贈り物の意味
「こういうことがあったの」
そうい言うミィになるほどと頷いた。
ミィはミィなりに時間を潰していたようだ。
この村も色々問題ありそうだが、それはどこでも変わらない。私たちの村も大なり小なり問題はあった。それをあーだこーだ言いながら乗り越えてきたのだ。
今ぶつかっている壁もいつか笑い話にできるんじゃないか。そう考えるのは乗り越えられた側だからだろう。
早く。みんなを助けたい。
空を見上げ、ふぅと息を吐いた。そんなことをしても何も前に進まないことは分かっていても、心に溜まった想いを吐き出さなければ動けない気がしたのだ。
「ため息はダメよ」
「そうだよね」
「そうよ。それよりも明日のことね。予定通り狼討伐するけれど、わたしの武器が問題ね。矢は作れるみたいだから任せてもいいかしら?」
「はい。消耗品は任せてください。武器などもこちらで準備します。ただ、戦士に関しては······」
戦う意志を持たない人たちが多い。ミィはそう言っていたし、実際そうなのだろう。村長であるアイサさんに従えない人が多いのは問題ではあるけれど、そこまでの人心掌握ができてないのは若すぎることと特殊な立ち位置のせいだ。
あのお爺さんを盾にして村長をしていたのだから仕方ないとは言え、経験しないことには成長は見込めない。成功も失敗も自分の中に落とし込まないと前に進んでいけない。
私たちに関する対応は大きな一歩になるのではないかと考える。勝手な解釈ではあるが、村が存亡の危機に陥っているところで救いの手はそうそうやっては来ない。運がいいのか悪いのか。という話になってこよう。
「まぁいいわ。戦える人だけで充分よ。補給物資を作るのも戦いと言えば戦いよ。規模が分からないけれど、相当な数が居そうだもの。武器はいくらあっても足りないわ」
「ありがとうございます。それで、話を聞いてましたけど、ジンくんたちが贈り物をするんですか?」
「みたーい。何くれるのか今から楽しみ!」
「珍しいですね。あの人たちはプライド高いですし、贈り物の意味を分かっているはずなのに」
「贈り物に意味があるの?」
「はい。わたしたちの村は求婚の時に贈り物をするんです」
求婚!?
その言葉に思考が硬直する。
ミィに求婚するとは思わなかった。ミィは求婚の意味がいまいち掴めてないのか首を傾げているけれど、ルナ姉はクスクスと笑って状況を楽しんでいるようだった。
「なので、珍しいなと」
「珍しいで済ましていい問題なのかな?」
「いいと思います。それだけ重要なことだと判断したのでしょうから」
お湯を掬い、それを鏡にして見つめるアイサさん。その瞳が見つめる先はどこなのか。問うことができずにミィを抱き寄せた。
「まっミィの人生はミィが決めるべきね。好きにしたらいいわ」
「なんの話〜?」
「人生色々って話よ」
「うにゅ〜」
全く分かっていないミィがお湯に沈んでいく。
しっかりと悩んでもらおう。今後の未来が関わってくるのだから。