右の道
シフィと一緒に右の道を歩く。
小さな部屋がいくつもあり、突き当りには大きな部屋。壊れた椅子や机が散乱してあり、奥には厨房らしきものがある。食堂だったのかもしれない。
『な~んにも、ないね』
「遺跡ってそういうものだから」
部屋ごとに特別なアイテムがあるなんてことはない。ここが居住エリアなのだとしたら探すべきは上か下の階になるのだろう。日常を知るならば居住区でもいいのだろうけれど、風化しきってしまってまともなものは残っていない。
「そういえば、なんで残ってる物と残ってない物があるんだろう?」
『どういうこと?』
「例えば、ここに置いてある椅子や机。壊れたり錆びてたりするけどちゃんとある。なのに、厨房の中はほとんど物がない。形状から大体の配置は分かるけど、そこにあるべきものがないの」
『運び出されたんじゃないかな~』
「それはあるかもね」
だとしたら、ここにルナ姉の武器になるものは残っていないかもしれない。使えるうちに持ち運んだのであれば賢いやり方だけど、ごみを運んだのであれば疑問しかない。
窓の外は鬱蒼とした森が広がり、研究所を飲み込もうとしている。結界が阻んでいるとは思えないのは、明らかに結界が張ってあったところよりも木々が内側に来ているからだ。
この建物は結界以外のもので守られている。そう考えるのが妥当だ。
前の遺跡が自然に埋没していたことを考えると、ここは特別だと仮定できる。とはいえ、ここを見ただけでは判断材料が足りない。別の場所に行けばもっと違う思考が生まれるかもしれない。
「こっちは何もなかった。予定通り戻って上か下に行こうか」
『いいの?』
「シフィは何か気になる?」
『ん~どうでもいいかな。でも、勝手に行ったらルナやミィはなんて言うかな~』
「合流できたらそれでいいけど、できなかったら目印残してどっちかに行くって話だから気にしないって」
『あれ、そうなの?』
「肝心なところで話を聞かないんだから」
いつもの気まぐれにはぁと息を吐いてから玄関まで戻ろうと踵を返す。
だけど、数歩歩いたところで振り返って手を合わせた。
ここに残っている魂があるとは思えないけれど、これからすることの贖罪をしたいと思ってしまったのだ。




