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5話 キノコに集まる熱い視線


「……じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ」


「……むむむむむむむむむむむっ」


 えーっと、突然ですが俺は今……非常に気まずい空気の中にいます。

 というのも、そもそも俺の右隣の席に座る事になった眞城が――


「じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ」


 体は黒板に向けたまま、顔だけをこちらに九十度曲げているからだ。


「ま、眞城? さっきから、お前の視線をビシビシと感じるような……」


 もうとっくに授業は始まっているというのに、彼女は俺の事をネットリと観察しているのである。しかも時折ノートにメモをして、俺の一挙手一投足を記録している始末だ。


「そんなに見られると、授業に集中出来ないんだけど」


「はぁ? 何それ? 自意識過剰なんじゃないの? キノコのくせに生意気ね」


「そ、そうか……ならいいんだ」


 だったらそんなジト目でガン見しないで欲しいかな……うぅ、視線が痛い。

 しかも眞城が俺を見つめているせいで、もう一人のお隣さんがご立腹らしく……


「んむぅー、むむむむむむむっ!」


「あー、橙乃? リスみたいにほっぺたを膨らませてどうしたんだ?」


 左サイドの橙乃に至っては、眞城と違って体ごと俺の方を向いていた。

 あの、だから今は授業中でして……そういうことしていると怒られると思うなぁ。


「……木之崎君。私は言いたい事があります!」


「おう? それは構わないけど、もうちょっと声を小さくしてくれると助かる」


 幸運な事に俺達の席は最後方、真ん中という位置だから気付かれにくいが……もしも授業中に私語しているのがバレたら確実に怒られる。

 まぁ、橙乃だってそれくらいのことは分かって……


「木之崎君は私のお隣さんだよね! 私が木之崎君のお隣さんだもん!」


「だ、だから声を張り上げるなって! しーっ、しぃーっ!」


「むむむむむむむぅぅぅっ! 私の木之崎君だもんっ!」


 俺の返答がお気に召さなかったようで、橙乃は足をバタバタさせて拗ねている。

 駄々っ子みたいで可愛いけどさ! お願いだから空気読んでくれよ!


「ふん、違うな橙乃。丈人はお前のモノではなく、俺のライバルだ……」


「針馬ぁっ! なんでお前に至っては完全に後ろを向いてるんだよ! 馬鹿じゃねぇのか!?」


 机そのものを後ろに向けて、ニヤニヤと笑っている針馬がウザすぎる。

 よく先生に気付かれてないな、お前。 


「ほぅ、この俺を馬鹿と言うか。面白い、それでこそ……」


「……何が面白いんだ江園? 俺の授業にふざける事が、そんなに面白いのか?」


「……フッ。ようやく教師のお出ま、ぐぇっ!」


 ガシッ、ボカッ! 針馬は先生の手によって廊下につまみ出されてしまった。

少しだけ可哀想かとも思ったが……ほぼ自業自得だったな、うん。


「はぁ……頭は良いのに、なぜ真面目にやらんのだアイツは……」


 ひと仕事終えて戻ってきた数学教師……高峰先生の言葉はごもっともだと思う。

 というより、俺のせいでご迷惑をおかけして本当に申し訳ないです先生。


「お前もだぞ木之崎。いくら友達が話しかけてこようと、授業中なら無視せんか」


「はい、先生のおっしゃるとおりです。すみません」


「よーし、それでこそ木之崎だ。ハハッ、お前には期待しているからな」


 先生は笑いながら頷くと、ぽむぽむと俺の頭の傘を叩いた。

 普段の授業態度が勝敗を分けたな針馬。テストの成績だけが勝負じゃないんだぜ。


「……キノコに期待って、意味分かんない。この学校はどうなってるのよ……」


 ブツブツと眞城がぼやくのが聞こえたが、もう気にするのはやめよう。これ以上先生に迷惑かけるのもなんだし、俺自身が勉強に集中出来ないからな。

 眞城と橙乃には悪いけど、俺は心を鬼にして無視する事にした。

今作はかなり昔に書いた作品のリマスターとなります。

それすなわち、ハードディスクの奥底に眠っていた黒歴史の大量放出。

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