最初の目的地
旅に出ると決まったら荷物の中身も変わってくる。
野宿することなく隣村まで行く予定だったので、野営の道具を何も持っていなかったから見繕って荷物に加える。その上で日持ちする食材を増やしていく。持っていけない量があったので食べてから行くか置いていく予定だったが変更である。
ミィの荷物に大きなスペースが空いているのでそこにできる限り収納する。私も荷物を持つけれどルナ姉は長い時間持ち運ぶのは体力的に無理なので必要最低限だけを持ってもらう。
パンパンになったバックはミィと同じくらいの大きさになってしまったが、軽々持ってしまうので獣人の力と言うのは凄いものだと実感する。
これでハーフなのだから、純血の獣人はもっと凄い。特にこの村にいた人たちは力だけでなく。速度もあり、体術や武術などの技術面でも抜き出た人が多く。大量の魔物が押し寄せて大変になった時でも冷静に狩りができていた。
その技術は、私とミィにしっかりと受け継がれている。流石に同じように動くにはまだまだ体ができていないけれど、認められるくらいにはなっていた。
「ルナ姉。メンテナンスも終わった?」
「大丈夫。どれも使えるわ。ただ、残弾が微妙ね。途中で矢を作らないと不安があるわ」
いくつかの銃をバラしてからため息をついている。
遺跡に放置されたままになっていた過去の遺産。今でも使えるのが不思議でならない銃をルナ姉は主に使う。弓矢も得意だが、それよりも遥かに遠方から高火力を叩き出せるので重宝していた。
何度か遺跡を探索して使えそうなものを持ってきて魔女様に直してもらったのが始まりだったけど、遺跡には多くのものが眠っているのでロマンを求めて突撃していた。
ルナ姉の努力で使えるようになった銃の種類はいくつもあり、用途によって使い分ける。
私も何度か触ったけど当たる気がしない。百発百中のルナ姉がおかしいのである。
「魔物との戦いはあまりしたくないね」
「お肉が向こうから来るのよ? 歓迎しなきゃ」
「魔物をお肉って」
「お肉の話!?」
「違うからもう少し遊んでなさい」
「はーい」
荷造りに飽きて遊び始めたミィも食事の話になると戻ってくるようだ。最後に料理をするかと立ち上がる。
脳裏に浮かぶ住人たち。もう、食べられないんだと思うと悲しい気持ちになるが、私たちはこれからも生きていかなくてはならない。移動が大変なのだから食べて力をつけないと途中で力尽きるかもしれない。嫌でも食べるべきだ。
「無理はしないでいいわよ」
「大丈夫。それよりも、目的地を考えよっか」
「迦楼羅でしょ?」
「一足飛びでは行けないから、色々と回らないとダメだよ。一ヶ月以上野宿なんてできないよ」
「そうね。なら、最初は隣村ね。近いし」
「半日かかるけどね。でも、屋根のあるところで寝られるならいいのかな?」
「泊めてくれるかは不明よ」
「そうだね〜」
料理をしながらあーだこーだと言葉を重ねる。
魔女様が用意していたこの辺りの地図を見ながら今後の進む先を考える。主な候補になるのは遺跡の場所だ。残弾が厳しいので遺跡で探せるなら探したい。後は村である。この近くにあるのは魔女様が作った村ばかりなので地図に載せてあるからだ。
逆に魔女様が絡まない村は全く書かれていないので旅の最中に追加しなければならないことも多いだろう。獣王の手は伸びていないはずだけど、どこまで勢力を伸ばしているのか分からないので下手なことをして身の危険に晒されたくはない。
「この進路がいいかもしれないわね」
「うん。迦楼羅までのルートが書いてある地図がないのが不安だけど、遺跡にあれば儲けものかな」
「移動してるかもしれないものね」
「そうかもね。ご飯できたよ」
「ごっはん。ごっはん」
食事が完成してミィを呼べば四足歩行でぴょんぴょん跳ねながら帰ってきた。
虫でも追っていたようだ。手を洗うように促してから揃って食事をとる。
この村で食事をするのは、これで最後だと思うと感慨深いものがあった。