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第2章 ミミッサス大森林⑨

ミミッサス大森林⑨



▪️▪️▪️▪️




新年を迎えた。

この世界での“お正月”は、1月1日の日の出と共に、日の出を背にして西にあるらしい、聖樹に向かって祈り、3日間お祭りをするらしい。


今日のルナルーレは何時にも増して“美しい”!!


昨日、“時間延長100倍訓練場”で丸1日、つまり、“実質40日”掛けて試行錯誤の末に完成した、“最もルナルーレに似合う振袖”を装備しているからだ!!


帯の締め方や小物まで完璧だ!!



日の出の少し前、目を覚ましたルナルーレを掻っ攫って、“時間延長100倍訓練場”に連れ込み!!

服を脱がせて、“スキル 着付け”で振袖を着せ、髪をアップにして、簪や小物を装備!!

最後に昨日“スキル 創造”で準備した化粧品を使い“スキル メイクLV10”でメイクをして完成だ!!




最初は驚いたり、恥ずかしがったりしていたが、最終的に、ルナルーレの部屋に行き、姿見を見て、それはそれは喜んで貰えた!!


ランドとグッサスも来たので着替えさせ、オレも着替えた。

オレ達は適当に作って、適当に着た羽織り袴だ。


ギリギリ日の出に間に合い、祈る。






朝食を摂って、お祭りに出掛ける。今日は4人でだ。

今日は4人でお祭りを周り、夜は屋台で買った物でパーティー。

明日はルナルーレと2人でゆっくり過ごして、3日目は2人でお祭りを楽しむ予定だ。


お祭りはまさにお祭りだった。屋台がズラリ!!と、並び、『この村にこんなに人いた?』と、思う賑わいだった。




1つ大きく違ったのは、弓矢やボールを使った射的などの、景品を取る屋台だ。


難易度がおかしい!!

並ぶ景品の前にはガラスが張られ、矢を曲げたり、ボールを何度もバウンドさせないと取れない様になっていて、更に明らかに安い景品達が高い景品をガッチリ守っていた。



そんなにステータスやスキルの対策が必要なら、出店しなければいいのでは?と、思ってしまう。




冷やかしながら歩いて居ると、ジャックさんと、リサリナさんが話して居るのが見えた。

ジャックさんは女の子とリサリナさんは男性といる様だった。

挨拶をして、この世界の年齢事情にまた、驚かされた!!



ジャックさんと一緒にいたお子さんかな?と思っていた女の子は奥さんだった!!

ジャックさんは見た目50代、奥さんは中学生くらいにしか見えない!!

完全に犯罪の匂いがする組み合わせだ!!



そして、リサリナさんと一緒にいた恋人?旦那さん?な男性は息子さんだった!!


何より、驚いているのはオレだけで、全員何とも思っていない事が驚きだった!!




驚きのご紹介の後、リサリナさんが、


「それにしても、皆さん素敵なお洋服ですね。オオサカ国の衣装ですよね?」

と、聞いて来た。オレが『オオサカ国?!』と思っていると、


「そうなんですか?レンジ様がご用意して下さったので、とっても素敵だとは思ったんですが、“あのオオサカ国”のお洋服だったんですね」


「へぇ〜…オオサカ国のか、ここらじゃ見ないと思ったが、何処で手に入れたんだいクルスくん?うちのも羨ましそうにしてんだが、良かったら教えてくれねえかい?」


「すいません、ジャックさん、奥さん。

これは買ったんじゃ無くてオレが作ったんで売ってたものじゃないんです。

でも、もし試作で作った物でよかったら、まだあるので、差し上げましょうか?」


「いいのか、クルスくん?」


「ええ、ジャックさんには何時もお世話になってますから、是非どうぞ」


「すまねぇな、ありがとう」

「ありがとうございます」


「リサリナさんも良かったら……」


「是非!!お願いします!!」


「分かりました。では、夕方うちにいらして下さい。場所は分かりますか?」


「はい、私が分かりますので、ジャックさん達もご案内します」


「じゃあ、また後で……」


そう言って、また、4人で屋台を巡った。



『オオサカ国、間違い無く“異世界転移者”か“異世界転生者”が作った国だ!!

