March
(T氏が走る)
警告! 警告!
もはや手遅れかもしれない
警告! 警告!
今日は過ぎてしまった
警告!
いや、何としてでも踏みとどまらねば
警告! ガターン
ダッシュ ダッシュ
駆け込みセーフ
・・・・・・
明日からは乗る前に済ませておこう
(I氏の親切)
「今日はとっても楽しかったわ。でも遅くなってしまって。近道して帰ろっと」
ヒタヒタヒタヒタ
生温かい風が雑木林を洗う。微かな星明りだけが頼り。
ヒタヒタヒタヒタ
「お父さんもお母さんも心配しているわね。早く帰らないと。でも・・」
ヒタヒタヒタ
初めての慣れない道。奇妙な気配を感じる。薄気味悪い。
ヒタヒタ
後ろから何かが肩に触れた
「ヒイー」
恐怖に駆られ振り向くと
額に黒い被り物、黒マスク、隙間から覗く銀縁が不気味
マスクの内側からウィスキーの臭いとともに、くぐもった声が発せられた。
『お嬢さん、この先は行き止まりですよ』
(Y氏遊園地へ)
暗いトンネルの彼方に薄明かりが見える
二つある微かな輝きを目指し、進もうともがいている。
その時、『ゴオーン、ゴオーン』と大きな音響が頭を貫く。
と同時に、怯えと緊張が体の隅々まで走る。
更なる巨大な轟音を合図に、一転猛スピードで光源に向かって進みだした。
もはや止めることも不可能だ。
全身を貫く脱力感、不安、あらん限りの絶叫。
そして、ついに光の渦に突入した。
明るい空気に触れた瞬間、二つの輝きは馴染みの双眸に変化した。
「お父さん! 起きて、起きてよ」
強音も耳慣れた声に代わっている。
「お父さん、今日は遊園地でジェットコースターに乗ろうって言っていたじゃない。早く行こうよ!」
その言葉に溜息を吐きながらゆっくりと起き上がった。
(N氏の憂鬱)
あと1年 あと1年
古希過ぎても働けって
体が 体が
あと1点 あと1点
また免停になってしまうよ
慎重に 慎重に
あと1匹 あと1匹
あーあ、このステージ終わらない
プシュン プシュン
あと一杯 あと一杯
やっぱり我慢しとくべきだったかも
トイレは トイレは
あと一話 あと一話
作品を完結するには
ネタが ネタが