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第13話 いざ、アジト突入!

 迫る鉄拳を俺は左手で受け止める。念の為、神気も纏わせておこう。

 ガッと拳と拳がぶつかり合う。そのまま掴み取った俺は、刺客を引き寄せる。


 引き寄せられたところで、俺は空いた右手で渾身の正拳突きを

 喰らわせる。腹にもろうに喰らった刺客は吹っ飛ぶ。

 吹き飛ぶ中で体制を立て直した刺客は顔を上げるが、その時には俺の蹴りが顔面を襲う。


 膝蹴りで顔面を割った俺は、頭を掴み地面に押し付ける。


 フードを取り、問い詰めていく。


「お前は、兎人族を攫った集団の一味か?」


「……はぁ、はぁ。答えるわけが、ない、だろ……」


「いいんだぞ、このままお前の頭蓋骨を握り潰しても……」


 俺は頭を掴む手に力を込める。ミシミシと軋む音が聞こえるまで握る。

 刺客は苦痛の叫びを上げ、両手を挙げた。


「た、頼む……話すから全部話すから……」


 俺は手を離し、四肢を押さえ付ける。


「で、どうなんだ?」


「そ、そうだ……。間違いない」


「村に待ち伏せてる仲間はいるのか?」


「ご、5人いる……」


 5人か……。やってやれないこともないが、わざわざ村へ行く必要もないかもしれない。

 こいつが兎人族を攫った場所を知っているなら直接案内させればいい。


 俺だけで決めるのはどうかと思うので、ルウにも意見を聞く。


「どうする? 村に待ち伏せしてる奴らを戦闘不能にしてから、助けに行くか? それとも―――」


「今すぐ行きます! 早くしないと……」


 これで決まった。俺は再び刺客に視線を送り、アジトの場所を知っているのか問う。


「攫った場所は知ってるか?」


「し、知ってる……でもやめとけ! お前じゃ殺されるぞ!」


「黙れ、それは俺が決めることだ。知ってるなら案内しろ。村にいる連中にはバレないようにな」


「どうなっても知らねえぞ……」


 ロープで刺客を縛り、先行させる。どうやら、山中にあるようだ。

 ルウの言う通り、未知の化け物がいる可能性が高い。一応、どんななのか聞いておくか。


「おい、お前達が飼っている化け物について教えろ」


「知ってどうすんだよ……。ちょっとばかし腕に覚えがあるようだが、そんなんじゃイチコロだぞ」


「黙れと言ってるだろ。お前は俺の質問にだけ答えろ」


「ちっ……、名はアシュラ。腕が6本、顔が3つの化け物だ。お頭がもらったって言ってた。どうやって操ってんのかは知らねえ。言っとくけど、これはマジだからな」


 そう言って刺客の男はそっぽを向いてしまった。歩きながら、俺はまた考えにふける。

 アシュラ……聞いたことがない。もしかすると、魔物の類じゃないのかもしれない。


 こういう系は俺じゃなく、レスティアやトルクの方が知ってそうだな。神な訳だし。


『なあ、一つ聞きたいんだけど。アシュラっていう名前知ってるか?』


『ワシは知っとるぞ。じゃが、アシュラがどうかしたのか?』


『これから乗り込む場所にそいつがいるらしいんだ。だから、どんなんなのか知っておこうと思って』


 俺が言うと、トルクはより一層低い声で唸る。


『むうう……。それは中々厳しいな。そもそもアシュラとは、召喚魔法で召喚される聖獣の一体じゃ。そして、覚醒した召喚魔法でしか召喚できん』


『―――!! それ本当か? なら結構やばい相手なんじゃ……』


 覚醒の一言で俺は警戒感を露わにする。スキルの覚醒は言わずもがな、俺のスキルも覚醒したものだ。

 となると、かなり強化されたスキルになっている。


 俺は油断してはいけない相手だと認識し、気を引き締めた。


 ◇


「ここだ」


 刺客の男が顎でログハウスを指す。山の中腹まで来たところで発見した。

 こんな堂々と、アジトを構えるとはな……。


 役目を終えたと思った刺客は、解放するよう求めてくる。が、


「おい、もういいだろ。解放してくれ」


「悪いな」


 俺は一言そう言うと、男の首に手刀を下ろして意識を刈り取った。殺すつもりなどないので、近くの木の傍へ寝かせておく。


 振り返り、緊張気味のルウに声をかける。


「ルウ、行こう。大丈夫だ、敵は俺が全員相手するからルウは仲間を探しに行ってくれ」


「で、でも……それじゃノルクさんが」


 ルウは俺を心配そうに見つめてくる。俺はニッと笑うと。


