8月 事業本番
眩しい。
夏真っ盛りだから太陽が眩しいのは当たり前だけど、こんなに眩しいのは体を酷使し過ぎているせいに違いない。
明後日はとうとう寿島まつりだ。
準備を始めて二ヶ月と少し。
倉庫の片付けから始まり、色んなことをさせられた。
まつり場の設営に関する肉体労働はきつかったな。
役場、観光協会、設営の工事業者等との打ち合わせは、わけが分からなくて精神的にきつかった。
そして肉体的にも精神的にも一番辛かったのは寄付金集めだ。
人見知りの俺が、初めて会う人とあんなに話さなくてはいけないなんて。
といっても最初は挨拶すらまともにできなくて、何しに来たんだって怒られて。
そのまま逃げたかったけど、野島さんがそれを許してくれるわけもないから、準備の合間に挨拶やお願いの仕方を練習させられて。
嫌でしょうがなかったけど、暑い中、大変ねってジュース貰ったり、まつり楽しみしてるよと言われたら、それはそれで悪い気はしないもので。
とはいえ毎日きつくて沢山怒られて、逃げたくても、どう逃げたら良いかすらも分からない程やることが山積みで、今まで生きてきた中で一番沢山の人と否が応でも接した二ヶ月間だった。
それもようやく明後日で終わりだ。
まつりが終わればお盆だから仕事も休みになるし、やっとゆっくり引き籠れる。
前からまつりの前日は朝から皆でやることがあるから仕事を休んでくれと言われていた。
でも、まつりの準備が始まる前に親父が島内で行われるJC活動には必ず参加だが、それは仕事の時間外のことで仕事中は仕事をしろ、さぼったらペナルティ取るぞと言いいだして、また新しい条件を勝手にと思ったけど、今まで仕事をさぼったことなんかないから年寄りは説教ばかりで鬱陶しいな位に思っていた。
そしたら、まつりの準備で毎日へとへとだわ、でも仕事をさぼることはできないわで、こうなるのが分かっていて条件を足しやがったなと恨んでいたが、まつり前日の作業はこれを口実に堂々と断れる。
「の、野島さん、あ、明日は、し、仕事なので・・・」
「前からこの日は休みを取ってとお願いしていたでしょう?お父さんにお願いしてみた?」
「い、いえ、で、でも、し、仕事は休んでは駄目だと。」
「用事がある時はどうしてるの?用事があっても休めないの?そんなわけないわよね。寿島まつり前日の作業があるって説明した?前日に明日休ませてって言っても無理かもしれないけど、少しでも日中に時間が取れない?私からも頼んでみましょうか?」
俺から頼むとペナルティだって言われるだろうし、それで野島さんの気が済むなら良いか。
「お、お願いします。」
野島さんはすぐに親父の携帯に電話したようで
「おまえ、明日休みたいのか?」
「俺は休みたくないよ。JCは仕事の時間外だけで良いんだろう?」
「野島委員長は随分前から休みを取ってくれって言ってたんだろう?」
「そうだけど、仕事は休めないから。」
「それを何で前日に言うんだ?」
ギリギリで言わないと無理矢理にでも休まざる得ないようにさせられると思ったからなんて言えないよな。
「ギリギリで言えば休みも取れなくなるって魂胆だろうが、そういう卑怯な逃げ方はもう止めろ。人としても社会人としても最低だ。」
「何度も言うけど、俺は人付き合いが苦手だし、外に出て行くのも嫌いなんだよ。でもJCはそんなことお構いなしにしつこいから。俺だってはっきり断りたいけど、嫌だなんて面と向かって言えないだろう?だから頑張ったけど無理でしたみたいにするのは卑怯じゃなくて気を使ってるんだよ!」
「日本人特有のNOが言えない&察して下さいか。でも人は自分の都合の良いようにしか察しないから、それでは、おまえが悪者になるばかりだぞ。自分の考えはきちんと表現できるようなれ。」
「人が俺のことをどう思おうがどうでもいいよ。俺なんかどうでもいい人間なんだから。」
