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村長からのお願い 上

長い話を終え、アイサさんは水を飲むために席を立った。

多分だけど、私たちの話す時間を作ってくれたのだろうと、ルナ姉の方へ視線を向けた。


「どう思う?」

「どうもしないわよ。悲しい過去があったのね。以外に言えることあるの?」

「もっとあると思うよ」


ルナ姉の反応は淡白である。

身内は別として、他人にはあまり感情移入しないタイプなのでいつも通りと言えばいつも通りなのだけど、ちょっと引っかかるところはあった。


紗雪さゆきは、どう思ったのよ。この村のできた経緯。魔物使いと言う職業。嘘をついている可能性とか考えた?」

「う〜ん。嘘はついてないんじゃないかな。あったことをそのまま教えてくれたって感じだし、魔女様の行動もまぁ、そうするよねって感じだし」

「魔物の声。ねぇ」

「そこを怪しむ?」

「聞こえると思うわよ。当人が言っているんだもん。信じてもいいわ。ただ、わたしはそれを聞いたことがない。だから半信半疑に近いわね」


確かに、魔物の声なんて聞いたことがない。初めて聞いたのが五歳と言っていたし、長い間付き合ってきた特別な力なのだろうけれど、この時代においては辛いものになる。

本人も言っていたが、魔物は敵であると教えられて生きてきたのだ。それを助けようとすれば多くの人から否定的な目を向けられる。その視線はとても冷たいものだろう。


私たちに向けられるものと、きっと変わらない。


「これから、どうするの?」

「どうもしないわよ。一晩泊まって、水なんかをもらえるならもらってさようなら。長居する必要ないでしょ?」

「その交渉をするために喧嘩寸前までいくのやめようね」

「わたしたちの優位性を見せてた方がすんなりいくものよ。下手に下から交渉してもまとまるわけないわ」

「そういうものかなぁ」


旅で問題になるのは水や食糧だ。食糧に関しては狩ればいいだけだが、水はそうも言っていられない。川や湖の水を飲めるとは限らないし、都合よく雨が降るとは思えない。枯渇してしまえば命の危機なのに、腐ることがあるので大量に持っているだけが解決策にならない。


井戸を毎回掘るなんて力技に出られないので、村でもらえたら一番いい。生活するには水が必須なのでどの村にも必ずあるのだから。


「ただいま、帰りました」

「もっとゆっくりでもよかったのよ?」

「いえ。何もないのに待たせるのは申し訳ないので。それで、水の話をしていましたが」

「そうね。あの狼を水に変えてもらえたらありがたいわ」

「わたしの一存で答えることはできないですけど、前向きに検討させてください」

「待つのは大丈夫です。急ぎたい旅ですけど、急いでもすぐに終わる旅ではないので」


早く迦楼羅かるらに向かいたいかもしれないけれど、急いだところで行程を短縮することはできない。

野宿を繰り返し、村を見つけながら数週間。あるいは数ヶ月かける旅なのだ。


「なら、お願いを聞いてはくれませんか?」

「内容次第ね。あたしたちに対するメリットがあるなら考えないこともないわ」


アイサさんは一度目を閉じてから細く息を吐いて頭を下げた。

そして滔々と話し出す。

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