問答
聞きたいことはたくさんある。
魔女様と似た力のこと。森人でありながら私のことを邪険にしない理由。この遺跡について。などなど、パッとすぐに浮かんでくる。
問題があるとすれば、ルーシャンさんがどこまで知っているのか把握できないところだろう。聞けば何でも回答をくれそうではあるものの信憑性は薄い。
全てを信じられるほど、彼に気を許してはいない。
「魔女様とは、どんな知り合いですか?」
ようやく口にした質問は当たり障りのないものだった。先程もその名前は出ていたから何らかの形で知っているとは思われる。仲間なのか、助けられた側なのか、それとも別の形で付き合いがあるのか。
何も信頼できない中で、唯一信頼に値するのは魔女様の存在だけだった。
「話せば長くなるけど、いいかな?」
「要点だけで大丈夫です」
「なるほど。なら、簡潔に言おう。オレの幼なじみを助けてくれた恩人だ。まぁ、その幼なじみは今どこにいるか分からないがな」
「どういう、ことです?」
「村を追放された。お腹を大きくして帰ってきたのが原因だ。穢れた血を村に残す訳にはいかない。とか言って、身重のあいつを追い出した」
何をされたのが想像できてしまい気分が悪くなる。
そういうことをする人もいたのだろう。その結果として子供を宿し、産まれる前に都市から追い出されたと思われる。森人との子を育てるなんて考えなかったのだろう。
追い出せば勝手に亡くなる。子供も親も。それだけ今の時代は過酷だ。魔女様がどうやって助けたのか不明だけど、助けがなければ命はなかったことだろう。
「あなたは、助けなかったのですか?」
「力が、なかったからね。あの当時は若すぎた。しがらみも多く。声をあげられなかった。今のこの力があれば、何か変わったのだろうが、それも過去の話。全て手遅れなんだ」
「そう、ですか」
悔恨の念が伝わってくる。言葉の一つ一つに後悔が詰まっていた。
ああしていれば、なんて口にするのもおこがましい。精算しきれない想いを今も抱えているように見える。
「あれから、いくつもの年月を経た。力を手にしても、彼女を救うことはできない。過去を覆すことはできない。それが分かっていても、何度も夢を見てしまう。あの時のオレに今の力があれば、と」
『ねぇねぇ。それな〜らさ。紗雪のこと。嫌い?』
「唯人のことを恨んでいた時期もある。追放した同族に嫌悪感を抱いたこともな。だが、色々なことがあった。多くの出来事が、オレの考えを変えた。今は、誰かの責任にして逃げることはしない」
『逃げるか〜ぜっんぶ受け止めてたら身が持たないよ?』
「そうかもしれないな」
「魔女様とのこと。あなたのことは分かりました。では、どうやって力を手に入れたのかを聞いてもいいですか?」
一番のキモになる話だ。
魔女様と同等の力。それを手に入れたのなら、私も二人に並べるのかもしれない。
無力な私に道が開けるのかもしれない。
「これは、オレの力じゃないさ。借り物の力だ。色々なところから借りている。その結果が今だ。魔女さんには到底及ばないし、借り物であること以外話せない」
「そう、ですか」
『なぁに? 紗雪も欲しいの?』
「シフィにもできるの?」
『む〜り。今あたしにはそんな権限ないもん』
ふわふわと飛び、大きくバッテンを作る。
聞いた私が愚かだった。