて、ガリーと共に『中層世界で新たに生まれる神を認めない派』の6柱の元へ向かう。
最初に行くのはフンドゥンキンの所だ。
この、フンドゥンキンを最初に対応するのは、場所の問題だ。
フンドゥンキンの住処は、オレが作った拠点と応龍の神殿の間にある森の中だからだ。
そして、オレの拠点とフンドゥンキンの住処の間には、小規模なエルフの集落が有る。
出来れば、戦いにこの集落を巻き込みたくは無いので、大規模な事になる前に対処をしておこうと思っていた。
フンドゥンキンの住処は、広大な大森林の中にある、巨大な木の中だ。
聖樹を彷彿とさせるくらいデカい。
応龍に乗って、木の中程にある、洞の中へ入ると、武装した天使たちが出迎えてきた。
「応龍様、ようこそお越し下さいました。
御用件をお伺い致します」
「要が有るのは私では無い。此方のクルス神だ。
この方は私よりも上位の神だ」
「其れは、大変失礼致しました。
クルス神様、どうぞ、お許し下さい。
改めまして、クルス神様。御用件をお伺い致します」
「ああ、フンドゥンキンに話が有る。
内容はオレの敵かどうか。
そして、敵で有るならその理由の確認だ」
「畏まりました。
確認して参ります。しばらくお待ち下さい」
待つ事しばし、以外とすんなりフンドゥンキンはオレ達に会うという。
木の中なのに普通の建物と同じ様に、床や壁が有り絨毯が敷かれている。
そんな廊下を歩いて通されたのは、かなり広めの応接室の様な部屋だった。
一応、警戒はしていたが、廊下でもこの応接室でも罠らしい物は見当たらない。
オレ達が席に着くと、フンドゥンキンがやって来た…………
フンドゥンキンは、一言で言うなら、“スーツを着たスライム人間”だった。
言わずと知れた“最弱モンスター代表”のスライムだが、アルファでも、もちろん最弱代表だ。
しかし、厄介な能力を持っているのも、アルファでも同じだった。
1つは、“崇高な書物”に良く出て来る、“何故か女性の服だけを溶かす”力だ。
此れは、オレには関係無いが、今日はラムもヒィも居る、非常に危険だ。
もう1つは、分裂する力だ。
此れは同一個体のまま、複数になる事が出来る力だ。
なので、この力を持っているならば、目の前のフンドゥンキンも、フンドゥンキンの一部で有る可能性も有る。
もう1つは、再生能力だ。
アルファでは、スライムは基本“火属性魔法”で焼却して倒す。
何故なら、弱すぎて魔核が小さい為にキチンと殺せたかどうか、確認が大変だからだ。
このフンドゥンキンは、神なので、そもそも魔核が有るかどうかも分からない。
非常に厄介だ。
最後は何と言っても、吸収能力だろう。
相手の力を奪う事が、このフンドゥンキンにも出来るかも知れない。
警戒は高くしておくに越した事はない。
オレがスライムの危険性を考えていると、席に着いたフンドゥンキンが早速口を開いた。
いや、口も目も何も無い顔なのだが、とりあえず話し掛けて来た。
「クルス神、話しは聞いている。
率直に言うなら、私は貴様の敵だ。
だが、敵対する理由はシュウウキョーヴ神や、ハリルドラ様達とは若干違う。
私の目的は、アールドゥアーデに攻め込み、クスレン神を討つ事だ」
「魔導神クスレンを討つ為に、中層世界の神を皆殺しにしようと云うのか?」
「私自身は、クスレン神さえ討てればとりあえずは良い。
しかし、他の神々が貴様やもう1柱に対して何か行動を起こしても止めるつもりは無い。
何故なら、貴様ももう1柱のクリア神もクスレン神と同じく、進化を冒涜する可能性が有るからだ」
「…………なるほど…………。
じゃあ、おまえは進化の冒涜をしたクスレンを討ちたい。
しかし、自分1人では勝てないから、他の神達と協力出来る、中層世界の神殺しに参加しているって事か?」
「そうだ。
私は進化を司る神として、クスレン神に罰を与えようと何度も試みたが、全て失敗した。
おそらく、直接対峙しても全く歯が立たないだろう。
なので、応龍様にも、何度も進言した!!
クスレン神の暴挙を止めて頂きたいと!!
