道に迷った男
『魔装:殲滅型自動販売機』のことを
『魔装:自動販売機』と誤って書いていたので、訂正しました。
正しくは『魔装:殲滅型自動販売機』です。
俺は方向音痴ではない。そのことを念頭に置いて聞いて欲しい。
道に迷いました。
は?それじゃあ方向音痴じゃないの?
と思っただろう。俺は日本にいた時は一度も道に迷ったことなんて無かったし、迷いやすいと言われている大阪にある『地下街』も迷わずに周ることだって出来た。
けれど、ここは違う。
異世界の街マジ半端無いって!
と叫びたくなる程、今の俺にはストレスが溜まっていた。
そもそも造りが似過ぎているのが悪いんだ。同じ様なレンガで出来た家が多すぎる。
「あー…」
思わず魂が抜けかけてしまった。
危ない危ない……
これは、そう。例えるならばアニメで良くある『俺たち、さっきから同じ所を歩いてるぜ?!』というやつだ。
まあ、俺の場合は同じ所を歩いてるのではなく、同じ様な造りの場所を歩いてるだけなのだが……
「疲れたー……一旦休むか……」
誰かに話しかけているわけでは無いが、俺は言葉に出す。
良さげな階段に腰を下ろし、皮袋から水筒を取り出す。
この皮袋と水筒はフェルから貰った物だ。丈夫な作りの物で、重宝している。
因みに俺が身につけていたスーツや革靴や腕時計、眼鏡といった物は特に思い入れがあったわけでは無かったので、フェルに売った。
その金で買ったのが、今着ている一般庶民の服(上下長袖の黒と白)とブーツだ。
俺も段々この世界に染まりつつある。
「良し、歩き始めるか……」
何となく宣言し、歩みを再開する。
∞
やっと、やっと……
「抜けたー!」
どこを?路地を。
今まで生きてきた中で、路地を抜けて喜んだ事があっただろうか?いや無い!!
自問自答をし、漸く『冒険者ギルド』に辿り着いた。
「長い、長い道のりだった……」
俺が干渉に浸っていると、聞いた声が耳に届いた。
「ツカサ!遅かったな、どこに行っていたんだ?」
えーと、冒険者ギルドに登録するには銀貨二枚ね。フェルたちの護送で貰ったので足りる。
「おいツカサ!私だ、リンだ!」
おお!流石は冒険者ギルド、これを見たら「俺もついに異世界に来たんだなぁ…」と実感する。
「無視しないでくれ!……うぅ…」
俺は痺れを切らして応答する。
「一体何の用だ、姫騎士?俺は今、今世最大に興奮しているんだ。くだらない事だったら怒るぞ。それでも良いんだったら言ってみろ」
「ええ!厳しすぎないか!?」
いーち、にー、さーんと数を数えると姫騎士は焦る。
「わ、我が主がお前と顔を合わせてみたいそうだ。来てくれないか!!」
我が主?
確かコイツはこの街で騎士をさせていただいている。とか言っていたな……ということは中々偉い地位の人物か?
じゃあ会わないとまずい?
「それって今からか?」
「で、出来れば……」
この場合、出来ればというのは
「え?勿論今から来るよな?え?来ない?お前巫山戯てんの?」
と言っているのと同じだ。
冒険者登録は?男のロマンは?
そんなものよりも、命は大事だ。
「しゃーないか……行くぞ」
「え…?」
「さっさと案内しろ。遅くまで掛かるようだったら宿代もしくは宿泊させろ」
「わ、分かった!」
はあ……さらば男のロマン…冒険者登録テンプレよ……
∞
「ここが我が主の住まう館だ」
そう言う姫騎士はどこか誇らしそうだ。
「うん、豪邸だな。金持ってんのは分かったからさっさと案内しろ」
「うう、分かった……」
扱いが酷いって?何を今更。俺は売られた喧嘩は大枚はたいて買うし、相手の勘違いで起こった喧嘩などは徹底的に根に持つタイプだ。
この場合は後者だ。
俺は死ぬまで忘れないぞ……
「こっちだ…」
姫騎士が案内をし、俺はそれに着いて行く。
長い廊下は煌びやかで、高価そうな骨董品や壷、絵画などが飾られている。
「我が主は美術品を集めるのがご趣味なのだ」
「へぇー」
そういう人って地球にも居たなと思い歩き続ける。
そろそろ見飽きたと思った辺りで姫騎士から身だしなみを整えるように言われる。
何故客人である俺が招待した側に気を使わなければならないのか疑問に思ったが、地球と異世界の差だろう。と割り切って案内された部屋に入って行った。




