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森人の民

森を歩く。

どんどん人の気配が濃くなる。

ピリピリとした雰囲気。視線を感じる。ミィが私の服を引っ張ってくる。

伝えたいことがあるのだろうけれど、何となく分かるので引っ張る手を握る。

聞こえる声に思うことがあるのだろう。まぁ悪口を言われている可能性が高いのでスルーするに越したことはない。

私たちは、個として見られることはなく。集団の一人として忌み嫌われる側なのだ。


「そこまでだ」


声のする方に視界を向ければ、太い枝に乗って弓に矢を番える男性の姿が見えた。

憎しみのこもった瞳。狙いは私たちであることは明らかであり、刺激したら射ってきそうな雰囲気がある。


一度足を止める。目だけ動かして四方を確認すれば、あちこちで弓を構える姿が見える。

一歩でも前に進めば問答無用で殺しにかかりそうだ。


どうするか。


「何かしら? わたしたちはこの道を通って森を出たいだけなのよ?」


迷ってる隙にルナ姉が声を上げる。

堂々と言い切るので少しハラハラしてしまう。ほんと、どんな状況でも自分がブレない。やるべきことを真っ直ぐに見つめて突き抜ける。


迷ってばかりの私や指示待ちのミィとは大違いだ。


「この先は我々の村だ。よそ者······いや、穢らわしい血を入れる場ではない」

「あら。そうなの? なら、ここにその穢れた血をばら撒くのかしら。わたしは構わないわよ」


私の短剣を通り抜けざまにかっぱらい、腕に押し付ける。

薄く切れた肌から零れる赤い血が、肌を伝って地面へと落ちようとしている。


「やめろ!!」

「あなたたちはもっと悲惨なことしようとしてるのにこれは止めるのかしら? 不思議なものね」

「死にたいのか」

「殺したいのはあなたたちよ?」


論点を少しずつズラしている。

会話からされて嫌なことを引き出そうとしているのだろう。なら、今のうちにできることを探さないといけない。

この状況を打破する方法は、きっとある。


「弓から手を離しなさない。わたしはわたしの全霊をもって交渉するわよ」


強く押し込む短剣。

引かないが故にスっと切れるわけではない。だけど、鋭い刃が薄く肌を傷つけていく。傷つけられた部分から血が出てくるのはもはや止めようがない。

このまま短剣を引けば、この辺りには宣言通りにルナ姉の血が飛ぶことになる。

穢れているとされる血が、よく使うであろう道に大量に落ちることになる。


それを良しとできるだけの胆力が森人側にあるのかが勝負の分かれ目なのだろう。

だが、反応を見る限りはーー

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