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JC!JC!JC!  作者: けーた
11/13

11月 家族交流会


暖かい。

地球温暖化ってすごいな。

十一月なのにこんなに暖かいなんて。




OB交流会の翌週の週末に全国大会なるものがあると中川専務から聞いていた。

場所はなんと沖縄の那覇。

費用が物凄いので行けるわけもないと断っていたが、OB交流会の映像で京都、横浜で楽しそうにしている皆を観て行ってみたいという気持ちになった。

中川専務に今からでも参加できるかと聞いてみると、参加はできるが出発までに一週間もないので旅費が更に高くなると言われた。



「あのさ、全国大会に行きたいんだけど。」


「今度の週末だろう?仕事は休みだから構わんぞ。お土産宜しくな。」


「あ、あのさ・・・旅費が高くて・・・」


「そりゃ、そうだろう。」


「お金借りることってできないかな?」


「どうやって返すんだ?」


「給料から少しずつ返す。」


「月五万円の給料の中から?そんな安月給で毎月金は余ってるのか?」


「安月給なのは親父がそう決めたからだろう!ちゃんと働いているのに月五万円なんて普通あり得ないよ。」


「確かにあり得ないな。おまえ貰い過ぎだぞ。普通、学校出てすぐの給料なんて安いもんだ。

更に一人暮らしをしていたら、家賃、光熱費、食費だけで精一杯。自分の自由になる金なんか、ほぼ無いな。」


「そ、それは・・・でも、働いてたら給料も上がっていくだろう。俺も、もう一年以上働いているんだから、給料を上げてくれよ。その上がった分で返していくから。」


「なんで給料が上がるか分かるか?」


「え?なんで?長く勤めているから?」


「物事はなんでも根本から考えるんだ。おまえの給料はどこから出ている?」


「会社だろう?」


「違う。お客さんから頂いたお金からだ。」


「それはそうだけど。給料を幾らくれるかは社長の親父次第じゃないか。」


「そうだ。会社を経営していくには色んな経費がかかる。おまえの給料だけを馬鹿みたいに多く払うわけにはいかない。」


「だから、そんなに貰ってないって。一年以上サボりもせずに働いているんだから給料上げてくれたっていいだろう。」


「おまえがサボりもせずに働き続けたことで、うちの売り上げは上がったか?」


「そんなの母さんが経理をしているんだからわからないよ。」


「細かな数字は置いておくとして、おまえは、こういう形で売り上げに貢献していると説明できるか?」


「休まずに工場にいるじゃないか。」


「いるだけで良いなら、カエルでも置いとくさ。」


「カエルに何ができるんだよ!」


「そこだ!おまえは何ができる?」


「車の修理・・・」


「その修理する車を持ってくるのは誰だ?」


「お客さんだろう。」


「違う。お客さんがうちに車を持ってきてくれるようにしているのは俺だ。」


「それは言い過ぎだろう。看板とか電話帳とか、人づてとかあるから、全部親父ってことはないだろう。」


「看板も電話帳に番号を載せるのにも金はかかる。それを払ったのは俺だ。そして、お客さんに良い印象を持ってもらい次につなげたのも俺の仕事の結果だ。つまり、全部俺だ。」


