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まだ更新します。

「雑魚が、調子に乗るなああああ!」


 挑発されて頭に血が上ったのか、激昂して襲いかかる魔王。


 攻撃は物理主体なのか、次々と鉤爪や尻尾攻撃だけを繰り出してくる。


 それを全て最低限の動作で交わしていくおっさん。


 魔王はパワーこそとんでもないが、攻撃の隙が大きい。その攻撃の合間を縫って、おっさんが大剣を横に振った。


 ガインと弾かれる音。魔王に攻撃が届かなかった。


「なに?」


 更に魔王の反撃を躱してカウンターを叩き込む。振り下ろしの攻撃は、大剣の重量もあり、叩き潰すことも出来そうな凶悪な一撃となるはずだった。


 しかし、その一撃も弾かれる。


 魔王に届いていないのだ。その肉体に攻撃が届く前に、弾き返される。


 バリアでもはっているみたいだ。


「……ふぅむ、攻撃の受け止めは出来たよな」


 おっさんは戦い方を変えた。攻撃を躱しカウンターを叩き込むスタイルから、攻撃を受け止める方法に。


 鉤爪を受け止める。魔王の攻撃は受け止められた。


「ゼァア!!」


 密着状態からの振り抜きで手の内を切ろうとしたのだろう。横ステップで躱しつつ、剣を滑らせる。


 しかし、剣を滑らせた途端に弾かれた。


「これは……魔法か?」


「フハハハハ!! 我が機械文明時代から作られた能力だ! 斬撃、打突の攻撃を無力化するバリアだ! 人間どもに負けることなど無いわ」


「ほーう? 衝撃は受けそうだな?」


 能力の解説をした魔王の攻撃を躱して、おっさんが足払いをする。魔王への攻撃はバリアで弾かれた。


「おっと、こうか」


 おっさんは、そう呟くと魔王の足元を大剣で叩き割った。足場が崩れ、水に沈む。


「ヌアアアア!!!」


 Sランク冒険者ってすげぇな。ネット小説のタイトルにすら使われるその称号は伊達じゃないわ。


 完全に魔王が手玉に取られている。足場を失った魔王は川に落ちていった。


「埒が明かねぇな」


 構えを解かなかったおっさんが川を見つめていると、勢いよく水面から魔王が飛び上がった。


「人間があああ!!!」


 まじおこ状態の魔王ががむしゃらに攻撃している。おっさんは上手く捌いているが、余波は凄まじく、街が崩壊していく。


 おっさんの旗色が悪い。おっさんの攻撃はほとんど効かない上に、ステータスでは魔王の方が圧倒的なのだろう。


 徐々におっさんが押されていく。


「チッ……倒すのは難しいな」


 俺に、なにか出来ることはあるだろうか。


 周囲を見渡すと、瓦礫の近くに、見覚えのあるものが転がっていた。


 擬人化銃だ。これを使えば、魔王を擬人化させてしまえば、どうにかなるかもしれない。


 一時的に気絶するっぽいし、意識を奪うくらいなら出来るはずだ。


 そのついでに擬人化するけど、まあ大丈夫だろう。


 魔王様なら人間になっても迫力あるって。


 銃を構えて引き金を引く。


 カチリ、と引き金が止まった。


 認証機能か!


 小脇に抱えた幼女エルフを見る。彼女は魔王の攻撃を受けた時に庇ったのだが、衝撃からか気を失っている。


 幼女エルフの手を借りて、銃に触れされる。


『Lady』


 認証機能は解除されたようだ。小さく壊れた音だが、確かに識字チートで聞こえた。


 今度こそ、銃を魔王に向けて撃つ。


 ビームが放たれる。それは真っ直ぐに魔王へと進み、直撃する。


 しかし、ビームを食らったはずの魔王には、何も効果が無かった。バリアが張られたわけじゃない。確かにビームは当たったはずだ。


 もう一度、と引き金を引く。しかし、ビームは出ず、プスンと音を立てて、煙を吐いた。


 フーリーさんが使いこんでいたのと、年数が経過し過ぎていたのだろう。ここに来て壊れてしまったらしい。


「ククク……そもそも、機械文明の遺産では我に傷を付けられないぞ。なんたって、魔力で動くからな! 始祖が使いし魔力こそが、我々亜人の力の源なのだ!」


 なんてこった。それじゃあ勝ち目などないでは無いか。


 魔法は恐らく効かない。むしろ魔王を回復させるかもしれないのだ。そして、肝心の物理はバリアでほとんど無効化される。


 多分窒息とか拘束は有効だと思うのだが、あの巨体ではどうにもならない。


「よそ見してんじゃねぇぞ!」


 再びおっさんが魔王の足元を崩す。


「そこのお嬢ちゃん! おっさん連れて逃げろ!」


 Sランク冒険者のおっさんがトールさんに指示を出す。トールさんは、少しだけ逡巡した後、こくりと頷いて、俺の腕を取った。


「それでは、あなたはどうするんですか!」


「大丈夫だ! 俺はこの街で最強なんだよ! こいつをどうにかするくらいなんとでもなるさ! ただ、他に守る奴がいるんじゃあ邪魔なんでな!」


 嘘だ。はったりだ。明らかにおっさんは勝てない。勝ち目がない。それを本人が自覚していたはずだ。


 なのに、どうして俺を逃がそうとするんだ。


 こんな、ブサイクなデブで、誰にも愛されないようなおっさんなんかを。


「お前さん、俺は最初から確信してたぜ! いつか必ずでっかいこと成し遂げられるってな! それが今だ! 行け! 俺が魔王を倒す前に、こいつをどうにかする方法くらい見つけてこい!」


「行くぞ! 逃げるんだ、おっさん!」


 トールさんに引っ張られる。幼女エルフを抱え、銃を持ち、箱を背負って逃げ出した。おっさんは、笑っていた。


「無かったら戻ってこなくていいぞ! また俺が全部どうにかするだけだ!」


 街から、出ていった。


「…………さぁて、Sランク冒険者の本気、見せてやろうじゃないの」


 水路に満ちる水が割れる。


 魔王がその魔力を全身に滾らせて、水底から現れた。


「褒めてつかわすぞ人間。我にこの技を使わせる存在がいるとは思わなかった。だが、貴様はここで終わりだ」


「冒険者ってのはなぁ! 危険を冒して険しい道を切り開く者よ! この程度の危機なんざ、どうにでもなるわ!」


 最強がぶつかり合う。


 それは、遠く離れたおっさん達にまで衝撃が届く程に。苛烈な戦いだった。

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