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幕引き

弱点は早めに発見できた。

グリフォンの動き、ミィの全身を狙った波状攻撃によって柔らかい部分が羽であることは早々に分かったのだ。ただ、それがどうしたと言う話である。

羽を攻撃したところであまり意味がない。血は出るようだが致命傷には程遠い。


胴体や顔のほうに弱点があると助かるのだが、そっちのほうは守りが硬い。ミィの攻撃。ルナ姉の支援射撃を受けてもダメージがあるようには見えない。


「どう?」

『んんんんん。今のところは難しい。天才最高最強シフィちゃんの全てを合わせてもあれは貫通無理な〜』

「魔女様みたいな攻撃じゃないと厳しい、か」


魔女様であれば真っ二つにしてしまえることだろう。私たちにはそれと同等の火力を持ち合わせていない。一番重い攻撃ができるルナ姉も散発的な射撃が限界のようだし、決めるとしたらシフィの加護を乗せた一撃をキチンと弱点に叩き込む必要がある。


呼吸を整える。

まだ可能性が潰えたわけではない。多くのところを確かめているが、まだ確認していない場所もあるにはある。

そこが、心臓などあるであろうお腹部分。

四つん這いの状態だから、そこを攻撃するには下に潜り込むか、両前足で同時に攻撃する時しか不可能なのだ。


「賭けよう」

『無謀な賭け?』

「うん」


シフィが笑っている。

楽しそうに笑いながら私の賭けに乗ってくれる。それをルナ姉やミィへと風に言葉を乗せて届ける。

回答は返ってこない。それでも動きは私の求めるものになっている。やるべきことをそれぞれに課してこなしているのだ。


「ふぅ」


集中する。

短剣を正面に構えて細く息を吐いた。

正面は既に荒らされて更地状態。木陰ではあるから上から狙われることはないだろう。


ミィがグリフォンを引き連れて近づいてくる。

狙いが悟られないように攻撃箇所を絞ってはいない。まるで戯れのようにミィを追い詰めていくグリフォンを見ていると猫とネズミを夢想させる。

体格差を考えればその通りなんだけど。


「お願い!」

「うにゅ!!」


走り出す。それに呼応するようにミィがグリフォンの首を引っ掛けて無理やりに立たせる。

そこに撃ち込まれる弾丸。

他と比べればダメージが目に見える。


唐突なリズム変化に追いつけない様子のグリフォンは慌てたように前足と翼を動かしている。それでも姿勢制御に数秒の時間を要している。

そこに私は滑り込む。

目標は撃ち込まれた弾丸。そこを目掛けて短剣を振り下ろせばいい。

防御力に攻撃力が優れば私たちの勝ち。優らなければ体勢を立て直したグリフォンに踏みつけられて私が終わる。


「はぁぁぁぁぁぁぁ」


気合いを込めた一閃。

風も背中を押してくれる。いつもよりも速く、鋭い。

だけど······


「くっ」


切り裂けない。

左腕が悲鳴を上げる。力が乗り切っていないことがよく分かった。


終わりだ。届かなかった。私の力は、


「この程度ーー」

「お姉ちゃん!!」


背中押される。そのまま地面を転がり、安全圏まで退避した。


「ミィ!」


慌てて体を起こせば、ミィの背中が切り裂かれている。

血が飛び、痛みで顔を歪めている。

世界が遅く感じる。追撃しようとしていることが見ていて分かるのに、体が反応できない。


止めて。止めて。止めて。


ミィを、私の妹を傷つけるのは止めて。私のミスを他人に押し付けないで。


「ミィ!!!!」


こんな幕引きを望んでない。私はーー


「よく頑張りました」

「えっ?」


ポンッと頭に手を乗せられた。

呆然とする私を尻目に、その人は手に持っている誰かをグリフォンに向けて軽く放り投げる。


「エサですよ。あなたの最後の食事です」


ぐったりと、力なく宙を舞うのはアレドークさん。投げた本人に視線を向ければ、ルーシェンさんだった。

汚れ一つついてない服を翻しながら、私に手を差し出してくれる。


「よく耐えました。こちらの勝利です」

「えっ? えっ? えっ?」


疑問符しか浮かばない頭。

グリフォンとルーシェンさんを交互に見つめる。すると、アレドークさんを口にしたグリフォンが何故か倒れた。

意味の分からない幕引きについていけず、ただ立ちつくす。


本当に、終わったの?

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