「でも、その車を修理するのは全部親父ではないじゃないか。経理は母さんだし。」


「だから人に仕事をして貰ったら、その対価として給料を払っている。」


「その給料が仕事のわりに安いって言ってるんだよ。」


「仕事のわりって言うが、俺が急に死んだらおまえはどうする?おまえに経営や営業ができるか?」


「そりゃ、無理だけどさ・・・」


「だろうな。誰も来ない工場でただじっとしているつもりか?たまたま、お客さんが来たとしても今のおまえの技術でどんなことにも対応できるか?」


「それも、無理だけどさ・・・」


「おまえの仕事をしているはそのレベルなのに給料の値上げしろ?それこそ無理だな。」


「じゃあ、一生給料五万かよ。」


「おまえは一生成長しないつもりか?あと、俺がいつまでも生き続けると思うなよ。いつかは跡を継ぐなり、自立しなくていけない時がくる。」


「親父はまだまだ元気じゃないか・・・でも成長したら給料上げてくれるのかよ?」


「勿論だ。以前できないことができて、おまえの働きにより売り上げが上がればな。」


「JCやってる場合じゃないってこと?」


「なんでそうなるんだ。

車の修理だけがいくら上手くなってもそれだけでは経営はできないし、万が一この世の中から自動車が無くなったら失業ってことになる。

しかしJCでは色んなことが学べるからな。大事なのは変えてはいけないことと変えなくてはいけないことを見抜く力だ。

それさえ間違えなければ人生なんとでもなる。

だからこそ将来おまえがどの道を選んでも幸せになってほしいと思ってJCに入会させたんだ。

いやあ、本当に俺は親馬鹿だな。」


そして欲しい物があるなら、どうしたらそれが手に入るか考えて行動しろ、JCも使って良いぞと言われたものの、どうすることもできずに結局全国大会には行けなかった。 





先月はOB交流会があって、今月は家族交流会があるそうだ。

ということは委員会や理事会が勿論あるわけで、今日も今日とてJCだ。

でもOB交流会で実はJCを楽しんでいることを認めた俺の足取りは軽い。

それにしてもJCって年がら年中ずっと何かしらあるな。

島内のことだけでも忙しいのに小柳理事長と中川専務はブロックだ、なんだとかと言いながら島外にもよく出掛けている。

家族といる時間が殆どなくて、一緒に住んでいる家族ともわざわざ交流会をしないといけなくなるってひどくないか?

いや本来は自分の力ですべき家族サービスをJCが手助けしてくれるんだから楽なのか?

俺が将来結婚したら奥さんはJCのことをどう思うんだろう?

まあ俺が最初に思ったように宗教かマルチ商法かって感じだろうな。

の前に、俺って結婚できるのかな?子供?想像がつかないな。


「未来の家族に想いを馳せているの?」


「い、いや、あ、あの、こ、小柳理事長も中川専務も忙しいなって。」


「今日は会員会議所会議ね。準備を手伝わなくてずるいと思った?明日の本番前には全員で準備するから心配しなくても良いわよ。」


「い、いや、そ、そんな・・・べ、別の団体の会議も行かなくてはいけないから、た、大変ですね。」


「別の団体?」


「か、改印会議所って団体があるんですか?」


「会員会議所会議っていうのはブロックの会議のことよ。」


「ブ、ブロック?は、判子を英語でブロックって言うんですね。」


「もしかして、印鑑を改める会議だと思ってる?」


「しゃ、社長さんだから、そ、そういうのもあるのかと。」


「エントの発想力は凄いわねって褒めるとでも思った?

JC用語集を全部読んでないからそういうことになるのよ!私は必要なもの、役に立つものだけを選んで渡しているわ。だって、そういったものにかかる費用は全部メンバーの会費から出ているから。エントは読みもしないで捨てる紙屑の為に会費を払っているの?」


「い、いえ。す、すみません・・・」


「自分の払ったお金だと思えば大事さも分かるでしょう?エントも、こんな価値のないもの、不完全なものにお金をかけるなと思ったら、ちゃんとそう言ってね。」


「い、いや、お、俺には、そ、そんなこと。」


「JCに入会して一年近くなるでしょう?いつまでも何も知らない、何もできないでは通用しないわよ。」


「す、すみません・・・」


「じゃあ、今日帰ったらJC用語集を全部読むこと。できる?」


「い、いや、そ、そんな・・・」


「返事はYESorはい!」


「は、はい・・・」


「約束ね。じゃあサービスでブロックの説明をしてあげる。

JCにおいて一番小さな単位をLOMというのは前に説明したわね。

規模的には市に一つというのが一般的ね。

そして、ブロックとは通常、同じ県内のLOMが集まったもので、大きな所は更に分割されるから四十七より多くて今は五十かな?

次に地区。県ごとのブロックが一般で言う東北地方とか関東地方とかとかで集まったもの。

これも大きな所は分けるから八より多くて十。

そして、地区全部集まって日本本会。

更に世界でいうと日本はアジア地区となるんだけど、日本に話を戻しましょう。

このブロックとか地区は別のメンバーがいるわけではなく各LOMのメンバーが出向していって組織されているの。

だから私達は正確に言うと日本青年会議所○○地区△△ブロックの寿島JCというわけ。

ブロックにも地区にも日本本会にもちゃんと会費は払っているんだから、その全ての会に参加できる権利があるのよ。

来年は日本本会主催の京都会議、サマコン、全国大会。地区の地区大会、ブロックのブロック大会に是非参加してね。

勿論、JCIの世界大会、世界の地区大会にも参加できるわよ。」


今年、地区大会とブロック大会も誘われたんだけど島外だから断ったんだよな。


「来年はなんと寿島でブロック大会があるから!参加しやすいと思うわよ。」


こんな小さな島で?


「ブロック大会は全部のLOMで順番に行われていくんだけど、地区大会はプレゼンして誘致しないといけないの。いつか寿島で地区大会を開催してみたいわね。」


プレゼン?賄賂を贈るってこと?


