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対応

辺りを注意深く見回しながら村の敷地内を歩く。

一番気にしなければならないのは、この村も機械兵に襲われていないかであった。

距離的に迦楼羅かるらに近いので機械兵が侵略行為をしている可能性があったのだ。

だけど、目視できる範囲ではそんなことは行われている様子はない。

人がいる気配はあるのに出てこないのは私たちを警戒しているからなのかもしれない。


「誰もいないのかしら?」

「そんなことはないと思うけど······ここまで歩いて誰もいないと不安になるね」

「匂いはするし、物音はするよ?」


ミィの鼻や耳を欺けるわけはないようだ。

建物の中を注意深く見ていたらスっと何かが動く姿も確認できるのでいるのは確かだ。

建物がズラリと並ぶちょうど真ん中辺りに着いた時、足音が私の耳にも聞こえた。


「勝手にこの村に立ち入ったのはどういう了見であろうか?」


低い声で話しかけてきたのは犬の獣人だ。皺がれた顔から察するに相当の歳を重ねているのだろう。腰を曲げ、杖をついて歩いている。ゆったりとした服を身にまとった彼が村長なのだろうとなんとなく想像できた。

至る所から視線を感じるのでここ辺りが居住スペースなのだろうと推測した。


「挨拶が必要だったのかしら? ならごめんなさいね。見張りが一人もいないからそのまま入ってしまったわ」


一歩前に出たルナ姉に対してチラリと一瞥したように見えたがすぐに視線を下に向けた。


「森の害悪に混ざり物。怨敵。だって」

「なに、それ?」

「あの人が言ったことだよ?」

「なるほど。そういう価値観ってことね」


ふふふと怪しげに笑うルナ姉。これは危険だと少し距離を取りながらシフィを探せば、すでにミィの背中にベッタリと張り付いて逃げていた。


「森の害悪。ふふっ獣人が森人に対する侮蔑の言葉よね。他の二つもわたしたちを貶める単語。喧嘩売ってるのかしらねぇ」

「なんの事やら。そこの混ざり物の弁など知らぬ。ワシらの土地に勝手に入ってきたのはお主らであろう」

「なら見張りの一人でも置きなさいな。だ〜れもいないから無人の村なのかと思ったわ」

「全ての元凶はそこの唯人であろう」

「えっ私?」


身に覚えがなさすぎてポカンとしてしまう。震える指で差されても何もしてないからなんで敵意を向けられてるのか不明なんだけど。

とは言え、読める部分はある。私個人ではなくて唯人が元凶であれば、恐らくはーー


「機械兵が全てを壊した。ワシらの平穏を奪ったのだ。それを放った唯人を許せるはずがなかろう」


憎々しげに言葉を発している。

強い怒りと憎しみの宿った声には呪いを込めているような重みがあった。

服をギュッと掴まれ、下を向けばミィが耳をぴょこぴょこ動かしている。私には聞こえない音や声が聞こえているのだろう。


狙いが私であるなら、対応するしかなくなる。腰に携えている短刀を使えば制圧は難しいことではないはずだ。実力までは分からないけれど、視界に入る中に屈強そうな人はいない。キラリと鈍く光る物が見えるので武器を手にしている可能性すらある。


獣人の武器は己の四肢である。目にも止まらぬ速度で近づき、鍛え抜かれた肉体を使って相手を組み倒すのが美学とされているそうだ。

魔物相手であっても、それは大きくは変わらない。武器を使うよりも獣化させた四肢を使ったほうが強い。あの村ではそれが当たり前だった。


武器を使うのは弱者である。体は常に鍛えろ。その教えを一身に受けて育ったミィは小さい体に不釣り合いな力を手にしている。

対して私は小細工ばかりを覚えた。鍛えても鍛えても力のつかない私には技術を磨く以外に道はなかったのだ。


一触即発の空気が漂う。


待っているのはルナ姉の回答だろう。

村長の言葉に何を返すのか、それで今後の行動が変わる。

一語一句聞き逃さないように集中するのだ。

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