それと、ルナルーレの反応。振袖に対して“あのオオサカ国”と言った!!

つまり、ファッション等が進んでいる国という事。


と、言う事は、この世界を“ミニスカ制服天国”にしようと企んだ“業の深い先達”はオオサカ国にいた可能性が高い!!ならば、明日はやはりアチラを出すべきだな!!』



夕方、振袖を取りに来た、ジャックさん一行に幾つか出来の良いものから好きな物を選んで貰い、寸法を合わせて着付けをレクチャーした。


そのまま全員参加でパーティーを行い、賑やかな時間を過ごした…………





ところで、今日のお正月祭りはこの世界で初の“イベント行事”だった。

クリスマスが無かったのは、もしかしたら先達は“人生イコール恋人居ない歴”な方々が多かったのかも知れない……






翌日はルナルーレと2人でゆっくり過ごす予定の日だったが、ルナルーレには“お正月バージョン”になって貰った!!


昨日の情報から、“ミニスカ振袖”も受け入れられる可能性が高い!!と判断したからだ!!

ルナルーレのすらりと伸びる生足が眩しい1日を過ごした!!


2日続けて、帯を引っ張って回す“お戯れ”を行ったのは言うまでも無い!!

そこまで計算された“着付けスキル”なのだ!!



3日目は、プレゼントも兼ねて、普段着としても使える服を用意した。

優秀な素材を使っているので、ミスリルの全身鎧よりも安全設計だ。

お祭りの最終日を2人でしっかり満喫した。




余談だが、お祭りの終わった2日後、ギルドに呼び出された。


ギルドマスター室でその日はビーンズウッドさんとロールストスさんだけだった。


中に入ると、いきなりビーンズウッドさんが土下座をして、


「うちの家内の分も振袖を売って貰えないだろうか!!」


と、言ってきた。後ろでロールストスさんも黙って土下座していた。


その日の夕方、来てもらってレクチャーと共に差し上げた。

ビーンズウッドさん夫妻は違和感は無かったが、ロールストスさんはジャックさんの上を行っていた。

幼女が3人、全員妻だった……


そして、やはり驚いていたのはオレだけだった。

見た目年齢も一夫多妻もみんな普通に受け入れる。

『もしや、ここにも“業の深い先達”の影響が!?』と、思わずにいられなかった…………






▪️▪️▪️▪️





2月が終わりに差し掛かる頃、とうとう“情報”が来てしまった…………


冒険者ギルドの幹部3人には「オレは会わない」とだけ伝え、それ以上は3人とも聞いて来なかった。

討伐証明部位を納品してAランクにして貰い、“Aランクの討伐依頼を受注して”帰った。



ここでの準備は既に出来ている。但し、使いたく無い準備だ。

ルナルーレ達には何も話さない。知らない方が安全だ…………






「来たか…………」


明日で2月も終わろうかと言う日、今日は休日でルナルーレと昼食後、ゆっくりしていた……

そんな時、オレの“感知”に反応があった。とうとう来てしまった…………



ルナルーレの手を握る。オレの真剣な表情に、ルナルーレも真剣な表情で返して来る。


「ルナルーレ、一旦、お別れだ……オレはこれから、この村を出る。

でも、必ずキミを迎えに来る!!待っていて欲しい!!」


「はい、待っています……何時までも、お待ちしています……」

涙を必死に堪える、ルナルーレにキスをした。



“感知”に掛かる反応から、少し時間がありそうだったので、「出る前に一緒に風呂に入ろう。着替えの準備を頼む」と言って、オレはランド達の所に向かう為、家を出た。


2人とも、2人の家にいたので、“黒い珠の魔導具”をランドに手渡す。


「ランド、グッサス。オレはこれから、この村を出る。

その魔導具はオレが死んだら割れる様になってる。ルナルーレを宜しく頼む」

そう言って頭を下げる。


「顔上げて下さいよ、レンジさん!!大丈夫です。

オレ達が命に代えてもルナルーレは必ず守って見せますから。


それに、コレが割れた時の心配もしなくて良いですよ。

オレらも心配してません。割れると思って無いんで」


ランドの言葉にグッサスも強く、頷いてくれる。


「それよりも、早めに妹を貰いに帰って来て下さいよ?」


「ああ、分かった!!“じゃあ、また”!!」


そう言って笑顔を向けたオレに、

「「ええ!!また!!」」

と、笑顔で手を振ってくれた。本当に“良いお義理兄さん達”だ…………






ルナルーレと一緒に湯船に浸かる。

涙目の笑顔を向けてくれる、ルナルーレの頭をそっと撫でる。


「…………この家が出来た日の事、覚えてる?」


「はい……まるで、昨日の事の様に……」


「そうか、じゃあ、ちゃんと覚えてくれてるんだな……」


「はい……」


