オープニング
「ねぇねぇねぇ!」
ガタゴトと揺れる馬車の中でも元気いっぱいのミィがひょっこりと顔を出して業者台に座る私を見つめる。
どうしたのかと問いながら頭を撫でた。
中に視線を向ければ、酔っているのかグッタリしているルナ姉の姿。めちゃくちゃに揺れるから仕方のないことだと思う。その内、外に顔を出してしまいかねないので不安にはなる。
森が少ないのも悪いのかも。森人なのに森から長いこと離されるのは辛いことなのかな。
「どうしたの?」
「これからどこに行くの?」
「アイサさんに教わった遺跡、だよ。ルナ姉のリソースを回収しないと」
「村の近くにあった遺跡は取りつくしたもんね~」
おかげで魔女様にめちゃくちゃ怒られた。
なんであんなに怒っていたのかまではわからないけど、何らかの重要物だったのかもしれない。
遺跡自体には大して価値もないと村で評価されていたはずなのに、魔女様は違う評価を出していたようだ。それでも、知らない知識や刺激を求めて何度も潜っては秘密基地に隠していた日々が懐かしい。
「シフィはあの妖精さんにお礼するために拘束されてるし、今のうちに何とか見つけておきたいかな。シフィは退屈って暴れるのが目に見えてるし」
「ミィだってつまらないのは嫌だよ~」
「荷物持ちお願いね」
「む~」
私やルナ姉では持ちきれない物でもミィがいれば持ち帰ることができる。
元気いっぱいのミィを見ていると、とてもじゃないけれど一人で複数の魔物を相手にしたとは思えない。
ミィが私たちの中では一番強い。それは間違いないのだけど、その実力は私たちよりも頭一つ抜けている程度だったはずなのだ。
あの敵は複数人が束になってようやく倒せるレベルだったはず。
それを、一人で倒し切った。実力を隠していたのだろうか?
わからない。私の知っているミィと戦ったミィとでは明らかに違いがある。
「もう着くかな!」
「もうちょっとかかるよ」
ニコニコなミィを見ているとあまり気にしないほうがいいかもしれないと思える。
深く考えても仕方がない。隠したいことの一つや二つあってもおかしくない。姉妹のように過ごしていたけれど、それはそれである。私にだって隠していることはあるのだ。言えない過去なんて誰にでもあるものだろう。
「遺跡も、そうなのかな?」
「?」
目視できないけれど、もう少しで着くはずだ。
私たちの新しい物語が、始まる。