「何でそんなにおまえは自己評価が低いかな。どうでもいい人間なんていなんだが、まあ、JCを無理矢理にでもやっていれば色々なことがその内見えてくるさ。そして俺にとっては、おまえも野島委員長も大事な存在だし、まつり前日の作業の大事さもよく分かっている。今回は二人に免じて、本来なら前日に休みを下さいなんて言語道断なんだが特別に休みをやろう。ペナルティも今回はなしだ。だが次回はないから気を付けろ。」
「いや、俺は休みたくないって!」
「俺だって日本人だ。察すること位できる。おまえが休みたいのを察してやったんだ。」
「はっきりと休みたくないって言ってるじゃないか!」
「気を使ってそんなこと言わなくていいぞ。」
「気を使ってるんじゃなくて、本心から言ってるんだよ!」
「いやいや、お前は自分の考えを表現するのが下手くそだな。全然伝わらない。明日早いだろうからもう寝ろ。」
畜生、今回も完璧に言い負かされた。
悔しくて今夜も眠れないかもしれない。
翌朝、まつり場に行くとJCメンバー以外にも三十人程人が集まっていた。
昨日は悔しさより連日の疲れが勝って、すぐに寝られたけど溜まりに溜まった疲労は一晩寝た位じゃ取れなくて、朝日も昇ってきたので眩しくてくらくらする。
これから一体何をするんだろう。
「野島委員長、役場に人数確認した?」
「今朝しました。これがリストです。あと、今日か明日予定日の人が一人いるそうです。どうしますか?」
「名前と性別は?」
「まだだそうです。」
「じゃあ、名前部分は空白で準備だけして。」
何の話だろう?リストとか名前とか?
まさか、まつりの混乱に乗じて反JCな人を殺して、JCに反抗的だから天罰が下ったのだと島民を洗脳するのか!
寿島まつりの本当の目的は反JC抹殺と洗脳!
しかし今まで、まつりで人が死んだなんて聞いたことがないな。
でも野島さんが今年は新しい試みがあるって言ってたじゃないか!それがこの計画?
議案に新しい試みのことは書いてあったのに、あんなに沢山の枚数読めないと背景、目的までしか読んでいなかった。
家に議案はある筈だけど、どこにあったっけ?
毎日忙しくて部屋が酷いことになってるもんな。
帰ったら探さなくては。
「皆さん、おはようございます。最後の大仕事。電球&提灯付けを行います。まず電球からですが、今年は九八九個です。」
「九九0いかなかったか。」
「九五0を切りそうになった時もあるんだから良い良い。」
「来年は千、いくんじゃないか?」
皆、電球の数に対して色々言っているけど、何なんだ?
今年はって毎年数が違うのか?
倉庫で電球の確認をしたけど、それが関係あるのかな?
中川さんは千個位電球があるって言ってたけど、フィラメントが切れていて点かない電球もあって・・・もしかして、これは、電球占い!
千個ある電球の内、切れている電球が多いとその年は災いも多いんだ!
そして、電球がいくつ切れているか確認するのは俺達JCだから数の操作なんて簡単にできる。
そうやって島の吉凶まで操作していたのか。JC恐るべしだ。
しかし今年は俺がいたから誤魔化しはきかなかったようだな。
数的には悪い数字ではないようだけど、そうするとさっき聞いた暗殺計画に矛盾が出てこないか?
いや、反JCの人間が寿島から減ったので数字が良くなったのだとか言いそうだ。
そして反JCが全員いなくれば島はもっと良くなると言うんだな。
こんな馬鹿な俺でも気付けることなのに、皆どうして気付かないんだ!
俺は誰にこの暗殺計画を知らせたら良いんだ!
必死に考えている間にも作業は淡々と進み
「九八八。九八九!はい、終了!」
「待って。今日か明日、予定の子の分はどうする?」
「うーん、予定だからね。帝王切開で手術日が決まっているんじゃないんだよね?」
「うん。自然分娩。」
「一つ余分に用意しておく?でも双子だったらどうしよう。」
「ああ、どうだろう?そこは確認してなかった。」
野島さん、ひょっとしてそのお腹は太っているんじゃなくて妊娠?
そして予定日が今日か明日?