応龍様と共に、クスレン神の元に向かった事も何度か有るが、ことごとく逃げられた。
私は諦め切れなかったが、応龍様は飽きっぽい。
次第に、私の進言にも耳を傾けてくださらなくなった。
そんな私に声を掛けて来たのが、ウォットゴツ神だ。
ウォットゴツ神は、ハリルドラ様の破壊と再生を繰り返す世界に共感し、私にもハリルドラ様の傘下に加わり、中層世界から神を無くし、人々が均一な能力を持つ中層世界にしようと言って来た。
ウォットゴツ神も私と同じく、進化を司っている。
しかし、戦乱も司っているのだ。
なので、今のアールドゥアーデの一部の強者が治める世界では無く、大勢の弱者が潰し合う世界で、人々が進化して行く事を望んでいるのだろう。
私は、戦乱の続く進化を求めている訳では無いが、クスレン神打倒の為ならば致し方なしと考えている」
「そうか。なら、最初におまえが言った通り、おまえはオレの敵だな。
おまえは仕方ないと言ったが、戦乱が続く世界をオレは、否定する。
其れに、おまえ達神はどうも、中層世界の事を自分達で勝手に決めて良いと思っている様だが、中層世界の人間からしたら、いい迷惑だ。
大体、おまえの負け犬根性が気に入らない。
クスレンに勝てないなら、修行するなり特訓するなりして、クスレンよりも強くなってから自分で追いかけ回せば済む話しだ。
“進化”を司なんて偉そうな事を言っておいて、おまえは、自分自身の“進歩”すら疎かにしている。
そんなヤツが神なんて名乗るな」
「く!!貴様、言わせておけば!!」
「まあいい。
とりあえず、おまえはオレが死んでも仕方ないと思ってたんだから、おまえが殺されても仕方ないよな?」
「…………殺せるモノならばな…………」
「じゃあ、ラム。お待たせ、やって良いぞ」
「分かりましたわ。
では、フンドゥンキン神、お覚悟を」
そう言って、ラムは立ち上がり腰の2刀を抜く。
オレはいつも通りだが、此処は敵地だ。
ラムはもちろん、他のみんなもちゃんと武装している。
唯一していないのは、装備の無い応龍だけだ。
応龍はまだ、装備の重要性が感じられないのだろう。
まあ、自分の爪や牙よりも、オレが作った武器の方が強いと思っている、シロネコ達の方が特殊と言えなくも無い。
ラムが抜いた刀を見つめながら…………
いや、目は無いのだが雰囲気的にだ。
「クルス神では無く、妻が私と戦うのか?
私は手加減するつもりは無いが良いのだな?」
「ああ、全く問題無い。
多少おまえが特殊でも、ラムなら余裕だろう」
「ふむ、ではさっさと済ませてしまおう。
此方はこれから、連戦になるからな」
「ふふ、その心配は、必要ありませんわ。
私が最初で最後ですもの」
そう言って、ラムがフンドゥンキンの腕を斬り落とす。
「ほう、まさか私の身体を斬り裂けるとは…………」
と、言うフンドゥンキンの言葉は、そこで途切れた。
ラムが首も斬り落としたからだ。
しかし、やはり見た目通りスライムなのだろう。
首が斬られた時には腕は戻っていたし、斬られた腕と首がラムに飛んで行った。
ラムは左の刀に火を、右の刀に雷を纏わせて、飛んで来た腕と首を斬り裂く。
火の刃で斬られた腕の方は燃え尽きたが、雷の首の方は帯電したまま地面で蠢いている。
「火を纏う剣か、厄介な代物だな。だが…………」
またも、喋っているフンドゥンキンを今度はラムが火の刀で細切れにした。
フンドゥンキンは燃え尽きて無くなってしまったが、その瞬間、ラムの後ろに現れる。
今回は何も着ていないが人型のスライムだ。
しかし、現れたと同時にラムは火の刀でフンドゥンキンを細切れにして、そのまま、床も斬り裂いた。
床の穴の向こうには、巨大なスライムがいた!!
普通の丸いスライムだ!!
まあ、オレも気付いていた訳だが…………
「ふむ、見つかってしまったか、此れはいよいよ…………」
と、また喋っているフンドゥンキンに向けて、
「クルス流剣術1……“連閃”!!」
二刀を一旦鞘に納めたラムは、流れる様な動作で抜刀術を繰りだし、その流れのままに火の斬撃を飛ばしまくる。
巨大スライムはどんどん燃えて小さくなって行く。
其れにしても、わざわざ、技名を叫んで放つのは、ブランドの血筋だろうか…………
オレは、無駄だと思うのだが…………
例えば、今の“連閃”も、ラムの声がフンドゥンキンに聞こえる前に既に1発目が当たっている。
ラムの攻撃の方が音よりも速いからだ。
其れでも、ラムだけで無く、リムも技を放つ時には声に出している。
まあ、本人が良いなら良いのだが…………
おそらく相手は、その技名を喰らった後で聞いているだろうに…………
ラムが最後に、
キーーーン
と、納刀の音を響かせて、
「では、あなた。外に出ましょうか」
と言って、先導し始めた。
理由はきっと、ラムがこの木ごと焼き尽くすつもりだからだろう。
穴の下にいたスライムは燃え尽きて、フンドゥンキンも出て来ないが、まだ生きている。
上の階にもいるし、下の階のもっと下にもいる。
神スライムは、やっぱりデカい様だ。
ラムは、出て行きながら、天使達に、
「貴方達も外に出ていないと、命の保証は致しませんわよ」
と、声を掛けている。
天使達が戸惑っている様だったので、
「神の戦いの邪魔をするな、今直ぐ退去しろ!!」
と、大きめの声を上げる。
まあ、此れで神であるオレとフンドゥンキンが戦っていて、邪魔をするのは不敬だと勘違いしてくれるだろう。
予想通り、天使達は、ワラワラと、出て行った。
外に出たラムは、先ずオレ達が居た階の辺りを上下に斬り飛ばし、だるま落としの様に蹴り出した。
もちろん、何も言わずとも、オレが“ディファレントホーム”でキャッチする。
ウチの夫婦間には、アイコンタクトすら不要なチームワークがあるのだ!!