「まだ、家具しか無くて、シャンプーも石鹸も無いのに背中流しに来てくれたこと……」


「!!!あれは!!違うんです!!その…ええっと……初めてで、どうしたら良いかわからなくて……」


「はは……、ごめん、からかって。でも、あの日のキミのそんな表情とキミの想いの詰まった言葉で、オレも本当にキミを好きになった。

もう一度言う!!ルナルーレ、オレは必ずキミを迎えに来る!!だから、その時はついて来て欲しい。妻として!!」


「はい!!」


少し恥ずかしくなって、“感知”の反応がまだギルドに留まって居るのを確認して、ちょっとイチャついてから風呂を出た。涙の別れよりこの方がオレらしいと思ったからだ。









鍵を渡す、

「ルナルーレ、これから多分、“客”が来る。

“どんな客”が来ても、オレは『狩りで森のかなり奥の方に行ったから、1週間は帰らない』と言ってくれ。

多分、今日は大人しく帰ると思う。


そいつらが帰ったら、その鍵で地下室の机の引き出しを開けて、中身を持って向こうに帰って欲しい。

それと、“その客”がこの村に居る間は出来るだけ、向こうの家にいて欲しい。

あと、訓練場は封印して行く。ランド達にも謝って置いて欲しい」


オレがそう言うと、ルナルーレは強く頷いてくれた。

涙はもう無い、真剣な表情で……


ルナルーレを抱き締めてキスをする。


「行ってくる!!」


「はい!!お気をつけて!!」



いつもと同じように送り出してくれる声を背に、ラットック村を後にした…………








▪️▪️▪️▪️





ラットック村冒険者ギルド


ある冒険者パーティーが半分に噛み砕かれた、ステータスプレートを置いて黙って帰って行った。

それを受け取ったギルド職員の女性は涙を流す。

涙する女性職員に気付いた周りの職員も固まってしまう。

周りにいた冒険者達も集まって来て、沈痛な表情になった。


そのステータスプレートは、ステータスプレートを持って来たパーティーメンバーの恋人の物だったのだ。


2ヶ月前、その恋人はAランク魔獣の討伐依頼を受けて森に入ってから、帰って来なかった。

3人のその冒険者パーティーは自ら探しに行くために必死にAランクに上がり、休む間もなく森に挑み続けていたのをギルド内の全員が知っていた。




翌日、3人の王国騎士が「行方不明だった冒険者が帰って来たのか?」とやって来た。

殺気立つ冒険者の視線を尻目にギルドマスター室に入って行き、割れたステータスプレートを受け取って王都へと帰って行った。


その日の夕方、行方不明の冒険者は、正式に死亡、除名となった。

何人もの冒険者やギルド職員が涙を流した…………







夜のギルドマスター室



副ギルドマスターのビーンズウッドがギルドマスターのロールストスに尋ねる。


「良かったんですか?クルスくんを死亡、除名で……」


「問題ないだろう。おそらく、次は偽名で作るだろう」


「次?クルスくんは生きていると?」


「ああ、持って来たのはランド達だ。元々、何処にあるか知っていたんだろう。

毎日、森に行っていたのも演技だろう」


「全て、クルスさんの仕込みだったと言う事ですか……」


もう1人の副ギルドマスター リサリナの言葉に、ロールストスは首を振る。


「いや、おそらく、ランド達の判断だろう。

クルスくんなら、彼らが危険になるほど森の奥に隠したり、休み無しで森に行き続けさせる様な真似はさせないだろう」


「確かにそうですね。本当に見つからない様にする気が有るのか疑わしいほど、クルスさんはあの3人に甘いですからね」


「と、言うと?」


「ランドさん達の剣ですが、とても良い鉄か銀の剣に見えますが、オリハルコン合金製でした」


「「!!オリハルコン!!」」


「はい、それにルナルーレさんが普段着ていた服ですが、素材は黒竜の鱗でしたが、強度は10倍以上でした」


「「10倍以上!!」」


「因みに、お2人は最近、あの3人のステータスプレートをご覧になりましたか?」


「いや、見ていない」


「ああ、オレもだ」


「3人とも、レベルは1,000を超えています」


「!!アイツら確か200とかそこらだっただろう?」


「はい、5ヶ月前、クルスさんが来る前までは」


「狩りには一緒に行って無いんじゃ無かったのか?」


「初めて3人でBランクの魔獣に挑んだ時とその次の2回のみ、一緒に行かれたそうですが、その際も一切手出しはしていないそうです。

強力な装備を手に入れたからも、もちろん有るでしょうが、間違いなく、クルスさんの“教育”の力です。

休まず、森に入り続けていた、この2ヶ月ですら、3人とも完全な無傷ですから」



ロールストスが机を叩く!!


