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・いざトーキョ! - 黒王 -

「よ、よう……?」


 空の旅なんて記憶にも残したくないくらいなんだが、その日のフライトはちょいと特別だった。

 狭苦しい飛行機の中で、俺はあの美人フライトポテトちゃんと偶然にも再会していた。


「お客様……。お客様は、全く老けませんね……」

「へ……? ああまあ、色々と秘訣があってな。それよりまた会えて嬉しいぜ」


 そうしなきゃ不義理なような気がして、俺はすかさず死角からフライトポテトちゃんの尻に手を伸ばした。だがその手のひらは尻に届くことなく、鋭い手刀により打ち落とされた。


「本当に変わりませんね……」

「ははは、お前さんもな。けどこれはよ、これからダービー馬の手綱を引く大事な腕なんだ。もう少しやさしくしてくれよ」


 4年経って心変わりでもしたのだろうか。今日のフライトポテトちゃんは怒らずにむしろ神妙に俺を見ていた。


「病気、治ったんですね……。よかった……」

「お、おう……? まあ、大変な闘病生活だったけど、この4年でどうにか完治したぜ……?」


 ここで実は病気じゃなかったなんて言っても、火山の火口に水を流し込むようなもんだ。真実を言えば爆発するのが見えていた。


「よかった……。また当便をご利用下さい、バーニィ様」

「飛行機は極力乗りたくねぇんだけどな……」


「ふふ……がんばって下さいね、ダービー」

「おう、ありがとよ、ポテトちゃん」


 おかげで少しだけ飛行機が怖くなくなった。そう言おうかと思ったんだが、乱気流がなんとかで機体が揺れだした。


 やっぱり撤回だ。俺は以降青ざめたまま、着陸の時だけを震えながら待ち続けた……。



 ・



 飛行機を降りて、あのおっかないメイド長――もとい美人秘書さんに運ばれて俺はスポセンまでやってきた。


「タマキともども、ご活躍を期待しております。どうかタマキにダービー制覇の夢をくれてやって下さい」

「おうさ、どーんと任せといてくれ。俺と相棒が組んで勝てねぇレースはねぇよ」


 別れ際、普段無愛想なこの秘書さんにまで応援してもらえた。

 それから調教師のおやっさんのところに顔を出すと、すぐに彼はボンボン号のところに連れて行ってくれた。


「ようやく現れたか……。ずいぶんと待ち焦がれたぞ、バーニィ・リトー」

「悪ぃな、俺ももう少し早くきたかったんだが、エナガファームの方も気になってな」


「我が弟たちの育成か……。それならば仕方なかろう。む、ところでツィーちゃんは息災であるか?」

「その大仰な口調で、なんでツィーにだけちゃん付けなんだよ……。テレビの向こうで応援してくれるってよ」


「お、おお……そうかっ! バーニィよ、死力を尽くそうぞ!」

「おう、ダービーまでもう一段階鍛え直すとしようぜ」


 俺とボンボン号はダービーの日までみっちりと特訓を積み重ねていった。



 ・


 

――――――――

【馬名】ウィスキーボンボン

【基礎】

 スピードA+→ S

 スタミナS → S+

 パワー S+→ SS

 根性  S+→ SS

 瞬発力 B+→ B+

【特性】

 闘志(睨んだ相手を怯ませる)

 不屈(スタミナが切れても走り続ける)

 黒王(馬鎧の重量無効化、雑兵を踏みつぶす)

【距離適正】

 1800~3100m

――――――――


 俺が育てると、相変わらず軍馬の適正まで育ってしまうのが難だったが、これならばぶっちぎりで勝てる。俺たちでジャパンダービーを勝ち取ろう。


 明後日のレースまでしか俺は付き合えないが、お前さんの才能は競馬史に新たな伝説を刻みうる究極の境地へと至っている。


「いざ、栄光の舞台へ至らん! バーニィよ、ここまで我を育て上げたこと褒めてつかわす。うぬなくして今の我はない、大義であった!」

「あー……俺の心残りはその性格だわ……。いい相棒紹介するからよ、俺がいなくなってもちゃんとやれよ?」


「笑止!」

「ごまかそうとすんじゃねーよっ?! それどっちの意味だよ……っ!?」


「ふんっ……笑止千万よ」

「おい、またこっちに帰ってくる機会があったら、真っ先にお前さんの成績を見てやるからな? アホなレースしやがったら、ツィーと一緒にあざ笑ってやるから覚悟しておけよっ!?」


「ぬっ、ぬぅぅぅ……このっ、この外道めっっ!! ああやればいいのだろうっ、やれば!!」

「おう、楽しみにしてるからな」


 後任はあのワタベ騎手を推薦するとしよう。俺の頼みなら喜んでこの最強馬に乗ってくれるだろう。

 さあ、あと2日寝ればジャパンダービーの幕開けだ。決戦はもう目前だった。


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