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JC!JC!JC!  作者: けーた
7/13

7月 事業前


眠い。


仕事以外は殆ど一緒にいるのに皆は眠そうじゃない。

きっと皆は仕事をしてないに違いない。

野島さんは審議のあとが本番、明日から寿まつりの為に奔走すると言っていたが、その言葉の通り野島さんだけでなく全員が奔走してる。

親父の長話に巻き込まれ、しかも言い負かされた感が悔しくて、そのあとも上手く寝付けず寝不足で、今日は早く寝ようと店の片付けをしていたら、中川さんが迎えに来て、俺の奔走は始まった


「エント、昨日はお疲れ様。エントの歌だけが聞けなくて残念だったよ。さて、行こうか。汚れるから作業服のままで大丈夫だよ。」


「よ、汚れる?ど、どこへ?」


「どうしてもエントの歌が聞きたいからカラオケに行こう。」


カラオケに行って何で汚れるんだよ。


「というのは冗談で。寿島まつりの準備。晩ご飯も準備してあるから安心して。」


野島さんが言ってた通り、中川さんの冗談は本当にブラックで笑えない。

いきなり来てカラオケに行こうだなんて、恐ろし過ぎる。

今日は疲れていてと抵抗してみたが、カラオケじゃないから大丈夫だよと全く理屈の通らない言葉で説得され、町外れの倉庫に連れていかれた。

中川さんの車は本人同様に派手で、日本車でないのは確かということしか分からなかった。

車の中には指方さんが存在感ゼロで乗っていて驚かされたのもいつも通り。

いい加減、指方さんいたんだ!と驚くのを止めたいが、本当に毎回ビックリしてしまうんだよな。


「二人とも寿倉庫に来たのは初めて?」


「私は小さい時に父に連れてこられたことがあります。」


「指方先輩のJC教育は凄いね。」


「いえ、母から子守を任されていた父は、倉庫に行く用事があった際に、異世界に続く扉があるからと私を騙して連れてきて。

これをすれば扉が現れる、あれもしなけば扉は現れないと、結局手伝いをさせられたのです。」


「指方先輩が異世界の扉のことを!」


「本当にあるんですか?」


「あるよ!今日、ここに来たのはその扉を開ける為でもあるんだ。」


またブラックジョークを。

でも指方さんのお父さんまでも言っていたということは、ひょっとして?

いやいや、JCに代々伝わるブラックジョークなのかもしれないぞ。騙されるな俺。


「では早速、異世界への扉を開ける為の作業に入る。」


 異世界への扉を開ける為の作業とは!





倉庫の整理整頓じゃないか・・・


「次は電球のチェックをするよ。」


チェックって、これ一体いくつあるんだよ?


「千個はあるよ。では、シーサーは電球のフィラメントが切れてないか見て大丈夫ならここに入れる。

切れてるのはこっちね。切れてない電球はエントと僕でソケットに入れて最終チェックする。

目や手が疲れるから適当に交替していこうね。」


なんて地道な作業なんだ。

それにしても野島さんと小柳社長は何でいないんだろう。

小柳社長は偉いからこんな作業はしなくて良いとしても、野島さんは明日から頑張りますと言った張本人なのに、いないなんておかしいだろう。


「小柳理事長と野島委員長からの差し入れここに置くから適当に食べてね。今日、二人は寿島まつりの全体会議に出席しているんだ。」


全体会議って何だ?いや、禅耐会議かも。

JCの理事会って禅問答みたいに、これはどういうことだ?何の意味があるんだ?って傍から見たら意味不明なことをひたすら問い続けるし、そんな大変な状況に皆、耐えてるもんな。


「全体会議っていうのは、町役場や工事関係者とかまつりに関わる全部の人達が集まる会議のこと。昨日、議案が通ったので全体で打ち合わせをしてるんだよ。」


さっきから何も喋っていないのに俺が思ったことへの答えを中川さんがすぐに返してくる。

不満がはっきり顔に出てるんだろうけど、睡眠不足なのにあれやれ、これやれって言われたら不満も顔に出るよ。

しかもJCは地域の為になることをやっていると野島さんは力説していたけど、この電球チェックなんかが本当に地域の役に立つのか?


「エントはこの作業が辛い?そして本当にこの作業が地域貢献になるのかとも思ってる?