こんな暑い中まつりの準備なんかしていて大丈夫なのか!
中川さんも妊婦さんをもっと気遣ってあげてよ!
「ステージに用意すれば良いよ。生まれたらタイミングを見計らって発表しよう。」
「それが良いですね。では理事長お願いします。」
理事長まで!
ステージに何を用意するんだよ。
もしかして分娩台?
生まれたら発表って、まつりで何をするんだよ!
「電球の数は寿島の人口と同じ。今日か明日に出産予定の方がいるから、その対応の話をしてるの。議案に書いてあったのに読んでないの?野島委員長が出産すると思ってない?」
うわっ!指方さん。
隣にいたの?
って今日は日焼け防止なのか巨大な麦わら帽子を被っているのに相変わらず存在感がない。
日焼け防止の帽子。ぼうしのぼうしか・・・
また親父ギャグ・・・なんてことより俺の勘違いがばれてる。
野島さんにばれてないよな。
もし、ばれてたら何て言われることか
「聞こえてないようだけど、議案を理解してないことがばれたら大変ね。」
「二人で内緒話してるの?仲良しで良いわね。休憩したら次は提灯付けるわよ。」
良かった。本当に聞こえてなかったみたいだ。
「私には聞こえたけど、黙っていてあげるから安心していいよ。」
うわっ!小柳社長!
急に耳元で喋らないで下さい。
黙っていてあげるから代わりに・・・なんてならないよな。
「猿渡くんは、いつも何を考えているの?」
「え、ええっ?い、いや、べ、別に・・・」
暗殺計画に気付いたことに気付かれた?
いや、そもそも電球の数は人口の数だから暗殺計画自体が俺の勘違いで。
しかし、その情報は暗殺計画を誤魔化す為の偽情報で?
ああ、混乱する。
「猿渡くんはJCに入った時からよくフリーズしてたけど、最近はフリーズ中に楽しそうだから。何を考えてるのかなと思って。」
「え、ええっ?い、いや、べ、別に・・・」
俺が楽しそう?
そんなわけないだろう、毎日こき使われてヘトヘトで、更には暗殺計画の阻止まで考えなくはいけないんだから。
「脳も体も使わないと劣化していくからね。思考と体調というのは密接に関連していて、両方ともよく動かした方が良いんだ。だから、脳も体もたくさん使うまつりの準備は健康にも良いんだよ。」
また表情に出ていたのか?
こき使っているんじゃなくて、それが為になるんだって言われたんじゃあ何も言えないじゃないか。
「でも嫌なことはマイナスになるだけから、楽しさや達成感を是非見付けてほしいんだ。明日の寿島まつり楽しもうね。」
暗殺計画があるかもしれないのに楽しめるわけないよ。
しかし周りが気付いていない、この計画に俺は気付けた。
まつりの準備や仕事で体を酷使している内に脳の働きも良くなってきたのかな?
「皆さん!提灯付けをしますよ!名前作業班はこちらにお願いします。」
名前作業班?
「猿渡副委員長も名前作業班よ。昨年のまつりから今日までに亡くなられた方のリストがこれ。名前を見付けたら、ここに入れて貼ってあるリストにチェックをしてね。ご家族にお渡しする物だから丁寧に扱うのよ。そして提灯自体が破損しているのはここに入れて。新しい提灯に名前を書き移してもらうので。」
提灯に島民の名前が書いてあるんだ。
俺の名前もあるのかな?
「自分の名前の提灯を自分で確認できたら良いことがあると言われているのよ。」
そんなこと言って、多く確認作業させる為の嘘だろう?
