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ミィの頑張り(ミィだってやれるもん)

ミィ視点の話になります

お姉ちゃん二人が話に行ってしまった。ミィも行ってもよかったけれど、行ったところで話についていけなくて膝を借りて寝ているだけになりそうだったから、狼運搬の手伝いをすることにした。


力仕事は大得意。ミィは馬鹿だから、みんなの何倍も動かないと一人前の働きと認められなかった。だけど、何も考えないで指示通りに動けば馬鹿でも一人前として認められた。

だから、力仕事は好きだ。お姉ちゃんたちが指示したことを全うしていればそれだけで褒めてもらえる。ミィの居場所になる。


「これ、どこに運べばいいんだろう?」


荷車に狼を積んだままあちこち彷徨うけど回答が分からない。シフィに見てきてってお願いしたら帰ってこないしどうしよう。


「さっきから何ウロウロしてるんだよ」

「あっ弱い人だ」

「弱い言うな!!」


ミィに飛びかかってきた五人が建物から出てくる。あそこの建物が住む場所なのだろうか。

なら、これもあそこに運べばいいのかな?


「それで、その荷物はオレたちが預かればいいのか?」


リーダーっぽく前に出てきたのは白黒模様の犬の獣人。手袋なんてつけてるし、服もちゃんとしてる。

服は自分たちで作らないといけないから職人でもいないとなかなか手に入らない。ミィたちの村には専門にしてる人が一手に引き受けていたけど大変そうだったなぁ。


「なんだよ。ジロジロと」

「うにゅ?」

「あ〜名前か? オレはジンだよ。後ろは右からヨーセ。カルム。ハイト。オラトだ」

「えっと、ジン。ヨーセ。カルム。ハイト。オラト」


指差して言われた名前を口に出していくけれどパッとは見分けられない。

服の色が赤。青。黄。白。黒なのでそれで判断するのがいいのかもしれない。服が入れ替わったら間違えるだろうけど。


「それで、お前は?」

「ミィはミィだよ。これを運んでおいてってお願いされたの」

「了解。ハイトにオラト。持って行ってくれよ」

「おう」

「うん」


荷車を奪われ、どこかに運ばれていく。

ミィの仕事が持っていかれてしまった。これからどうしよう。やることない時はストレッチでもしとけばいいのかな。


「すまなかった」

「何が?」


どこで体を動かそうか辺りを見回していたらなぜか頭を下げられた。

悪いことでもしたのだろうか?


ジンは首を傾げるミィにキョトンとした視線を向けてくる。おかしなこと言ったのかな?


「さっき、思いっきり不意打ちしたろ」

「不意打ち? あれで?」


攻撃しようとしてるのは分かっていたし、対処可能な状況だったから不意打ちには感じなかった。そもそも不意打ちをするには速度と力が足りなすぎる。師匠が相手なら数時間は地面の上で悶絶させられていたことだろう。あの人容赦なかったし。


「ミィに不意打ちしたかったらもっともーっと力つけないと無理だよ?」

「強いんだな。あいつが頼ろうとするのも分かるよ」

「みぃ?」

「この村は、今危機に瀕している。狼が襲ってきてるんだ」

「そうなんだ〜急所以外は硬かったし、毛皮なんて刃物通さないから大変そ〜」

「他人事だな」


破顔して頭をかいている。

実際他人事である。ミィに決定権なんてない。お姉ちゃんたちが戦うと決めたら戦うし、移動すると決めたら移動する。勝てる勝てないなんてものは特に考えない。やるべきことをやるだけなのだ。


「なぁなぁその自信と強さってどうやって身につけたんだ」

「あの速度とか混ざり者とは思えないぜ」


混ざり者。

その言葉に胸がズキリと傷んだ。

ミィに唯人の血が流れていなければ起こらなかった戦いがあった。だけど、唯人の血が流れていたからこそ出会えた縁もある。

そのせいで否定もできなければ肯定もできない。自分自身に自信なんてありはしない。あるのはお姉ちゃんたちへの信頼だ。

お姉ちゃんたちがミィを信頼してくれるから、ミィはその信頼に答えるために動く。それだけなのだ。


「まてまて。ミィさんにそんな言葉を投げるな。侮蔑の言葉だろうが」

「すいません」

「でも、気になりまして」

「ミィは、気にしないよ。うん。気にしないよ」

「すいません」


事実でしかないから気にしても仕方がない。血を変えることはできないのだから。


「戦い方が気になるなら、教えようか? ここにいる間だけだけど」

「本当ですか!」

「うん。でも、強くなるかは分かんない。強くなるには、それ相応の意思と時間が必要だもん」

「分かって、います。自分たちの村を守るための力をオレたちに与えてください」


お願いしますと頭を下げられてもちょっと困る。

ミィの教え方で強くなれるかなんて分からないから。でも、やれるだけはやってみよう。

教えるのは紗雪さゆきお姉ちゃんが一番だけど、ミィだってやればできるはず。

ミィだってできるもん!

握った拳を宙に向けて掲げた。修行の開始だ。

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