答えは勿論なる。

人はもっと華々しくて、すぐに結果が見えるものに目を奪われがちだけど、物事は細かな作業の組み合わせによりでき上がっていく。

その作業工程を知り、効率よく組み合わせ進行させ結果を出す。それがリーダーの役割。

なので将来のリーダーである二人にはこれから様々な作業を手伝ってもらうよ。

専門家にしかできないことは別だけど、それ以外はできる限りJC内部で行う。

人数が少ないから外部の手もたくさん借りるけど、必ずJCメンバーが全体を把握、指揮しながら行う。そういった過程を繰り返すことによりリーダーの資質も獲得でき、その行動により地域貢献もできる。

そしてリーダーとは周りを引っ張り影響を与える存在でもあるので、人間関係は切っても切り離せない問題だね。

その人間関係の勉強にもなり、更には一生涯の友達までもできてしまうというJCって素晴らしいことだらけだよね。」


そういう名目で無料の人手を確保し、JCが指揮を取ることで周りを洗脳、支配していくんじゃないの

か?


「まあ、最初は胡散臭さしか感じないよね。実を言うと僕はJC大嫌いだったしね。」


「えっ?」


「なにせ僕のお爺ちゃんは日本JC設立に関わった人だから一族揃ってJC!JC!でね。

周りがあまりにもJC過ぎて逆に胡散臭いと思っていたんだ。

随分と立派なことを言っているけど、できているのか?って。

僕の一族はできていた様だけど、それは会社が成功していて余裕があるからだろうと思っていたし。

そういう僕だってその恩恵で裕福な暮らしをしているんだろうと皆思ってるけど、それは違うからね。」


どこをどう見たって裕福な暮らしじゃないか。今日着ているジャージのようなものも、いつも通り奇抜だけど、そこらの安価な衣料店では売ってないものだというのは分かるし、車も腕時計も身に付けている物全部が一言でいうと奇抜&高級なんだよ。

奇抜に目がいき過ぎてて今まで気付かなかったけど中川さんは典型的なTheお金持ちだよ。


「僕が受けた教育は自分で考え、行動しなさい、人を思いやり、助け合いましょうというもの。

JC一族でなくても受ける普通の正しい教育だよね。

だから子供の時にこの教育を皆が身に付けてその通りに行動していけば大人になってから、わざわざJCなんて入る必要がないと思っていた。

世界には様々な事情があって正しい教育を受けられない子供達も勿論いる。

でも正しい教育を身に付けた人が、人を思いやり助け合うんだから世界はどんどん良くなっていく筈だと。

JCに入って自己修練なんかしているより、やるべきことが世界には沢山あるだろうとね。

だから義務教育を終えたあとに自分で考え行動しろと家を出されたのも別に不満はなかった。

JC一族は嫌いだったけど一族の仕事である宝石は昔から好きだったから、バイトをしながら通信教育で資格を取り、資格だけでは仕事にならないからバイトである程度お金を貯めてイタリアに行ったんだ。」


宝石の勉強でイタリア?

よく知らないけど宝石って岩の中とかにあるんだろ?

イタリアって確かに岩の遺跡だらけってイメージだけど、その中に宝石があるのか?

でも、遺跡を壊して宝石を取り出すなんてするかな?


「さっき一族の恩恵は受けていないと言ったけど、そうは言っても東京の一等地で暮らし綺麗な物に囲まれて成長したものだから、不潔とか不便とかに免疫がなくてね。

家を出た時はかなり驚いたね。

これは独り立ちの為の試練だと頑張ったけど、どうしても嫌なものは嫌で。

そんな僕だから土埃にまみれての宝石採掘の道ではなく、宝飾デザイナを目指したんだ。」


奉職デザイナ?奉仕をする職業のデザイナ?宝石の勉強は?

JCに入ってなくても奉仕はしていたということ?


「とにかく一生懸命で、寝る間も惜しんで勉強やバイトをしていたね。

貧乏なのもご飯が口に合わないのは全く辛くはなかった。

だって自分がやりたいことの為だから。

何かをなす為には努力や苦労は当たり前だし、安易に手に入るものには嬉しさも感謝もそれほど伴わないものなんだというのが家を出てからよく分かったね。」


宝石の仕事は諦めてしまったようだけど、そんなに一生懸命に奉仕をしていたんだ。


「十八歳でイタリアに行き、二十歳になる頃には少しずつ仕事も貰えるようになってきた。

なのに、いきなり二十歳になったのだからJCに入会する為に帰国しろと言われたんだ。

しかも東京ではなく寿島に!

