合流
叫びは虚しく響く。
後ろから振り下ろされる致命の一撃。
シフィに言われなくとも感じられる風の揺らめきに死を覚悟する。
振り向き、対応するために短剣を合わせる。
「まけ、るか!!」
覚悟した死へと向かわないために、狙う一点。外せば全てが無に帰す攻防。
「おねぇちゃーん」
想いの全てをかき消す声が耳に入る。
空高くから降ってくるその声に反応するよりも先に体が全力で回避行動を取る。
ズドン!!
普通の人間が鳴らしてはいけない音を響かせながら地面に、と言うよりもグリフォンに着地したミィは衝撃を殺すようにクルクル回転してぴょんと高く飛んだ。
現場からギリギリ離れられた私は何とか衝撃を免れたが、直撃したはずのグリフォンはかなりのダメージを受けたはずだ。土煙で姿は見えないけれど、地面が少し掘られるほどの攻撃? 衝突? に耐えられるとは到底思えない。
これで終わってくれればどんなに楽か。
「紗雪お姉ちゃんどうするの?」
「時間稼いで」
「うにゅ」
土煙の中で動く気配に首を振りながら、この場をミィに任せてルナ姉の方へと向かう。
走りながら腕を押さえて止血を試みるが止まる気配がない。服を破いてきつく巻きつけないと厳しそうだけど、立ち止まってやれるほどの余裕を感じない。
『ミィでも押されてる。なんであんなの食らってピンピンしてるの』
「特殊な何かがあるんじゃないの」
あるいは直撃を避けられたか。
直撃しなかったとしても衝撃はとてつもないものだったはずだ。それを耐えるだけのタフネスを持っているのだとしたらやはり火力が足りない。
『ほらほら。早くこっち』
「分かってる」
森の中を駆けていく。
広い森は私を受け入れてくれているようで、少し前とは違い道がすぐに分かる。
こっちに向かえばルナ姉が居る。不思議な確信を胸に森から、いや、恐らく妖精たちから用意された道を進む。
「早く腕を出しなさい」
「お願い」
ルナ姉は私の意図に気づいたようで布を準備してくれていた。それが、自分の服であることもお腹辺りが短くなっているから分かってしまう。
ギュッとしっかり結ばれる。血が布に滲んでいるけれどさっきよりもマシである。
握ることは難しくとも支えることくらいは可能になるはずだ。
「体は大丈夫?」
「わたしは平気よ。ただ、あの銃は使えないから威力が低いのしかない。決めるのはミィとあなたになる。いける?」
「大丈夫。決めてみせる」
左腕の調子を確かめて頷く。
痛みがあっても動かせる。ミィと二人がかりなら、トドメまで持っていける。
「フォローはするけど、素早く決めなさい」
「うん」
ルナ姉から渡される短銃。命中率は高くないけれど使えないわけではない。
牽制くらいにはなる。それを片手で遊びながら後ろを向く。
戦場が少しずつ近づいてくるのが見て取れた。あまり走らなくていいようにミィが誘導してくれているのだろう。
「シフィ。覚悟は決めてね」
『な〜んのこと? 最強最カワシフィちゃんはすでにもろもろ決めてるのに』
「そうだね」
シフィの軽口に笑みを零しながら前に足を出す。
終わりに向けて、走り出した。




