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別れと助言

「そろそろ、時間のようだ」


懐から取り出した物を見ながら残念そうに肩を竦める。

時計なのだろうか? 魔女様から教わったことがあるけれど、精密機械を作れる技術は唯人のところにしかないから普及していない物のはずだ。都市にも行ったことがあるのか、遺跡からの出土品か。

気にはなるがあまり深く突っ込むには早すぎる。警戒はしたまま、何をするのかを確認する。


「そうだ。今から向かうのは、もしかしてこの近くの森人の村か?」

「その予定。ですけど?」

「止めたほうがいい。あそこは、いい場所ではない。できるなら、迂回するべきだ。森を抜けられるかは分からないけどな」

「それはどういう······」

「これ以上は、自分の目で確かめることだ」


パチンと指の音が鳴り響く。

突如として闇が私の周りを覆い尽くし、少し先に居たはずの気配を丸ごと飲み込んだ。

何が起こったのか一瞬理解できなかったが、辺りを照らすランタンで光が消え去ったのだと理解して灯り片手に状況の確認に移る。


「妖精の道ってやっぱり凄いね」

『妖精だけが通れる道のはずなのに、何したのかな〜』

「シフィでも分からないの?」

『可愛くて聡明なシフィちゃんでも知らないことはし〜らない。それよりさ。そろそろ出ない? なんか疲れちゃった〜』


調べ尽くしてはいないけれど、何があるとも思えない。光で照らされた範囲には壊れた機械しかなかったし、何を研究していたのかが書かれていたであろう紙もボロボロ。調べられる範囲も不明であることを鑑みれば、確かに一度戻るのもアリだ。

ルナ姉たちの成果も気になるし、夜になる前に準備もしておきたい。

ルーシャンさんの言葉も気に止めて置かないといけない。


「そうだね。戻ろっか」


踵を返す。

まだ探索が終わっていない。だから、いつか帰ってくるのかもしれないと思いながらも、何もできない現状。


強くなりたい。


そう願う心に、体はどこまでついてきてくれるのか?

未発達の肢体をぼんやりとした光の中で眺めてから拳に力を込める。


脆い体だ。あの狼以上の魔物が現れたら。そう思うと体が震える。

逃げられず、戦うしかない時、私はーー

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