お葬式
ひどい。
何でこんなことが起きるんだろう。
あのまま引き籠っていたら良かったと思うくらいだ。
「あの写真良いわね。」
「指方委員長が撮ったんだよ。」
「いつの間に?」
「話を聞いてから、写真を撮らせて下さいって撮影に行ったんだって。」
「JCの旗とか提灯とか葬式会場には変かもしれないけど、喜んでくれてるわよね。」
「寿島JCの歴史だからね。」
「そういえば柩くんは?」
「あそこで仕事してる。」
「JCに入っていきなり、こんなお葬式をしなくてはいけないなんてね・・・」
「しかし葬儀屋だからって柩って名前付けるのも凄いよね。野島理事長以上に虐められたんじゃない?」
「こ、小柳直前って・・・」
「何?」
「ひ、ひどいですよね。」
「ああ、でも嬉しかったよ。指方委員長にも同じことしたけど、反応って人それぞれだね。」
「さ、指方委員長は泣かなかったんですか?」
「何の病気ですか?と聞かれて中川先輩の病名を言ったら、後日、良い病院や治療法の資料を沢山持ってきてくれたよ。」
「泣くのは最善を尽くして、それでも駄目な時だと思いましたので。」
「う、嘘ついて騙すなんて・・・」
「嘘は一つも言ってないよ。」
「人間ドックに行って、あと数ヶ月って言われたって!」
「人間ドックには本当に行ったし、あと数ヶ月だっていうのは理事長があと数ヶ月だって
ことだよ。」
「花見の時にした自分の葬式で泣いてくれるかなっていう話をあんなタイミングで言ったら騙されるに決まってるじゃないですか!」
「一年を振り返って思い出話をしただけじゃないか。」
「猿渡事務局長。私も中川専務もやられてるから。」
「野島理事長と中川専務は泣いたんですか?」
「それは猿渡事務局長が理事長になった時に教えてあげるわ。」
「何十年先の話ですか!」
「猿渡事務局長は怒ると、どもりがなくなるから、ずっとその怒りを持っていた方が良いんじゃない?」
「ずっと怒ってるなんて野島理事長じゃあるまいし嫌ですよ。」
「言うようになったわね~。」
「さて、我々もお焼香に行こうか。」
「中川専務、今日の恰好は普通ね。」
「でも、それが全然似合ってないよね。」
「そこが中川専務の良い所です。」
「のろけるねえ。」
なんと去年の反省の会のあとに中川専務が指方委員長を初詣に誘って、それを切っ掛けに二人は付き合うようになったんだ。
顔に自信のある中川専務が顔に駄目出しされて、生まれて初めてあんなに頑張って女性を口説いたよと言っていた。
指方委員長もいつもスマートな中川専務が必死なのが見ていて不思議でそこが良かったそうだ。
見た目が奇抜で豪華な彼氏と存在感がまるでない彼女。
不思議で良い組み合わせかも。
「な、中川専務・・・どうも、この度は・・・」
「お爺ちゃんのお葬式に来てくれてありがとう。最後は必ず寿島に帰るって生前から言っていてね。こんなにもJCスタイルで見送られて本人もうれしいと思うよ。」
そのあと、火葬場、精進落としまで参加して親父と一緒に家に帰った。
「良い葬式だったな。」
「・・・うん。親父はJCスタイルの葬式が良い?」
「俺が先に死ぬとは限らん。おまえはどうしてほしい?」
「なんだよ。前は俺がいつまでも生きていると思うなよって言ってたくせに。」
「お互い、明日死ぬかもしれん身だ。後悔のない様に生きなくてはいかんってことだよ。」
「じゃあ明日死ぬかもしれないから、後悔のない様に親父のJCネーム教えてくれよ。誰に聞いても本人から聞けって教えてくれないからさ。」
「本当に聞きたいか?長いぞ。」
「また、そういうことを言う。名前なんか一言で終わるだろう。その名前が付いた経緯は
また今度でも良いからさ。」
「何でその名前が付いたか気になる様な名前だぞ。」
「JCネームは付け方が決まってるんだから推測できるよ。理由は多分分かるから教えろよ。」
「分った。じゃあ、経緯は自分で推測しろ。
ENDだ。」