『一声掛けてくれても良いんじゃ無いか?技名は叫ぶのに…………』などとは、微塵も思っていない!!
その後、ラムは反撃を警戒しながらも、木が完全に無くなるまで、斬りまくっていた…………
念の為、途中で森羅万象にフンドゥンキンの生存を確認したが、とっくに死んでいる。
其れでも、根っこまで焼き尽くす程、斬りまくっていた…………
「なあ、ラム。
あのフンドゥンキンに何かあったのか?」
余りにも念入りに、焼き尽くすので、聞いてみたのだが…………
「いいえ。
ただ、出掛けにレンさんが『スライムは女の敵だから、必ず完全消滅をさせなければならない』と、仰っていたので」
…………レンの入れ知恵だったらしい…………
と、なると、今後の残り5柱の内、少なくとも3柱は、完全消滅対象だろう…………
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猪が槍で突っ込んで来た…………
しかし、シロネコのネコパンチで、地面にクレーターを作った…………
フンドゥンキンさん家を焼き払った後に、此処、ウォットゴツさん家を訪れたのだが、敷地内に入っただけで、猪が襲い掛かって来た…………
まあ、この猪が、ウォットゴツさんな訳だが…………
シュウウキョーヴは、見た目は完全にオークだった。
要は直立歩行のブタだ。
そして、このウォットゴツも、見た目は完全にオークだ。
此方は、直立歩行の猪だ。
猪パターンのオークと云う訳だ。
今日の戦闘に関しては、前以て、クジで順番を決めてあった。
と、言っても、オレと応龍は不参加だったので、ラム、ヒィ、シロネコ、ガリーの4人が行ったのだが、順番は、ラム、シロネコ、ガリー、ヒィの順だった。
さっきは、ラムだったので、今度はシロネコの番ではあったが、シロネコがオレに確認もせずに攻撃するのは珍しい。
「シロネコ、おまえもレンに何か言われたのか?」
「うむ、レン奥様からは『オークは女の敵だから、有無を言わさず完全消滅させなければならない』と言われている」
「…………そうか…………。まあ、なんだ。
いきなり攻撃して来たし、フンドゥンキンの話しだと敵対は確実だから好きにしていいぞ」
「うむ。では、いざ参る!!」
シロネコは、其れはもう、ウォットゴツをボッコボコにしていた…………
最後は、其れはもう、カケラも残らない程、細切れにしていた…………
次はエイトアットだ。
おそらく、彼も完全消滅対象だろう…………
エイトアットは、王城の様な建物に住んでいた。
規模で言えばビルスレイア城の5倍はある巨大な城だ。
オレ達が近付くと、大量の天使が出て来た。
500人くらいは居るだろうか…………
ドゥアールに天使は3,000人程だと言っていたから、たった1柱で、6分の1を確保していると言う事だ…………
理由は恐らく、コイツも“女の敵”だからだろう…………
天使達の陣形が左右に割れて、中央に道が出来、奥に居る神が見える様になった…………
エイトアット。
コイツは、まあ、所謂、ゴブリンだ。
身長は130cm、緑色の肌に一切毛の無い頭に小さなツノが有る、典型的なゴブリンだ。
ゴブリンっぽく無い部分は、豪華な服を着ているところと背後の光輪だろう。
王の様な格好で、マントに錫杖を持っていて、後光が指す様に光輪が有る。
ゴブリンと言えば、村を襲っては、若い娘を攫って、子供を産ませて大量に繁殖するのが定番だ。
絶対にレンから、完全消滅指定を受けている事だろう…………
「貴様がシュウウキョーヴのヤツを殺った、神モドキかギャ?
今度はオレ様を殺しに来たのかギャ?」
『!!コイツ、語尾に“ギャ”が付いているじゃないか!!
なんて、ちゃんとしたゴブリンっぽいんだ!!
