ミィとの特訓計画(大切なことなんだって)
一通り捕まえてから集合した結果。準備運動でヘロヘロになって動けない五人が誕生した。最初はこんな風だったなぁと懐かしさを覚えながら、パンパンと手を叩いた。
「休憩は終わり。追いかけられてどうだったかな?」
「はぁはぁ。逃げられっこ、ないだろ。あんなの」
「ひぃひぃひぃ」
「もう、動けない」
「痛いよ。痛いよぉ」
何も言えずに突っ伏す一人を除いても全員ゼエゼエとしている。体力作りは戦いの基本だと思ってたけど違うのかな?
ミィはまだまだ元気いっぱいだからこのままぶっ続けでやろうと思っていたけど、今の状態でやったところでケガするだけだから少し長く話してあげよう。ミィは座学苦手だけどちゃんと理解してもらってからやったほうがいいよね。
「じゃあ、今の修行の意味を説明しま~す」
「魔物に、追われた時の回避法。じゃないのか?」
「せいか~い。分かってるのにあっさりと捕まったの?」
うっと自分の胸に手を当てながら苦しそうな顔をするジン。分かっているならもっと真剣に逃げてほしかったな。このままだとみんなすぐに魔物に食べられて終わっちゃうよ。
「そもそも、俺たちは戦いメインじゃなくて生産者なんだ。逃げ足もそんなにない」
「そうなの? なら、なんで修行するの?」
「戦えるの、ボクたちだけ、だから」
「え~他に人はいるでしょ?」
匂いもするし、追いかけっこの時に何人もすれ違っているのでそれは間違いない。少し年齢は高めであったけれど、頑張ればなんとかはなると思う。努力は裏切らない。
「無理だよ。村長が変わってから戦おうって人はほとんどいない。戦えない戦士ってバカにしてたやつの下でなんて戦えないんだと」
「なんなの。それ~」
訳が分からない。
戦う力があるのにそれを使う気がないってどうしてなんだろう。そんなことをしてるからミィに圧倒されるんだよ。ミィの力はそんなに強くない。お姉ちゃんたちは評価してくれるけれど、実際はそんなことはない。全力で頑張っているだけだから、本当に強い人や魔物には勝てる気がしない。それでも必死に食らいつく。お姉ちゃんたちが信じるミィになるためならばどんなことでもやってやるのだ。
「プライドが高いんだよ。俺たちも人のことは言えないけどさ」
「ふ~ん」
興味をなくして後ろで手を組みながら体を動かす。
この村の人たちは変なんだなぁ。
「ちょっとあんたたち。いつまで遊んでるつもりよ!」
「アネット!?」
「アネット?」
踊りながらあーだこーだ言っていたみんなを見ていたら変な女の子が仁王立ちでミィの前に立ちふさがった。
アネットと呼ばれた女性はキリリとした眉毛をした目つきの強い茶色の毛が美しい人だ。
しなやかな体躯が無駄を省いて鍛えられたのが分かり、ほへ〜と見とれてしまう。
「解体は終わったから早く持ち場に戻りなさいよ。あそこにいつまでも放置なんてできないんだからね」
「ああ。もうそんな時間経ったのか」
震える体で立ち上がるとミィに振り返る。
「すいません。こちらから頼んだのに時間がきて」
「いいよ。いいよ〜こっちも終わったみたいだし」
風に乗ってお姉ちゃんたちの匂いを鼻が感知した。少し遠いけどすぐにこっちに来るだろう。
本当は、ミィを捕まえるところまでやりたかったけど時間切れは仕方ないよね。
視線に気づいてそちらに目を向ければアネット? がミィを睨みつけていた。にこやかに手を振ったのにフンと言うように明後日の方を向かれてしまった。
嫌われているようだ。まぁ仕方ないよね。
「あいつを悪く思わないでください。慣れてないだけなんです」
「うにゅ?」
「唯人。混ざり者はじいちゃんたちの話でしか聞いてないから、悪い印象しかない。ごめんなさい」
「ああ。頭下げないで〜」
みんなで説明されると頭に入ってこないから勘弁してほしい。ワタワタとしていたら顔を上げてくれて一安心。
「お詫びに、何か作りますよ。何がいいですか?」
「なーんでもいいよ。使えるものなら」
「了解です。それでは」
あんなに震えてたのに小走りできるくらいに回復したんだ。
みんな持ち場に戻っていく。
ミィはお姉ちゃんたちを迎えに行こっと。