「エント。プレゼンの意味分かる?」


「あ、あの、プ、プレゼント?」


「プレゼンテーションよ。情報を人に伝えて理解してもらうこと。

私はいつでも人に何かを伝えたいと思って行動しているわ。

お笑い芸人になりたかったのもその一環ね。

エントは人に理解されて受け入れてもらいたいと思わない?」


「お、俺なんか。べ、別に・・・」


「自分を大事にできない人は他人のことも大事にできないわ。

これは自分第一で我儘になれという意味ではないわよ。

まずは自分の心と体を健やかに保つことによって、人としての幸せや協和というのが理解できるということ。

エントの人生にはこれから色んなイベントがあると思うけど、結婚、子供ができるっていうのは一番と言ってもいい位に大きなイベントじゃない?

だから将来の家族の為にも、今回の家族交流会で何か学ぶものがあれば良いなと思っているの。

どう?家族交流会が更に楽しみになったでしょう?」


「結婚、出産は必ずすべきですか?」


JCには慣れたけど、指方さんの存在感のなさには全然慣れることができないな。


「結婚も出産も一人ではできないし、個人の色々な要因もあるだろうから必ずとは言えないけど、私の体験上、結婚も出産も面白いからお勧めはするわよ。

動物の本能として種の存続というのは第一な筈。

それが現在、少子化となっているのは何かしら問題があるからよね。

その問題点を考え、解決する行動もまた種の存続の為。

JCで子供を対象にした事業を多くしているのもそういう理由かな。

ということで、子供達の為にも頑張って準備しましょう!」





家族交流会当日、会場設営の為にまた、ここに来ている。花見以来だな。


「エントとシーサーもここに遠足に来た?」


「は、はい。」


「うちの子も来たのよ。桜が綺麗だったって喜んでいたわね。

家族でも来たことはあるんだけど、学校の友達と一緒だとまた違った楽しさがあるんでしょうね。

というところから発想を得たのが今回の家族交流会。

題して「The Another Side Story」!

その為にまたもや野外映画セット借りちゃいました!

旦那が観光協会の会長で本当に良かったわ。

でも、ちゃんと正規の手続きで借りてるから安心してね。

エントは先月組み立てたからやり方はわかるでしょう?シーサーに教えてあげて頂戴。」


「猿渡福委員長、お願いします。」


俺が知ってて指方さんが知らないことってこれが初めてじゃないか?

こういった作業は仕事でもするからできるっていうのもあるけど、頼りない俺が頼られる立場になるなんて!俺も少しは成長してるんだな。


「私は理事長と専務の手伝いをしてくるから、ちゃんと映るかまで確認しておいてね。」


家族交流会で流す映像は議案の中で、JCで頑張る様子を上映としか書かれていなくて、作成も指方さんが一人で請け負ってしていたので俺は今日初めて見るんだけど、OB交流会の時の映像みたいに俺の恥ずかしい所が満載じゃないだろうな。



「The Another Side Story」


なんだこの戦隊もので使われるような音楽は。


「寿島の、いや、世界の平和を守る為、寿島でひっそりと活動するヒーローがいる。

その名も寿島Jaycee!」


「理事長!小柳レッド!」


小柳理事長!赤いスーツなんて一体どこで?


「専務!中川ブルー!」


中川専務は普段からこんな格好だから、違和感がないな。


「委員長!野島ピンク!」


うわあ!


「副委員長!猿渡グリーン!」


これ!先月の懇親会の時にいきなり緑の布を

巻き付けられてビックリした時の写真だ!


「指方イエロー!」


派手な格好をしているのに、こんなに存在感がないなんて!


「寿島Jayceeの活躍を君達は知っているか!」


全部ふざけてるのかと思いきや、そのあとの写真や映像は真剣な顔での会議、島の清掃活動(朝早くて嫌だったけど行ったな)まつりの準備等。

全部が真剣で一生懸命さがこれでもかと伝わってくるものばかり。

俺でさえ恰好良く見えるくらいだ。


「こ、この写真と映像、さ、指方さんが?」


「ええ。」


「す、凄いね。プ、プロみたいだ。」


「一応、プロだから。」


「えっ?ス、スパイの?」


「フォトグラファ。総会の時に自己紹介したんだけどね。」


「ご、ごめん。え、英語苦手で・・・」


「分からなかったら聞いてくれれば良いのに。野島委員長からもいつも言われるでしょう?」


「ご、ごめん。こ、この映像は指方さんが全部作ったの?

