下の道
戻ってみたが二人はまだ帰ってきてなかったので、協議の結果。下に行くことが決まった。
階段を降り、真っ暗な部屋をランタンで照らす。ザリザリと下履きに嫌な音を踏みしめ、照らしてみるとキラキラと光る破片が散らばっている。
先のほうにランタンを向けると壊れた巨大な容器がいくつもある。広そうな部屋なのに、容器が所狭しと並んでいるせいか手狭に見えてしまう。机も多数残っており、その上にはボロボロになった紙の資料。ボロボロすぎて中身を読むことができない。いくつか単語を拾えるとすれば、魔物や獣人などだろう。大切な資料であったのだろうが、ここまでされてしまえばどうしようもない。
「他には何があるかな?」
『そうだな~あっちに何かあるっぽい』
「あっち?」
『そそ~あっ机気をつけてね』
「ありがと」
下を照らしながら、慎重に進む。机が密集していて移動が大変ではある。ぶつかると机が欠けていくので申し訳ない。形を保っているだけで奇跡ということなのだろう。
「これ?」
『そうそう。なんか分からないよね?』
「機械であることは確かだけど、動かなさそうだね」
『触ってみてよ』
「うん」
ペタペタと触ってはみるが、反応はない。動力がないようだ。
押しても壊れはしないけど、何かが舞って咳き込んでしまう。ランタンで照らしても文字がどうしてその列で並んでいるのか分からない。色々なボタンがあるし、モニターもいくつも並んでいる。
昔の人ならこれの意味を理解しているのだろうけど、今の時代では使われることがない。使われるとしたら唯人の都市なのだろうけど、扱えるのはほんの一握りになるだろう。両親はそれ関係だったから見たことがあるけれど、知らない人は多いはずだ。
「何もないね」
『そうだなぁ例えば、あそこ?』
指差す方に向かえば、箱が置いてある。中身を見ようと開けてみるが、蓋が破壊される。ポイっとそれを投げ捨てて確認するが、ボロボロな工具が入っているだけで武器になりそうなものは何もない。
シフィの指示であっちこっちと回ってみるが、どこにも武器になりそうなものはない。
研究施設なだけにここには何もないのだろう。
「う~ん」
『どうしたの?』
「あのさ。さっきも感じたけど、ボロボロになってるものとなってないものの差って何かな。って」
『あ~まあ、そうだよね~壊れないのもあったし。触っただけで壊れるのもあったしね』
「そっなんか理由があるのかな」
『ちょーぜつかわいくてかしこいシフィちゃんでもそんなことは分からないなぁ』
「そっか。じゃあさ、下の階があるのかは分かる?」
『ん~』
頭に手を置いてあちこちにフラフラと移動する。
そこそこ歩いたつもりだけど、未探索の場所はありそうだ。もっと下に行く道もあるのだとしたらどのあたりになるのか。いちいち移動しなければならない私よりもシフィのほうが調べるのが早い。時間は有効に使うべきである。
『道は分からないけど、誰かいるよ』
「どこ!」
気配がまるでなかった。
無防備な背中を向けていたことに冷や汗が流れる。
ピンと気を張り詰めて周囲を見回す。
ランタンがなければ一寸先も見えない闇の世界。ゆっくりと照らしながらシフィの指し示す方にランタンを向けていく。
そこには――