小さな頃に何度か来たことはあるけど、はっきり言ってど田舎の何もない場所だとしか思わなかった寿島に!」


中川さん寿島の事が嫌いなんだ。

そりゃ東京やイタリアと比べたら何もないだろうけど、はっきりと何もないど田舎なんて言われると傷付くものだな。


「僕はイタリアで独り立ちをして頑張っているんだから帰国なんてできないと言ったが、聞く耳を持たないとはこのことだね。

挙句には寿島へ行かないのならイタリアは勿論、世界中どこにいても仕事ができないようにしてやるとまで言い出すんだ。

一族の宝石界における力は中々のものだし、恐ろしいことにこの一族はやると言ったら本当にやるんだよ。

独り立ちをしろと言って放り出したのに、そちらの都合で寿島なんかに行けとはひどいと泣いてみたけど全く駄目でね。

世の中は不条理なものだ。今、イタリアも東京も戦争か天災か何かで住めなくなったらどうするんだ。

その時々の状況によりできなくて諦めてしまうことなんて大してやりたいことではないだろう。

本当にやりたければどこにいてもどんな状況でもやれる筈だって言われて。

もうこれ以上何を言っても無駄だと諦めて寿島に来てJCに入ったよ。

仕事は「寿シェル 寿島工場」の平社員として。

もう地獄だったね。

貧乏や仕事がきついのは平気だけど、周りに僕の疲れを癒してくれる煌びやかなものが何一つないんだ。JCだって地味なスーツを着て宗教じみた儀式やわけの分からない飲み会が繰り返されるだけとしか思えなくて、本当に辛かった。

唯一、寿貝は綺麗だったけど、ひたすら毎日それだけを見ていても刺激が足りない。

脳内で今まで見た煌びやかなものを再現したり、ネットで映像を検索したりして必死で宝石のデザインをしていたね。」


ようやく宝石に戻れたんだね、中川さん。

何もない田舎だけど本来やりたかったことがまたできるようになって良かったじゃないか。

それにしても本当にやりたいことは、どんなことがあってもするものだとか、どこの親も言うものなんだな。


「都会の煌びやかさに必死にしがみつく僕に対して、仕事とJCは否が応でも自然やら土着的なものやらを押し付けてきて、最初はその田舎臭さが嫌でしょうがなかった。

だけど花見定例会の準備で君達も見ただろうけど、あの朝焼けを見てようやく自然の偉大さ、人々の土着的な努力や歴史の凄さを実感したんだ。

何とも言えない素晴らしい景色の中に僕が馬鹿にしていた田舎の家々があって、でも、それは自然と見事なまでの融合を果たしていた。

技術的には、どこにでも煌びやかで都会的な建造物を造ることができるのに、画一的ではなく寿島の歴史や気候や景観にあったものがここにはちゃんと根付いていると気付かされたんだ。

宝石も同じで、宝石の原石ができる過程はまさには自然の偉大さに他ならないし。

宝石が原石から人の手に届くまでには大変な作業がたくさんあり、それに多くの人々が関わっている。

そして宝石には地域ごとにその場に適した役割や意味がある。

知識としては勿論知っていたけど、都会という限られた地域での用途という視野しか持たず、綺麗な最終形のみに目を向け、汚れが伴う途中の作業なんか嫌だと心の中では軽視していた自分が恥ずかしくなったね。」


「先ほどから汚れるのが嫌と言われてますが、家を出てからのバイトは何をされていたんですか?時給の良い仕事はきつくて汚れることも多いイメージがあるのですが。」


「まあ、一概にそうは言えないけど、一般的にはそうだよね。不潔なものがどうしても嫌だった僕はお金を貯める為に、東京ではホストをしていたんだ。」


「ホ、ホスト?」


「お年玉貯金だけを持たされて家を出たから、とにかく節約しなくてはと思って。

ホストクラブに勤めると寮に無料で入れるっていうからね。

でも寮なんて男の集団生活の場だから、まあ不潔だよね。

しかもホストクラブの最初の仕事はひたすら掃除なんだ。

酔っぱらった客やホストの汚した店やトイレの掃除なんて嫌でね。

しかし寮暮らしからも掃除からも逃れる方法があって、それは指名を多く取って稼ぐこと。

だから指名を取れるように頑張ったんだ。

僕って外国人みたいな顔してるから、それもあって一ヶ月後には綺麗なマンションも借りられ、掃除も免除になったよ。」


アパートでなくマンション?ホストってそんなに稼げるのか?