「クソ貴族どもめ!!ヤツらがこの国の“発展の為に召喚”を行っていれば!!」


「確かにそうですね、クルスくんが腰を据えて教育をしてくれていたら、間違い無くこの国の冒険者は1段も2段も上に行けてたでしょうね」


「お2人とも、違うと思いますよ。クルスさんはルナルーレさんへの“愛故に”あそこまでされたんだと思いますよ」


「「…………」」


長い沈黙のまま、解散となった…………



▪️▪️▪️▪️




ラットック村を出て3日


村を出たあと、まず、死亡偽装の為、Aランクの魔獣にステータスプレートを壊させようとした。


これが大変だった…………

Aランク魔獣は牙一本でも大きすぎて、噛み付かせるとステータスプレートがだれの物かわからない位に砕けちってしまう。


今回、必要なのは、“上の名前部分が分かって、下の種族以下が無いステータスプレート”だ。

準備万端だと思っていたが、思わぬ落とし穴だった……


この壊し方には2つ意味がある。

1つは勿論、調べられてもステータスが分からない様に。

もう1つは“ステータスプレートに内蔵されていた発信機”を紛失させる為だ。



ギルドで発行されるステータスプレートには勿論、そんな物は入っていなかった。

完全に“異世界転移者の監視”の為の機能だ。


その為、死亡偽装の際に紛失する様に前々から考えていた。


“スキル 創造”で何度も繰り返した結果、完成して、約束の“ルナルーレ達が初めてウルトラグレートベアーを倒した場所”に埋めたのは、もう深夜だった……



カッコつけて、夕陽を背に飛び出したのに、万が一、ルナルーレ達が朝一で“リターン”で取りに来たら恥ずかしいので、徹夜で“スキル 飛翔”を使い移動し続けた。



夜が明けて、地上に降りて、初めて見る魔獣は狩り、植物は採取しながら目的地に向けて進んだ。


夕方になって“ディファレントスペースの中の家”に入って食事を取って寝る。

“ディファレントスペース”の入り口は“オレが許可した者しか見えない、入れない”、安心設定にしてある。


翌日も繰り返し、そして今日、“目的地”にたどり着いた…………





▪️▪️▪️▪️




森の開けた広い円形の空間。

目の前一面にふわふわの白銀が広がる。


ライオンの顔をして、前足4本、後ろ足2本の6本足のある、大きな白銀色の“ノルウェージャンフォレストキャット”が座ってこちらを見ていた。


目の前一面の白銀色、それは、最大級ショッピングモール位大きな、ふわふわふぁさふぁさの白銀の毛の壁だ。


此処に来たのは、彼?彼女?に会うのが“目的”だった。

ふぁっさふぁっさの鬣があるのでおそらく彼だろうう。

因みに、コミュニケーションが取れない場合は“会う”が“狩る”に変更される。





----------



真名    ナラシンハ

年齢    2万18

種族    白銀の獅子 チャンディスィンハ

称号    ミミッサス大森林の主、神獣

レベル   800万


体力    80億

魔力    80億


力     15億

耐久    18億

知力    20億

魔法耐久  18億

俊敏    22億

器用    15億


スキル

聖樹の恩恵、王の威厳LV10、獅子の咆哮、天駆、空間魔力摂取、言語理解LV10、限界突破LV5、感知LV10、敵意察知LV10、体術LV10、銀獅子演舞LV10、風属性魔法LV10、雷属性魔法LV10、光属性魔法LV10、樹属性魔法LV10、空間属性魔法LV10、神聖属性魔法LV10



