攻め手
森を滑るように駆ける。
道はすでにできていた。それに添うように体を動かすだけで前に進んだ。
「大丈夫!?」
「もっちろん。でも、ミィだけじゃ攻めきれないよぉ〜」
「分かってる。攻撃手段は前足と突進?」
「後、口から変な液体とか風が圧縮したのか変な見えない球が飛んでくる。羽も何かあるみたい」
「了解」
私との追いかけっこの時はやってこなかった攻撃。いや、私はグリフォンを見ないで逃げてたから気づかなかっただけかもしれない。シフィに回避先を任せてたから全部見た上で逃げ道教えてくれたのかな。
「決めよう。ここで止めて、空の巨鳥たちをどうにかする」
「うんうん」
話し合いを終え、私たちは動き始める。正面からまっすぐ突っ込むミィに対して、私は側面に向けて斜めに足を動かす。 左手は短剣を落とさないようにギュッと握りしめる。痛みはあるけれどそれに構っている時間はない。
左目に向けて短銃の引き金を引く。
衝撃は全身に響く。
残弾数を考えながら左右を持ち替えて首元に突き刺す勢いで振り下ろす。
「硬い」
ビリビリと痺れるだけで短剣はグリフォンの首に刺さることはない。
至近距離で目に向けて数発分の弾丸を撃ち込む。
ジロリと、目がこちらを向いた。
「そこも硬いとなると、どこが弱点になるのかな」
苦笑いしながらバックステップで距離を取る。ミィの攻撃もダメージを受けている様子はない。
私たちの火力を理解したのかニヤリと笑みを浮かべている。
四肢に力を入れているのが分かり、慌てて直線上から移動する。転がるように必死な回避行動。ふわりと風と衝撃に体が浮かび、木に叩きつけられる。
「ただの突進で、これ?」
「大丈夫なの!?」
「なんとか」
さっきまでの追いかけっこは力を抑えていたのだと理解する。実力の差が目に見える。
進度が高すぎる。私たちでは相手をするのは厳しい。
「でも」
私たちが戦わないで誰がこいつと戦うというのだろうか?
指揮官はすでに敵側。放置しておけばこの辺りに居る森人全てを生贄に捧げることだろうだろ。
そうなれば、世界樹を守る者がいなくなる。それは困ると、私にお願いしてきたのだ。
「ミィ」
「なにかな?」
「倒すよ。三人。ううん。四人の力で」
「うんうん。分かってる。うにゅー!! ミィたちは負けない!」
弱点を探すために肉薄するミィ。
それを見つめながら、ズキリと痛む左腕を見つめる。
『覚悟は決まった?』
「もちろん」
『そ。じゃ全力全開。最強最高シフィちゃんがとっても素敵に背中を押してあげる』
「お願い」
ありったけを短剣に乗せる。
私にできる全てを込めて、グリフォンへと走り出した。
どちらの勝ちであろうとも、戦いの幕がもうじき降りるのだ。




