村長
結論から言えば、私たちの滞在は許された。
私たちから離れて円形になり話していたが、その内容はミィによって筒抜けであり、途中から狼鍋の話になった時点でこの対応はなんとなく想定できた。
自己紹介を終え、村長代理であったロクロウさんと別れたのが数分前だ。
狼の解体と移動の為にミィはあそこに残って指示に従ってもらうことにして、私とルナ姉は村長であったアイサさんに着いて村を案内してもらっていた。
「あそこが、わたしの家です。狭いので泊まるのは別のところになりますけど、用がありましたらここへ」
「まぁ村長の家。と言われたら狭いわね。一人暮らしとしては大きいほうじゃないかしら?」
「おじいちゃんと二人暮しなので手狭に感じることが多いですよ」
平屋の家は他の建物に比べると明らかに小さいものではあるけれど、しっかりとした造りになっていて住みやすそうだ。周りの六棟もある巨大な建物が大きすぎるのである。
なんであんな大きな建物が残っているのか不思議でならない。地震なんてきたらすぐに倒壊しそうである。昔の人が何を考えていたのかは今の私たちでは想像もできない。
「ほんっとうに狭いわね」
「もの拾いが趣味のおじいちゃんですから」
「ミィみたいなことをするのね」
中に入れば物の山になっていた。半分以上ゴミにしか見えないけれど、中には武器などもあるので一概に悪いものではなさそうだ。
整備してないみたいだからどれも錆びていて使い道に困りそうだけど。
「これらの武器とかはどこで?」
「近くに遺跡があるみたいです。他にもさっきの建物の中に幾つかあったらしく、これらを元に武器を作って自衛してます」
「なるほど······あっ後さ。気になったことがあるんだけどいいかな?」
「はい」
「ここの魔術陣って進度1と2は弾かない設定にしてあるよね。あれは、どうして?」
魔術陣に関しては見ればおおよその効果は分かる。さっき引っかかったのは進度の問題だ。あれでは私たちを襲おうとした狼の群れは入ってくるだろう。ミィに倒されていた人たちが自衛の主体であるならば危険すぎるのではないだろうか。
「わたしが、魔物使いだから。ですね」
「へぇそうなの。村長を任されているだけあって特殊なことするのね」
「えっと、驚かないの、ですか?」
「まぁ魔物の姿は見えていたからね。そうなんじゃないかって薄々は思ってた。アイサちゃん一人でやってるの?」
「みんな、怖がって近づきませんから。餌はいらないのですけど、食べられると思ってる人多いです。多分、村長って肩書きを魔女様に渡されなければ村を出ることになっていたかもしれません」
弱々しくはにかむ。
今まで相当の苦労をしてきたのだろうと分かる笑みに胸が痛む。
私も、こうなっていたかもしれないと思い知らされる。幸いにも、周りに恵まれたからこうして背筋を伸ばして生きていられるけれど、疎まれ、蔑まれ、守られることなく過ごしていたらと考えるだけで辛くなる。
「まぁ機械兵に襲われた原因の一つはわたしにあると思うので、恨まれても仕方ないのですけどね」
「どういうこと?」
「それはーー」
薄い笑みのまま話し出す。
アイサさんの過去。