「心配するな。俺はルウが思ってるよりずっと強いよ、それにあんな連中に負けるつもりはない。だから安心してくれ」


「……わかりました。ほ、本当にありがとう、ございます」


 ルウは今日何度目か分からないが、涙目になり俺に頭を下げる。

 美少女の涙というのは、なぜか美しい。俺は真面目な表情に戻す。


「さて、行こう。時間が惜しい」


「はい……」


 一応俺とルウで考えた作戦として、俺は派手な陽動役で、ルウが本命だ。

 俺が暴れ回って敵を引きつけている間にルウが兎人族を解放する。


 俺は律儀に扉から進入などせず、扉を含めた壁一面を神気を纏った拳で破壊した。


 ドカアアアン、と轟音が響き渡り俺は堂々とアジトへ進入する。人攫い連中は発生した粉塵により何が起こっているのか分かっていない。


 ひたすら、「何が起こったんだ?!」を繰り返している。

 俺はチャンスだと思った。敵が俺に気づいていないならやりやすい。


 人影を見つけては、拳や蹴りを撃ち込み黙らせていく。やがて、粉塵が晴れていき俺の姿が露わになる。

 進入者である俺を発見した人攫い達は、額に青筋を浮かべ怒りの形相で睨みつけてくる。


「ガキぃぃ!! 殺せ、殺せ!」


 口々に殺せと言いながら、それぞれが武器を手に取る。俺は目を動かし、全員の位置を確認すると即座に攻撃に転じる。


 神気で強化した脚力で素早く動きながら、確実に一人一人の意識を刈り取っていく。すると、


「死ねえええ!」


 俺の背後で大剣を振り上げた男が叫びながら、狙ってくる。

 ちらりと後ろを振り向いた俺は、振り下ろされる大剣をジャンプで躱すと、かかと落としで男の脳天を打つ。


 白目を剥き、口からよだれを垂らしながら男は地に落ちた。

 思っていたよりも数が多いと感じた俺は、振り上げた拳で天井を崩す。


 ボロボロと崩れ落ちる木片で一帯はパニック状態になる。


 そこで、壁際にいた男がギリギリと歯軋りをしながら、怒りの声をあげ、奥の通路へ走って行った。

 あいつ……こいつらの頭か? なら……。


 俺はルウに合図を送ろうとするが、すでにルウの姿はなく頭である男を追っていた。


「早まるな! ルウ」


 ダメだ、周りの声なんて聞いちゃいない。俺もルウの後を追うことにした。

 だが、俺の前に立ちはだかる大男がいた。


「ガキィ……死んで詫びろや。俺の魔法を喰らえ! ファイアー」


「邪魔だ」


 一歩で大男の懐に潜り込んだ俺はドゴン、と腹に渾身の一撃を放った。見向きもせず、俺は先を急ぐ。

 地下へ続く階段を見つけた。


「地下なんてあったのか……。この下だな」


 急いで階段をかけ下りる。そこには、石畳の広間があった。両端に青い炎が並んで燃えており、不気味な雰囲気を醸し出している。


 慎重に足を進めていると、どこからか奇声が耳に届く。


「ハハハハハ、こうなったら全員死んじまえ! こい、アシュラ!」


 ギギギギギイィ、と金属が擦れ合う音が聞こえた直後、耳をつんざく叫びが響く。


「フルロオオオ!!」


 ドシン、ドシンと地響きがだんだん近づいてくる。俺は咄嗟に身構える。

 気配を感じて、後ろへ振り向くと。


 スパイダーのように脚が6本、角角とした腕も6本。頭部が3つある、異形の化け物だ。正直言って気持ち悪い。とてもバランスが悪いせいか、俺は脚は2本の人型だと思っていた。


 しかし、俺はアシュラの振る舞いーーー動きに違和感を覚えた。ただ暴れているわけではなさそうだ。そして、その違和感はトルクにも。


『ノルクよ、何か変じゃぞ。ワシには苦しんでるように見えるが……』


『苦しむ……?』


 確かにそう見えなくはないが。ここで、レスティアの一言が疑問を確信に変えた。


『見て! ノルく。首のところ!』


 俺は言われるがままアシュラの首元を凝視する。そこには、ゴツゴツとした首輪が付けられていた。

 間違いない、あれで操られてるんだ。


 ってことは、あの男は召喚魔法の使い手じゃない。そう言えば、俺を襲ってきた刺客ももらったって言ってたな……。

 操られていると分かると、思い切りできなくなるが……。


 俺は、悩みながらも拳を構え、


「神よ、我に宿れ。来い! 闘神トルク。闘拳技法・神気開放」


 そう唱えたのだった。










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