こ、寿島Jayceeってヒーローの名前も、さ、指方さんが考えたの?お、面白い名前だね。」


「野島委員長がいなくて良かったわね。Jayceeも用語集の中にあるわよ。昨日ちゃんと読まなかったの?」


「ご、ごめん。」


「謝ってばかりね。行動した上での謝罪なら良いけど、形だけ謝ってもなんの説得力もないわよ。」


「ご、ごめん・・・」


「ただいま。映像大丈夫だった?

次はご飯の準備しましょう!

エントどうしたの?シーサーに告白して振られた?男は一度振られたくらいでくじけちゃ駄目よ。」


「い、いえ、ち、違います・・・」


また野島委員長はそんなことを言う。

こんなにきつい言い方されて恋愛に発展する筈ないじゃないか。


「エント、今日は私の家族をアテンドしてくれるんだよね。宜しくお願いします。」


「は、はい・・・」


結婚してるのは小柳理事長と野島委員長だけで、その家族が今日は来るのだけど、俺は小柳理事長の家族のお世話係りとなってるんだ。

だけど何をどうしたら良いんだろう?


「よし、これでOKだ。では私は野島委員長の家族とうちの家族を迎えに行ってくるから、皆、宜しくね。」


小柳理事長、その車で行くの?

昨日、白のワゴンに指方さんのあの独特のセンスでゴテゴテに飾りつけをしたんだ。

子供に人気のキャラクターはまだ分かるとしても俺達の写真と家族の写真も拡大コピーして色塗ったりしてさ。

車にどんどん貼り付けていくから剥がす時どうするんだろうっていうより、この車は何に使うんだよって思っていたんだけど、送迎用なの?

俺だったら乗りたくないな・・・

わあ!皆乗って来たよ。

子供達は喜んでるな。

室内にも沢山飾り付けしたもんな。


「猿渡副委員長。家内の凪と子供達。上から帝一、太一、道。今日は宜しく。」


「は、初めまして。こ、こちらこそ、よ、宜しくお願いします。」


「初めまして。主人がいつもお世話になっています。猿渡さんはエントさんよね?」


「は、はい。」


俺が理事長をお世話?

懇親会の時に飲み物を作るとかそれくらいだけど、そのこと?

それと、何でJCネームを知ってるんだ?


「初めまして。指方祀子です。いつも理事長にはお世話になっています。」


「あら、気付かなくてごめんなさい。指方さんの娘さんよね。JCネームはシーサーさんね。」


「はい。奥様は沖縄出身なのですか?」


「あら、分かった?子供の名前でかな?」


「はい。四人目ができたら与一ですか?」


「そうなるわよね。男だったら良いんだけど女だったらどうしましょうね。」


子供の名前から何で出身地が分かるんだ?


「猿渡くん!この前「クスリ」を使ってみたよ!」


「えっ!あ、あの、そ、そんな事を大声で言っては・・・」


「小さな声で言うものなのかい?だから全然受けなかったのかな?

皆、何のこと?って顔してたのはそのせいか。

指方くん「クスリ」ってどうやって使えば良いんだい?」


「医薬品の薬のことですか?」


「違うよ。若者の間で「クスリ」って流行ってるんだろう?」


「違法な薬のことですか?」


「違う違う。(笑)みたいな笑い方じゃないのかな?」


「聞いたことがないですが、私が知らないだけかもしれません。今度調べておきます。」


「そうなんだ。猿渡くんはどこで使っていたの?高校の時?」


「い、いや、お、俺は、そ、そんなこと!」


俺が高校時代に変な薬を使っていたみたいな言い方止めてくれ!


「全員揃われましたので家族交流会を開会致します。」


中川専務。今日も凄い格好だな。

オーケストラの指揮者がそういう服着てないか?


「本日は家族交流会にお集まり頂きありがとうございます。

私達JCはより良い未来を創る為に頑張っていますが、それらは決して結果がすぐに出るものばかりではありません。

家族を放ったらかして何をしているんだ。

時間もお金も無駄に使って自分達の家族はより良くなっていないぞ。

そういう不満もあるかと思います。

「情けは人の為ならず」この言葉は「人に情けをかけるのは、その人の為にはならない」という誤った意味に取られることが多いのですが、本来は「人に情けをかけることは巡り巡って結局自分の為になる」ということです。

