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ミィの全力勝負(任されたことは絶対に成し遂げる)

紗雪さゆきお姉ちゃんと別れてからどれくらいたったのだろうか?

全身に傷を負いながらも、致命傷を避けて狼たちを倒しきったミィは大きく息を吐いて無事であることを確認。村を見つめる。


「まだ、終わらないよね」


終わっているならば迎えが来てもおかしくないと思う。音もしないはずだ。

遠くからの戦闘音。きっとルナお姉ちゃんや紗雪さゆきお姉ちゃんはまだ戦ってる。


加勢にいかないと。


フラフラする体。ちょっと血を流しすぎたのかな。お腹も空いたし、何か食べてから行ってもいいかな。後方支援の人たちは今何してるんだろう。

鼻を刺激する血の臭いが村から漂ってくることも帰ってきてくれなかった理由なのかな?


「なに。これ?」


ようやく牧場までたどり着いた。牧場が、ミィの知っている姿から変わっていたことに仰天して目を見開く。


血と肉の転がる地獄。あちこちで悲しげに鳴いているホルスたち。動けない彼らは殺してくれと泣いているように見えた。

その中心では二足歩行の狼が五体。人の頭を使ってキャッチボールをしていた。見覚えのあるその頭は、昨日特訓したジンくんだ。

涙のように溢れる血を浴びながら楽しそうにはしゃぐ姿に拳を握りしめる。


彼はミィにとって他人だ。話したことがあっても友人としての枠組みにすら届かない。それでも、この村を守ろうとして頑張ろうとした姿には自分を重ねることができていた。

時間が許すならば持っている技術をたくさん教えてもいいと思うくらいには好感を持っていた。


「プレゼント。楽しみにしてたんだよ」


ミィのために作ってくれると言った笑みを今でも脳裏に浮かべられる。明日があると信じていた彼のことを思うと自分の不甲斐なさに怒りが湧く。


「ミィが、ミィが」


もっと頑張っていれば、真剣になっていれば、本気になっていれば、救えたのではないだろうか?

あの時と同じだ。

助けられたはずの命を見逃してしまったあの時と······


「ミィが、ちゃんとしてればーー」


大きく息を吐く。

濃い血の臭いに混じり、微かに感じる命。まだ生きている人たちがいる。ルナお姉ちゃんたちが諦めていないのなら、ミィだって諦めない。

全力で、全霊で、叩き潰す。


「お姉ちゃんたちは。見てないはずだよね」


見られたくない醜い姿に、ミィは······ミリアムは変わる。


「ミリアム・ヴァンディンヴィーグ。聞いてないかもしれないけど、名乗るよ。獣王の傍系として、ミリアムとして、あなたたちにーー」


地獄を見せよう。


獣王の血。見せてあげる!

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