「嘘だと思ってる?私は自分の名前を確認できた年に寿を妊娠したから信じてるわよ。今年は十人で確認していくから確率は十分の一。楽しみね。」
別に信じないけどさ・・・
信じないと思ったものの、俺にとっての良いことって何だろうなんてついつい考えてしまう。
そして提灯を手に取る度に俺の名前があるかなって期待して。
違うんだ、自分の名前があるかどうか純粋に確認したいだけなんだよ。
でも自分の名前ばかりを気にして亡くなられた方の名前と破損を見逃したりしたら野島さんにどんな目に合わせられるか分かったもんじゃない。
真剣にしなくちゃ。
まあ、こういう黙って淡々とする作業は苦手じゃないしな。
しかし他の人達は自分の名前がまだ出てこないだの、知り合いの名前が出てきただのと結構うるさい。
俺は、そんなことであんなにはしゃいだりなんかしないぞ。
そもそも数少ない同級生の名前すらちゃんと覚えているか怪しいから、はしゃぐネタもないけどさ・・・
「自分の名前出てきた?」
「い、いえ・・・」
「僕も昔は埃っぽい提灯なんか触りたくないんだよって心の中で悪態をつきながら作業していたけど、JCをやってる内に知り合いが少しずつ増えてきて、知っている名前を見つけるとなんだか楽しく感じる様になってきてね。そして自分の名前を見付けた年に自分のブランドを立ち上げられたから良いことあるっていうのは本当だと思っているよ。」
中川さんまで!
もしかしたら本当に良いことってあるのかな?
あっ、猿渡太郎!
「ま、丸?」
「何?ああ、これリスト見た時にビックリしたんだよ。親戚?」
「は、はい・・・た、多分。」
昨年の冬に親戚が亡くなったって。
俺は風邪引いてたのもあるけど嫌だからって葬式も行かなかったんだけど、猿渡太郎丸って名前だったんだ・・・
結局、自分の名前を見つけることができたのは小柳社長だけだった。
そして提灯付けが終わったあとも本番に向けて準備があり、まつり当日も朝からバタバタで、小柳社長はまつりを楽しんでなんて言っていたけど忙し過ぎて楽しむ余裕なんか全然ない。
そして議案は結局見つけられなかったので暗殺計画が行われないように皆の動きを監視までしないといけない。
それだって、こう忙しくては監視なんて無理だよ。
それが狙いなんだろうけど、黙って見過ごすわけにはいかないし、一体どうしたら・・・
「猿渡副委員長、こっち手伝って!何見てるの?」
「あ、あの・・・」
「ああ、今日のタイムスケジュールの確認してたの?しかも皆が予定通りにできているかのチェックまでしてくれてるんだ。助かるわ。ありがとう。」
いや、皆の動きに不審なところがないかタイムスケジュールと照らし合わせて確認していただけなんだけど、そう勘違いしてくれているなら好都合だ。
夕方になり、段々と人が集まってきた。
浴衣で来ている人達もいるけど親子連れが殆どだ。若い女の子達はいないのかな?
「浴衣の女の子を探してるの?」
「い、いえ。べ、別に・・・」
「猿渡副委員長は本当に全部顔に出るね。だから無口でも今まで不自由しなかったのかもしれないけど、今後は言葉でのコミュニケーション能力も磨いていこうね。」
今まで人と接することが苦手で、上手く話せなくても必要最低限のことは何とかなっていたのはそのお蔭だったのかな?
極限まで人と接するのを避けていたせいかもしれないけど、今は避けようにも無理だし。
ほら、また野島さんが俺を呼んでいる。
そのあとも、まつりの進行に伴い様々な手伝いやトラブルの対応で走り回り、その上暗殺計画を阻止する為に皆の動きにも目を配りと、汗まみれになった。
「そろそろね。」
「連絡はまだない?」
「まだだけど、準備はしてるから大丈夫。あとは理事長が上手く対応してくれるわ。」
なんだ?野島さんが何かを隠す様にポケットに入れて、携帯を握りしめている。
中川さんの様子もなんだか変だ。
「最後の挨拶が始まるからメンバーは全員ステージの横に行くわよ!」
全員一緒にいるなら怪しいこともできないと思うけど一体何が?
「今年の寿島まつりも無事・・・」
小柳社長が挨拶をし出した。
まつりが始まる時は町長さんが挨拶をしていたけど、最後は小柳社長が挨拶をするんだ。
島の一番偉い人と島の一番金持ちが挨拶をする決まりなのかな?