ちょっと、殺すのが惜しい気がして来たが…………
多分、完全消滅されちゃうんだろうなぁ〜…………』
などと、考えながらも、
「ああ、オレの事を神モドキって言ったからな。
そう云う言い方をするヤツとは、敵対するだろうから多分、おまえを殺す事になるだろうな」
と、答えておいた。
「チッ!!偉そうなヤツだギャ。
応龍様、あんたもソイツに付くのかギャ?」
「うむ、私はクルス神に敗れて、クルス神のペットになった故な」
「はぁ〜〜ん?!あんた、ソイツのペットに成り下がったのギャ?
あんたには、大神としてのプライドは無いのギャ?!」
「クルス神は私よりも強い。
故にクルス神の言葉が正しい」
「あんたが、そんな雑魚だと分かってたら、さっさとオレ様が、あんたをペットにでもしてやれば良かったギャ!!
おい、応龍!!
オレ様が其処の神モドキを殺したら、おまえはオレ様のペットになるギャ!!」
「良いだろう。
其方が勝てば、其方が正しい。其方に従おう」
「良し、なら神モドキ。おまえを殺してやるギャ!!
おまえ達、行くギャ!!」
なんだか、勝手に話しが進んで、勝手に始まってしまった…………
其れに、1対1とかじゃなく、この大量の天使が向かって来る様だ…………
まあ、オレを殺すのが目的なら、正しい判断と言えなくも無い。
数は戦いの基本とも言えるだろう。しかし、気に入らない…………
エイトアットは、オレが少なくともシュウウキョーヴを殺して、応龍に勝ったくらいの力が有る事は分かっているだろう。
つまり、天使達は、完全に捨て石にするつもりなのだ。
シュウウキョーヴの時にも思ったが、此れの一体何処が神なのか…………
やはり、神など所詮は、唯の種族と云う事だろう。
今回は、ガリーだ。
此れは、天使達にとってはとても良かっただろう。
ガリーは、オレの意を汲んでくれていて、必要以上の殺生はしない。
其れに、黒火一族で有るガリーは、対人の非殺生無力化は、専門だ。
レベル1億前後の天使達が次々と向かって来るが、ガリーは的確に一人一人意識を刈り取っている。
そして、ちゃんとエイトアットへの警戒を怠ってはいない。
しかし…………
「なんだギャ?神は殺しても天使は殺さないのギャ?
女は殺さないとか、甘いヤツらだギャ!!
おまえ達、ソイツを囲んで、逃げ場を無くすギャ!!」
ガリーが天使達を殺さないのは、天使達がエイトアットに逆らえないからだが、理由はどうあれ、今のエイトアットの発言で何をするつもりかは分かる。
味方ごとガリーに攻撃するのだろう。
「喰らうギャ!!インフェルノリピットファイア!!」
エイトアットが火属性魔法を放つ。
サッカーボールくらいの火球が連続して現れては、ガリー目掛けて飛んで行く。
「ギャッギャッギャ!!どうするギャ?
おまえが避けたら、周りの天使達が焼け死ぬギャ?」
と、エイトアットが安い挑発を飛ばすが…………
「ギャギャ!!何で普通に避けるギャ!!
ギャ?!今度は天使を盾にしたギャ?!
おまえ、天使達は殺さないんじゃ無いのギャ?!」
ガリーは、キチンと線引きが出来ている。
オレは、勇者でも正義の味方でも無い。
配下達には、可能ならば無益に殺さない様には言っているが、この“可能なら”と、云うのは、“自分自身と仲間が無傷で”と、云うのが含まれている。
正直言って、どんな理由があろうと、本人の本意では無かろうと敵対したのだ。
別に殺しても構わない。
ガリーがかすり傷を負うくらいなら、この天使達が何人死のうがオレは別に気にしない。
あくまでも、可能ならば殺さないだけで、巻き込まれて死んだなら、其れは本人の問題だ。
「ぐぬぬ〜〜!!
1発も攻撃を当てられないなんて、本当に天使共は無能ギャ!!
やっぱり、コイツらには、オレ様の苗床以外の使い道なんて、全く無いギャ!!
もういいギャ!!纏めて全員、殺してやるギャ!!
インフェルノヘル!!」
エイトアットの全てを焼き尽くす様な魔法は…………
何も起きなかった。
無駄な前口上の所為で、ガリーに、首を飛ばされていたからだ…………
本気で殺すつもりなら、何で無駄に『纏めて全員、殺してやる』などと大規模攻撃のヒントをわざわざ言うのだろうか…………
様式美も大切だが、億レベルの戦いでは、声よりも動きの方が速いだろうに…………
などとオレが思っている間も、ガリーは、エイトアットをグチャグチャに斬り裂いていた…………
やっぱり、完全消滅対象だったようだ…………