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20話 キノコが全裸で何が悪い

「つうわけで大体はそんな経緯だ。少しは納得してくれたか?」 


「ええ。辛い話を長々とさせてしまってごめんなさい。とても感動的だったわ」


「感動する要素があったか? 兄妹揃ってキノコになるって、むしろホラーじゃないか」


それに結局のところ、あのキノコを食べた事が変化の原因だってくらいしか分かっていない。元に戻る方法も例のキノコがなんだったのかさえ分からないんだ。


「話の受け取り方は人それぞれよ。それより、体は大丈夫なの?」


「科学的な検査も受けたけど、至って普通のキノコです、としか言われなかったな」


「喋って動く、超能力使う巨大キノコが普通って……現代科学は情けないわね」


そういえばアメリカから二人組のFBI捜査官も調べに来たけど、何も分からずに帰っていった。女性捜査官の方が男性捜査官に向かってしきりに、私達は疲れてるのよ、と日本語で囁いていたのが印象に残っている。


「というか今更だけど、眞城は本当に何も知らなかったのか?」


「えっ、何を?」


「俺の事だよ。世界中で話題になったから、ニュースや新聞で一時期有名になったんだぞ。まぁ、知らない人がいても別におかしくはないけど……」


 校舎裏で俺の事情を説明した時から、気になってはいた。

 人間がキノコになるなんて歴史上でも類を見ない大事件だ。

 マスコミはこぞって家に押しかけてきたし、日本だけじゃなく海外でもこの騒動は大きく取り上げられている。

 仮に眞城が帰国子女だったしても、噂くらいは耳にしている筈だが――


「あー、それは……うーんと」


「なんだ? バツが悪そう顔して」


「木之崎君も話してくれたんだし、私も全てを話した方がいいと思うんだけど……」


 自身の両肩を強く抱いて、眞城は目を伏せる。

 しくじった。どう考えたって前の学校での事が関係しているだろうに……俺の馬鹿野郎。


「実は私も……」


「おにいちーん! 話はもう終わったー?」


 眞城が何かを言いかけたのを、丈美の舌足らずな甘い声が遮った。

 振り向くと、リビングの扉を半開きにして丈美がこっちを覗き込んでいる。

 ずっと部屋に閉じこもっていて寂しくなったのか、丈美はぽむりんぽむりんと跳ねて近づいてくると、俺に体を擦りつけるようにじゃれてきた。


「こら丈美、部屋にいなさいって言っただろ」


「ぶぅー。遊んでくれなきゃやだー」


 すりすり、ぷるるん。丈美のふっくらとした傘が俺の敏感な下茎部に触れてくる。

 丈美よ、いつの間にこんないやらしい体に……って、何を考えているんだ俺は!

 実の妹だぞ! いくら子供離れしたスタイルとはいえ、欲情するアホがいるか!


「んむふー、おにいちんの体やわらかーい」


「い、いい加減にしろ丈美! お客さんもいるんだぞ!」


 内心を悟られぬよう、兄の威厳を保ちつつ丈美を突き放す。

 妹相手に変な気持ちを抱いたなんて知れたら、眞城になんて言われるか……


「え、なに? 木之崎君って、キノコの体に欲情してるの?」


「うわー、もうバレてらー」


「嘘っ! 冗談だったのに……!」


「うわー、自分でバラしてらー」


 兄として最低なのは百も承知だが、なぜか魅力的に見えてしまうんだよ。

 キノコの傘や茎が艶めかしく思えて、その香りがガツンと本能を刺激するんだ。


「こっちにおいで丈美ちゃん。そこの野蛮な性犯罪者に近付くと危険よ」


「せーはんざいしゃ? おにいちん、それってどういう意味?」


「丈美はまだ知らなくていいよ。眞城、妹に変な事を吹き込むなって」 


 こんな体になる前から、中身と違って大人びた体付きだった丈美。

 そこに妙な知識が加わって、手に負えなくなったらどうするんだ!


「橙乃さんも私も……どうしてこんなのが気になるのかしらね」


「へ? 橙乃がどうかしたのか?」


「なんでも無いわよ。ほら丈美ちゃーん、抱っこしてあげましょうねー」


 話をはぐらかした眞城が、丈美に向かって両腕を広げる。

 たくっ、いくら丈美が愛くるしいからって子猫感覚で可愛がるなよ。


「わーいっ! つるぺただー! 杏おねえちんと全然ちがーう!」


「……やっぱりキノコって嫌いだわ」


 眞城はこめかみに青筋を浮かべつつも、抱き上げた丈美を撫でている。

 良い母親に憧れているような事を言っていたし、ひょっとしたら子供が好きなのかも。


「ねーねー? つるぺたのおねえちんは、なんてお名前なのー?」


「つるぺたはやめて。私の名前は眞城優夢よ、優夢お姉ちゃんでいいわ」


「うんっ、分かったー! まな板の優夢おねえちん!」 


「……木之崎君。アンタ、妹にどういう教育をしてるのよ?」


「どういうって言われても。丈美、俺がいない時にパソコンを弄ったりしてないよな?」


 中学生になったばかりの丈美がパソコンを使う際には、俺か両親が必ず同伴するようにしている。過保護に思えるかもしれないが、これも妹を健全に育てる為だ。


「い、いじってないよ……ちょっとえっちなアニメとか見てないもんっ」


「そうか。それならいいんだ」


「よくないわよ。どう考えても嘘でしょ。ダウトよ、ダウト」


「何を言うんだ眞城! 丈美はえっちなアニメは見てないって言ってるだろ?」


「パソコンの話だったのに、どうしてアニメの話に変わっているのかしらねー」


 ん? 言われてみれば確かに妙だな。

 しかし俺の丈美に限って、俺に嘘を吐くとは思えないんだが……


「あ、あー! 丈美ってば宿題を忘れていたかもー。部屋に戻るねー」


「待つんだ丈美。お前に宿題なんて無いだろ」


「うあうあー! 許してよー、おにいちーん!」


 眞城の腕の中から飛び降りて、逃げ出した丈美をサイコキノシスで捕獲。

 見えない力で拘束され、空中でうにうにと暴れる丈美をそのままこちら側に引き寄せようとするが、丈美も負けじと能力を発動させて抵抗してくる。


「……抵抗しても無駄だ。俺の方が能力は上。逃れられはしない」


フフフ、漫画の悪役みたいで格好良いな。説教する時の決め台詞にしておこう。


「むむむぅ……えいっ」


 丈美は宙ぶらりんの状態から最後のあがきとして、縦にくるりと半回転する。

 するとどうだ。丈美のデリケートな部分……傘の裏側が俺に丸見えになっているじゃないか。な、なんてハレンチな事を……兄として悲しいぞ!


「うぐぁっ……っ! そんな、パックリ……」


「うぃへへへっ、さーびすだよっ! 後でちゃんと遊んでねー!」


 しくじったな。動揺したほんの一瞬、力を緩めてしまった。俺の拘束から脱出した丈美は、弾丸のような速さでリビングから自分の部屋へと飛んで行く。

 俺としたことが兄として……いいや男として未熟過ぎる。


「くそぉっ! なんでキノコ用の服を売っていないんだ! 毎日、妹のあられもない姿を見せ付けられる兄の気持ちが分からないのかファッション業界!」


「少し頭を冷やしなさいよ変態キノコ。キノコに裸もクソも無いでしょ」


「それがあるから、ドギマギしてるんだよ」


 正直言うと、丈美は眞城よりも数段エロい。

 ……そんな事、眞城本人の前で言おうものなら、何をされるか分かったもんじゃないが。

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