December 後半
俳句三昧
(秋 時候)
仕事終え着衣冷たき残暑かな
色映える新涼求めて比叡山
愛犬も立ち止まりたる秋の暮れ
さわやかな湖畔に集うバーベキュー
我が庭も隣の空き地も秋うらら
行く秋に悩み悲しみ置き忘れ
秋深し貨物列車の音が走る
足跡が消え行く秋を日々惜しむ
立秋に五感凝らしてトイレ掃除
瓦踏む寝ぼけ眼の処暑の朝
散る花に白露違えて雨戸閉め
秋分や色移り行く琵琶の里
虫の音も草木も囲う寒露かな
夜寒の駅誰かのために暖めて
霜降や錆の臭いの裏通り
琴見つめ耳そばだてる秋景色
街路樹も 悲鳴をあげる 残暑かな
マイカーの 車窓に仲秋 月ともに
金管が 校舎に響く 秋の暮
庭園の 水面に枯れ葉 冬近し
秋寒が 背筋不意を 襲うなり
秋惜しみ精一杯に蜘蛛踊る
(秋 天文)
今日からは受験にダッシュ秋の風
天の川万年億年旅重ね
りぃりぃと野道で気づく星月夜
キャンバスに果実賑わう秋の色
台風や 名づけて意志を 持たせたり
にこやかに 候補者手を振る 秋の朝
餌を咥え 見上げ戸惑う 天の川
(秋 人事・生活)
重陽や悪も敵も聖家族
木もれ陽が映す宝石キノコ狩り
紅葉狩りライト浴びる顔顔顔
再会に橋を渡らん星祭
豊作を親子で願う遠案山子
終電車眠けこらえて月見かな
号砲に朝の寝覚めや運動会
枝豆をつまみ還暦過ごしけり
泣き笑い怒り悲しむ新酒かな
元気やで毎年変わらぬ墓参り
お月見や いずれ素顔が 見えにけり
新米を 測る柄杓に 目を凝らす
コロナ後は かけっこだけの 運動会
(秋 行事)
夜が明けて 台風一過 ハロウィーン
二科の名に イメージ遠し 格闘家
子の一声 なけなしはたく 羽根募金
(秋 忌日)
誰にでも ドラエモン忌は 好かれたり
(秋 動物)
旅人の歩む山河に渡り鳥
波が立ち集い語らう稲雀
蟋蟀の合唱誘う薄明かり
渋滞の視線をよぎる赤とんぼ
日が落ちて登攀車線に虫の声
懐かしき輪郭描く螢かな
虫の音を 伴奏にして 口ずさむ
赤とんぼ 行ったり来たり 探しもの
通勤路 動かぬ鹿が 雨うたれ
(秋 植物)
路地裏に生気もたらす木槿かな
銀杏筋荒業切りで色落ちる
女郎花眺め読まれて丈伸ばす
強風にしなり耐え抜くすすきかな
空白く水無き畦の曼珠沙華
竜胆や七草はずれ控えめに
柿落ちて 抽象絵画と なりにけり
紅葉の ライトアップで はいポーズ
万葉の 歴史彩る 萩の花
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(冬 時候)
冬迎えスイッチオンの昨日今日
クロネコで荷物が走る師走かな
留守猫の鳴き声一つ年の暮れ
あたふたと着衣で太る寒の入り
カタコトで 冬は初めて 実習生
大雪や 草土目立つ ゲレンデに
冬の暮 年賀辞退を 並べ見る
大晦日 不協和音から 選りすぐる
街角で バイク行き交う 師走かな
予報士の頬が浮き立つ寒さかな
吐く息を満杯運ぶ冬至かな
大寒や肌一面が悲鳴上げ
大雪や父母をたどれば北の果て
(冬 天文)
列車去り寒風浴びて明かり待つ
酒気帯びて帰路にまたがる北斗星
街角に分け隔てなく雪積り
クレーン車が粉雪散らす夜明けかな
縁求め一月解禁長蛇あり
地鳴動山の眠りを妨げて
樹氷林 思わずスマホ 取り出して
テクテクと 歩む目先に 冬の星
寒風は ノスタルジアも 吹き付ける
(冬 人事)
寝布団を 重ねて山小屋 思い出し
熱燗の おちょこ口まで 忍びよせ
干支はなに 賀状イラスト 検索し
(冬 生活)
ミカン箱重みこらえてレジ並ぶ
炎揺れ土鍋ぐつぐつ輪を囲む
深夜発スキー列車が夢乗せて
背を屈め湯屋に駆け込む親子かな
邪心去れ煩悩消えよ除夜一人
(冬 行事)
わび住まい 右も左も クリスマス
ストレスを しばし忘れて 七五三
除夜の鐘 音色マニアに 教えられ
(冬 忌日)
何度でも 蘇るなり 天災忌
(冬 動物)
朝日差す凪の湖面に鴨映る
競りマグロ周遊遂げて横たわり
国境のタラバ身を剥ぎ波の音
夜のしじまさえずり出でよ寒雀
農道に標識もなし鶴の首
報い避け噂怯えて熊寝入る
鴨の群れ負けじと鶴が背を伸ばす
温暖化 冬眠忘れ 餌を求め
蟹の身を 残さずつつく 夕餉かな
クジラ肉 一切合切 詰め込んで
(冬 植物)
待ち人を葉陰で覗く寒椿
地虫這い目指す温もり枯葉かな
顔向けて一家総出の黄水仙
寒牡丹かみしも着けて座りおり
板塀に公約ちりばむ薮柑子
シクラメン 出社帰宅時 姿見せ
南天は 年の暮にも 年初にも
たすき掛け 揺れる枯れ葉を 搔き集め
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(新年 時候)
新年は 富士の日の出が 似合いけり
三が日 飲み見て食べるが すべてかな
元旦は あれやこれやと 誓うなり
去年今年 SNSで 気づくなり
(新年 人事)
鏡餅 狭間に似合い 小ぶりかな
朝刊の チラシ外して 節つまむ
(新年 行事)
初詣 ネット社会に 暮らしけり
胃の不満 七草がゆで 和ませて