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12Month Short Short Short  作者: 野原いっぱい
12/13

December 前半

俳句三昧


挿絵(By みてみん)


(春 時候)

春癒えて院内校を待つ母子

立春やふと風の音は氷点下

線香に供物探しの彼岸かな

うららかや並木もひらり曲芸士

もやもやと霞の中で句に挑む

春雨や異国便りの粒を浴び

陽炎や不思議の街の花電車

塗り替えて開園まじか春の山

啓蟄やスイッチオンのながめかな

宴すみ味をくちばしでつつく春

子に持たす 弁当箱に 春を詰め

寒明けて 屋根の足音 一段と

春暁や 一句湧き出る 景色かな

手水舎に 蓮池廻る 彼岸かな

寒明けに 地蔵の装い 気に留めて

(春 天文)

春一番 あちらこちらで 悲鳴上げ

蜃気楼 扉の先は 夢世界

春光や 樹々の狭間を 疾走し

(春 地理)

雪解けで アイゼン嘆く 登山道

地中より 飛び出す顔に 山笑う

春田抜け 冷気の残る 禅寺へ

(春 人事)

卒業や 証の筒を 手に帰路へ

くしゃみ聞き 説明受ける 花粉症

田楽を 追加注文 待ちわびて

潮干狩り 人影見えず 貝一匹

(春 生活)

ゆうゆうとわが道を行く耕運機

春眠を音響陽光奪い合い

卒業の式辞聞く身が震えたり

アルバムに彩り添える入社式

春闘の赤さりげなく門ゆれる

(春 行事)

靴箱が 気になる日は バレンタイン

雛祭り 急ぎ並べて 愛でるかな

メーデーや 昔懐かし 目抜き道

(春 忌日)

お茶の間で 志村けん忌に 泣き笑い

(春 動物)

舞う蝶が笑みをふりまく小道かな

鶯や漏れる朝日の贈り物

旋盤と鉄粉見下ろすツバメの巣

窓明かり浅蜊を嗅いで帰り着く

揚雲雀とどけ蒼天白すじに

駅近し 蛙は遠く なりにけり

頭上に蝶舞い 犬が吠え 猫じゃれり

巣立ちして 燕幾度も 弧を描く

点々と鱒釣りの糸垂れにけり

(春 植物)

車窓からつかみ取りたし梅の花

日吉社のしだれ桜が箔まとい

姿変え色移り行く桜道

嵐過ぎ映える桜を褒め称え

幕引きは我にまかせよ八重桜

連翹や丈一杯に着飾って

初わらび踏み跡やわらか母の道

雪柳小さき園を燦然と

赤と白格子つつじが横並び

地中へと沈む処方ゲンゲかな

「咲いてるよ」さえずり廻る開花かな

裏通り垣のモクレン音一つ

名曲に 我を忘れて 椿落つ

記念フォト 親子も桜も ポーズとり

柳どこ 問われ戸惑う 歴史通


****

挿絵(By みてみん)


(夏 時候)

薄肌にしぶきを浴びる立夏かな

朝刊のめくりにくさよ梅雨らしく

巡礼の願いは重し大暑かな

炎天や校庭静か小走りに

清らかな 季節短し 夏の声

草木伸び 行く手を阻む 夏の夕

朝昼夜 水分補給の 極暑かな

梅雨開けて 降水帯の 爪痕が

田植え時 待ち受け見守る サギ一羽

(夏 天文)

ふと見れば湖上夏めき帆が走る

気がつけば見知らぬ宇宙五月病

遠雷やにわかに変わる動画面

濃き腕の染みが浮き出る炎暑かな

炎天に豪雨かけぬけ汗重し

子供らが 虹を見上げて 数えけり

意気込んで 八十八寺 梅雨辛し

炎天に 愛犬抱え 路面踏む

(夏 人事)

行先は 暴走ヨットに 聞いてよと

雷鳴に テントの金具 遠ざけり

メロディーは 暑中見舞いの 動画かな

(夏 生活)

抜け道に幟連なる琵琶湖岸

つつがなく繰り返し散る遠花火

包帯も冷気を誘う夏芝居 

(夏 行事)

お目当ては お好み焼きの こどもの日

ぎこちなく 下見で歩む 競走馬

鳴り物に 惹かれて集う 祇園祭

(夏 忌日)

見えねども 渦中にありし 晋三忌

(夏 動物)

迷う蝿フロントガラスにしがみつき

蛙鳴く天上界に雪桜

対岸でホタル見る目が灯りけり

蝉の声異星の民も怖気づき

カブト虫 馳走の幹に 食らいつき

水槽を 色鮮やかに 熱帯魚

暑すぎて 今年はやぶ蚊も 出番なく

(夏 植物)

また今朝も時報に追われ薔薇を見る

羽根震え紫陽花の色薄めたり

比良に湧く石楠花の群歩を癒す

睡蓮は 座り心地が 良き座なり

メロン味 丸みと模様で 封じ込め

思い切り 開け奥まで 百合の花





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