私達は他にばかり目を向けているのはなく、自分達の家族だけではなく住んでいる地域ごと良くなって欲しいと願って日々行動をしているのです。

しかし家族に大きな負担をかけているのもまた事実。

私達が仕事やJCをできるのは家族のお蔭です。

家族が支えてくれるから、守るべき家族がいるから。

その感謝とJCでの活動内容を知って頂くべく本日は家族交流会を開催致しました。

私と野島委員長以外は、まだ若く独身なのですが本日の交流会で結婚すること、子供をもつことの素晴らしさを実感してもらえれば幸いです。

野島委員長も私も素敵な家族がいますので、これには自信があります。

自信がないのは私が皆さんの為に用意した料理です。

普段から料理をしないので大変苦労しました。

料理や片付けってこんなに大変なんだと改めて家族に感謝です。

それでは本日はゆっくり楽しんで下さい。」


ブルーシートの上には野島委員長の用意した料理もあるけど、メインはスーツの小柳理事長が寿司屋の大将の様に材料の前に佇む手巻き寿司だ。

飲み物は中川専務が作ってくれる。

ジュースも注ぐだけでなくバーテンダーの様にシェイクして作ってくれるんだ。

二人とも恰好はおかしいけど役柄はピッタリだな。

指方さんは野島委員長の家族と一緒に手巻き寿司を作っている。

小柳社長の子供達は中川専務に飲み物を作ってもらっている。

俺は何をすれば?

小柳理事長は家族と一緒にいなくて良いのかな?


「あ、あの、こ、小柳理事長と、お、俺代わります。家族一緒の方が・・・」


「良いのよ。うちのは寿司屋の大将にピッタリな風格だから、やらせてあげて。

今日は家族とJCの皆をもてなすんだって張り切っていたしね。」


「で、でも、り、理事長なのに・・・」


「理事長だからよ。社長とか理事長とかは偉いから何もしなくて良いっていうのは間違いよ。組織として下に人が多いほど、多くの人から助けて貰ってるってことなんだから。エントくんも、いつもありがとうね。」


「お、俺なんか、な、なにも・・・」


「エントくんは、うちのと似てるわね。」


俺はあんなに大きくないぞ。


「見た目じゃないわよ。性格がね。」


性格も全然違うだろう。

小柳理事長はいつでも皆の前で堂々と話したりできるし、懇親会でも誰とでも楽しそうに話していてさ。


「ああ見えて人見知りで気が弱いのよ。」


どこが?しかも気が弱いって、理事会であんなに怒鳴るのに?


「JCでは結構怖いのかしら?会社でもそうみたいだけど、本当は人を怒るのは嫌みたいね。」


嫌なら怒らなきゃいいのに。


「役割的に必要なこととして頑張ってるみたいだけど、こっそり落ち込んでたりするわよ。

子供達の前でも立派なお父さんでいたいと頑張ってるし、たまに島外の飲み屋で遊ぶくらいは多めに見てあげましょうね。」


えっ?小柳理事長がそんなことを?しかも奥さんにばれてるじゃないか。


「男性は大体そんなものよ。本人もばれてるとは思ってないだろうから、このことは秘密ね。息抜きが必要なのは男女ともに一緒よ。勿論私だってね。」


奥さんは一体何を?そして、そんな秘密をなんで俺に?


「私の息抜きは内緒。うちのが言っていた通り表情を見るだけで本当に会話ができるのね。

驚いたわ。うちのがね、エントくんは何を考えているのか凄く分かりやすいって。

そして、メンバーのことを面白く誤解してるって。

でも、その誤解が面白いからそのままにしてるって言うの。

うちのは、ちょっと意地の悪いところもあるのよね。

でも、それってひどい話じゃない?

だから私はうちの秘密をエントくんに教えちゃおうと思ったの。」


そうなんだ。小柳理事長って実は俺と一緒で人見知りで弱気でって、一番ひどいのはそれを面と向かって言う奥さんでは・・・


「人は変われるものよ。ましてや大事な人の為なら尚更ね。エントくんは恰好良いんだから、すぐ彼女が出来るわよ。」


いや実は親切なのかも。

小柳理事長の秘密を教えてくれたり、格好良いってお世辞言ってくれたり。


「皆さん、小柳理事長の手巻き寿司と野島委員長の料理はどうでしたか?お腹いっぱいになりましたか?これよりJCでの活動内容報告を行います。皆!スクリーンに注目だ!」


中川専務が映像の音に合わせて指揮者のような動きをし出した。

これをする為にその恰好をしていたのか。

夕焼けに照らされながら指揮をする中川専務は、もはやイタリア人にしか見えない。

走り回っていた子供達も戦隊ものの音楽に釣られてスクリーンの前に集まってきた。


「あっ!お父さん!」


「わあ、お母さん!」


二回目だけどやはり変だ。

音楽が変わり俺達の写真や映像が流れる。

二回目だけど、皆、恰好良いじゃないか・・・





小柳理事長の一番下の子が僕の膝にもたれて映像を観ながら寝てしまったので、暫く、その子の枕になっていた。

十一月なのにこんなに暖かいなんて地球温暖化は深刻だな。


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