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ナラシンハくん、2万18歳。彼はこの、ミミッサス大森林の主だ。


彼はこの森のほぼ中心に住んでいるが、奥に行くほど魔獣が強くなって行くこの森で、彼の周りだけ殆ど魔獣がいない、彼が怖いのだろう。


そんな彼が寛いでいるこの場所は、非常に空間魔力が高い。

“マナ”とか“エーテル”とか“魔素”とか言われる“アレ”だ。


オレは“自分の隠れ家”を作る上で、人が来なくて、魔獣が来ない、広くて自由に使える場所を求めていた。

ここは更に空間魔力まで高い一等地という訳だ。


なので、このナラシンハくんに、この場所のシェア、もしくは退去、もしくは略奪の相談に来させて頂いた訳だ。





「こんにちは、ナラシンハさん」


「ほぅ〜……我が居ると分かっていて、ここに来たのかヒトよ」


オレが近付いて来た事には気付いていた様だが、自分に気付かず寄って来たと思っていたのだろう。

オレが話し掛けた事に少し驚いてゆっくりとオレの方を向いた。

ちゃんと、会話はしてくれる様だ。


「ええ、あなたにお願いがあって来たので」


「我に願い?一応、聞こう」


「この開けた場所、ここに大きなオレの家を建てたいので、半分貸してくれませんか?」


「この龍脈に家を?なぜ、龍脈に建てたいのだ?」


『空間魔力の高い場所は龍脈か、セオリーだな』


「龍脈に建てたい訳では無いです。人や魔獣が余り来ないところを探していたんです。

そうしたら、ここは空間魔力がとても高いので、更に丁度いい場所だと思って」


「他の場所でも良いなら、他に行く事だ。我はこの大森林の主だ。

我にはこの龍脈に居る権利がある」


「龍脈に住む事は主の権利なんですか?」


「そうだ。我ら“原初のモノ”は大体が聖樹の恩恵を受ける為、それぞれ自らの支配領域を持ち、その龍脈に主として住んでいる」


「大体は、というのは?」


「中には、一箇所に留まらぬ者もいるし、僅かだが闘い敗れて、奪われた者もいる」


「“原初のモノ”と言うのは、聖樹の最初の知恵の果実を食べた、最古の知恵あるモノの事ですか?」


「そうだ、我らは“原初のモノ”と“知恵の実”と言うがな」


「だから2万18歳なんですね」


「!!なんと!!我を“鑑定”したのか?」


「ええ、念のため、ナラシンハさんか確認する為に」


「其方は、ヒトの身で、我に匹敵すると云うのか…………」


「いいえ、匹敵じゃ無いですよ。オレの方が強いと自信が持てたから会いに来たんですから」


「ハハッ!!面白い!!我にその様なコトを言ったヒトは、この2万年で其方が初めてだ」


「ところで、敗れて、奪われた人がいると言う事は、“原初のモノ”が主、ではなくて、“原初のモノ”が強いから主って事であってますか?」


「そうだ!!主はその龍脈の領域で最も強いモノだ。

其方が我よりも強いならば、闘い、勝ち取る事でこの龍脈に君臨すれば良い」


「分かりました。なら、やりましょうか」

そう言って、左右に“ディファレントルーム”を使い、2本の愛刀を腰に下げて抜く。


「ハハッ!!実に面白い!!よし、やろう!!」


そう言って、ナラシンハくんは高層マンションの様な足で立ち上がる。


彼に本当にオレが見えているのか疑問になるサイズ比だ。




「では、いくぞ!!」


ナラシンハくんはそう言うと、高層マンションサイズのネコパンチを左前足2本で放って来る。

巨大さからは想像出来ないスピードでピンクの肉球の壁が迫って来る。


オレはそれを刀を握った右手で殴り返した。“クルス流体術1”、“握りパンチ”だ!!