「イタリアでは何かされていたのですか?」


「日本で勉強はしていたけど、やはり最初はイタリア語が上手くなくて。

あまり話せなくても大丈夫な仕事を探していたら、パーティのエスコートの仕事があってね。」


「パ、パーティのエスコート?」


「身長も高いし、顔も外人みたいだから見た目の違和感がなかったし、小さな頃に社交ダンスを習わされたのが役に立ったね。イタリアの女性は皆親切で本当にお世話になったよ。」


小さな頃に社交ダンスって、やはりお金持ちのお坊ちゃまじゃないか。

そして、なんだかんだ言って結局は辛い思いをあまりしてないよな・・・


「寿島の工場の仕事はつらくなかったのですか?」


「工場って汗や油にまみれってイメージがあるかもしれないけど、実際は自分も機械も清潔にしておかないと駄目な場所だからね。

平社員だから掃除もしてたけど元々綺麗な場所を掃除するのはそう苦痛ではなかったよ。

二人とも小学校の時に工場見学に来たから知ってるよね。」


確かに小学校の時に見学に行ったな。


「その時に案内したのは、実は僕なんだ。」


「ええっ!」


「僕は猿渡先輩とは四年程一緒にJC活動をしていたから。

猿渡先輩に、明日自分の息子が工場見学に行くけど、どれが俺の息子か当ててみろって言われてね。

名札は見るんじゃないぞって。

こいつが息子だと決めたら名札で確認しろと。

当てたら懇親会費用を奢ってやるって。

そんなの嘘ついて分かりましたって言えば良いから賭けになるのかって思ったけど、いやあ、びっくりしたね。

全然、先輩と違うからまるで分からなかったよ。」


どうせ俺は親父と違って人見知りの暗い人間だよ。


「指方先輩の娘さんもいるよって言われてて、指方先輩の顔は勿論知っていたけど、父と娘で性別が違うから分からないだろうと思っていたら、シーサーはすぐに指方先輩の娘さんだと分かったよ。

何から何まで本当にそっくりなんだよね。」


指方さんのお父さんも存在感がないのかな?


「あの時の小学生と一緒にJC活動をしているなんて不思議なものだよね。

話は逸れたけど、昔はJCなんて金持ちの為の大口叩く社交団体だと思っていた。

世界平和を目指し、まずは地域から、個を殺すことのない全体協和だなんて。

世界中で何らかの活動をしているとはいえ、それが本当に目に見えて世界平和の役に立っているのかと疑っていたんだ。

実際に入会してからも、怪しげな儀式や飲み会、そして、この電球のチェックみたいな地味な作業から、地域や世界の問題を考えるなんてものまでやらされて。

立派そうなことを学んでも本当に実行できるのか?

1つの小さな島の団体で何をやっても影響力なんてあるのかと。

無駄なことをやらされているんじゃないかって最初は思ってた。

でも結局それらは一個人での生活や宝石の世界だけでは決して体験できなかったことでもあって。

僕の傲慢さや世界観の狭さなんて親には最初から分かっていて、その上での強制JC入会だったんだなって今では感謝してるよ。

そうして無理矢理にでも様々な経験や勉強をさせられたのが宝石のデザインにも出てきて、二十五歳の時には自分のブランドを立ち上げることができたんだ。

無駄だと思っていたことも様々な場面で物凄く役に立ったしね。

そして自分の足場も固まったから次は人の為だということで、今は意欲的にJC活動を行っているというわけ。

世界平和をなすものは一人の英雄による目に見えるドラマティックな活躍だけではなく、一人一人の小さな、でも確実な一歩一歩なんだよ。

この地道な作業により、より良い異世界への扉が開くんだ。

だから指方先輩の言ってたことは本当だよ。

ということで電球確認頑張ろうか!」


そのあとも淡々と電球の確認は続いたが、指方さんがイタリアの話を聞きたがったので、中川さんが話をしているのを聞いている内にここはイタリアの宝石店の倉庫で電球ではなく宝石の輝きのチェックをしている気分になっていった。




