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交渉

「それで、どうするの?」

「交渉するしかないと思う。ただ、私が話しても聞いてもらえないだろうから、ルナ姉にお願いしたいの」

「あら、わたしだって同じ状況よ? まぁ半分は森人なんだし、可能性はあるでしょうけど」

「その可能性にしがみつこう。ダメならまた考える。私たちは生き残って、迦楼羅かるらに着く」


通過点で死ぬつもりは無い。死線をくぐり抜けることはあっても、差し出すつもりは毛頭ない。

安住の地がそこしかないのであれば目指すべきだ。


敵地のど真ん中が安住の地って言うのも笑い話にしかならないけど。


森を駆け、指示出しする男性を見つける。先程話した彼だ。

ルナ姉の機転でさっきはどうにかなった。だが、次も上手くいく保障はどこにもない。出たとこ勝負でやるしかないだろう。


「行くわね」

「お願い」

「お困りのようね?」

「貴様と話すことはない。大人しくしているか、食われてしまえばいい」

「あら。そんなことを言っていいのかしら? わたしの妹が今手伝いのために空へ飛んだのに余計なお世話だったかしら」

「余計なお世話だ」


携えていた矢を放つ。それは届くことなく地面に向けて落ちていく。

あの勢いで届かないのにミィが届くわけがない。そういうことなのだろうけど、ミィの運動能力を舐めないでもらいたい。

あの子が本気で狙うのならば射程はどこまででも広がる。


空高く逃げていても関係ない。あの子が届くと言ったのならば届くのだ。どんな方法であろうと、地面に向けて巨鳥を叩き落としてくれることだろう。


「無駄な矢は使わないほうがいいんじゃない?」

「牽制は必要ーーなっ!?」


視線は常に空に向けられていた。その瞳に驚愕が宿る。

確認のために空に目を向ければ、滞空していた巨鳥たちが地面に向けて落ちてくる。

私たちの近くにも落ちてきたので慌てて逃げ出した。


押し潰されたら死んじゃう!?


まだ数十体居るようだけど、大分落ちてる。矢が届く範囲まで落ちてきたら森人たちが攻撃を始める。

撤退する可能性もあるけど、ミィがそれを許すかどうかーー


「森を荒らすな。馬鹿者が!!」

「なら、襲われて傷を負ったほうがよかったのかしら?」

「あの程度負けるものか。早く止めさせろ」

「わたしたちの安全が保障されてないもの。ここで止めても最終的に殺されるのなら助ける意味がないわ」

「助けるだと。これがか」

「まっ少しくらい壊れても平気よ。数十年もすれば元に戻るでしょう」


数十年ってかなり長い期間の気がするけど、森人にとってはそうでもない。

数百年は生きるほど長生きなのだ。目を閉じていれば勝手すぎるくらいの感覚なはず。


少なくとも、私には長いと感じる期間ではあるけど。


「害獣の駆除を怠った結果なのよ。なら、あなたたちにも責任はあるわ。少しくらいは我慢なさい」

「偉そうに。偉そうに口を開くな。森が穢れるわ」

「バカみたいね」


話は平行線。

聞く気がない相手だと交渉も難しい。

結果を見せてなお、この状況。どうするべきかーー


「選びなさい。わたしたちを安全に外へ出すか。ここら一帯の木を破壊し尽くすか。今なら、まだ間に合うわよ?」


手のひらを前に出し、一本ずつ順番に折っていく。

制限時間ということだろう。睨みつけ、瞳を閉じてから口を開く。

その回答はーー

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