この技は武器を持ったままでも殴り安い様に生み出された技だ!!


自分の攻撃が弾き返された事に一瞬驚愕する、ナラシンハくん。

だが、直ぐに表情を引き締めて、2本目の左前足の爪を立てて掬い上げる様なネコパンチ!!


その攻撃を“スペースジャンプ”で避けつつ、先程弾いた左前足の付け根に跳び、

“クルス流双剣術1”、“連閃”で斬り飛ばす!

“連閃”は左右の飛ぶ斬撃を僅かな時間差同じ場所に飛ばす技だ。

足一本でも余りにも巨大なので横移動も加えた超大振りだ!!


取り敢えず、足1本攻略し、2本目の左前足の付け根に向かって、“飛翔”で一気に距離を詰めて、

“クルス流体術1”、“関節砕き”で左足の蹴りを入れる。

ボキンッ!!と凄まじい音が響く!!


「うぐっ!!」と言う声が後ろでしたが、更に左後ろ足の膝裏に“スペースジャンプ”で跳び、

“クルス流体術1”、“関節砕き・回し蹴り”を右足で放つ。

再度、バキッ!!と大音響が響く中、全ての左足が立たず、ナラシンハくんの身体が傾く。


最初の“連閃”をした空中に“リターン”で戻り、迫って来る顔に向かって“クルス流体術1”、“震動脚”を下顎に入れる。“震動脚”は蹴りのインパクトの瞬間、一瞬で5回蹴って衝撃を増幅させる技だ!!


「がっ!!」

と言う声を残して、ナラシンハくんは意識を失った…………







▪️▪️▪️▪️





ナラシンハくんを“神聖属性魔法”で治して行く。


各属性の魔法はレベルが10になるとオリジナル魔法が作れると共にその属性の効果をイメージして使う事も出来る。魔導具等に付与するなら、魔法名があった方がいいし、今回の様に各所に合わせて使うなら、その属性の魔法として使う方が便利だ。



斬り飛ばした足をくっ付けて、“スキル 透視”で見ながら、砕いた関節の骨を繋いで行く。

大きいのでとても大変だ。


怪我が治ったので、最後に意識を戻す。




「!!……我は負けたのだな…………」


「ああ、オレの方が強いって言ったろ?」


「その様だ……ヒトよ、とどめを刺せ」


「せっかく治したのにか?」


「我は敗れた。今からこのミミッサス大森林は其方が主だ。

どちらにしろ、此処を離れるならば生きては行けぬ。とどめを刺してくれ」


「そんなこと言わずに、一緒に暮らさないか?」


「!!!!」


「大きくなり過ぎて、空間魔力の低いところに長くいられないんだろ?」


「何故それを!!」


「ああ、知ってたんじゃない。予想だよ。

スキルの、“聖樹の恩恵”か、“空間魔力摂取”……


“空間魔力摂取”かな?“空間魔力摂取”で食べなくていいから、空間魔力の高いところにいれば問題ないけど、低いところにいくと、食べないといけない。

でも、その巨体だと、食べても、食べても賄えない。そんなとこか?」


「その通りだ。」


「ならオレと一緒にここに暮らせば、何も問題ないだろ?」


「良いのか?」


「ああ、勿論だ。それに多分、その問題もオレなら根本から解決出来る」


「本当か?!」


「ああ、任せとけ!!」


そう言って笑い掛けると、ナラシンハくんは姿勢を限界まで低くして、頭を下げて、目を閉じる。


「我は其方の恩義に忠誠を誓う。我が主よ」


「じゃあ、これからよろしくな!!」


そう言って、さっき斬り飛ばした前足に手を触れた。




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