なんて綺麗ごとを言えたのはこの日が最後で、次の日からも毎日仕事が終わったあとに必ず呼び出しがかかり、まつりの準備に走り回ることとなった。

しかも、こんなにやることが沢山あって忙しいんだから定例会も理事会も七月は休みにすれば良いのに、次の議案があるから休めるわけないでしょうと委員会まである始末。

しかも更なる謎の集会「サマコン」なるものが出てきたんだ。




「さ、様婚?」


野島さんみたいな俺様と結婚することか?


「正式にはサマーコンファレンスって言うんだけど。

はい、これが資料。今年のセミナーは凄いわよ。

サマコンって最初は夏になると政治家が軽井沢に避暑で集まるから、その時に政治家とJCとで日本の政治経済について意見交換会や勉強会をして、日本全体としてのJC活動に役立てましょうというものだったんだけど、現在は横浜に舞台を移して政治経済に限らず日本全体の勉強会の場となっているのよ。」


「よ、横浜・・・」


「そう、行ったことある?昼間はしっかりセミナーに参加するけど、夜は皆で楽しめるわよ。

エントは京都会議欠席だったからまだ姉妹JCとの交流がないわよね。是非、参加しましょうよ。」


「し、仕舞?い、いや、お、お踊りは・・・」


「姉、妹の姉妹よ。

寿島まつりの準備真っ盛りだから仕舞と聞き間違えたんだろうけど、エントって面白いわね。

今度、今までの面白聞き間違えを教えてね。」


懇親会で話せとか言われたら大変だから話を逸らさなくては。


「い、いや、そ、その姉妹JCって?」


「そうそう。私達は、まずは自分達の地域を良くしようと活動しているけど、井の中の蛙状態になってしまっては他との調和も計れないし、新しいアイデアも出てこない。

外と関わりを持ち相互に高め合う為に違う地域のJCと姉妹JCという関係を結んでいるの。

私達の姉妹JCは長崎県の大村ってところよ。」


「な、長崎・・・と、遠いですね。」


「そうなの、だからなかなか会えないのよ。

サマコンは姉妹JCに会える貴重なチャンスよ。なので参加しましょうよ。」


「い、いや、そ、その、りょ、旅費が・・・」


「まあね、活動にかかるお金は全部自腹だからきついわよね。

でも、お金の使い方というのも若い内から勉強しておくと良いわよ。

自分でお金を払うという辛さ、そして、それで手に入るもの。

お金のやりくりの仕方もね。

今回はお父さんに旅費を出してもらえるようにお願いしてみる?

お願いの方法を教えるわよ。」


「い、いえ、そ、そんなこと!」


「今回、駄目だったとしても役に立つ方法だから教えてあげるわよ。」


「い、いえ、じ、自分で言います!」


旅費を出してもらう方法って、どうせ俺の借金になるんだからやめてくれ。

親父からも寿島以外の活動は無理して行かなくて良いって言われてるんだから。

寿島以外のJCを観察する絶好の機会ではあるとしても、仕事と暑さと連日のまつりの準備でへとへとなんだ。

せっかくの週末も毎回まつりの準備に朝から駆り出されてるし、皆が横浜に行くのならゆっくりできるチャンスじゃないか。


「自ら行動!良いわね。失敗から学ぶことも大切ね。では頑張って!」


そうして俺はおざなりに旅費を親父に頼んでみて、勿論お説教付きで断られ、野島さんから催促される度に親父の返事待ちです。自分で頑張りますと嘘を付き、「サマコン」なるものから逃げることができた。




そして皆がサマコンに言っている今、俺は倉庫で一人黙々と作業をしている。

行けないのは残念だけど、寿島まつりの準備が捗るのは嬉しいわと野島さんから作業を言い渡されたのだ。

野島さん、俺の嘘に気付いてこんな罰を?

ああ、きつい、眠い・・・


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