いや、違うな。これはJCの一番偉い役職だから話をしているんだ。
最初に町長が挨拶をしている時は、声は聞こえているけど内容は全然頭に入ってこなかったけど、今は話の内容が頭にすんなり入ってくる。
暗殺計画阻止の為に集中して聞いてるからってのもあるけど、それだけじゃないよな。
今こうしてJCの理事長として小柳社長が話していることは、俺達が実際にこの二ヶ月間まつりの準備をしてきて、それがあっての言葉だからよく理解ができるんだ。
俺は社長としての小柳さんはよく知らないけど・・・
ああ、今、俺の目の前にいる人は社長じゃなくて理事長だ。
「連絡きた!」
「これを理事長に!」
野島さんが紐みたいな物を持ってステージに上がって行った。
何?小柳理事長を絞殺?
いや、紐は理事長の手に
「素晴らしいタイミングで喜ばしい知らせが届きました!寿島に新たな光が一つ増えます。
午後九時三十分女の子です!」
理事長はステージの陰から提灯を取り出しピンクのリボンを結んだ。
一通り、まつりの片付けも終わり、誰かが殺されたという知らせもないまま肉体的にも精神的にも疲れ果て朦朧とした状態で「しま」にいる。
暗殺計画は最初からなかったのか?
それとも俺が阻止したのか?
「猿渡くん、お疲れ様。まつりは楽しめた?」
「理事長!い、いや、そ、その・・・」
「おお、初めて理事長って呼んでくれたね。猿渡副委員長!」
「理事長もようやく猿渡副委員長って呼べましたね。」
「そう。猿渡副委員長が私のことを役職で呼んでくれるまで私も役職で呼ばないぞって決めてたからね。」
「今まで呼ばなかったのに、何が切っ掛けで、理事長って呼んだの?」
「い、いや、そ、その、さ、最後の挨拶の時に、り、理事長だなって・・・」
「ようやく理事長だって認めて貰えたんだ!」
「専務と委員長は、まだ認めてないの?」
「い、いえ、り、立派な方で・・・」
「何!そのいい加減な答えは!認めてなんかないでしょう!」
「まあまあ、野島委員長。猿渡副委員長は議決権がないのに手を挙げる位、委員長のことを認めてるんだから。」
「そうだったわね。この照れ屋さん!野島委員長って連呼して良いわよ。」
人生二回目のウインク!
野島委員長、相変わらず怖いよ。
「しま」はまつりの関係者で一杯で、今年の反省点や来年のこと、また昔話まで出てきて皆で盛り上がっている。
今ここにいる人達って新年祝賀会に来ていた人達とほぼ一緒じゃないかな?
新年祝賀会の時は「この度は・・・」みたいなことしか言えず、皆の話も分からずにひたすら俯いていた俺だったな。
今日も話せはしないけど、皆の話している内容は大体分かって、顔を上げてもいられる。
なんなら話題に対して自分の意見さえ思いつく。
勿論、発言はしないけど。
一月から何が変わったんだろう?
皆といるのが苦痛でなく、むしろ心地よいなんて。
これが洗脳?危ない、危ない。
二次会の誘いに初めて乗るのは楽しいからじゃなくて、二次会というものの調査をする為なんだからと自分に言い聞かせる。
「エントは初めてだよね。」
「は、はい。」
二次会に誘われたものの、遅い時間に空いている店なんてないのに、どこに行くんだと思っていたら連れてこられたのは中川専務の家だった。
外観は大きな農家なんだけど、中に入るとそこは宮殿だった。
ま、眩しい・・・
都会の煌びやかさばかりを追い求めていたが、寿島で田舎の美しさに気付いたんじゃないのか?
その土地に合ったものが素晴らしいって言ってたのに、外が農家で中が宮殿って。
納屋の中にはピカピカの外車があるし、外と中のミスマッチ感が半端ないよ。
「寿島の景観を損なってはいけないから外観はそのままだけど、やはり好きなものに囲まれて生活したいからね。」
また、顔に出てたんだ。
「いや、初めて来た人は全員思うことだから、説明するのが癖になっててね。」
「さあ、二次会始めるわよ!」
そして、宮殿の様な煌びやかな部屋で朝方まで二次会は続いたんだ。




